転生して逆行した結果人生イージーモードだった   作:紺南

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本日二話目です。
途中から三人称になってしまった。


20話

この建物は昔病院かそれに値する施設だったらしい。

機械や、薬が入っていただろう空き瓶がちらほら見られた。

 

……あの機械、中に緑の粉が入っていたりしないだろうか。

 

外はもう夕日が差していて、一日の終わりを告げている。早いなあとしみじみ思う。

もたもたしてたら日が暮れる。明かりも何もない病院とかいたくないです。

 

「そういう訳だからお縄につけぃ」

 

私情を挟んだ勧告を奴は無視する。いや、そもそも聞こえているのかどうかが謎だ。

なんていうか……、君耳ある?

そう問いかけたくなってしまう程度に凹凸の無い顔をしていた。

全身動きやすそうな黒い衣装で、顔は身元をばらさないようにするためなのか、人間らしからぬ造形。

 

「バレスかな?」

 

返事の代わりに、飛んできたのはナイフ。武器を構える動作なく、気が付けば飛んできていたナイフ。デバイスかな?

 

それを避け、自身も銃を構える。しかし、推定バレスはその時には既に動き出しており、気づけばすぐ目の前にいた。

こんな距離では銃を撃つよりナイフが刺さる方が早い。

 

回避する。

 

「死っ!」

 

「あぶい」

 

頬を一線掠める。やっぱりというか当たり前と言うか、非殺傷設定なんて生易しいものはなかった。

こうなるとこちらも命の危険を覚悟しなくてはならない。まあ、いつも通りと言えばいつも通りだ。

 

ナイフを銃で受け止めると火花が散った。

デバイスが真っ二つに斬られたりしないか不安になるが、傷一つ着くことなく火花を散らすデバイス。大丈夫なようだ。

 

奴が力で押し切ろうとしてきたところで、腹に蹴りをくらわす。腹には金属か何か仕込んでいるのか、甲高い音が鳴った。その音を聞きながら、後ろに跳び魔力弾を放つ。

魔力弾はナイフであしらわれたが、一先ず奴との距離は置けた。

 

「ショットガンシェル」

 

放つ魔力弾の種類を変え、散弾で奴の動きと投擲を封じる。見た限りあのナイフはいくらでも出せるようで、非常に厄介だ。

 

ショットガンシェルは命中率は高いがあまり攻撃力がない。現に、今も奴にダーメージらしいものは見られない。全く効いていない。

このままチマチマ交戦してもあまり状況は好転しそうもない。またジリ貧になりそうだ。

 

「一枚御開帳、と」

 

切る手札を決めた。これで終わるとすごくうれしい。

デバイスを左手に持ち替えて、ソニックムーブで離れた距離を詰める。上手い具合に懐に入り込めた。

 

右手を奴の腹に当てる。

 

「衝撃(ショック)」

 

それはただの衝撃を発生させる魔法。魔力をどれだけ込めたかで威力が変化する。下手すれば反動で自分もダメージを負いかねない。そんな魔法。

そんな魔法で、俺は奴の腹を貫く。

 

「……」

 

手ごたえはあった。右手が少し不自由になったけど、その分威力は高い。普通なら骨の一本や二本は逝ったはずだ。はずなのだが、

 

「化け物かよ」

 

先ほどの攻撃を受けてなお、仁王立ち。ほぼ零距離で、放った魔法はまるで効果がない。少なくとも、傍目には効果があるようには見えなかった。

 

半ば呆然としている隙に、奴の腕が動く。

 

「っ!?」

 

その腕にナイフはなく、ただ左腕を振っただけ。

それなのに、その振る速度が異常で、躱しきれない。辛うじて、腕を交差させて防御する。

しかしそれは速度相応に威力があり、不自由な右腕を余計不自由にさせて、俺の体は吹っ飛んだ。

 

受け身を取り、右手を庇いながら冗談じゃないと心中で愚痴る。最近良い事ないなあと悲観する。自分のことながら、まだ余裕はあるようだ。

 

先ほどの攻撃で、奴が普通でないことは分かった。自家用車ぐらいなら吹っ飛ばせる衝撃を受けても平気なのだから、これで普通だったら人生諦めるところだ。

 

奴は緩慢と動いている。余裕綽々に少しずつ距離を詰めてくる。隙だらけだ。

 

「チェーンバインド」

 

魔法陣から鎖状のバインドが複数伸び、奴を拘束する。ぐるぐるぐるぐると蓑虫にした。

 

「ムーン」

 

右手を治す時間すら惜しんで収縮した砲撃。今撃てる最大火力。

 

「レイ」

 

当たればどれだけ頑丈な障壁であれ、鎧であれ突破することが出来るだろうそれは、しかし、奴に届く前に弱体化。最終的には雲散した。

それは奴の体を縛っていたチェーンバインドも例外ではないく、見る見る内に鎖は解けていく。

 

そうして、バインドも砲撃も、己を保っていることが出来なくなったように崩壊した。魔力自体は供給していたし、魔法の発動も上手くいっていた。そもそも、一度正常に発動できた魔法が途中で崩壊するようなことは、デバイスの補助がある昨今、術式を間違えでもしない限りありえない。

 

ということはつまり外部的な要因が関係している。

 

「AMFか」

 

すぐさま見当をつけた。アンチマギリングフィールド。魔力結合を解き魔法を無効化する魔法。

そんなもの使ってくる犯罪者に、一人だけ心当たりがある。

 

ジェイル・スカリエッティ。広域指名手配中の犯罪者。

そいつが関係しているかもしれない。それだけで、こいつを逃がす訳にはいかなくなった。

 

「……お前がバレスだろうと何でも屋だろうとそれはもうどうでもいい」

 

デバイスが銃型から剣型へと変形する。

 

「吐いてもらうぞ。全て」

 

ようやく得た手がかり。逃がさないぞー。

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