結界が張られた場所は海のすぐ近く。ちょうど病院がある辺り。
海鳴大学病院だか、そんな名前のところ。
そこへ急ぎ向かって状況確認を急ぐ。
「クロノーん!」
『なんだ?』
「地球がやばいぜ」
『すでに向かっている』
「おっけー」
クロノンは急行中、と。
「エイミイー」
『ん? なにー?』
「中どうなってんの?」
『闇の書の融合管制システムが起動して、なのはちゃんとフェイトちゃんを相手に戦ってる』
「分かりやすい解説ありがとう」
さて。状況も把握したところで、
「じゃあ俺突っ込むから」
「うっす。がんばってください」
「死なないでくださいねー」
「ご武運を」
突っ込むことにする。
そして送られる三者三様のお見送りの言葉。
ありがとう。いってきまーす!
「あ、仮面さん」
「こんばんは」
突っ込んだ先では高町なのはが海に投げ飛ばされ、びしょ濡れになっていた。
俺はステルスを解き、挨拶する。
そして、周りを見渡し、相方がいないことを確認。あの金髪百合娘どこ行った?
「フェイト・テスタロッサはどこにいった?」
「闇の書さんに取り込まれました」
「ふーん」
取り込んだご本人が、遠くの方で威圧感バリバリに浮かんでいるのが見えた。
今は高町なのはがどこにいるのか分からず、探しているようだ。
どうやら俺の存在にも気づいていないようで、さすが魔力効率がアホみたいに悪い魔法なだけあると感心した。
「まあ取り込まれただけなら生きてるだろ」
「……そう、かな?」
「生きてる生きてる。あの本そんなにえげつないもんじゃないし」
エロ本と大して変わらないと思う程度には普通の本だった。
それよりも、
「あれどのくらい強い?」
「え?」
「フェイト・テスタロッサと協力プレイしてたんだろ? どのくらい戦えた?」
「えっと……」
「1.手も足も出なかった
2.押されつつも善戦
3.らっくしょー! まじ余裕っすわ!
さあ、今の選択肢のうちあなたはどれくらい戦えてた?」
「うんっと……。に、2番で……」
「おっけ」
どもりが怪しいから1番な。
「そうすると俺とお前が急ごしらえのチームワーク発揮しても意味ないなー」
「うん」
即答。君は物事はっきりいうタイプだったっけ?
「まあ、俺だとあの防御は絶対、何があっても、天地が引っくり返っても破れないから、君に攻撃役をやってもらおうかね。
作戦としてはさっきまでと同じな。馬鹿の一つ覚えみたいに魔砲使いまくってくればいい。俺は影ながらフォローするから」
「影ながら?」
「そう、影ながら。じゃあまた会おう、アデュー」
親指立てつつステレスで消える。
なかなか良い顔が見れたが、その類の表情はとうに見飽きたのでもういいです。
まあ、安心したまえ。チャンスは逃さないよ。
さて、高町なのはがエクセリオンモードになったのを割と近くでに目視しつつ、二人の戦闘の軌跡をこっそりと辿る。
時に岩石の影に隠れて魔力を節約し、海の中に隠れびしょ濡れになりつつ二人の会話を盗み聞く。
「本当に、はやてちゃんがそう望んだの!?」
「我が主は目の前の絶望が夢であってほしいと願った。だから、主には穏やかな夢の内で永遠の眠りを―――」
「本当に……! ……はやてちゃんはそう思ってるの? そう望んだの?」
「……」
「闇の書さん!」
「……お前が何と言おうが、私のやることにかわりはない。お前も、幸せな時と共に眠るがいい」
聞く耳を持たない頑固一徹女。
頭が固すぎる。何でもかんでも諦めてちゃ何にもできないでしょうが!
「幸せな時間は後で自分で作る、眠るのも後でいい! 今はただ、あなたとお話がしたい!!
聞いてもらえないなら、力尽くで聞かせてみせる!!」
物騒な発言とほぼ同時に、足元に魔法陣が展開。レイジングハートから羽が生えた。
「エクセリオンバスターACS! ドライブ!!」
「無駄なことを……」
猛スピードで突っ込んでくる高町なのはを受け止めようと、障壁を展開する管制システムさん。
余裕綽々な態度を見る限り、こんなの脅威でも何でもないらしい。まじかよ。
まあ、でもさすがに不意打ち食らったら少しは気が逸れるでしょ。そ、逸れるよね……?
「隙あり!」
「な……!?」
こそーりと回り込んでいた俺は背後から魔力弾を撃つ。さすがの闇の書でも、前方に注意がいっていたため防御らしい防御はできなかったようだが、ダメージがあるというわけでもなさそうだ。
どんだけ固いんですか。
まあいいや、本命は突っ込んできてるやつだし。
捕縛される前に脱出。離れ際に魔力弾を何発か撃ち込んでおくのも忘れない。
そして、高町なのはが管制システムと接敵した。
「ぐううううううう……!」
「……くっ」
高町なのははスピードそのまま、闇の書に突撃をかまし、障壁ごと背後にあった岩石に叩きつける。
しかし、直前で魔力弾を食らって、気が逸れてもなお防御の固さは健在のようだ。障壁を突破できていない。
「届いて!!」
だがここで高町なのは、一発入魂のカートリッジフルロード。
威力、速度を上げ、そのまま力づくで貫こうとし、
ほんの少しだけ、魔力で構成された刃が障壁を貫通した。
「まさか……!?」
「エクセリオン、バスター……!!」
それを見逃さず、ディバインバスターならぬエクセリオンバスターが炸裂する。違いは何だ。
ほぼゼロ距離で放たれたそれは当然のことながら直撃。管制システムは周囲の岩石もろとも後方に吹っ飛ばされた。
砂埃で確認できないが多少のダメージは与えることは出来ただろう。
「お疲れー」
「はあ……、はあ……」
和やかに労いの言葉をかける。
いやー疲れましたね。田んぼ気になるし、さあ帰ろうか。
「……まだ、終わってない」
「そうっすね」
過呼吸になりかけの少女に状況説明される俺。
さっきから策敵にビンビンに反応があって、それはまだ収まっていない。
砂埃の中から悠々と姿を現す管制システム。左手が触手に覆われている以外はダメージらしいものは見当たらない。
エロ……、てかしぶとい。
「じゃあ、俺も本格的に参戦するから援軍来るまで頑張りましょー」
「はい!」
良い返事だ。
すぐ目の前で滞空している管制システムと相対しながら、援軍まだか援軍まだかと、クロノンの存在を今日ほど渇望したことはない、今日この頃であった。