仮面ライダーデイナ   作:黒井福

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第49話:新たなる生命の誕生

 亜矢が出て行ってから数分後に仁は目を覚ました。

 

「ん、うぅ……?」

「あ、門守君。目が覚めました?」

「はい…………亜矢さんは?」

 

 開口一番に亜矢の事を探す仁に、峰は思わず苦笑する。本当に彼女の事が好きなんだから、と。

 

「双星さんなら少し用事で出掛けると言っていた。ま、直ぐに帰ってくるだろう」

 

 亜矢からは口止めされているので、拓郎は適当な事を言って誤魔化そうとした。

 拓郎の言葉を聞き、最初仁は何処か心細そうにしながらも納得した様子を見せる。

 

 が、次の瞬間仁は頭痛がするのか頭を押さえて蹲った。

 

「うっ!?」

「門守君!?」

「大丈夫か!?」

「まだ、何処か異変が?」

 

 白上教授達が心配する前で、仁は頭を押さえながらゆっくりと顔を上げた。

 

「――――行かなきゃ」

「行く? 行くって何処へ?」

 

 突然変な事を呟き立ち上がった仁に峰が訊ねるが、仁は何も答えない。峰や教授達の事など見えていないかのように、ややふら付きながら外へ出ようとする。

 当然そんな状態の彼を1人外へ放り出すような真似をする者はこの場に居ない。

 

「ま、待ちたまえ門守君! そんな状態で何処へ行こうと言うんだね?」

「そうですよ! 今は体を休めた方が良いですって!」

 

 白上教授と峰が必死に仁を押さえようとするが、仁は聞く耳を持たず歩き続ける。恐ろしい事に、仁は白上教授と峰の力を全く意に介さず自然な様子で歩いていた。まるで2人など存在していないかのようである。

 

 とうとう押さえきれなくなり、教授と峰はその場に置き去りにされる形で仁から振り落とされた。

 

「うぉっ!?」

「きゃっ!?」

「教授! 宮野! 2人共、大丈夫ですか?」

「あ、あぁ。私は何ともないよ」

「私も……でも門守君は……」

 

 幸いな事に峰と教授は本当にただ振り落とされただけで大した怪我も無く、だが仁の底知れぬ力に近付く気力を削がれ彼が出て行くのを見送るしか出来なかった。

 

 2人を振り落とした事など意にも介さず、仁はやや覚束ない足取りで歩き続ける。

 彼が向かう先にあるのは、たった一つ。

 

「行かなきゃ……亜矢さんが、危ない……」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 数分ほど遡り、宗吾に呼ばれて亜矢が向かったのは湾口近くの倉庫街だ。

 現場にはS.B.C.T.が到着しており、倉庫街への入り口は閉鎖されている。

 

 亜矢はここに来る際、茜が運転するSUVに乗せてもらってやってきた。車を降りると、宗吾が既にスコープに変身した状態で近付いて来た。

 

「昨日の今日で呼び出してすまないな」

「いえ、大丈夫です」

 

 言いながら辺りを見渡すと、ある事に気付いた。先日に比べてライトスコープの人数が減っている。

 

「何だか、先日よりも隊員の方が減ってますね?」

「単純に前の戦闘でやられた隊員の補充が出来てないってのもあるんだけどな……」

「あ、ゴメンなさい……」

「いや、気にするな」

 

 スコープ1号はそう言うが、その表情にはやや険しさが伺える。

 

「それより、そろそろ突入だ。今度こそ連中の尻尾を掴んで――」

「隊長!?」

 

 今回の作戦への意気込みをスコープ1号が口にしようとした時、スコープ2号が声を上げた。何事だとスコープ1号と亜矢がそちらを見ると、彼は倉庫街の一画を指差している。それにつられて2人が指差す先を見ると、そこにはヘテロとホワイトカラーズ、ダークスティンガー、そしてグリーンリキッドの4人が歩いてきているのが見えた。

 

 彼らの姿に、スコープ1号が驚きの声を上げる。

 

「何ッ!? あいつら――!」

「権藤さん、ここには何故来たんですか?」

「情報提供だ、ここに異様な物資の搬入があるとな」

 

 だとするならおかしな話だ。異様な物資の搬入がされていると言う事自体はおかしくないし、そこを守るために迎撃が出てくる事も十分考えられる。

 

 だがその迎撃にヘテロ達が出てくると言うのは明らかに変だ。彼らは謂わば傘木社の最大戦力。こう言う言い方はあれだが、使い時は慎重に選ばなければならない。特にただ物資を搬入するだけの場所に、1人だけならともかく4人全員を配置するなどおかしい。

 それもまだ何もしていないにも拘らず向こうから出てくるなど……。

 

 まるで彼らがここに来るのが分かっていたような動きだ。

 

「まさか……いや、考えるのは後だ! 総員攻撃開始!」

 

 スコープ1号の命令に隊員達は一斉に倉庫街に入り、ヘテロ達に攻撃を仕掛ける。ヘテロ達4人はテイルバスターやベクターリーダーでそれを迎撃した。

 

 隊員達に続いて倉庫街に入っていくスコープ1号の姿に、亜矢もルーナに変身して続く。

 

〈CAT Unite〉

「変身!」

〈Open the door〉

 

 亜矢はルーナに変身すると、一直線にヘテロに向って行った。幾ら人数が揃っているとは言え、スペックが下げられているライトスコープではヘテロの相手は厳しい。スコープでも厳しいだろう。

 ここはベクターカートリッジ一つとは言え、ヘテロと同じく古代生物の遺伝子の力を引き出しているルーナが相手をしなければ。

 

「はぁっ!」

「ん?」

 

 一直線にヘテロへと向かって行き、出合い頭にボレーキックを放つ。ちょうどライトスコープ3人を同時に相手していたヘテロは、放たれた蹴りをテイルバスターで防ぐが蹴りの威力が思いのほか強く踏ん張り切れずに下がらされる。

 

 ヘテロが後ろに下がると、ルーナはリプレッサーショットⅡを向けながらライトスコープ達に告げた。

 

「このライダーの相手は私達がするわ! あなた達は権藤さん達の援護を!」

「分かった、すまない!」

 

 ライトスコープ3人はバラバラに分かれ、それぞれがスコープ2号と戦うグリーンリキッド、スコープ1号と戦うホワイトカラーズ、ライトスコープ部隊のみで戦うダークスティンガーの方へ向かって行く。

 

 その場に残されたのはルーナとヘテロの2人のみ。2人は周囲の戦闘音をBGMに対峙する。

 

「……今日もデイナは来ないのね。何かあったの?」

「お生憎様。仁くんはね、色々と忙しいからアンタ達みたいな木端連中を相手にしてる暇ないのよ」

 

 本当は仁は新人類に覚醒してしまい、体が変異に順応していないので休んでいるのだがその事を教えるつもりはなかった。というか、連中には教えてはいけないだろう。仁が新人類に覚醒したなどと知れば、連中は絶対にろくでもない事を考える。

 彼らに知られる訳にはいかない。

 

「へぇ~……そう……ま、いいわ。デイナが来れないなら、アンタが私の相手をしてよ」

「望むところです! そう言えばアンタには何度も痛い目に遭わされてたからね。ここらでリベンジとさせてもらうわ!!」

 

 ルーナは吠えながらリプレッサーショットⅡの引き金を引く。その程度なら当然ヘテロには大して通用しないが、ルーナは構わず銃撃しながらヘテロに接近する。迫るルーナに対し、ヘテロは反撃をしたいが二丁拳銃の銃撃が行動を阻んだ。速度が売りの二丁拳銃ではヘテロ相手に効果的なダメージが与えられない事はルーナだって分かっている。なので、銃撃を頭と武器を持つ右手に集中させているのだ。

 このおかげでヘテロは視界がしっかり確保できず、武器も満足に構えられない。ダメージが無い攻撃も使い様と言う事だ。

 

「くっ!?」

「もらった!」

 

 ルーナの銃撃によりヘテロの動きが鈍った。今がチャンスと、ルーナは一気に接近しリプレッサーショットⅡの銃剣部分で斬りかかった。

 

「イヤァッ!」

 

 跳躍し体を捻りながらの斬撃。先程までの銃撃で体勢を崩され気味だったヘテロは僅かに反応が遅れ、胸部に斬撃を喰らう。強固な装甲に覆われた胸部はこの程度で大きなダメージとはならないが、接近を許してしまった事はヘテロにとって大きな痛手となる。

 ヘテロの武装であるテイルバスターは大きい。つまり取り回しに難がある。対してルーナの武器は分離状態だと小型だ。威力は低めだが、速度と取り回しに優れている。以前のルーナが相手であればその程度大した事なかっただろうが、スミロドンの遺伝子の力を引き出した今のルーナが相手だと無視は出来ない。

 

 だからヘテロは、以前よりも真面目にルーナの相手をした。放たれる攻撃を最小限の動きで回避し、必要以上に攻撃は喰らわないようにした。前と同じように放たれた攻撃を無気力に喰らっていたら、手痛いダメージを受けてしまう。

 

「まだまだぁっ!」

 

 しかし一度攻撃を回避された程度ではルーナは止まらない。攻撃を回避されても、その勢いを利用して次の攻撃に繋げたり、立ち位置を変えてヘテロからの反撃を回避したりした。ヘテロが放とうとする攻撃はルーナには手に取るように分かる。挙動が大きいからすぐに分かるのだ。

 

「フン!」

「おっと!」

 

 反撃に放たれたヘテロの右フックを回避し、空中で体を捻りながらルーナは相手の側頭部に蹴りを喰らわせる。脳を効率的に揺さぶる蹴り方だ。喰らえばヘテロとてただでは済まない。

 

「ぐぅっ!?」

 

 ヘテロの側頭部にルーナの蹴りが入る。だがヘテロは蹴りが直撃する寸前に体を傾ける事でダメージを最小限に留め、脳が揺さぶられて動けなくなることを避けた。流石の反射神経である。

 

「チッ、浅いか。……なら!」

 

 蹴られた勢いを利用して距離を取ったヘテロを見て、ルーナは戦法を接近戦から射撃戦に移行。リプレッサーショットⅡを連結させてライフルモードにし、離れたヘテロのアンダースーツ部を狙って引き金を引いた。ヘテロのアンダースーツはスパンコールのように、表面をうろこ状の装甲で構成されている。なので鎖帷子の様に、柔軟に動きながらも高い防御力を発揮する事が出来た。

 それでも衝撃は殺しきれるものではなく、強化されたルーナのライフルによる一撃はヘテロにとっても無視は出来ない。

 

 ヘテロはルーナがライフルを撃ったのを見て、それを回避すべく横に転がって避けるとお返しにテイルバスターで撃ち返した。放たれた炸裂弾はルーナの右肩に命中し破裂する。

 

「あぁっ?!」

 

 撃たれた衝撃でルーナはリプレッサーショットⅡを手放してしまう。さらに悪い事に、今の一撃でルーナは利き腕の肩を痛めてしまった。これでは持ち前の正確な射撃が封じられたも同然だ。

 

「くぅ、やられた……なら接近戦よ!」

 

 射撃が出来ないなら、接近戦で対抗するしかない。ルーナは右肩の痛みを堪えながらヘテロへと突撃していった。

 

 激戦となる倉庫街。右肩を負傷したルーナはそれでもヘテロと互角に戦い、テイルバスターを振り回すヘテロを相手に蹴り技で対抗してみせた。

 

 スコープ1号は部下と連携してホワイトカラーズと戦闘を繰り広げる。ホワイトカラーズは単体で高い戦闘力を誇り、触腕型の鞭とベクターリーダーの銃撃・斬撃でライトスコープを寄せ付けない。だがスコープ1号は、自身の能力と指揮によってライトスコープ達と連携してホワイトカラーズを徐々にだが追い詰めていた。

 

 一方スコープ2号の方は、グリーンリキッド相手にやや苦戦を強いられていた。スコープやライトスコープはその性能上、グリーンリキッドの透明化が通用しない。しかしグリーンリキッドはスコープ達に対して機動力で勝っていた。カエル由来の脚力で素早く動き回る上に、垂直の壁面にも立てる重力を半ば無視した自由な動きにスコープ2号を始めとした隊員達は翻弄されていた。

 

 そして量産仕様のライトスコープのみで構成された部隊とダークスティンガーの戦いは、1人で棘による弾幕を張れるダークスティンガーにライトスコープが釘付けにされた状態だった。ライトスコープ達も盾持ちが前に出て味方の被害を減らしつつ数で圧し潰そうとするが、流石に幹部と言うだけあってちょっとやそっとの事では守りを崩せない。

 

 一進一退の様相を呈す倉庫街での戦い。その戦いを止めたのは、戦場に降り注ぐ銃弾だった。

 

「わわっ!? なによ!?」

「敵の増援か!?」

 

 今の銃撃、ヘテロ達には一発も当たらなかったがライトスコープの中には銃撃を喰らいダメージを受けた者が数名いた。何より今のS.B.C.T.には増援を出せるほどの余裕はない。つまり、この銃撃は敵側の増援によるものと言う事だ。

 

 この機に乗じて体勢を立て直そうと引き下がるヘテロ達を見ながら、ルーナとスコープ1号はどれ程の増援が来るのかと警戒した。この状況だと、ヴェロキラプトルファッジでも来られると厄介だ。

 

 だが彼女達の警戒に反して、姿を現したのはたった1人だった。

 

「あれは……」

「傘木 雄成ッ!?」

 

 現れたのは雄成であった。彼は片手でベクターリーダーを弄びながら辺りを見渡し、仁の姿が見当たらない事に落胆して肩を落とした。

 

「何だ、今日も門守 仁君は来ていないのか。最近彼少し出不精になっていないかね?」

「お生憎様。今までが仁君頑張りっぱなしだったから、今は休ませてるのよ」

「ほほぉ…………つまり今、彼は休まなければならない状態にあると言う事だね?」

 

 ルーナの言葉の裏に隠れた仁の状態に、雄成は鋭く気付いた。まさか気付かれるとは思っていなかったので、ルーナは思わず言葉を詰まらせた。

 

「ッ!?」

「ふふふ、図星だね。これはますます彼に会わなければならないな。居るとすれば、大学か?」

 

 踵を返そうとする雄成の足元を、リプレッサーショットⅡの銃弾が抉った。

 

「行かせると思ってるの?」

「…………それもそうか。いや、そうだね。うん、今度は彼の方から来てもらおうか」

「は?」

 

 突然何を言い出すのかと、雄成の言葉にルーナが訝しんでいると彼は徐にドライバーを取り出した。

 

 それはカラーリングは異なるが、全体的な見た目はデイナドライバーと瓜二つだった。

 雄成が取り出したドライバーに、ルーナとスコープ1号は目を見開いた。

 

「それは――!?」

「デイナドライバーをコピーしたのか!」

 

「コピーとは心外だね。見た目こそ確かにデイナドライバーとそっくりだが、中身は別物と言っても過言ではない出来栄えだよ。ちょうどいい、ここで軽くテストしてみよう」

 

 雄成はそう言ってドライバー――青と白で彩られたデイナドライバーとは対照的に、黄色と黒で彩られたカラミティドライバー――を腰に装着し、ベクターカートリッジを2本取り出し起動状態にした。

 

 雄成が変身する……それもプレインジーンとは違う、新たな仮面ライダーに。

 それを察して身構えるルーナ達。本当は変身を妨害したいところだが、それはホワイトカラーズ達が許さないだろう。ルーナ達には見ている事しか出来ない。

 

〈SAMPLE1〉〈ORGANISM〉

 

 雄成はベクターカートリッジを起動させ、腰に装着したカラミティドライバーに装填する。その過程から何まで、仁の変身するデイナと全く同じだ。

 

〈SAMPLE1 + ORGANISM Experiment〉

 

 カラミティドライバーから響く音声。デイナドライバーと然して変わらない筈のそれが、ルーナにはとても禍々しいものに感じられた。

 

〈Biological disaster warning issued〉

 

 それはそう…………まるで、開けてはならない扉の鍵を開けてしまったかのような。そんな嫌な何かを感じずにはいられなかった。

 

 そんなルーナの不安を他所に、雄成は胸の前で腕を交差させて変身ポーズを取った。

 

「変……身」

〈Biohazard〉

 

 セントラルドグマから放たれたスーパーコイルが雄成の周りで渦巻き、彼の姿を覆い隠す。

 光る円柱の中に消える雄成。その様子は宛ら巨大なシリンダーの中に人間が漂うようだ。薄らと見える雄成のシルエットが、見る見るうちに変化していく。

 

 そして…………姿が固まった時、光のシリンダーの中に浮かぶ雄成がその手で内側から破った。

 

「う――!?」

 

 その瞬間、ルーナは激しい吐き気の様なものを感じた。この感覚は覚えがある。そう、雄成が変異したファッジと初めて相対した時。あの時に感じた、存在そのものを拒絶する様な嫌悪感だ。

 

 今この瞬間、悪意に塗れた科学者の手により、存在してはならない歪な生命が世に解き放たれる。

 

「誕生だ……これがカラミティ。仮面ライダーカラミティだ」

 

 黒いアンダースーツに黄色い単眼、両肩にはバイオハザードマークを模した装甲。黄色い胸部装甲にもバイオハザードマークが刻まれている。

 これこそが雄成の変身する、『仮面ライダーカラミティ・ハザード1』だった。

 

 カラミティは両腕のカッター『リスクブレード』を伸ばし、何時でも戦える体勢を取る。

 

「さぁ、折角こうしてお披露目したんだ。掛かってきたまえ。テストをさせてくれよ」

 

 両手を広げるカラミティ。言い知れぬ不気味さに足踏みするルーナに対し、スコープ達はその不気味さを払いのけた。

 

「怯むなぁ! 敵は所詮1人! 数で攻めろ!!」

 

 スコープ1号の号令に、ライトスコープ達が一斉にガンマカービンの銃口を向け引き金を引く。放たれる苛烈な弾幕、晒されればルーナとてただでは済まない。

 

 嘗て、ヘテロはその銃弾の嵐の中を物ともせずに進んだ。

 

 しかし、カラミティは違った。カラミティは目にも留まらぬ動きで銃弾の合間を縫うように動き、全ての銃弾を回避してしまったのだ。

 その速度、流石にバッファローヒューマンエレキテルのエレキテル・ブーストには劣るが、それでも目で追う事も出来ないほどの速度である事に変わりはない。そのあまりの早さに、ルーナ以外は一瞬カラミティの姿を見失ってしまった。

 

「なっ!?」

「速い!? 何処に!?」

「そこです!」

 

 カラミティの姿を見失ったスコープ達と違って、ルーナはその優れた動体視力で辛うじてカラミティの動きを捉えていた。カラミティはスコープ達の集団の中に紛れ込んでいたのだ。

 それを捉えていたルーナは、ライフルモードのリプレッサーショットⅡで狙い撃つ。

 

「おっと」

 

 放たれた銃弾をカラミティは軽く身を反らすだけで回避した。そこで漸く自分達の中に紛れ込んでいた事に気付いたライトスコープ達は、銃では同士討ちになるとガンマソードを抜きカラミティに斬りかかった。

 

「何時の間に!?」

「このぉっ!」

 

 近くに居たライトスコープが振り下ろすガンマソードを、カラミティは素早く回避しお返しに両腕のリスクブレードを振るった。

 

「ははぁっ!」

「ぐあっ!?」

「がぁっ?!」

 

 カラミティのリスクブレードに装甲を大きく切り裂かれ、ライトスコープ2人が早くも脱落する。

 

 リスクブレードの切れ味は凄まじく、オリジナルには劣るとは言え防御力には自信のあるライトスコープの装甲が容易く切り裂かれた。その事に隊員達は一瞬狼狽えるが、恐怖を跳ね除けた数人が立て続けに挑みかかった。

 

「おぉぉっ!」

 

 1人が突撃すると、それを合図に他のライトスコープ達も次々と攻撃を仕掛ける。中にはガンマカービンにガンマソードを取り付け、銃剣にして威力を増す者も居た。

 

 しかしカラミティは次々と攻撃してくるライトスコープを次々と切り伏せていった。速度だけではなく、パワーも優れているカラミティは腕を一振りしただけでライトスコープ数人を吹き飛ばし、脚を振り上げれば蹴り飛ばされたライトスコープは進路上にあったコンテナを複数突き破る。

 

 これは単純に数で押してどうにかなる相手ではない。被害が無駄に増えるだけなら自分が向かった方が良いと、スコープ1号は他の隊員を下がらせた。

 

「総員退け! コイツは俺達がやる。坂木、行くぞ!」

「了解!」

 

 量産型のライトスコープに比べ、スコープ1号・2号は防御力もパワーも優れている。流石に速度は負けるが、堪えてしまえば勝機はある。

 

 2人のスコープはボルテックスブレードで斬りかかった。だがカラミティは、2人の攻撃を避けもせず正面から受け止めた。それもリスクブレードではなく、それぞれを両手の指二本でだ。

 

「何ッ!?」

「くそっ!?」

 

 パワーでも圧倒的に劣っているスコープだが、負けじと力を籠め続ける。だが次の瞬間、カラミティが指先に力を籠めるとボルテックスブレードは中ほどから折れてしまった。

 

「そ、そんな――!?」

「くっ!? うぉぉぉぉっ!」

 

 唖然とするスコープ2号に対し、スコープ1号は怯まず拳で殴り掛かる。カラミティはそれを高速移動で再び回避すると、スコープ1号の背後に立ち両腕のリスクブレードでX字に切り裂いた。

 

「ぐあぁぁぁぁぁっ!?」

「権藤さん!?」

 

 背中を大きく切り裂かれ、その場に倒れ変身解除されるスコープ1号。スコープ2号が助けようと動くが、それより早くにカラミティが動いた。

 

〈ATP Full blast〉

 

 ドライバーのレセプタースロットルを引き、必殺技を発動。エネルギーが右足に集束させ、必殺の蹴り技『デッドエンドクラッシュ』を迫るスコープ2号に叩き込んだ。

 

「ハァッ!」

「がぁぁぁぁぁぁぁっ?!」

 

 蹴り飛ばされたスコープ2号は、遠く離れたガントリークレーンに激突するとその場で爆発四散。貨物運搬用のクレーンをへし折りながらその残骸を海へと降り注がせた。

 

「ふむ……スコープ程度ではこれが限界か。では君はどうかな?」

「!?」

 

 矛先が自分に向いた事に一瞬体を震わせるルーナだったが、ここで逃げては仁に何も知らせなかった意味がない。内から湧き上がる恐怖を抑え込み、ルーナはカラミティに銃剣で斬りかかった。

 

「はぁぁぁっ!」

「ふっ……」

 

 ルーナが迫ると、カラミティはまたも高速移動で彼女の目前から掻き消えた。だがルーナは辛うじてカラミティの動きを捉える事が出来る。一瞬素早い動きに惑わされたが、カラミティが背後に迫っている事にすぐに気付いたルーナはそちらを見もせずに銃口を向け引き金を引いた。

 

「くっ!」

「ほぉ?」

 

 まさか姿を捉えられると思ってはいなかったのか、カラミティは胸部装甲に一発貰ってしまった。しかし所詮は一発、大した痛手にはならない。着弾箇所を手で軽く払うと、高速移動で接近しリスクブレードを振るった。

 

 ルーナはそれを両手のリプレッサーショットⅡで受け止めるが、その瞬間カラミティの足が動き無防備なルーナの腹を蹴り飛ばす。

 

「う゛っ?!」

 

 腹を強かに蹴り飛ばされ、ルーナの動きが大きく止まる。そこにカラミティのリスクブレードの斬撃が襲い掛かり、胸部を大きく切り裂かれてしまった。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ?!」

 

 その瞬間、切り裂かれた箇所を中心に必然に尽くしがたい苦痛がルーナの全身を駆け抜けた。まるで体がバラバラになったかのような衝撃。苦痛はただ長引くだけでなく、時間が経つごとに強くなっていく。

 

「あぁ、あぁぁぁぁぁ!? うあぁぁぁぁぁぁ、ああああぁぁぁぁぁっ?!」

 

 明らかに尋常ではない様子に、しかしカラミティは満足そうに頷いて見せた。

 

「ふむ。悪くない性能だ。遺伝子破壊の効果はしっかりと出ている様だね」

「い、遺伝子、破壊――――?」

「その通り。このリスクブレードで切り裂かれた生物の細胞は遺伝子そのものを破壊される。スコープでは分からなかったが、デイナドライバーで変身するライダーに対しては効果覿面のようだね」

 

 一見すると鎧の様に見えるデイナやルーナの装甲だが、その正体は生体装甲とも言えるもの。早い話が皮膚や甲殻の延長線にある。つまり、そこにも遺伝子が存在している。

 カラミティのリスクブレードは、その遺伝子そのものを破壊しているのだ。それはつまり、ルーナの装甲を破壊しているも同然。

 今ルーナの体を苛む苦痛は、装甲を維持する遺伝子が破壊されての物であった。

 

 未だ苦痛で苦しみのたうち回るルーナを踏んで押え付け、カラミティは更に実験ともう一撃リスクブレードで傷をつけた。今度は足の装甲の一部を、刃先で引っかく様にゆっくりと切った。

 

「うぅぅぅぅ、あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!? いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ?!」

 

 体を細胞から破壊される悍ましい痛みに、ルーナは戦意を折られ恐怖と苦痛の悲鳴を上げる事しか出来ない。

 

 倉庫街に響くルーナの悲痛な叫び。それを止めさせようとしてではないが、カラミティは彼女の首を掴んで持ち上げた。首を掴まれた事で悲鳴が強制的に止められる。

 

「うぐ、あぁ――――!?」

「さて、それでは呼んでもらおうか? 門守 仁君を――――」

 

「その必要は無いよ」

 

 突如倉庫街に仁の声が響く。仁の声が聞こえた瞬間、カラミティはルーナの首から手を離し声のした方を弾かれるように見た。

 

 果たしてそこには、まだ本調子とは言い難い様子の仁が佇んでいた。

 

「じ、仁、くん――!?」

「おぉ! 待っていたよ、門守 仁君!」

 

 仁はカラミティの声には答えず、未だ苦痛で苦しむルーナと倒れたS.B.C.T.の隊員達の姿を見渡す。

 一通り見渡した仁は、何かを堪えるように目を瞑ると次の瞬間、目を開くと同時にデイナドライバーを腰に装着した。

 

 そして取り出す2個のベクターカートリッジ。だがそれは、現時点で最強の力を持つ恐竜ベクターカートリッジではなかった。

 

〈BUFFALO + HUMAN Evolution〉

 

「は? 何で今更……」

 

 その光景に首を傾げたのはヘテロだった。誰よりもデイナとの戦闘経験のある彼女は、デイナのスペックも大体把握している。その彼女に言わせれば、バッファローヒューマンフォームは今更感の拭えない形態であった。

 

 だが次の瞬間、起こった出来事は誰もが驚愕せずにはいられなかった。

 

「……変身」

〈Congrats! Birth of a new life, MINOTAUR. Open the door〉

 

 変身が完了した時、そこに居たのはバッファローヒューマンフォームのデイナではなかった。

 装甲はより分厚くなり、頭の角も大きくなっている。そして何よりも、全身に血管の様に金色のラインが走っているのが目を引いた。

 

 それは今までのデイナ・バッファローヒューマンフォームに非ず。ここに居るのは、進化した仁の影響を受けて顕現した新たな力。

 

 その名も――――デイナ・ミノタウロスライフ。カラミティと同様、世界には存在しない筈の新たな生命が創造された瞬間だった。




と言う訳で第49話でした。

遂に雄成がライダーに変身しました。ただし今回はまだ序の口、まだまだ完全に力を付けてはいません。

それに合わせる形でデイナも新たな力を身に着けました。
ここで漸くバラしますが、これまでの変身でエヴォリューションになる組み合わせと言うのは、「その組み合わせで神話生物を想像させる」組み合わせという法則がありました。バッファローと人間でミノタウロス、鷹と獅子でグリフォンだったり。

あ、一応言っておきますがこれがデイナの最終形態ではありませんので。

執筆の糧となりますので、感想その他よろしくお願いします!

次回の更新もお楽しみに!それでは。
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