案の定実験室につくと生徒達は少しも落ち着いた様子がなくがやがやと騒がしい。
きっとこれではまともに先生の声も聞こえないだろう。
「先生、やはり授業は中止すべきでは」
「うーん、でも今やめるってわけにも・・・」
そんな曖昧な態度だからなめられてしまうのだ。
溜息をつきながら致し方ないと生徒達に静かにするように注意する。
多少静かになったもののまだ落ち着きがない。
すると教室の端っこのほうで男子たちがふざけてマッチの火で女子を怖がらせているのが視線の端に入った。
アルコールも近くにおいてありとても危険である。
危ない、と思った時にはすでに遅く、怖がった女子がアルコールを倒してしまい机にアルコールが広がり、マッチの火に反応した。
瞬く間に火が燃えあがり、教室はパニックになる。
それは一度みた光景だった。
誰かが泣く声と真っ赤な炎。驚いて逃げる人やなんとかしようと駆けつける人達。
何もせず携帯のカメラを向けるだけの人。
その真ん中には血だらけになった父の姿。
どくんどくんと心臓の音が鳴り響きすくんで動けなくなった足。
たすけて、だれか、たすけて
あの日私を助けてくれる人はいなかった。
ただただ暗くて寒くて何もできない自分の無力さに打ちのめされたあの時と同じ。
「消火器をもってきてください!!はやく!!!」
誰も助けてくれなかったのに、目の前に黒が広がった。
瞬間白い煙が大きな音をたてた。消火器だ。
はっと顔をあげると彼が私をかばうようにたっていた。
「雨宮蓮・・・」
どうしてここに、と言いたくなったが今はそんなことを言っている場合ではない。
「っ消防車!!早く呼んでください!!」
消火活動が早かったため大きな火事になることもなくすぐに火は収まった。
だけどイライラが収まらない。
あれだけ授業をやめようとしなかった女教師はいざボヤ騒ぎが起きたときなにも対処しなかった(パニックになってできなかったというのが正しいが)
何か起きたときに対応できないのなら最初から真の言うことを聞いておくべきだったのだ。
いくら新任とはいえもう成人したいい大人なのにそれくらいのことがなぜわからない。
彼女に授業をまかせたほかの教師たちも同類だ。
面倒な生徒を不慣れな新任に任せるなんて無謀にもほどがある。
「あ、あの新島さん」
「言いましたよね、実験はやめるべきだって」
いらだちが抑えられずついに口にだしてしまう。
「あれだけ騒がしくてまともに指示の声も響かない状況でまともに授業できると思ったんですか?生徒に授業を受ける意思がないのならすぐにやり方を変えるべきでしょう。
すぐに消火できたからよかったものの命を落とす生徒だっていたかもしれないんです」
ごめんなさいと目に涙をためる教師に余計に苛立ちがつもる。
何故こんな当たり前のことを私の口から言わなくてはいけないのか。
「泣くくらいなら最初からしっかりなさってください。こんなことを生徒の口から言わせるなんて」
「もうやめておけ」
教師失格だといいかけたところで彼が止めに入った。
「もう十分反省してる。それに貴方が言わなくてもきっとこれから先生は罰則をうけるしこんな大勢の前でさらし者にして言うことじゃないでしょう。問題は生徒にもあったはず」
ハッと周りを見渡すと生徒達が気まずそうにこちらを見ている。
冷静さにかけていたのは自分のほうだった。
「・・・ごめんなさい。言葉が過ぎたわ」
「新島さん本当にごめんなさい。それと雨宮君もありがとう」
「いえ」