仮面ライダーデイナ   作:黒井福

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どうも、黒井です。
新年あけましておめでとうございます!年明け最初の更新になります。

今回は次回作との繋ぎにもなる特別編となります。


特別編『Next game at sea』
第1話:時は流れて


 その日、世界に名立たる傘木社が崩壊した。

 

 人知れず行われていた悪事は暴かれ、多くの罪なき人々の犠牲で甘い汁を啜っていた者達は軒並み逮捕された。

 

 そして全ての責任者である社長の雄成は、仁こと仮面ライダーデイナとの戦いで命を落とした。

 

 纏める者が居なくなった会社は静かに瓦解していく。

 しかし全てが丸く収まったわけではない。

 

 日本での騒動が海外に伝わるまでは若干時間が掛かる。捜査の手ともなれば尚更だ。日本の傘木社の重役全員が逮捕されその事が海外に伝わる頃には、海外支社の重役は全員姿を消していた。

 

 尤も海外の警察も決して無能ばかりではない。逃げ出した重役の痕跡を辿り、いくらかは発見し逮捕する事が出来た。

 

 それでもやはり全てを逮捕することは叶わず、多くの重役や裏に関わっていた科学者なんかはそのまま雲隠れしてしまった。

 

 逃げた科学者の多くは忠誠心ではなく自分の知的好奇心を満たす為に傘木社に居たので、傘木社が崩壊してからは隠れながら新しい潜伏先で傘木社で得られた技術を基にした研究に明け暮れていた。

 

 だが…………科学者や重役の中には心から雄成に忠誠を誓っていた者もいた。

 彼らは捕まる前に逃げ出した後、只管待ち続けていた。

 

 そう……彼らから会社と雄成を奪った元凶である、仁に復讐する時を――――――

 

「ジョン、準備は終わった」

「門守 仁の行先が分かったぞ。やるなら今だ」

「よし……行くぞ。雄成社長の敵討ちだ」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 雄成との戦いが終わってから、早くも2年が経った。仁は院生となり、マサチューセッツ工科大学へと留学。亜矢はそんな仁を支えるべく共にアメリカへと渡った。

 この2年間、2人は戦いに巻き込まれることもなく、アメリカでの日々を平和に過ごしていた。

 

 そんな2人は現在、日本に向かう大型の客船の一室に居た。

 船の名前は『アルカディア・オブ・ザ・オーシャン』。一留学生は勿論、一般市民でもそう簡単には乗れない豪華客船だ。

 

 勿論この客船のチケットは仁が手に入れたものではない。これは白上教授から2人への”お祝い”の品だった。

 

 と言うのも――――

 

「……寝ちゃった?」

「はい。……2人ともぐっすりよ」

 

 今、2人が覗き込んでいるベッドの上には2人の赤ん坊が居る。

 言わずもがな、仁と亜矢の間に生まれた双子の赤ん坊だ。仁がアメリカに留学し研究に携わる傍ら、妊娠した亜矢が産んだのである。

 

 仁は安らかな寝息を立てる我が子達の頭を優しく撫でた。すると子供達は、眠っているにもかかわらず仁に撫でられると気持ち良さそうに身動ぎした。

 その愛らしい仕草に、亜矢だけでなく仁も頬を緩めずにはいられない。

 

「……正直、不安だったんだ」

「え?」

「俺が子供達をちゃんと愛せるのかって。自分で言うのもなんだけど、俺って変人じゃん? 他人と価値観違うから、子供達の事をちゃんと見れるのか不安だったんだけど……実際に生まれてくれたら、こんなに愛しく思えるなんて……」

「仁くん……」

 

 それはきっと、生物としての本能によるものだけではないだろう。種の保存の為の繁殖の結果生まれたと言う理由だけでなく、愛する女性との間に生まれてくれた愛の証のような自分の子供が、純粋に愛おしいだけの話なのだ。

 

 自分にこんなにも普通の人間らしい感性がある事に驚きつつも、仁はそれを教えてくれた2人の子供と、何よりも子供達を生んでくれた亜矢に感謝した。

 

「本当に、ありがとう。亜矢さん、真矢さん。この子達を生んでくれて……」

 

 仁が亜矢の事をぎゅっと抱きしめる。抱きしめられた亜矢は、仁の胸板に頬擦りする様に身を委ねた。

 

「仁くんが、私達を心から愛してくれたからですよ。お礼を言うならこっちだって……。……ふふっ、仁君もすっかりお父さんね」

「ん、そうだね。この子達のお父さんで……亜矢さんと真矢さんの旦那さんだ」

「【仁くん(君)……】」

 

 抱きしめた亜矢に仁がそっと顔を近付ける。彼が何をしようとしているかを察した亜矢は、頬を赤らめながらもそれを受け入れるように顔を上げ目を閉じた。

 

 2人の赤ん坊が安らかに眠る横で、仁と亜矢は静かに触れ合う程度のキスをして互いの温もりを感じ合う。

 

 その時、部屋の扉がノックされた。突然のノックに2人は弾かれるように顔を話して扉の方を見るが、同時に異音に眠りを妨げられたからか赤ん坊の片方が僅かにぐずり出す。

 

「ん、んん~……」

「あぁ、愛衣(めい)。よしよし、大丈夫よ大丈夫」

「……本当に雄司(ゆうじ)は神経太いなぁ。愛衣はすぐ起きたのに。……誰だろ?」

 

 亜矢がぐずり出した女の子の方の赤ん坊――愛衣を優しく抱き上げてあやす中、仁はもう1人の赤ん坊――男の子の雄司が全く起きる気配がない事に少し感心しながら、扉をノックしてきた相手に応待すべくそちらへ向かった。

 

「はい? あ……」

「やぁ、久し振りだね門守君」

 

 扉の向こうに居たのは白上教授だった。彼は今回、久し振りに2人と話がしたかった事もあってこの豪華客船の旅をプレゼントすると同時に自分も客船に乗客として乗り込んだのだ。

 

 実に2年振りに再会した恩師の姿に、仁は小さく笑みを浮かべる。が、すぐに何かに気付き時計を見た。

 

「あ、もう時間でした?」

 

 実は仁は、この船で白上教授と会う予定をしていたのだ。だが仁はそれをすっかり忘れ、亜矢と子供達と共に居る事に時間を使ってしまったのである。

 その事に気付いた仁は白上教授に申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「何、気にしないでくれ。こちらこそ悪かったね、家族の団欒を邪魔してしまったようで」

 

 頭を下げる仁に、白上教授は部屋の中を覗き込みながら答えた。視線の先ではぐずる愛衣を亜矢があやしている。落ち着いてきたのか、愛衣は泣き止みつつあった。

 もうすっかりお母さんな亜矢に、そんな彼女と娘を見つめる仁の目はお父さんだ。

 

 2人の様子に白上教授も見ていて微笑ましくなり思わず笑みを浮かべる。

 

「――――ふた、あぁ違った。亜矢君、少し門守君を借りても良いかね?」

「はい、大丈夫です」

「それじゃあ門守君。ちょっとそこらを歩こうじゃないか」

「はい」

 

 仁は白上教授と共に部屋を出て、船室エリアから歩いていく。

 この船は豪華客船と言うだけあって、乗客を満足させる施設が充実している。最上階のデッキにはプールがあるし、レストランは勿論スポーツジムやカジノもある。

 

 2人が向かう先にあるのはカジノだ。

 

 カジノエリアに向かう道中で、白上教授は仁に話し掛ける。

 

「いやはや、安心したよ。2人とも、アメリカで上手くやれているようで」

「えぇ、まぁ」

「それに、産まれた2人の子供も元気そうじゃないか」

「生まれたばかりの頃は色々大変でしたけどね。流石に子育てまでは父さんも教えてくれませんでしたから」

 

 実際妊娠時から苦労した。悪阻に始まり、定期的な陣痛で苦しむ亜矢に対し少しでも負担を少なくしてやるしか出来ないことに歯噛みし、出産後は2人の子供を亜矢と共に頭を捻りながら育てる。

 どちらも亜矢は勿論仁にとっても初めての事で、しかも自分がその必要に駆られるとは思っていなかった為事前学習もしていなかった。故に、仁は慌てて子育て――特に赤ん坊――に関する知識を掻き集め、頭に詰め込んだ。

 

 その甲斐もあって、今では仁も亜矢も雄司と愛衣の2人を問題なく育てられるようになっていた。

 

 仁と亜矢が四苦八苦しながらも子育てに精を出す様子を思い浮かべて笑みを零す。あの2人、特に仁がこんな人間的で穏やかな日常を送れている事が嬉しいのだ。

 

 だがその中にはどうしても目を逸らす訳にはいかない部分がある。気は進まないが、大事な事なので白上教授は仁にそれを訊ねた。

 

「ところで……あの子達は……」

 

 表情を見ただけで白上教授の言おうとしている事を察し、全てを言われる前に先に答えを口にした。

 

「えぇ。あの子達……雄司と愛衣の2人は間違いなく、俺と亜矢さんの子供ですよ」

 

 それは別に亜矢の不倫を疑っての言葉ではない。言葉通りだ。雄司と愛衣の2人は仁と亜矢……即ち、新人類2人の間に生まれた新人類の遺伝子を受け継いだある意味純粋な新人類である。

 後天的に遺伝子が変異した2人とは違う、最初から新人類として生まれた子供達なのだ。

 

 覆しようのない事実に、白上教授の表情が暗くなる。

 

「そう、か……。となると、あの子達はこれから先、苦労するだろうな。いや、あの子達だけでなく君達家族が、か」

 

 何かの拍子にその事が周囲に知れ渡れば、爪弾きに会う恐れもある。よしんばそうならなかったとしても、仁の子供達は愛する者と添い遂げる事が出来ない。

 何より、新人類の遺伝子を悪用しようとする科学者やそれを有する組織に狙われる恐れがある。

 

 そう、雲隠れした傘木社残党の様な…………

 

「大丈夫ですよ」

 

 だが仁はその白上教授の不安を一刀両断した。

 

「俺と亜矢さん、真矢さん……2人じゃなくて3人の子供が、弱い訳ありません。強い子に育ちます。それに何より、俺が守りますから」

 

 自信満々に告げる仁に、白上教授は一瞬呆気にとられそして次の瞬間笑みと共に息を吐いた。そうだった、彼はそういう男だった。仁は世の人が言う理不尽に平然と立ち向かう。2年前、アデニンが仁を勧誘した時も、彼は正面からそれを拒否しその際に言い放った。例え世界と戦う事になろうと今の世界を変える事無く亜矢を愛し守ると。

 その彼なら、子供達だって当然守る。

 

「そうか。……ならもう何も言わないよ。だが何かあった時は遠慮なく言うんだよ。私や瀬高君達、それに権藤さん達S.B.C.T.も君の味方だ。君たちは決して孤独じゃない。その事を忘れてはいけないよ」

「はい」

 

 仁は頬を緩め方から力を抜いた。自分達はこの世界にちゃんと居場所があると実感し安堵したのだ。

 

 そんな話をしていると、2人はカジノエリアに着いた。

 

 煌びやかなカジノエリアにはスロットなどを始めとした様々なカジノゲームに興じる人々の姿がある。豪華客船のゲームだが、ドレスコードはないので私服姿の客も多い。

 

 仁は勿論、白上教授も別にギャンブルに興味はないので特にゲームをする事は無く、カジノエリアをぶらぶらと歩きながら他の人がやっているゲームを何気なく眺める。

 

 そんな中で、一際客が集まっている場所があった。やっているのはどうやらルーレットらしいが、先程から妙に盛り上がっている。

 ちょっと気になったので2人は客が集まっているテーブルに近付き、どんなゲームが行われているのかを眺める。

 

 ゲームをしているのは1人の男性で、ディーラーを務めているのは女性だ。

 

 見ると女性は随分と特徴的な恰好をしていた。上は胸元が開き気味でノースリーブのYシャツとジャケット、下がタイツとタイトスカートと言う、ディーラーとしてはなかなかに個性的な女性だ。深い青色のポニーテールにした髪と同色の瞳が印象的だった。

 

 ちょうど今ゲームが始まったところらしく、ディーラーが回るルーレットにボールを放り込むところだ。テーブル上にはチップが賭けられていて、挑戦者の男性が祈るようにボールの動きを見ている。

 

 回るルーレットの上をボールが転がり、一つのポケットに落ちた。男性が賭けたのとは別のポケットだ。

 その瞬間周囲からは落胆の声が上がり、挑戦者の男性は悔しそうに唸り声を上げる。

 

 どうやら男性は負けが続いているらしく、手元のチップの枚数が少なく表情が険しい。

 

 ここで男性は勝負に出た。残り少ないチップの全てを一つの数字に賭けた。ストレートベットと言う奴だ。赤の30に賭けている。

 

 それを見て女性ディーラーは薄く笑みを浮かべ、ルーレットを回しボールを放り込んだ。

 

 瞬間、仁の右眉がピクリと動いた。

 

(ん――?)

 

 仁の感じた違和感を他所に、ボールはルーレット上を転がる。

 

 そしてボールが落ちた。落ちた場所は…………赤の30。男性がチップを全て賭けたのと同じ場所だ。

 その瞬間、周囲の見物人が沸いた。起死回生を狙ってオールインして大当たりしたのだ。このルーレットはゼロが二つあるアメリカンルーレット、ストレートベットの配当は36倍だ。男性のここまでの負けがどの程度かは分からないが、今ので大分巻き返せたはずである。

 

 当然男性はまさかの勝ちに両手の拳を握り頭上に突き上げた。その男性に女性ディーラーは笑顔を向け拍手している。

 

「……凄いな」

「うむ。あれが俗に言うジャックポットと言う奴か」

「いや、俺が驚いたのはあのディーラーの方です」

 

 常人では全く気付けない事だが、新人類に覚醒した仁の動体視力はある事に気付いていた。

 

「あのディーラー、投げるタイミングと投げる瞬間の僅かな指の動きでボールが入るポケットを操作してます」

「何?」

 

 よくディーラーはルーレットやボールの動きを操作していると言われるが、少なくとも正式なカジノでそれはあり得ない。ルーレットの回転はともかく、ボールの動き自体を操作するなど出来る訳がないからだ。

 

 だがあのディーラーは明らかにボールの動きだけを調整し、入るポケットを操作した。

 分からないのは何故そんな事をしたのかだ。あれで挑戦者を負けさせて賭け金を毟り取ろうとしているのであれば悪質なイカサマとして指摘する事もできるのだが、現実には挑戦者は勝っている。

 

 一体あのディーラーは何がしたかったのか?

 

「……もしかしてゲームを盛り上げる為?」

「そんなことするかね?」

「でもそうとしか考えられないですよ。見た限り先に投げた時は小細工なしでボール投げてましたけど、次に投げた時は明らかにボールの回転とタイミングを合わせてました」

 

 察するにあのディーラーは、挑戦者がひどく負け過ぎない程度にゲームを調整していたのだろう。あの男性、あのまま負けた場合負けを巻き返そうとさらに資金を消費する可能性があった。そんな勢いの様なものを感じる。

 

 本来であればイカサマでゲームを調整するなど許されることではないだろうが、男性の大負けを防ぐと同時にゲームが盛り上がるのであれば一石二鳥だ。少なくともディーラーはそう考えたのかもしれない。

 

 悪質でないのなら、態々指摘するのも野暮と言うものかもしれない。仁はこの事を黙っておくことに決め、テーブルから離れようとする。

 その際ディーラーと目が合った。ディーラーは仁と目が合うと、彼に軽くウィンクした。

 

 ディーラーからのウィンクに、仁は興味ないと言うように肩を竦めその場を離れた。

 

 いい加減そろそろ亜矢と子供達の顔が見たい。

 

「教授、そろそろ部屋に戻りませんか? 愛衣もそろそろ泣き止んでいるでしょうし」

「そうだね。私も君達の子供達をちゃんと見てみたい」

 

 2人は部屋に向かうべくカジノエリアから出て船室エリアへ向かった。

 

 その瞬間、轟音と共に船を振動が襲った。




という訳で特別編第1話でした。

仁と亜矢は子宝に恵まれ、双子の赤ん坊を授かりました。因みに養育費に関してですが、仁が研究の片手間でバイトしたり香苗からの援助を受けて何とかしています。

因みに雄司の名前は雄成と司、2人からとっています。司はともかく雄成が入っているのは、何だかんだで仁が雄成をリスペクトしていた事の証明ですね。あんなことをした雄成ですが、それでも仁は彼に対し一定の尊敬の念は向けていました。自分の子供に雄成の名前の一部を持ってきたのは、彼なりの雄成にやり直すチャンスを与える意味合いを持たせたものだったりもします。

今回は特別編であって劇場版とは違いますので、そんなに長くはならない予定です。精々3~4、長くても5話程度で終わる予定です。

今年もよろしくお願いします!それでは。
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