幼馴染みは顔がいい   作:しぃ君

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 お久しぶりです、私です、しぃです。
 社会人生活にもちょっとは慣れてきました。
 ……いや、わかんないけど。

 ともあれ、お気に入りとかUAとか諸々の記念if話です!
 楽しんでどうぞ!!

 p.s.
 また日間ランキングにのれました!!!
 ありあ39916221さん、☆10評価ありがとうございます!!!


雫if「もし君が、ずっと俺だけの太陽だったなら」

 一日の計は朝にあり、というが、湊は朝が大の苦手だった。

 低血圧やら、眠りの深さやら原因は色々とあるが、一番は夜中まで作業をしていることが多いからだろう。机に乱雑に置かれたノートやらペンタブレットがいい証拠である。

 

 

「……眠い」

 

 

 目を擦りながら、のろのろとスマホに手を伸ばし時計を確認すれば朝の七時半。一瞬、あと十分は寝れると考えた湊だったが、何故か開いている自室のドアの隙間から、聞き慣れた声が届いてくる。

 透き通るような綺麗な声。耳に優しい温かい声。彼なら顔を見なくても相手がわかる。下にいるのは、幼馴染みの日野森雫だ。

 

 

 恐らく、寝顔だけ写真に収めて朝食と昼食の準備に勤しんでいることだろう。流石の湊も、彼女だけを働かせて呑気に眠りこけるなんてできるわけもなく、パッパと寝間着から制服に着替えて、リビングに降りた。

 

 

「おはよう、雫」

 

「おはよう、みぃちゃん♪ もうすぐ朝ご飯できるから、テーブルを拭いて、コップとか出しておいてくれるかしら?」

 

「ん、わかった」

 

 

 いつからか、仕事の都合で家を空けがちな湊の家に、雫は顔を出して料理を作るようになった。それはもう、初めは酷いもので、IHにも関わらずフライパンから火を放ち。トースターを使えば食材を丸焦げにし、電子レンジで温めたものを爆発させていたが、今ではそんな珍事も五回に一回程度に収まり、可愛らしい水色のエプロンを制服の上から着る彼女の雰囲気は新妻といっても過言ではない。

 

 

 事実、恋人として付き合い始めてからの雫は、それはもう献身的に湊に尽くしており、彼女彼氏というより夫婦だった。

 

 

「……ふぁ〜」

 

「眠そうだけど、また夜更かししたの?」

 

「父さんから振られた仕事の納期が明後日までなんだよ。大体は終わったんだけど、まだ少し納得いかなくて……気付いたら結構時間が経っちゃっててさ」

 

「もう。ちゃんと寝なきゃダメよ? 体にも悪いんだから」

 

「善処するよ」

 

 

 軽い会話のキャッチボールを何度か繰り返せばテーブルの準備は終わり。雫が用意した朝食のサンドイッチとバナナヨーグルトが置かれ、コップには牛乳が注がれる。

 

 

「多くないか、サンドイッチ」

 

「食べきれない分はお昼ご飯にしようと思ったの。今日は天気もいいし屋上で食べましょう♪」

 

「いいな、それ。教室にいると司がうるさいし」

 

「あら、残念ね。司くんも誘おうと思ったのに……」

 

「……冗談だよ。抜け出したら抜け出したで帰ったらうるさいし、一緒に連れてくか」

 

「ふふ、そうね♪ それがいいわ!」

 

 

 流れていく日常の片隅。

 延々と続く微温湯。

 これはただ、日野森雫がずっとずっと月野海湊だけの太陽だったら、なんて。そんなもしも(IF)の物語。

 

 ◇

 

 同じ学校に行くのに何度も通った道を湊と雫は並んで歩いていく。そこにある会話は特別なものではなく、やれアイドルが引退しただの、新しいバラエティ番組のメインの子が可愛いだの、ありふれた話だ。

 好きや愛してるはなにも多く言うからいいのではない。

 自分のタイミングで、言いたいと想いが溢れた時に言うものである。

 

 

「そう言えば、母さんが頼んでたモデルのバイト代、昨日振り込んだって」

 

「そうなの? よかったわ! 明日、しぃちゃんとお買い物に行くのにお金が心許なくて……」

 

「しぃと? それなら、少しくらいなら俺が出しても──」

 

「ダメ。そう言うのは本当に困った時以外はしないって、決めたでしょ?」

 

「……だな。悪い、今のは忘れてくれ」

 

「ならいいの。そうだ、明日着ていく服、みぃちゃんが見繕ってくれない? おば様から貰った服、私一人だとコーディネートが少し難しくて……夜、お家にお邪魔するわね」

 

「それくらいなら構わないけど……」

 

 

 そうやって話していると、学校に着き、すれ違う知り合いと挨拶をしている間に教室の前まで来ていた。中からは、いつもの如く、朝から脳に響くほどの自己主張強めな声が漏れてくる。昔馴染みである二人がその声の主が司だと気付くのに、そう時間はかからなかった。

 

 

「……帰りたい」

 

「はいはい。ほら、早く行きましょう」

 

「はーはっはっは! 清々しい朝だな二人ともっ!!」

 

 

 手を引かれるまま教室に入った湊にすぐ、どうしようもなく腐れ縁な親友、司からの挨拶が飛んでくる。それが、なんとなくで始まる彼の学校生活スタートの合図。

 いつ、どこで会っても変わらぬテンションにある種の尊敬を覚えながらも、湊は無理に調子を上げることもなく無難な挨拶を返し、窓際の席に着く。雫はその隣だ。

 

 

 どういうわけか、雫はどんなに席替えをしても湊の隣に来る。ある時、そういうおまじないでもしてるのか、と彼が聞いた時は可愛らしく「秘密♪」と答えたが、あとから聞いた話によると他の女子に頼み込んで根回ししてもらっていたらしい。

 嬉しさと恥ずかしさ、そして溢れんばかりの愛おしさで悶絶したのは、まだ湊の記憶に新しいものだ。

 

 

「……ねぇ、みぃちゃん?」

 

「宿題なら見せないぞ」

 

「違うの! その、えっと……英語の教科書忘れちゃって……」

 

「はぁ。机、くっつければいいか?」

 

「ありがとう、みぃちゃん!」

 

「まったく、先週も忘れたばっかだろ。そろそろ先生に……先生に……」

 

「みぃちゃん?」

 

「数IIの教科書、忘れた……」

 

「……見せてあげようか?」

 

「助かる」

 

「私も助けられちゃったからおあいこね♪」

 

 

 頬笑みを浮かべ、少しだけ嬉しそうにする雫に釣られて、湊も笑を零した。

 限りある日常の、大切な一ページ。

 

 ◇

 

 腹が減っては戦ができぬ、という言葉があるように。

 お昼ご飯なしに、人は午後の時間を乗り越えられない。勉強然り、仕事然り。ポカポカなお日様の下、雫と司が和やかな空気で昼食をとる中、湊はうんうんと悩み、スマホと睨めっこをしていた。

 

 

「……ここはこう? いやでも、それだとバランスが……」

 

 

 画面に映る一枚の絵を見ては、ぶつぶつと意見を呟き、スマホで送る文章を書く指を滑らせる。相手は──絵名。昔馴染みであり、切れない縁で結ばれた親友のもう一人。

 絵に打ち込み、音楽サークルでイラスト担当として精を出す彼女が通うのは、湊たちが通う神山高校の夜間制。昼夜逆転に近い生活を送る絵名は、イラストの進捗に詰まった時、彼にテーマやらなんやらの情報を投げつけて意見を求めてくる。

 

 

 棘のある言葉に敏感な彼女に対して、アドバイスとして的確で尚且つ心を抉らない返しをするのは、難易度が高い。酷い時は一日に二回以上送られてきて、そういう時は大抵機嫌が悪いので、余計に言葉を選ぶ。

 

 

「あの様子からすると、絵名からか」

 

「みたいね。二人とも、昔から絵に対して真剣だったから……」

 

「だが、サンドイッチを頬張りながらスマホをいじるのは行儀が悪いな。よし! 悩んでいるなら、このオレが解決してみせよう!!」

 

「お、おい! スマホ取るな!」

 

「悩んでいるなら行動するのが一番だっ!! 書いたものをそのまま送るといい!」

 

「ふざけんな! 朝から呼び出された上に、新作パンケーキの列に二時間も待たされる身にもなれ!!」

 

「ふふふっ、二人とも仲がいいわねぇ〜♪」

 

 

 揉み合いの末、湊の指は運悪く送信ボタンの上に重なり、指摘指摘にアドバイスの強めな文章は無事絵名に送られてしまった。これには、お昼にチーズケーキを食べ、虫の居所がよかった彼女も数十秒後には怒りのコールを飛ばしたという。

 

 ◇

 

 夜も九時を回った頃。

 来ると言っていたのに中々来ない雫を、湊は自室で待っていた。夕食は程々に手を抜き、冷蔵庫にある具材をテキトーにぶち込んだ焼きそばをお腹に入れたくらいの彼だが、コーディネートと言われたら話は別。彼女に合う服を想像しながら、流行りを取り入れた組み合わせを考えていく。

 

 

 素材がいい分、正直に言ってしまえば、相当当てを外さない限り雫に似合わない服はない。シンプルな服でも十分だが、そうじゃない。

 今ある中で一番いいものを、湊は選んであげていのだ。

 増えていく待ち時間の中、想像を膨らませていると、静かな家にガチャリと玄関が開く音が鳴る。

 

 

 何着持ってくるか聞いてなかった湊だが、服は重いだろうと持ちに向かうと、そこには──お風呂上がりであろう雫がモジモジとした様子で、どこかよそよそしく立っていた。

 

 

「雫?」

 

「あっ、ごめんなさい、みぃちゃん。長風呂しちゃったみたいで遅くなっちゃって……」

 

「いや、いいけど……入らないのか?」

 

「……そうね。お邪魔します」

 

 

 今更緊張している、ということはないだろう。湊は高速で思考を回転させ、記憶を探る。

 今日はなにかの記念日だったか。

 普段と違う様子はなかったか。

 色々なものを掘り起こしても、わからなくて。ただただ、雫から漂う甘い甘い花の香りに脳が侵食されていく。

 

 

 いい意味でも、悪い意味でも湊は優しい。

 間違いは犯さない。犯さないが故に、歯痒くなる人もいる。そう、例えば、もしかしたら私に魅力が足りないのではないか、と考えてしまう怖がりな幼馴染みとか。

 言葉が詰まって、それでも体は動いて二人は自然と階段を上がる。彼の部屋に入れば、本当に二人きり。納期間近な両親は家におらず、湊と雫の二人だけ。

 

 

「今日、おば様たちは帰ってこないのよね?」

 

「締切近いしな、明後日までは帰ってこないはずだ」

 

「そう……そう。ねぇ、みぃちゃん。私と──」

 

 

 扉は閉まってしまった。

 声は遮られ、もう何も聞こえない。

 少年は理性を保ったかもしれないし、そうじゃないかもしれない。二人だけが、正解を知っている。




 このifは、雫がアイドルにならなかったらというifになります。
 雫がアイドルになってないので、勿論モアジャンのストーリーは起こりませんし、他の合同イベントも起こってるかは不明です。

 このifは幸せの上限値がどうがんばっても本編には勝てない世界線です。
 湊は雫の支えもあり、絵名と仲違いせず夢を追えてますし、両親の仕事を手伝ったりして技術を磨いています。
 色々と幸せではありますが、最大幸福値が本編には及びません。
 強いて言うなら、小さい幸せを積み重ねるifですね。

 まぁ、後書きが長いのもあれなので、今日はこの辺で。
 来週からは本格的に不定期なので、お暇になったら覗きに来てください!

──────────────────────────

 やって欲しいお題とかあれば、このマシュマロに!
 URL↓
https://marshmallow-qa.com/narushi2921?utm_medium=url_text&utm_source=promotion

 次回もお楽しみに!

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