仮面ライダーデイナ   作:黒井福

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どうも、黒井です。

今回は傘木社本社ビルでの戦いの決戦になります。この小説ももうすぐ終わりが近付いてまいりました。


第62話:終わりと始まり

 時は少し遡り、デイナとヘテロを先に向かわせる為に分身カラミティと戦うS.B.C.T.。

 

 寸分違わぬ能力を持つ分身体のカラミティはやはり脅威であり、彼らは苦戦を余儀なくされていた。

 

「ぐぅっ!? く、そ――――!?」

 

 ハザード3のカラミティの殴打をスコープ1号が盾で防ぐが、自力が違い過ぎて防いでも吹き飛ばされる。衝撃が腕に伝わり、痺れる腕を押さえずにはいられなかった。

 戦いながらスコープ1号はチラリとハザード2のカラミティと戦う部下達の事を見る。あちらは数で勝ってはいるものの、やはり苦戦しているのが見て取れた。カラミティが振り回すストールによりライトスコープが数人薙ぎ払われている。

 

「チクショウ……」

 

 先行したデイナ達の事も心配なのに、旗色が悪い事にスコープ1号は思わず悪態を口にした。

 それが隙になった訳では無いだろうが、液状化したカラミティがスコープ1号の体を包み込んだ。

 

「しま、くぅっ!?」

 

 全身を液状化したカラミティで包まれはしたが、スコープ1号はデイナ達と違い生体装甲ではないので消化吸収される事はない。だが消化できないならばと、カラミティはスコープ1号を締め付け始めた。

 

「ぐ、ぐぉぁ……こ、のぉ――!?」

 

 抵抗しようにも液状化しているカラミティは引き剥がせない。このままでは絞め殺されてしまう。

 

 どうすべきかとスコープ1号が辺りを見渡していると、ガラス越しに見える近くの研究室の中に何かのボンベがあるのが見えた。

 それを見てスコープ1号はカラミティに体を締め付けられながら、その部屋に飛び込むとボンベに近付きそれに向かって発砲した。

 

 銃撃を喰らったボンベは中に可燃性のガスでも入っていたのか、派手に爆発してスコープ1号とカラミティを纏めて吹き飛ばした。

 

「ぐぉぉぉぉっ?!」

「ッ?!」

 

 爆発の衝撃は予想以上で、研究室は吹き飛び中の物が扉や窓ガラスを突き破り廊下に飛び出す。その中にはスコープ1号と、爆発の衝撃で引き剥がされたカラミティも居た。

 何とかカラミティを引き剥がす事は出来たが、必要以上のダメージも負ってしまった。まだ戦えはするが、このままではじり貧である。

 

 どうしたものか……。

 

『隊長、聞こえますか?』

「北村か? 今何処だ?」

『傘木社内のセキュリティールームです。白上教授達も一緒で、きゃっ!?』

「どうした!?」

 

 傘木社に到着後、茜は峰や白上教授と共に戦闘の陰に隠れながらセキュリティールームに潜り込んでいた。そこでなら傘木社のビルの地図などを見ながら情報で援護できる。

 しかし傘木社側もそれを黙って見過ごすような事は無く、セキュリティールームには外からやって来た保安警察の隊員が殺到していた。砂糖に群がるアリの様にヴェロキラプトルファッジ達がセキュリティールームに入ろうとしている。

 

 それを地上に残ったS.B.C.T.の隊員と、彼らから装備を借りた峰が押さえていた。セキュリティールームの壁一枚隔てた外では激しい銃撃戦が行われており、爆弾でも使われているのか時折激しい爆発が部屋を揺らす。

 

『宮野さん、大丈夫ですか!?』

『こっちは気にしないで、そっちは支援に集中してください! 瀬高君、情報はまだ集まらないの!?』

『今アクセスしてる真っ最中だよ! くそ、流石に守りが堅いな』

 

 どうやらあっちはあっちで大変なようだ。そんな中で、支援の状況が整った茜が現状打破の為スコープ1号を支援する。

 

『隊長、そのカラミティ何とかなるかもしれません』

「本当か!」

『5番のキープレートに新装備が登録されています。それを使えば、液状化できる相手だろうが生物であるなら倒せる筈です。ただ……』

「ただ、何だ?」

『この装備は使用する際にエネルギーのチャージが必要になります。しかしチャージしている間は実質無防備になり……』

 

 つまり使うまでの間にカラミティにはじっとしていてもらわなければならないと言う事か。現状、碌にダメージも与えられていない相手を黙らせる事は非常に難しいと言わざるを得ない。

 が、スコープ1号はこの時ある事を閃いた。

 

「それなら何とかなるかもしれない。北村、この近くに冷凍保存する為の装置が置かれた部屋はないか?」

『冷凍保存?』

「そうだ」

『それならここがいいかもしれません。サンプル保存室と言うのがここに』

 

 スコープ1号が目的とする物に気付いた白上教授が、茜の隣で地下研究所のマップを見て目指すべき場所を指差した。白上教授に教えられた場所を、茜がスコープ1号に教え誘導する。

 

 通信に従いスコープ1号は廊下を走った。その際カラミティには、適度に銃撃して牽制するのを忘れない。あたかも逃げているように見せる為だ。

 

 目的のサンプル保存室は直ぐに見つかった。ドアの上に取り付けられたプレートにハッキリと書かれていたのだ。

 

 サンプル保存室に飛び込んだカラミティは部屋の中からドアに向けてライフルの銃口を向け、カラミティが入ってくるのを待つ。だが十分な時間が経っている筈なのに、カラミティは全く部屋に入ってくる気配がない。

 

 まさかスコープ1号を一旦後回しにし、部下達の方へ向かったのではないかと不安になる。だが次の瞬間、部屋の通気口が外れるとそこから液状化したカラミティが流れ落ちてきた。通風ダクトの中を通ってスコープ1号の不意を突こうとしたのだ。

 

 そっちから来るとは思っていなかったので思わずギョッとするスコープ1号だったが、”そこ”が何処だかを見ると今度は逆に仮面の奥で笑みを浮かべた。

 

「よく来たな! これでも喰らえ!」

 

 スコープ1号はまだ液状化しているカラミティのすぐ傍にあるタンクに向けて発砲した。タンクにはあっと言う間に穴が空き、中の液体が噴き出し徐々に形を戻しつつあったカラミティに降り掛かる。

 液体が触れた瞬間、液状化していたカラミティの体は見る見るうちに凍り付いていった。

 

「!?!?」

 

 カラミティはスコープ1号が破壊したタンクを見上げた。それはサンプルを瞬時に冷凍保存する為に使用する液体窒素だったのだ。空気に触れれば温度差で即座に気化する液体窒素だが、量が多ければ気化せず液体のまま対象に掛かり相手を冷やす。-196℃と言う極低温の液体窒素が、カラミティの体をあっと言う間に固めていった。

 カラミティが如何に強くとも、所詮は生物。極低温と言う生物にとっての活動限界を超えた低温には耐えられない。

 

 それでもカラミティの細胞は生存の為に自身の活動を休止させ強制的に休眠状態となった。温度が上がれば再び活動できるようにだ。

 もちろんそれを許すスコープ1号ではない。

 

「この時を待ってた」

〈Flame・Blaster Starting〉

 

 動きを止めたカラミティにトドメを刺すべく、スコープ1号は新兵器を精製する。

 

 現れたのは大型の火炎放射器、その名も『フレイムブラスター』。スコープ1号の上半身を包むように装着されたそれには口径の大きな砲口が付いていて、背中からは体を固定する為のアンカーが伸びている。スコープ1号はそれの砲口を凍り付いて動けないカラミティに向け、躊躇なく引き金を引いた。どうせあれはハザード4の能力で作り出された人形のようなものだ。容赦などする必要はない。

 

「喰らえッ!!」

 

 引き金が引かれると、砲口から熱線と見間違うほどの劫火が放たれた。火炎の温度は生物が耐えられる限界を遥かに超えた1000℃。劫火はカラミティの凍った体を忽ち溶かし、そして焼き払っていった。

 尋常ではない高温がカラミティの細胞を片っ端から焼き払っていく。どんな生物であっても、1000℃という高温には耐えられない。しかもこの時、カラミティは体の一部が液状化して表面積が広がっており熱の影響を受けやすくなっている。

 

 体の端から細胞が次々と焼き尽くされ、自慢の再生能力も意味を成さない。

 

 それでも耐えたカラミティだが、数分ほど火炎を放射され続けカラミティは細胞の一片まで残さず焼き払われた。

 

 カラミティが完全に焼き払われたのを見て、スコープ1号は引き金から指を離した。劫火が消えた先には、カラミティだけでなく室内の全てが焼かれ黒焦げとなった研究室の無残な姿が残されていた。

 その有様に、スコープ1号は自分でやって自分で圧倒される。

 

「お、おぉ……こいつは凄いな」

 

 想像以上の威力に唖然としていると、砲身から煙と火花が上がり始める。慌てて装備をパージすると、新装備のフレイムブラスターは自身の熱に耐えきれず破損してしまった。

 

「おいおい、一発撃っただけでお釈迦になったぞ?」

『何分テストも十分に出来ていない装備でしたから。まぁそれでもあのカラミティを倒せただけ上等じゃないですか』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 通信機の向こうで、スコープ1号がどこか釈然としない様子の呻き声をあげている。まぁ茜にも、彼の言いたいことは分かる。ぶっつけ本番で新兵器を使わせた挙句、それが一発で壊れたのだ。もしかしたら不発で終わったり、引き金を引いた瞬間暴発して吹き飛ぶなんて事態を想像するのも無理はない。

 

「それより隊長。小早川さん達がまだ苦戦してるみたいです。早く応援に行ってあげてください」

『分かった分かった。そっちも任せたぞ』

 

 そう言ってスコープ1号との通信が切れる。茜は軽く息を吐くと、隣で作業している拓郎と白上教授を見た。

 

「そちらは大丈夫そうですか?」

「もうちょっと……もうちょっとでコンピューターロックを解除できる」

「こちらは何時でも行けるよ」

 

 白神教授たちが今やろうとしていることは、傘木社のシステムに侵入して秘匿されている極秘事項を公開する事だ。如何に傘木社が様々な方面に圧力を掛けられると言っても、所詮は企業。悪事が白日の下に晒され、世間から糾弾されれば株価の暴落などで社会的に潰す事が出来る。そうなれば、後は真っ向勝負で勝ち目はあった。

 

 もちろんそれを傘木社が許すわけも無く、先程から引っ切り無しに保安警察が襲撃を掛けてきていた。彼らも白上教授たちの狙いに気付いたのだろう。拓郎によるハッキングを阻止しようとしている。

 

 それを守るのがこの場に残ったS.B.C.T.と峰の役目だ。迫りくるヴェロキラプトルファッジの軍団を、あまり人数が多いとは言えない彼女達は死に物狂いで守っていた。

 

「こん、の!!」

 

 峰はS.B.C.T.から借り受けた、予備のガンマカービンとガンマソードでヴェロキラプトルファッジを迎え撃った。物陰に隠れながら正確に狙い、接近を許した場合は得意の足技で捻じ伏せ最後にはガンマソードで仕留める。蹴り倒して踏み付けたヴェロキラプトルファッジに、峰は逆手に持ったガンマソードを突き立てて倒した。

 

「はぁ、はぁ……次は! 次はどいつが相手かしら!!」

 

 本職であるはずのS.B.C.T.顔負けの暴れっぷりに、敵だけでなく味方も圧倒されずにはいられなかった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 一方、スコープ2号率いるS.B.C.T.のライトスコープ達は、ハザード2のカラミティを相手にかなりの苦戦を強いられていた。ハザード2のカラミティはストールを巧みに使い、ライトスコープ達の一斉射撃を防ぎ薙ぎ払いで複数人を同時に吹き飛ばす。

 

「ぐあぁぁぁぁっ!?」

「くそっ! あのストールが厄介だ……」

 

 吹き飛ばされる仲間のライトスコープに、スコープ2号は思わず歯噛みする。敵ながらあのパワーは天晴だ。何せあのストール、巻き付ければライトスコープなら容赦なく全身の骨をバキバキにへし折る事すらできるのだから。

 

 だが……オリジナルのスコープである2号なら締め付けられても、耐える事は出来る。パワー自慢のスコープならば。

 

「――だったら!」

〈Vortex・Blade Starting〉

 

 意を決して前に出るスコープ2号。他の隊員たちの制止も聞かず飛び出したスコープ2号を、カラミティは容赦なくストールで絡め取った。

 

 スコープ2号の全身にカラミティのストールが巻き付き全身を締め付ける。軋みを上げる全身に苦悶の声を上げつつ、スコープ2号は出力を最大にして堪えると床にボルテックスブレードを突き刺した。

 

「今だ、やれっ!!」

 

 これでカラミティは最大の武器であるストールを封じられると同時にその場に固定された。少なくとも活動範囲は限られる。楽に倒せるからとストールで絞殺そうとしたのが仇となったのだ。

 

 慌ててストールを外そうとするが、スコープ2号はストールを腕にも巻き付けて掴んでいるので外したくても外せない。

 動きを止められたカラミティに、ライトスコープ達の銃撃が突き刺さる。

 

 無数の銃弾がカラミティの装甲やアンダースーツに突き刺さるが、やはりカラミティは頑丈でしかも回復能力もあるので傷付けた先から回復されるので微々たるダメージしか与えられない。

 それでも数で圧倒するライトスコープ。序盤にストールで吹き飛ばされた者も攻撃に参加し、四方八方からの銃撃に次第にカラミティの回復力が負け始める。いくら回復できると言っても無限ではない。回復にもエネルギーを使うので、度重なる回復が行われるとエネルギーが不足してきて回復が追い付かなくなるのだ。

 

 あと一歩で倒せるかもしれない……そんな希望が見えてきた時、銃撃が唐突に止んだ。弾切れだ。

 

 せっかくここまで追い詰めたのに、肝心なところで弾切れを起こしたことに部隊に動揺が走る。だがここで勢いを殺しては、これまでの奮闘が無駄になるとライトスコープ達はガンマソードを抜いて接近戦に切り替えようとした。

 

〈Recognition〉

「ハァァァァァッ!!」

 

 そこに、ハザード3のカラミティを倒し終えたスコープ1号が文字通り飛び込んできた。ボロボロになったカラミティにエンドスマッシュを放ち、蹴り飛ばして研究室の一つに叩き込む。その際にストールが千切れ、2号はその場に残された。

 

「ふぅ……」

「隊長!」

「おぅ、小早川。大丈夫か?」

「はい。隊長こそ」

「まぁな。しかしお前、なかなか無茶やったな?」

「他に方法がなくて……」

「誰の影響だ?」

「それは隊長です」

 

 軽口を叩き合う2人のスコープ。1号は2号の言葉に、彼を小突きながら笑った。

 

 その時、今し方1号のエンドスマッシュで蹴り飛ばされたカラミティがボロボロになりながらも研究室から出てきた。度重なるダメージに足取りは覚束ないが、それでもまだやる気はあるのか徐々に体を回復させながらスコープ達に向かってくる。

 

「小早川、やるぞ!」

「はい!」

〈〈Recognition〉〉

 

 迫るカラミティに向けて、スコープ1号と2号は同時にエンドスマッシュを発動。同時に放った必殺の飛び蹴りがボロボロのカラミティに炸裂した。

 

「「ハァァァァァッ!!」」

 

 2人のスコープによるエンドスマッシュを喰らったカラミティは遂にがダメージが限界を迎え、再び研究室に押し戻されるとそこで爆散。室内の機材も何もかもを巻き込んで吹き飛んだ。

 

 爆炎に包まれ吹き飛ぶ研究室を前に、スコープ2人は互いの勝利を称える様に拳をぶつけ合った。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 デイナとカラミティの戦いが始まった時、希美は亜矢と共にリリィとレックスの2人を連れてその場を離れていた。あのままあそこにいては巻き込まれてしまう。

 

 それでも亜矢は最初仁の戦いを見届けようとしたが、デイナの戦いの邪魔になると希美と真矢の2人に諭されまだ満足に動けないリリィ達を連れて廊下を進む。

 

 戦いの音が遠くになった頃を見計らい、2人は足を止め抱えていたリリィとレックスを床に下した。やはり無理矢理戦わされていた事は2人にとって大きな負担となっていたらしく、デイナの手で遺伝子的には安定させられたが体力は完全に戻っていないのか抱えられた状態でも慌ただしい移動は負担が大きかったようだ。

 リリィもレックスも、額に汗を浮かべ辛そうに息をしている。

 

「大丈夫ですか?」

「しっかり――」

 

 希美が亜矢と共に2人を気遣おうとした時、出し抜けに後ろから首を掴まれ持ち上げられた。

 

「あぐっ!? あぁっ!?」

「なっ!?」

 

 突然の事に亜矢は言葉を失った。何しろ希美の体が何もないのに宙に浮かび上がったのだ。

 

 何が起こったのかと状況を理解する前に、希美は乱暴に振り回されて壁に投げつけられた。

 

「がはっ!? ぐぅ……」

「ノゾミ!?」

「何が……」

 

 3人が壁に投げつけられた希美に注目していると、希美の目の前の空間が陽炎の様に揺らぎ次の瞬間には仮面ライダーサクリスが姿を現した。

 

「し、シトシン――!」

「逃げられると思ったか、負け犬? テメェらもだモルモット。全員檻の中にぶち込んでやるから覚悟しとけ」

「くっ!」

 

 新たに現れた脅威に亜矢がデイナドライバーを取り出して変身しようとするが、立ち上がった希美がそれを制止した。

 

「待って!」

「え?」

「こいつは私にやらせて。いい加減負け犬負け犬って、五月蠅くて仕方ないのよ」

〈Base HORSESHOE〉

 

 ブレイドライバーを腰に装着して立ちはだかる希美に対し、サクリスは小馬鹿にしたように鼻を鳴らす。

 

「はっ! 馬鹿か、お前? 廉価版とは言え、カラミティドライバーで変身してる俺の方がお前よりも強いんだぞ? それなのにお前1人で戦うとか正気か?」

「馬鹿はアンタよシトシン。自分が実験動物だって事にも気付けないとか、育ちの悪さが出過ぎなのよ」

〈HORSESHOE × CROCODILE × TURTLE Mixing Genetic information〉

 

 シトシンも元はただの傘木社の社員だった。ただ彼は希美とは違い、素行は悪く評価は最低で何時リストラされてもおかしくない存在であった。そんな存在だったので上司や同僚からは出来損ないと見下される事も多く、日々ストレスを抱えて生きていた。そんな彼も、希美同様に健康診断に見せかけた遺伝子検査で適正を見出され研究サンプルとされた経緯を持つ。

 

 希美の場合は望まぬ実験により得た力と立場が性格を豹変させてしまったが、彼の場合はこれが素であり秘められていた凶暴性が解き放たれたのがシトシンと言う男であった。

 

「お前……どうやら本気で死にたいらしいな?」

「やれるもんならやってみなさいよ。私は死なないし、負けないけどね。変身!」

〈Create, Capture, Out of Control. Brake the chain〉

 

 ヘテロに変身した希美は、サクリスに掴み掛るとその場から引き離した。ここに居てはリリィとレックスを巻き込む。

 

 近くの研究室に飛び込む形で戦いの場を移すと、ヘテロは一旦サクリスから距離を取りテイルバスターを抜いた。対してサクリスもベクターリーダーを取り出すと、左手にホルスターを兼ねた短剣を持ち銃口をヘテロに向ける。

 

「ははぁっ!」

 

 サクリスは機材やら何やらが吹き飛ぶのも構わず銃を乱射した。ヘテロも対抗してテイルバスターの引き金を引く。連射力に優れるサクリスの銃撃が何発もヘテロに命中するが、防御力に優れるヘテロにはあまり効果がない。対してヘテロの銃弾は炸裂弾。当たれば爆発で相手を吹き飛ばす代物だ。前の戦いではリリィ達を巻き込む危険から使えなかったが、ここでなら気にする必要はない。

 

 放たれた炸裂弾が性格にサクリスに命中し、生じた爆発がサクリスを部屋の外に吹き飛ばした。

 

「がぁぁぁぁっ?!」

「あらどうしたの、随分と無様な声上げて? アンタの方が強いんじゃないの? もっと根性見せなさいよ」

 

 そのまま部屋の外で今度は剣戟を繰り出す2人だが、ここでもサクリスはヘテロ相手に押されっぱなしだった。ヘテロの攻撃を防げば防御は崩されるし、逆に攻撃を仕掛ければその一撃は簡単に受け止められる。

 

「な、何でだ!? この間は俺らが――!?」

「そりゃアデニンとグアニンも一緒だったからでしょ。アンタ1人なんてこんなもんよ」

 

 実際問題、ヘテロとサクリスを比較した場合どちらが強いかと言われると数字の上では確かにサクリスの方に軍配が上がる。それにヘテロは先程のカラミティとファッジとの戦闘で消耗しているので、普通に考えれば今の状況は明らかにおかしい。

 

 何故ヘテロはサクリスを圧倒出来ているのか?

 その理由を端的に述べれば、気合の違いとしか言いようがないだろう。今のヘテロには後に退けない理由がある。守りたい者が居る。それが彼女の精神を極限まで研ぎ澄ませ、遊び感覚で戦っているサクリスを上回る戦闘力を見せているのだ。

 

「フン!」

「ごはぁっ?!」

 

 剣戟の最中、一瞬の隙を突かれて蹴り飛ばされるサクリス。ヘテロはテイルバスターを肩に担ぎ、悠々とした足取りでサクリスの前に立った。

 

 目の前に立つヘテロを見上げるサクリス、この構図だけでどちらが上なのかは火を見るよりも明らかだろう。自分を見下ろしてくるヘテロを、サクリスが仮面の奥から忌々し気に睨み付ける。

 

「テメェ、何見下してやがんだ!? 負け犬のくせに!?」

「私が負け犬なら、アンタは飼い犬よ。自分が利用されてる事にも気付かず、立場に胡坐をかいてるだけのアンタにはね」

「うるせぇ!?」

 

 ヘテロの言葉に、サクリスは叫びながら姿を消した。周囲の色に溶け込む擬態能力により、ヘテロの目に見えないようにしたのだ。

 

「ははっ! 最初からこうすりゃ良かったんだ。もうお前に俺を見つける事は出来ねぇ!」

 

 勝ち誇るサクリスの声がヘテロの周りで響く。だがヘテロは全く動揺する素振りを見せず、テイルバスターを肩に担いだままリラックスして佇んでいた。

 

 それをサクリスはハッタリと断じ、周囲を歩き回りどこから攻撃するかを吟味し最終的に背後からの攻撃を決め短剣を背後から彼女の背に突き立てようと近付いた。

 

 瞬間、振り返ったヘテロの斬撃が正確にサクリスを切り裂いた。

 

「ぎゃぁぁっ?! な、何で!? どうして俺の居場所が分かった!? 音も立ててなかったし匂い対策もしてた筈だ!?」

「今更だけど、勉強の大切さを知ったわ。学ぶって何歳になっても大切よね」

 

 ヘテロ――希美はラボに身を寄せていた時、仁に自分が使っているベクターカートリッジの生物の能力などを教えてもらっていた。

 

 何度も戦ったから分かる事だが、仁はベクターカートリッジにインプットされている遺伝子の生物の特性を活かして戦っている。それと同じことが出来ないかと、希美は改めて彼に知識を求めたのだ。

 

 その結果分かったことの一つとして、ワニの顎には多感覚器官がありこれで獲物を探すことが出来るという事だった。本来この器官は水中で効果を発揮する器官なので陸上では意味を成さないのだが、超万能細胞とドライバーでの変身による効果もあってかヘテロは自分の周囲の空気の微細な動きを感じ取れるようになっていた。

 流石に他の事に意識を奪われている時には感知能力は使えないが、相手がこちらを品定めする様に攻撃まで時間をかけてくれたのならば姿の見えない相手を見つけ出すことも可能だった。

 

 サクリスの性格が、ヘテロに彼を見つけ出す手助けをしたのだ。

 

「そんじゃ、覚悟は良いかしら?」

〈HORSESHOE × TURTLE × CROCODILE Mixing Burst〉

「んの、やろう――!?」

〈ATP Full blast〉

 

 動きの鈍ったサクリスに、ヘテロがインクリュード・シュートを放とうとする。サクリスもそれに対抗してデッドエンドアタックを放とうとレセプタースロットルを引いた。

 

「ハァァァァァッ!!」

「おぉぉぉらぁぁぁぁぁ!」

 

 放たれる連続キックと、脚力を活かした跳躍と籠手の鋭い牙による噛み付きがぶつかり合う。両者の攻撃は空中で拮抗するが、連続で攻撃を放つヘテロの必殺技がサクリスの籠手を砕いた。それだけに留まらず、腕を弾き、最初に胸板に届いた一発で体勢を崩し、防御も何もできないサクリスを何発もの蹴りが襲った。

 

「ぐぉっ!? あ、が?! ぎ、あぁぁぁぁぁぁぁっ?!」

 

 度重なる連続キックに押し戻されるサクリス。最後の一発で蹴り飛ばされ床に叩き付けられたサクリスは、そこで限界を迎え爆発と同時に変身が解除された。

 

 強制的に元の姿に戻されたシトシンの体内で、変身が限界を迎えたことを感知した隠蔽装置が作動し彼の体が燃え始める。

 

「ごあぁぁぁぁぁっ!?」

「…………」

 

 断末魔の叫びを上げながら、体を徐々に燃え上がらせていくシトシンの姿をヘテロは黙ってみていた。雄成に身も心も売り渡した時点でこうなる可能性は何時でもあったのだ。何よりあの男は、他の幹部に比べて頭が悪すぎた。ただ適正だけで生き残れてきたような男だ。

 

 ただヘテロ――希美には最早、他人が苦しむ姿を見て楽しむような感性はない。なので、これ以上苦しむシトシンの姿を見ていられなくなり思わず顔を逸らし、遅れてせめて介錯してやろうとテイルバスターの銃口を向けた。

 

 だが彼女が引き金を引くよりも前に、突き立てられた刃がシトシンの体を突いた。

 

「あがっ!?」

「ッ!? アンタ――!!」

 

 シトシンの体を突いたのは仮面ライダーステイクであった。ステイクはベクターリーダーのホルスター剣でシトシンの体の一部を突いていた。

 体を剣で突かれて苦悶の声を上げたシトシンだったが、直後に体の燃焼が収まった。それを見てヘテロは彼が何をしたのか直ぐに気付く。

 

「アンタ、シトシンの隠蔽装置をッ!」

「これ以上幹部を減らされる訳にはいかないからな。あまりやりたくはないが、この際仕方がない」

 

 ステイクの言葉にシトシンは何も言い返さない。度重なるダメージと激痛に耐えきれず意識を失ったらしい。ぐったりとしたシトシンを、ステイクは肩に担いでその場を離れる。

 

 もちろんそれを見逃すヘテロではなく、慌てて彼の後を追うとした。

 

「ま、待ちなさい!」

「お前はこいつらの相手でもしていろ」

 

 テイルバスターの銃口を向けて引き留めようとするヘテロに対し、ステイクが指を鳴らすと近くの壁を突き破って数体のファッジが姿を現し襲い掛かって来た。ヘテロはそちらへの対応に追われ、ステイク達を負う事が出来ない。

 

「くそっ!?」

 

 出てきたのはどれも通常ファッジばかりだったので倒すこと自体は出来たが、全て倒し終わる頃にはステイクは姿を消しており後を追う事は出来なくなっていた。

 

 その事にヘテロは悔しそうに拳を握るが、とりあえずの危機は脱せたから良しと思い直すと変身を解いて亜矢達の所へと戻っていった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 そして、場所は戻りデイナとカラミティが戦っている場所では――――――

 

「ハッ」

「オォッ!」

 

 デイナの放った正拳突きをカラミティが弾き、返す刃で振り下ろされた手刀をデイナが受け止め無防備となったカラミティの腹を蹴り飛ばす。蹴り飛ばされたカラミティは、マントを翼の様にして空中で体勢を整えるとそのまま軟着陸し蹴られた部分を埃を落とすように手で払った。

 

「ふ、やるじゃないか。まさかここまで食いつかれるとは思っても見なかったよ」

「こっちのセリフだよ。まさかカラミティがそこまで進化してたなんてね」

「いいや、まだまだこれからさ。カラミティはまだまだ進化できる。そう……今のデイナの遺伝子を貰ってね!!」

 

 マントを翻してカラミティが迫ってくる。デイナはそれを拳を構え迎え撃つが、カラミティは彼と真っ向から勝負はしなかった。

 

 カラミティがマントを広げるとそこから赤い粘液が零れ落ちあっという間にハザード3のカラミティになりデイナに襲い掛かって来た。液状化して襲い掛かってくるカラミティに、しかしデイナは攻撃を返さない。されるがままに全身を液状化したカラミティ・ハザード3に覆いつくされた。

 赤い粘液と化したカラミティ・ハザード3で姿が見えなくなったデイナ。だが次の瞬間、内側からその粘液が燃え上がり朽ちていった。

 

「なんとッ!?」

 

 今デイナが行ったのは、全身の筋肉を振動させて熱を作り出す「シバリング」と言う能力で、これは生物が寒冷地で一時的に熱を生み出し体温を維持する為に行う生理現象の一種だ。

 本来この能力でできるのは体温の維持が精々で、周囲の物体を燃え上がらせるほどの力はない。

 

 だが今のデイナになら、触れたものを燃焼させるだけの熱量を生み出すほどのシバリングも不可能ではなかった。

 

 これは少し予想外だったのか、燃え尽きる自身の分身に言葉を失うカラミティ。だが今の分身は十分に役目を果たしてくれた。故に彼は止まらず、そのままデイナに攻撃を仕掛ける。

 

 そう、背中のマントでデイナを包むと言う、デイナドライバーで変身する仮面ライダーに対する特攻とも言える攻撃を。

 

「貰ったぞ! 進化したデイナの遺伝子を!!」

 

 即座にマントの内側で食作用が始まり、デイナの消化吸収が始まった。ハザード3の段階で進化したデイナの各形態がボロボロになるほどの威力だったのだ。ハザード4となった今、嘗てのデイナがこれを喰らえば骨まで溶かされて吸収されてしまいかねない。

 しかもこのマントはハザード3と違って熱にも強い。デイナのシバリングによる熱にもある程度は耐えられる。この時点でカラミティは自身の勝利を疑っていなかった。

 

 ところがその目論見は数秒ほどで崩れ去った。マントの中のデイナが全く消化できないのだ。

 

「なん、だと? 何故……ッ!? これは!?」

 

 最初何が起きているのか分からなかったが、曲がりなりにもカラミティ――雄成も優れた科学者。食作用を防いでいる手段には直ぐに検討がついた。

 

「莢膜か!?」

「正解」

 

 莢膜……それは一部の真性細菌が持つ、細胞壁の外側に位置する皮膜状の構造物の事だ。細菌が分泌したゲル状の粘質物が細胞表面にほぼ均一な厚さで層を成したもので、白血球による食作用などの免疫機構によって排除されることを回避する役割を持っている。

 

 デイナはこの戦いが始まってから必ず、カラミティはどこかで再び食作用による消化吸収を行ってくると読んで、戦いの最中自身の全身を莢膜で覆えるように分泌能力を作り出していたのだ。

 

 消化吸収が出来なくなった以上、カラミティのマントがデイナに出来る事はこのまま彼を絞め殺してしまう事だった。だがそれを許すほどデイナも愚かではない。

 莢膜によって消化吸収が防がれた事にカラミティが動揺したことで生じた僅かな隙に、デイナはマントの隙間から手を伸ばしカラミティを掴むと床に思いきり叩き付けた。

 

「がぁっ?!」

 

 叩き付けられた衝撃でマントのコントロールが切れ、解けたマントの中から無傷のデイナが姿を現す。カラミティは自分を床に押さえつけているデイナに対し、両足で蹴りを放ち引き剥がすと全身をバネの様に使って一気に立ち上がるとまたもマントを武器として使った。ただし今度はデイナを消化吸収する為ではなく、そのまま攻撃する為に。

 

「ハァッ!」

「っと」

 

 マントによる薙ぎ払いを、紙一重で回避するデイナ。デイナが避けた先には壁があったが、それがバターを熱したナイフで切るようにあっさりと切り裂かれた。ハザード1が持っていたリスクブレードの能力だ。本来であれば生体装甲に対して絶対の威力を誇るそれが、能力が強化されて無機物に対しても高い攻撃力を持つに至ったらしい。

 能力がシンプルであるが故に一番厄介な攻撃だが、それくらいならデイナにも再現できる。首筋から伸びたマフラー。これをカラミティのマント同様斬撃に特化した能力を持たせ、更に自在に動くように構成し直す。

 

 あっという間にマフラーを攻撃用に作り替えると、それでカラミティのマントに対抗する。マフラーとマントによる攻防。その合間に行われる拳と蹴りの応酬は、さながら異次元の戦いの様であった。

 

「フッ」

「チェアっ!」

「シッ」

「くぅっ!」

 

 誰の介入も許さないと言わんばかりの激しい攻防を繰り広げるデイナとカラミティだったが、徐々にその趨勢はデイナに傾いていく。デイナがカラミティの動きを学習し、先んじて相手の攻撃を潰す動きをし始めたのだ。

 

 薙ぎ払われるマントに合わせてマフラーがマントの先端を弾き、そのままの勢いで動いたマフラーがカラミティの拳を絡め取って引っ張るとデイナの掌底がカラミティの顎を狙う。させるものかとカラミティが自由な方の腕で防ごうとすると、掌底に隠されたもう片方の腕がカラミティの胸板を殴りぬいた。

 

「ハァッ」

「ごはぁっ?!」

 

 胸の装甲を殴り飛ばされ、カラミティが再び床に倒れる。

 

 最早どちらが上なのかはハッキリした。今のデイナはハザード4のカラミティよりも強い。とてもではないが、カラミティに勝ち目はなかった。何をしても対応され、そして上回られる。この進化の速度はカラミティの、雄成の予想を遥かに超えていたのだ。

 

「こ、これが、デイナ……」

「そうだよ。父さんが……あんたが邪魔者として切り捨てた男が残してくれた力だ」

 

「父さんが死んだ時、悲しんでる母さんを俺は見ているしかできなかった。ただ傍に居る事しかできなかった」

 

「俺と母さんから父さんを奪った、アンタを許すことはできない」

 

「でも同時に憎みきれてない自分がいる事にも俺は気付いてる。やっぱり心のどこかで俺は雄成さんに共感しちゃってるんだ」

 

「だから、この一発だ。この一発で俺はアンタとの諍いにケリをつける。立ちなよ、互いの本気の一撃での勝負だ」

 

 デイナからの挑戦状に、カラミティは無言で応える。

 

 痛みを訴える体に鞭打って立ち上がると、レセプタースロットルに手を掛けた。デイナもそれを待ち、レセプタースロットルを引く。

 

〈ATP Burst〉

〈ATP Full blast〉

 

 互いにレセプタースロットルを引き、構えを取ると次の瞬間同時に駆け出し相手に対して飛び蹴りを放った。

 

「ハァァァァァッ!」

「ダァァァァァッ!」

 

 デイナの必殺技『アポトーシスフィニッシュ』がカラミティのデッドエンドクラッシュがぶつかり合う。

 

 両者の必殺技がぶつかり合って起こった拮抗は一瞬。次の瞬間には勝負がついた。

 

「アァァッ!」

「うっ!?」

 

 勝者はデイナ。デイナの必殺技がカラミティの必殺技を打ち破り、蹴り飛ばされたカラミティは壁に埋まるレベルの威力で叩き付けられた。

 

「ぐぉあぁぁぁぁぁぁっ?! ぐ、こ、こんな……事が……」

 

 カラミティは自力で壁から抜け出したが、そこで限界を迎えたのか変身が解除されるとその場に前のめりで倒れた。

 デイナは倒れた雄成を前に、デイナは安堵したように一息つく。

 

 これで傘木社は終わりだ。雄成が何を考えていようがこれで世は少しは平和になる。

 

 だがその想いは早くも打ち砕かれた。雄成の傍にアデニンがやって来たのだ。

 

「プロフェッサー、ご無事ですか?」

「あぁ、アデニンか……どうかね、計画の方は?」

「ほぼ完了しております。後は……」

「そうかね……それでは、もうここには用はないな」

 

「逃がすと思ってるの?」

 

 雄成とアデニンが何を考えているのかは知らないが、このまま逃がして良い事などある筈がない。デイナは早々に2人を捕えようとするが、雄成が懐から取り出したリモコンのスイッチを押す方が早かった。

 

 雄成がリモコンのスイッチを押した瞬間、周囲から火の手が上がり地下研究所だけでなく傘木社本社ビル全体が次々と爆発を起こした。本社ビルを丸々吹き飛ばすつもりなのだ。

 

「これは……」

「ほら早く君の愛しい女性を連れて逃げないと、全員纏めてペシャンコになってしまうぞ?」

「本格的に崩れるまではまだ時間が掛かる。逃げるなら早くするんだな」

 

 ここで雄成とアデニンを捕まえてそのまま亜矢達と合流して逃げ出すことも考えはしたが、それだけの時間が残されているかと言われれば微妙なところだ。大体、あの雄成がそんなことが出来るほど時間的余裕を残してくれるとは思えない。あの2人がああ言うからには、本当に亜矢達を連れて逃げるだけの時間しか残されていないのだろう。

 

 悔しいが、ここはあの2人の口車に乗るしかない。デイナは一度あの2人を睨み付けると、踵を返して亜矢達と合流しそのまま相互達と共に本社ビルから脱出した。

 

 何とか脱出に成功した仁達は、そのまま離れた所から崩れ落ちる傘木社を見ていた。巨悪の根城である傘木社の崩壊。

 

 それは一連の騒動の幕切れを現すと同時に、最後の戦いの幕開けを現しているのだった。




という訳で第62話でした。

今回の一件で傘木社は全ての悪事が白日の下に晒されて社会的に崩壊する事となりますが、詳しくは次回にて。

本社ビルでの戦いはこれにて終わりですが、まだ戦いは続きます。本当の最終決戦はまだ残っています。

執筆の糧となりますので、感想その他よろしくお願いします!

次回の更新もお楽しみに!それでは。
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