黄昏の森の優しいオオカミ   作:月雲燎

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その森は、入口にして出口 あなたに、大切なものを教えるための場所 忘れないで 僕はいつも 君のそばに居る


好奇心の先に

 

 ある日突然見知らぬ世界に放り出されたら、人間というのはどういう反応をするのが正解なんだろうか。

 

 

 

まずは周りを見渡すだろう。たくさんの樹が生えている、それもとても大きなモミの樹たちだ。

 

なるほど、木を3つで森と書きそれを「もり」と読むのも納得する。

 

 

 

 樹の全長は彼女の身長を遥かに超えて、天を目指しているように見える。

 

しかし、見上げれば樹々の隙間からはまだ空が見える。この橙色はおそらく日暮れ時、夜が来たらあたりが闇に覆われるだろう。

 

そうなってしまってはさすがにまずいだろう、そんな不安と、こんな景色は今まで見たことが無くて

 

逆にどんなことが待ち構えてるのか、と謎の好奇心が彼女の胸を満たした。

 

 

 

 という訳で立ち止まっていても仕方がないと、何のためらいもなく歩み出した。

 

何処へ向かっているのかなんて、わからないまま、何処へ行きたいのかなんて、わからないまま、

 

彼女は【黄昏の森】をさまよい始めたのである。

 

 

 

 そんなに時間は経ってないであろう頃、少し肌寒さを感じ始めた。耐えられないほどの寒さではない。

 

周辺を見渡す余裕もある。奥は暗いが、上を見ればまだ夕焼けが空を染めているからだろう。

 

 土と風と樹の匂いが混じっている。不快感は無い。むしろなんだか心が清々しくなっていく。

 

何処までも歩けそうだ。そんなふうに思えるほどに。水の匂いもしてきた。小さなせせらぎが耳に入る。

 

その音が大きくなる方へ、歩みを進めた。

 

 

 そしてその音の正体が、森を流れる小さな川だと判明したと同時に、この森にとてもよく似合う

 

木でできた家を見つけたのである。

 

明かりも灯り、夕餉の支度だろうかとても美味しそうな匂いがする。なんだかおなかがすいてきた。

 

 

 

 木こりを生業とする人でも住んでいるのだろうか、家の外には樹を切る為の場所もあった。

 

そして彼女は何のためらいもなく、家の扉の前に駆け寄る。扉をノックして、人が出てきたらもちろん

 

「道に迷ってしまって、お腹も空いて、もうすぐ日も沈みそうで、良ければ一晩泊めていただけませんか?」と言うつもりだった。

 

 

 

 木のぬくもりが溢れる、大きな扉をノックして「すいません」と声をかけた。

 

扉がギィッと少し重たい音を立てて開いた。

 

 

穏やかな声で「どうかされましたか?」とその家の主であろう者が問いかけた。

 

咄嗟に先ほどの言葉がするっと出てくるほど、優しくて暖かな声であった。

 

 

 

 

 

 眼の前に現れたのが、彼女の背丈を遥かに超える大きな獣でなければの話であったが。

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