天使たちの戦記 ~歌うように踊るように神を殺す~   作:おゆ

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最終話   そして僕らは

 

 

「まあそんな難しいことはともかく、二人は仲良うな。ほな、これでほんまにさいならや」

 

 ミカエルはいつもの飄々とした言い方でサヨナラを告げていく。

 もちろん言葉ほど平気という感じではなく、まさに万感が溢れている。

 

 しかし、これで別れの挨拶は終わりだ。

 

 いつまでも感傷に浸ることはできず、後は実行あるのみである。名残り惜しそうな少年少女を置き、天使たちは次々と神殿跡の陥没に飛び込む。

 その身を犠牲にして、地の崩壊を防ぐために。

 

 

 やがて地の震えは止まった。

 

 天使たちによって人間界の危機は去ったのだ。

 

 

 

 

 

 僕は一週間ぶりに人間界、というか元の場所に帰った。サキちゃんの方は三日ぶりとなる。

 ああ、本当に目まぐるしくいろんなことがあったが、期間としてはそんなものだった。

 

 むろん周りから騒がれたのは当たり前だ。おまけに二人は駆け落ちか、なんて言われたが事実はちょっと違う。説明は難しかったのだが四苦八苦しているうちに何とかなった。

 そのまま夏休みに突入してしまったのも大きい。

 

 あれは本当に体験したことだったんだろうか…… この僕が魔界での戦いに巻き込まれ、天界でも戦ったなんて。しかも神や竜とかを相手に。

 まるで重度の中二病患者の夢である。

 誰に話しても荒唐無稽としか思われないだろう、天使たちの戦記だ。

 

 あまりに個性的で、ちょっぴり間抜けで、愛すべき天使たちの。

 

 いや、夢ではないという証拠がある。

 僕の異能聖天調和(スカイハーモニー)は自分では分かりようもないが、サキちゃんの明流覚視(フローサイトアイ)は確かに存在する。もちろん、普段はそれを使わない。

 

 そして僕とサキちゃんはミカミカに言われるまでもなく仲良くなった! 自然な形でカップルになったんだ。

 今ではサキちゃんも異能のオンオフができるようになったので、僕といることはその意味で必要なくなった。しかし、元々どちらも憎からず思っていたから……今度のことはきっかけに過ぎない。

 ちょっぴり照れるけど、それはたぶんいいことだと思う。

 

 

 そしてある日のこと、僕は気付いた。

 

「あれ? おかしいな。エンジェルズが更新してる……」

 

 僕はそれをしばらく見ていなかった。

 自分の命をなげうって人の世を守った天使たちをどうしても思い出してしまうからだ。わずかな期間だったけどあのユニーク過ぎる天使たちとの邂逅はとても大切な思い出であり、決して僕は受難なんて思ってない。

 けれど、その終わりは永遠の決別だった。

 それが悲しくて、思い出す度に僕は泣いてしまう。ミカミカに似たあのフィギュアも押入れの深くにしまい込んでいる。

 だが今、意を決してVtuberエンジェルズを見てみたら、更新していた! しかも最近である。

 これは何だろう? 不可解としか言いようがない。

 

 

 

 

 そして夏休みが明けた。

 

「今日からこのクラスに転入生が二人入ります。では自己紹介から」

 

 最初の時間に担任であるコトカ先生がそう言った。

 こんな時期としては珍しいことに転校生が二人も入ってくるらしい。

 

 クラスのざわめきの中、そこにいたのは…… 僕は驚愕するしかない。

 

 

「天野美香や! みんな、よろしゅうな! ミカミカって呼んでや!」

「双子の天野エルだ。どっちかが姉だ」

 

 馬鹿な!!

 双子設定か!? 何で? 何でそうした? 全っ然似てないぞ!

 しかも雑かよ!

 

 いやツッコミどころはそこではない!

 

 ど、どうしてまだミカミカとラファエルが生きてる…… そしてなぜこの中学の転校生になってるんだ!?

 

「そういや、文化祭で天使の劇をやるって聞いたで。うちも是非交ぜてもらいたいわあ。どんなスタントでもやれるし、なんなら飛んでもええで」

「わたしは皆を斬ってしまわないように剣道部にだけは入るなと言われた。だからマンガ研究会にでも入る所存だ。実はペンでも斬れるのだが」

 

 いやせめて普通のことをしゃべろうよ!

 おまけにペンは剣より強しって、そういう、絶対切断(アルティメットソード)的な意味じゃないだろ!

 

 

 僕は休み時間にこの二人を強引に連れ出した。

 転校生の美少女を、一応周りのクラスメートからリア充と思われている僕がいきなり連れ出すのだから…… 誤解されなければいいが。

 特にミカミカは薄紫髪で無駄に可愛いからなあ。中身はさておいて。

 ラファエルもクラスのヲタどものところに行こうとしていたが、そこを中断させた。たぶん、また天界の話でもするつもりだったのだろうな。こっちも仏頂面だが一応長身美女なので困ったものだ。

 

 とにかく僕としては早く真相を聞き出したい。サキちゃんもまた同じことを思ったらしく、慌てて僕の後を追ってきている。

 

 

「どうしたんだよ二人とも! あの時、人間界を助けるために死んだんじゃ」

「ソータ君、そのつもりで飛び込んだんやけど、実際は必要なかったんや。あの竜は地の底から来たという伝説がある。元からそれらしい空洞があったせいで揺れが大きく見えただけで、まだむちゃくちゃ何かしたというわけではなかったんや。せやから神聖力を半分も使うたら治めるのに足りたんやで」

「そうなんだ! 良かった…… じゃあみんなまだ生きてるんだね」

 

「ああそうや。そんでな、天界はけっこう崩れてしもたが、残りをアサエルたちが治めとる。ルシファーの姉様はとりあえず魔界に戻ることにした。そうそう、ワルキューレは魔界の探検隊長になったで。そんでな、うちらはとりあえず暇になったっちゅうわけや。ガブリエルは一生懸命Vtuberやってて、ウリエルやラグエルが悲鳴上げながらつきあっとるけどな。そんでも人気は相変わらず中くらい、おもろいやろ」

 

 なるほど…… 僕はミカミカとラファエルの二人がここに来た理由が分かってきた。

 ごちゃごちゃ言ってるが、要するに暇だから学校生活を送りにきたわけか。

 

 

「で、でもよく転校生になれたね。そしていつまでいるの?」

「補足してわたしが説明するが、天界にはヨキエルという偽装のスペシャリストがいるのだ。それに任せれば書類や家はなんとかなる。そしていつまでということだが…… 正直いつまででもいい。天使には寿命というものがないのだ。正確には神殿による神聖力の補充がないのでいずれは朽ちるかもしれないが、わたしもミカエルも、たぶん千年や二千年は大丈夫だ」

「あ、そうなんだ……」

 

「せやからな、ソータ君。君とサキちゃんの子供も孫も、よーく見守ったるで。君の武勇伝をずっと聞かせたる。ええやろ?」

「こ、子供って!? 僕とサキちゃんの、いやそんな」

「ご先祖様は、今まさに矢で射られようとしていた哀れな美少女、いや美幼女ベルゼバブを認めるやいなや『僕が必ず救って見せる』と一言言い放ち、魔界城からすっくと立ちあがる、その姿はまさに英雄」

「それの話!? いやダメだって」

「ウリエルから聞いたで。少し盛ったけどほんまのことやん」

 

「ふ~ん。ソータ君、その話、わたし聞いてないんだけど」

「え、あ、いや、サキちゃん……」

 

 

 何を言ってくれてるんだこの天使たちは!

 もう本当に驚かされっぱなしだ。予告なしに転入して来たのも僕を驚かせるためなのだろう。だがせめて学校にいる時は僕がイニシアチブを取り、変なことにならないようにしなければ。

 もちろん、聖天調和(スカイハーモニー)によって下手に異能を使わせたりしないぞ。

 

 

 

 だが、今度は天使二人の方が驚くことになる!

 わずか一か月後、このクラスに新しい転校生が入ってきたことによって。

 

「マルちゃんでーーす! みんな、よろしくね! 好きなものわあ、ちょっぴり甘めのフルーツミルクでぇ、嫌いなのは生意気天使と脳筋天使!」

 

「な、何だと! 馬鹿な! どうしてマルコキ……」

「天野エルさんもよろしく! それ以上言っちゃうとぉ、打力砕塵(クラッシュパワー)☆」

 

 

 その二人だけではなく、僕やサキちゃんも唖然としてしまう。

 

 この二年四組はいったいどうなってしまうんだろう。凄いことになる未来しか見えない。

 面白いことだけは確実だけど、それでいいのか?

 

 

 

 ああ、天使たちの物語は、まだまだ終わりそうもない。

 

 

 

 

          ー 完 -

 

 

 

 

 




 
 
 
いかがでしたでしょうか
これで天使たちの戦記、完結します

途中からどんどんキャラたちに思い入れが深くなり、予定より少し長くなりました


ではまた、別の世界でお会いしましょう
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