プレシア・テスタロッタ。
ミッド出身の魔導士。アレクトロ社に所属。条件付きSSランク。研究中に事故を起こし、責任を取って研究者を辞め、その後行方不明。今は死んでるのか生きてるのかわからない。
そんな奴が、
「黒幕?」
「ああ」
クロノンが資料を突きつけながら言う。
「アースラへの魔法攻撃。その魔力が彼女の魔力情報と一致した。十中八九間違いないだろう」
さらりとやることやってんだなあと感心する。
俺の魔力情報もとられてるのかしら? 油断も隙もあったもんじゃない。
「ふーん。で、この情報だと娘死んでんだけどそこの所はどうなってんの?」
金髪ちゃん直撃受ける直前に母さんって言ってたよね。
「ああ。そこは僕もちゃんと調べた。結論から言って、間違いなく娘は死んでいる。それは間違いない。ただ――――――――」
「―――ああ、名前が違うのか」
クロノンの話を遮って言う。
彼女はフェイトと名乗った。しかしプレシアの娘の名前は、
「アリシア・テスタロッタ。こいつが死んでるのならフェイト・テスタロッタがアリシア・テスタロッタのわけがない。別人だな。でもフェイトはプレシアのことを母さんと言った」
つまり
「新しく子供を作ったか、または子供を拾って娘として育てているか」
クロノンが答える。
「前者はないだろう。今の彼女を見る限りなのはとそう変わらない年齢だ。そう考えると計算が合わない」
「じゃあ、赤の他人?」
「それもない。アリシア・テスタロッタの写真を見たが彼女と瓜二つだ。血がつながってないとは考えられない」
それじゃあ、
「なんなのさ」
答える声はない。答えられる人物は今この場には居ない。なら知ってる人に聞くしかないな。
「んじゃまあ、プレシアを釣る方法でも考えるとしましょうか」
「ああ」
考えてもわからないことよりも今できることをしようと二人で知恵を絞る。と言っても俺の無い知恵を絞ったところで意味はないから主に考えるのはクロノンだ。
しかし本当にあの娘っ子は何なのか。
まさか幽霊とでもいうのか。
さすがの魔法世界でも幽霊はまだ見たことがないぞ。生き返って逆行した奴なら知ってるけどさ。
あれ? 一度死んだ人間が生き返って、尚且つ逆行とかオカルトにもほどがある事象が存在するならもしかして幽霊もいるんじゃね?
「クロノン、わかったぞ。あの金髪娘はアリシアの幽霊だ」
「くだらない事言ってないで君も何か考えろ」
画面の向こうで元気に飛び回る幼女たち。時に美しく、時に苛烈に、彼女たちはぶつかり合う。
お互いに持っているジュエルシードを賭けて、プライドや意地、思いを燃料にして決着をつけるべく戦う。
金髪の幼女の思いはただ一つ。
『母さんのために』
対する茶髪の偽ツインテールの思いは
『お話したい。仲良くなりたい。友達になろう』
どちらの思いも純粋でどちらも応援したくなる。
だけど俺が応援できるのはただ一人。どっちも応援するだなんてそんな二足の草鞋を履くような真似俺にはできぬ。
だから俺は一人モニターの前で思う。
「どっちが勝っても損がないからどうでもいいわぁ」
「うわあ……」
エイミイが何か変な声を出すが俺には関係ない。
だってさ、相手がジュエルシードをすべて欲しがっていると仮定して、勝負吹っかけては見たけどまさか乗ってくれるとは思わなかったね。
いやラッキーだわー。超ラッキー。
この世にご都合に感謝していると戦況が動いた。
「……うはー」
つい声が出てしまうほどの大規模魔法。数えきれない量の魔力弾が彼女の手により生成される。
フェイトがとどめを刺しに来た。
魔力弾による圧倒的物量の集中爆撃。これを躱すことはまず出来ないだろう。俺が使われたられたら白旗降るね。
そしてとどめの雷の槍。
高町なのはを貫き、彼女を中心に破壊の限りを尽くす。
すっげえ魔力。いいなあ。うらやましい。
爆音が響き、雷が走る。すべてが終わったあと、そこは土煙に覆われていた。
これで終わったと安心し油断したのだろう。
土煙がはれたそこにはバリアジャケットが所々破けた痛々しい格好をしてはいるものの、それでも瞳に光を灯す高町なのはが。
フェイト・テスタロッサは動揺した。
決め技を食らってもなお倒れない不屈の心に動揺し、焦り、追撃を掛けようとした所でバインドを掛けられる。設置型のバインドである。
予めこうなることを予想していたのか、魔力をほぼ使い切ったフェイト・テスタロッサはあっさりと引っかかる。
そして、それを壊す間もなく
「ディバインバスター!」
襲い掛かる砲撃。視界を埋め尽くす桃色。
フェイト・テスタロッサは、なんとかそれを防ぎ切った。しかし、見るからに満身創痍だ。
それはなのはも同じだが、彼女はまだ手札を残している。
使い切れずばらまいた魔力をもう一度集め収束する。
それは決戦の場に出現した一つの星。その場に似つかわしくない、桜色の小さな星だ。
しかし、だかからこそあの魔法にこの名前はふさわしい。
「……スターライトブレイカー」
その呟きはモニターに集中していたクロノにもエイミイにも、もちろん画面の向こう側の彼女たちにも届かなかった。
スターライトブレイカーは圧倒的な威力で彼女を貫く。
もう、これに耐えきれる余力は残っていまい。
決着はついた。