「報告書が終わらない件について」
「クロノ君いないからねえ」
「何が悲しくてデスクにしがみつかなきゃならんのか」
「仕事だからじゃない?」
それもそうだと一人納得する。仕事なら仕方がない。……仕方ないか?
「それにしても何でこんなに書かないかんの?」
「だってライ君その場にいたから」
「あの場にいたのは俺だけじゃないはずだ」
「まさかなのはちゃんやフェイトちゃんに書かせる訳にはいかないからねー?」
「あっははー。じゃあ犯人どもに書かせようぜ」
「今頃クロノ君と裁判について話し合ってる頃かなあ」
「無駄話はやめて早く仕上げますね」
そうした方がいいよとエイミイが言った。
肝心な時に居ないクロノンに、何度目かわからない呪詛を送る。もっとも、これにどれほど効果があるのかは不明だ。
手を早める。
「……」
無言で書類を書き進める。時折、菓子をつまむ音だけが響く。
『闇の書事件
第97管理外世界「地球」にて闇の書が暴走。現地にいた高町なのは、フェイトテスタロッサ他、管理局員4名が現場に急行。戦闘が始まる。
苦戦を強いられるも、しかじかかくかくの内に闇の書の意思が主八神はやてに降伏。絶対忠誠を誓い、最期には駆けつけたクロノ・ハラオウン執務官により闇の書は氷漬けにされ、八神はやて、高町なのは、フェイト・テスタロッサ達によるトリプルブレイカーによりコアの露出に成功。
その後、宇宙空間にまで転送したコアにアルカンシェルを叩き込み見事解決した。
主犯のヴォルケンリッターとその主八神はやてだが、八神はやてが管理外世界出身であること、闇の書の主に対する性質の事を踏まえ、無罪かそれに近しい刑が妥当だと考えられる。まさか魔法を知らない9歳の女の子に厳しい刑罰は言い渡さないよね?
なお、闇の書の管制システム「リインフォース」は闇の書破壊の際に消滅した』
――――――――。
「よっしゃ、ちょっくら出してくる!」
「いってらっしゃーい」
出来た報告書を艦長に提出しに行く。
「艦長ー!」
「はーい」
「出来ましたー」
「よくできました」
小学校かよと自分に突っ込む。しかしよく考えれば年齢的に小学生だな、俺。
「そんじゃ病み上がりの俺は帰りますね」
「あ、ちょっと待ってくれないかしら」
何か?
「これ」
「お」
異動届ですね。分かります。
「わーい、異動だ!」
「あら、そんなにうれしいの?」
「うん」
この艦で二回も世界の危機に直面したことを考えればこの喜びも妥当だろう。
もう、こんなことはないことを願うが、どうせまたある。
「次は、陸か」
陸ということはゼストとかいるじゃないか。また共闘が出来そうですな。適当に技術も盗める。
うむ。
「いいね」
まだまだ弱っちいから、強くならないといけないから、これは嬉しい。
一か月後が楽しみである。
「それじゃあ行きますね」
「ええ、お疲れ様。あと少しの間だけどよろしくお願いね」
「うす」
艦長の部屋を後にし、エイミイの元へ。
「異動だぜ!」
「え、本当?」
「本当」
エイミイが少し疑うように見てきたので異動命令を見せる。
「あ、本当だ」
まじまじとその紙を見て、ようやく信じたようだ。どうでもいいけど俺って信用ないよね。
「や、だってこないだ異動してきたばかりなのにまた異動って言うのはちょっと信じられないんだよねえ」
「現にこうして命令がきてるが」
「うん。でも信じられないよね」
まだ信じられていなかったとは、俺は詐欺師か何かなのか。
貝塚の貝に枯れ木の木さんもびっくりだな。
「まあこうして異動命令出たんだし、残り一か月よろしく」
「うん。こちらこそよろしくー」
こいつらと一緒にいるのも残り一か月かと思うと感慨深くもなかった。
部署変わるだけで働いてる所一緒だし、ちょくちょく顔も合わせることになるだろうから、まあどうでもいいや。
残りの奴には適当にメールで知らせてやろう。クロノンとか小躍りして喜ぶんじゃないだろうか。
「……」
クロノンが小躍りする画を思い浮かべて、ありえないなと考え直した。
精々ガッツポーズが良いところじゃないかな。