フェイト・テスタロッサが学校に通うと言う事で、真新しい制服に身を包み、高町なのはと共に学校に向かってから早3時間。
ようやく落ち着いて茶を飲むことが出来るまでには荷物の整理が済んだ。
くうー、疲れました。
「てかさ、あれじゃないですか? 引っ越してきた当日から学校通うって結構無茶じゃないですかね」
「そうかしら」
「そう思いますけどね」
ずずっと茶を啜りながら、談笑中。お茶請けがないのが残念だが贅沢は言ってられない。
なにせ引っ越してきたばかりだからね。そんな状況でお茶請け出せとかそれこそ無茶だろう。
「あたしはその辺よくわかんないね」
「安心しろ。お前には聞いてない。無駄だってはなから分かってるからな」
ふ、と鼻で笑ってやるとそれが癪に障ったのか、うがー、と噛みついてくる。痛そうには見えないが、念のためにと、俺は茶を死守しつついなし、犬を足蹴にした。
いくら使い魔と言えども魔法がなければどうということもない。
ふっ。魔法のないお前らなど。
「雑魚よ」
「うがあ!!」
今度は魔力込みで襲い掛かってくる犬をデバイス構えながら迎え撃つ。
かかってこいやああああああああああああ!!
「はいはい。二人とも落ち着きなさい」
艦長が割って入ってきたのでこのお遊びはここで終了。
命拾いしたな犬よ。
それでも未だに噛みつこうとしてくる犬の頭を抑えながら時計を見る。
11時か……。
「もうそろそろ帰りたいんですが」
「あら、お礼にお昼ご飯でもご馳走しようと思っていたのだけど」
それはそれで何かしら手伝わされそうな気がしてならない。買い物の荷物持ちとかありそうだ。
「いえ、この後適当に観光して帰るんで」
「そう」
ずずっと茶を啜る。艦長は茶に追加の砂糖を入れて啜る。
……なんか食欲なくなったな。
「それで」
「ん?」
「何か言いたいことがあったからこんな事手伝わせたんじゃないんですか?」
「え?」
艦長がお前何言ってんのって顔をしてくる。
あれ、もしかしたら勘違いかしら。
「いや、私事を手伝わせてくるくらいだから何かあるのかと」
「ああ」
艦長はにっこりと笑って湯呑みを置く。
やだ、本気で勘違い? 俺ってば恥ずかしい。
「そんな大したことは考えてないわ。ただ、もう少し仲良くなりたいな、と」
「俺と艦長がですか?」
おいおい冗談だろおばさん。
「ううん。貴方と彼女たち」
「おい犬、俺たち友達だよな」
「がるるる」
「あらあら」
おうおう。そんなに威嚇して。
待ってろ。今すぐ従順にしてやる。
「そうね。アルフさんもだけど後はなのはさんとフェイトさんも」
「えー、なぜー?」
「そうねえ……。ライに友達が少ないからかしら」
「ぷ」
犬が吹き出す。
俺は憮然とする。ぼくは友達が少ない!
「なんという私事」
「あらやだ。私心配なのよ」
お見合い話を運んでくる近所のおばさんみたいだな。余計なお世話です。
まあ、艦長の言いたいことは大体わかった。友達の少ない俺を心配しての事だったんですね。やっぱり大きなお世話だわ。
俺にだって友人の一人や二人いる。
「クロノンクロノン」
『……なんだ?』
通信を開いてクロノンを呼ぶ。
仕事中だったのか少し迷惑そうだ。
「俺たち友達だよな」
『――――艦長?』
その問いに対する返事はなく、なぜか艦長が呼ばれた。
「何かしら」
『荷物の整理はもう終わったんですか?』
「ええ。アルフさんが手伝ってくれたからもう大体終わったわ」
『そうですか』
おや? なぜか親子の仲を深め始めたぞ?
俺の存在は消去されたようだ。おめでとう俺。
『折角の休みですからゆっくり体を休めてください』
「そうね。そうさせてもらおうかしら」
『そうしてください。では、仕事がありますの失礼させていただきます』
「ええ。仕事中にかけてごめんなさいね」
『気にしないでください。では』
ぷつりと通信が切られる。
おう……。
「そろそろお買い物に行きましょうか」
「うん。……あんたはどうするんだい」
「…………うん。僕帰ろうかな」
「そうかい」
ふらふらと覚束ない足取りで歩く。
思っていたよりもダメージが大きかった。あかん。
「あらやっぱり帰ってしまうの?」
「……うん。僕もう疲れたよ」
「そう? それじゃあお礼はまたの機会にしましょう。帰り、気をつけて帰りなさいね」
貴方は僕のお母さんですか。