転生して逆行した結果人生イージーモードだった   作:紺南

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21話

案外、戦いは早く終わった。

それは、本気で殺しにいったのもあるし、半殺しで済ませる必要がなくなったこともある。

あるいは、何か聞き出すことが根本的に不可能であると悟ったからかもしれない。

まあ、その結果この建物は半壊したが。

 

ぶん、と剣を振るう。こびりついたオイルだか、血だか分からない物が飛ぶ。デバイスだから、あまり手入れの必要はないとはいえ、汚れがこびりついたままと言うのは気分が悪い。

使うものは大切に、清潔に保っておきたい性格なのだ。他人から見たら少し潔癖気味かもしれない。

 

「……気色悪いなあ」

 

これは感想だ。デバイスに汚れが付いたことに対してではなく、床に這っているそれに対しての感想だ。

四肢を落とされ、機械的な部分があられもなくむき出しになっているにも関わらず、今だに逃げようともがいているそれに対しての感想だ。

人間なのか、機械なのかはっきりしないその姿で、地を這う様子が嫌でも虫を想像してしまって、吐き気を催した。

いつまでもいつまでも足掻き続けるそれに、とどめを刺す。頭に剣を突き刺した。AMFは既にその効力を失っており、楽に剣は突き刺さる。

剣がそれの頭を貫通した。そうして初めてそれは行動を停止した。機械だろうと、人間だろうと頭が弱点であることには変わりがないらしい。今度似たような物と戦う時には、頭を狙おうと記憶の片隅に留めておく。

 

「無情だねえ」

 

何となく口にした言葉は、今の自分の心中をよく表現していて、自分のことながら自分で自分を褒めたくなった。そんな不毛なことは決してやらないけど。

 

さて、ここから先の事を考えねばなるまい。

今、こうして足元に転がっているこの機械なのか人間なのか判別しにくいものはジェイル・スカリエッティーが作ったものだと断言してよいだろうか。

こんなものを作れる奴を、ジェイル・スカリエッティー以外に知らないものだから、候補としてというか容疑者として第一に挙がるのはあれしかない。

もしかしたら他にもこんなものを作れる科学者がいるかもしれないが、知らない以上候補には挙げられない。

まあ、奴が作った可能性が少しでもあるのなら調べてもらう事にしようか。

 

剣を抜いて、銃型に戻す。そして、探知を全開に。

 

「……」

 

周りにこの戦いを見ていた奴はいなかったかどうか探す。さっき見逃した5人がどこかで見てはいないだろうかと期待したが、何処にも反応はない。

サーチャーの方もとうに壊されたようで、こちらも反応はない。

 

そうなれば、もうここに居ても意味はない。これを本部に持って行って、解析を頼んだら今日は休もう。

 

「よっと」

 

担ぐ。見た目以上に重くて、腰が抜けそうになった。なんじゃこりゃあ。

考えてみれば機械なのだから当たり前なのだが、こんなものを本部までもっていかなくてはいけないと考えたら、涙が出そうになる。

既に辺りは真っ暗で、もしこれを担いで歩いている所を誰かに見られたら通報されかねない。慎重に帰らなければ。

 

 

転移魔法の存在を思い出したのは暫く後の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、朝一であの機械について聞きに行ってみた。まさか一晩経っただけで何か分かったとは思っていないが、逸る気持ちが抑えられなかった。そうして、本部に訪れてみたら衝撃の事実を聞かされた。

 

「はあん? 失くなった?」

 

「え、ええ……」

 

あの機械紛失したってよ。

 

「え、ここ管理局だよね」

 

「ええ……」

 

「泥棒でも入ったのか」

 

「……おそらくは」

 

冗談きついぜあんちゃん。

 

「ほーう。ふーん」

 

「あの、すみませんがこのことは内密にお願いできませんか? 局内で盗難が起きたと噂が立っては私共としましても、その……」

 

「……ああ、いいよ。別に」

 

そのことはもう別にどうでもいい。

 

「ふは-い」

 

言葉にならない声が出る。そこそこ期待していただけにこの落胆は大きい。

どうするか。ちょっと釣りでもしようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、何か発見はあったのか?」

 

「特に何も」

 

「ふん」

 

次の日、上司に呼び出されて捜査の方の進捗を聞かれた。正直に答えたのだが、鼻で笑われる。あの機械の事は口外しない約束だっただけに今この場で言えないことが悔しい。

発見はあったんだよ。でも無くなっただけで。

 

「郊外の病院跡が半壊していたそうだ。何か心当たりはあるか」

 

「無いっすね。またぞろテロでもあったんじゃないですか」

 

そんな人目につかない場所でテロを起こす馬鹿がどこにいるとお叱りを受けた。そういえばそうだ。じゃあ喧嘩だ。

 

「関係がないのならいい。この件は他の者に担当させる。お前は引き続き捜査を続けろ」

 

「イエッサー」

 

話は終わりだと椅子ごと体を逸らした上司に、ここからは俺のターンだぜとばかりに話を続ける。

 

「そういえば、ちょっと小耳にはさんだんですが、局内に強盗が押し入ったと聞きました。何かご存知ですか?」

 

「……なんだ、いきなり」

 

「いえ、まさか管理局の地上本部に強盗が侵入するなんて馬鹿なことがあるはずがないと思ったんですが。噂は噂ですかね」

 

「――――噂は噂だ。用がないなら職務に戻れ」

 

はいはいと部屋を後にする。

噂は噂。管理局内に強盗が入るはずがない。ああ、俺もそう思いますよ。

でも、それならあの機械を盗んだのはいったい誰なのか。どう思いますか、レジアス少将。

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