くそっ、あともう少しなのに、それ以上進めない!
その物体とは、平たく、あたかも大きな盾のようなものだ。
我らの前に立ちはだかり排斥の力で近寄ることを許さない。近付いて剣で切りつけようにもそれができないのだ。
いくら熾天使の
そこへ突入せず、回り込んで神の方へ向かおうとしても無駄である。それに合わせて盾もまた正面に移動してくるのだから。音もなく、滑るように、しかも我々よりも速く。
不思議な盾だが、重要なことは何かの物理力によるものだろうから、ソータ君の
これもまた難攻不落の防御だ。
「ぬう、これは…… 神にはこんな防御まであったのかや。ラファエル、どうしたら良いかのう。一度ソータ君の異能を解いてもらい、手早くこっちの異能で盾を片付けるのはどうじゃ」
「ガブリエル、それも考えた。だがその手はたぶん一度だけだ。ソータ君の異能を解いた瞬間に神は攻撃に転じてくるだろう」
「そうはいっても手詰まりじゃ。時間が経つほど不利になる」
「それにガブリエル、異能を使ってもあの盾を壊せるのかは分からんぞ。余りにも危険な賭けになる」
だが、間もなくガブリエルの言う事が現実となってしまう!
神がもう一つの手を打ってきたのだ!
防御の次は攻撃ということか。
周囲の空間にぽうっとした光が幾つも灯り、そこから下級天使たちがまるで産み落とされるように生じているではないか! それらは形を成すや否や直ぐさま我らの方へ向かってくる。
なるほど、異能を使えずとも軍勢を生み出すことならできる。そう来たのか……
こちらが異能を使えるなら撃退も難しくなかったろうが、今は剣で戦うしかなく、はなはだ厄介だ。
剣でも簡単にやられてしまうことはないだろうが、たぶん神は下級天使をいくらでも生み出してくる。それなら消耗戦をさせられた上で全滅するのは必定だ。
くそっ、盾による守り、そして増える一方の下級天使、いったいどうする……
わたしは改めて一行の皆を見渡す。
「何か打開策は…… ワルキューレ、その槍でどうにかならないか」
「…… 槍の調子がおかしいべ。手から離したらどうなるかオラにも分からん。一度きりなら無理やり投げてもいいけんども」
「そうなのか。その槍はいわば神の力の欠片だったな。互いに干渉を受けるのは仕方がないか」
しかしその時、わたしの目にワルキューレの横で震えている者が映った。
これだ! この手しかない。
「さあ行くぞ! 失敗はできない! ソータ君、今だ!」
わたしは掛け声と共に、ソータ君に
今、この場は誰しもの異能が展開できる状態になった。
「異能発現、
「異能発動、
ミカエルを左端、ベルゼバブを右端に布陣させ、さっそく異能を発現してもらう。
どちらも範囲殲滅に最も適する強力な異能だ。
殺到してくる下級天使の群れを引き寄せるだけ引き寄せ、一気に片付ける。焼き滅ぼし、あるいは溶かして。
こうして一旦は寄ってくる邪魔者を消滅させる。長くは保たないがそれでいい。
次にガブリエルが最大火力で放つ!
「異能発現、
それはあの厄介な盾をぶち壊すためのものだ。
雷撃が束になり、その威力で一気に盾を穿つ。 ……だがしかし、盾はそれでも傷付かない! 驚くべき頑丈さだ。それだけではなく、何と雷撃を撃ち返してきた!
受けた攻撃に対し、全て反射してよこす、これが盾の真骨頂なのか。
「異能発現、
ただし、それもわたしの予測の範囲内だ。
ここでウリエルの異能を出してもらう。反射してきた雷撃をいなしてもらうためである。それらの光はまるでプリズムに吸い込まれるように曲げられる。
わたしもまた
おそらくあの盾は
神に人間のような感情があるのなら、しめしめとほくそ笑んでいることだろうな。
「い、異能発現、
ここでラグエルに異能を使わせる!
さっき目に留まったラグエルこそ、戦いの行方を決める鍵になる!
わたしはそう確信しているのだ。
とたんに武器が発現…… いや武器とは呼べないだろうな。
ラグエルの周囲に白い光が広がり、直ぐに収縮してとある形を成していく。ラグエルの異能によって現れたのは何と数台のノートパソコンだった!!
「ガブリエルに言われて始めたVtuber、全てはこのためだったのか。いや考え過ぎだな」
ノートパソコンを素早く起動させながら、神が油断している隙にラグエルが飛ぶ。目的はそれを盾によって遮られない位置に持って行くことだ。
やはり非力なラグエルの行動など無視し、神は盾をわたしや皆の正面から動かすことはない。
用意ができれば、満を持してわたしは叫ぶ。
今こそ全ての思いを乗せる時だ。
「異能発現、
現れた白銀の刃はいつにも増して威力に満ちている。
わたしの前にあるノートパソコンに襲い掛かり、何の抵抗もなく真っ二つにする。
その瞬間だ!
ラグエルが持つ方のノートパソコンから
それが神の本体を切り裂いた!
何のことはない。わたしの
この異能は
見えないものは斬れず、だが逆に言うと見える範囲なら斬れるのだ。今、目の前のノートパソコンに映っていたのは、ラグエルの持つ方のノートパソコンが撮っていた神の本体だった。
ならばわたしは画面越しに神を見て、
これで神へやっと一撃を入れられた!
ラグエルはのけぞって泡を吹いているが、それはそれでいい。
最後の決め手は決まっている。
「今だワルキューレ! あの傷口に槍を打ち込め! まごまごしてると修復される」
「分かったべ。しかしどの辺りだべか」
確かに神の本体に傷を入れられた。ただし、そのどこへ槍を使えば有効になるのだろう。この巨木はあまりに大きく、槍は小さい。
神はその大きさそのものが防御と言える。狙いどころが分からないと何もできない。だが再びこういうチャンスは有り得ない。早くそれを考えなければ……
「異能発現、
するとサキちゃんという少女が異能を使っているではないか!
「でっかいラスボスっていうのは、核を見つけて倒すもんだわ! それがファンタジーの王道でしょ。見えた!! そこに力の渦の中心、核がある!」