私自身、最近はプロセカから離れていたので、色々設定にガバが起こっている可能性がありますが……ご容赦ください。
それでは、お楽しみに〜
◇湊◇
服飾の専門学校を卒業してから2年。
現在、24歳になった俺は両親の下で働きながら、デザイナーとしての道を歩んでいる。約2年、失敗や挫折を重ねてばかりの時間だった気もするが、着実な成長もあり年末も近付くこの時期にようやくメインデザイナーとして初の大仕事が決まった。
うちの
本音を言えば、こんな大きい仕事が初仕事なんて気が重いなんてレベルではないが……せっかく父さんが俺に任せてくれた仕事だ。無下にはできないし、無駄にしたくない。少なくとも、今まで積み上げた小さい仕事が自信としてある限り、そう簡単に折れるつもりもない。
問題があるとするなら、仕事とは全く関係ない、1つだけ。そう、たった1つだけ。
それは──雫との関係だ。
「……はぁ」
スマホに映る彼女とのやり取りはメッセージだけ。ここ最近、アイドルだけでなくモデルや女優としても引っ張りだこな雫は忙しく、会う機会もなければ通話の余裕もない。
……いや、これは嘘だな。ただ、お互いに変に気を使って、時間を作れてないだけだ。2人揃って普通とは違う職業を選んでる分、歩調はまちまち。きっと合わせようと思えばできるはずなのに、それを無意識に避けてる。
不安だから。
怖いから。
自信がないから。
あの頃のような絶対の自信が、今の俺にはない。雫が好きだ。大好きだ。今だって、彼女を大切に想っている。
想っているからこそ、離れていてわからない心の中身が怖くなってしまう。自信が持てなくなってしまう。ずっとそばに居たからこそあった、心が伝わる、言葉が届く無敵感がなくなっていく。
本当に俺は、面倒臭くて弱い人間だ。
最愛の人の誕生日すら誘えず、手が止まってしまう。必死に用意したプレゼントも、渡さなければ意味がないと理解しているのに、「会いたい」の一言が伝えられない。
そうやって、1人で悩んでいると、聞きなれた声が耳に響く。
「みーなーと!」
「うわっ! な、なんだ、母さんか……驚かせないでくれよ……」
「驚かせないでってあなたねぇ……余裕そうにスマホなんか眺めてるから喝を入れてあげたのよ。ほら、もう少ししたらクライアントとのミーティングなんだから、資料もってちゃっちゃと下に降りてきなさい」
「……もうそんな時間か」
「そんな時間よ。せっかく案も何個か用意して、隠し球も作ったんだから上手く使うの。わかった?」
「わかってる。これでも3年目なんだ、下手なヘマはしないよ」
「ならよろしい。……色々心配してることもあるだろうけど、あなたが選べばちゃんと上手くいくんだから、信じなさい自分を」
間を置いて言われた言葉は仕事に対してだったのか、それとも……違う意味があったのか。そそくさと去ってしまった母親に確かめることはできなかった。できなかったが、今はただやれることをやろうと、もう一度走り始めた。
◇雫◇
モアモアジャンブの活動が軌道に乗り、私たちが個々でお仕事を受けることも増えたのも、最近のこと。中々予定が合わず、それでも調整ができた私の誕生日配信。数日後に控えた本番のためにみんなはモアモアハウスに集まり、いつものように企画を練っていた。
恒例になっている企画とは別に、誕生日用の企画だったり、それ以降も使えるであろう企画を作っては直し、作っては直し会議は進んでいく。
みのりちゃんも、遥ちゃんも、愛莉ちゃんも、斎藤さんも、みんなみんな真剣に考えている中で……私は、どこか集中できずにいた。
理由は、わかってる。
みぃちゃんのことだ。お互い忙しいことを言い訳に、私たち2人の時間は離れれば離れるほど減っていった。お仕事が順調なのは嬉しいことだ。アイドルとして、デザイナーとして羽ばたく私たちにとって、それがあることは当たり前ではないから。
だけど、だけど、会えないのはやっぱり寂しいし、もどかしい。自分の立場がある分、余計に動きづらく、仕事をダメにしないためにも今は距離を開けるべきなのかも──なんて納得しようとしても、心はままならいもので、嫌だ嫌だと幼い子供のように叫んでいる。
なのに、それなのに、スマホに映るやり取りには誘いの言葉の1つも送れない。愛したいのに、愛されたいのに、最初の1歩が遠い。
あの頃から変わらない関係なのに、離れるだけでこんなにも臆病になってしまうなんて、知らなかった。知らなかったんだ、私は。
「……ちゃん! 雫ちゃん!」
「っ! あぁ、ごめんなさい、みのりちゃん。少しぼーっとしちゃってて……えっと、どこまで進んでしまったかしら?」
「ほぼほぼ企画はまとまったので、今は企画に必要な備品について話してました。……雫さん、大丈夫ですか? 最近、ドラマやらモデルのお仕事も立て込んでますし……レッスンの量も減らしてないですよね?」
「そうね……でも、今が踏ん張り時だと思うの。やれることはやれる範囲で色々やって、私たちの活動を届けていきたいし……」
「でも、それで雫が倒れちゃったら意味がないよ。ファンの人たちも心配しちゃう」
「……えぇ、わかってるわ」
そうだけどそうじゃない。
私は疲れてるかもしれないけど、そうじゃないの。私はただ、身勝手で、わがままな想いを募らせてるだけで……まるで、独り善がりな──
「雫」
「愛莉ちゃん……」
「さっさと荷物まとめなさい、お散歩に行くわよ、お散歩」
「でも、まだ会議が……」
無理矢理に、それでいて優しく私の手を引っ張っていく愛莉ちゃんを横目にみんなを見ると、みんなそれぞれ違う顔を浮かべながら私たちを見送っていた。
何も、言えなかった。
正直、それからのことはあまり憶えていない。ただ、溜め込んでしまったものをちょっとずつちょっとずつ吐き出して、愛莉ちゃんと話した。歩きながら、話した。
停滞して、未だ変わらないけれど離れてしまう距離。お互いの仕事を尊重してる、してるが故に強引になれず誘いの1つもできない臆病さ。
このままじゃ長年続いた関係にどこかヒビが入ってしまうんじゃないか。
このままじゃ自然と距離が離れて終わってしまうんじゃないか。
無茶苦茶になっているのをわかってても、話すしかなかった。
「それで……あんたはどうしたいの? 雫」
「……会いたいわ、みぃちゃんに」
「ならそれでいいじゃない。たった一言よ。アイツに伝えれば、ちゃんと迎えに来てくれる。そういう奴だったでしょ、湊って」
「でも、でも!」
「でもはなし! 悩んで、苦しんで、そのまま終わっちゃうくらいなら全部ぶちまけた方が絶対いいわ。逆に聞くけど、あんたの知る月野海湊は、大切な彼女より仕事を選ぶの? 違うでしょ? アイツは、何がなんでもやること全部片付けてあんたに会いに来るわ! 絶対にね!」
間違いない、そう言わんばかりの勝気な笑顔はとても眩しかった。いつになっても変わらない、私の憧れたアイドルの表情。
あぁ、ならきっと、間違いはない。
みぃちゃんなら──湊なら、私の所にきっと。
「うん、うん、そうよね。みぃちゃんなら、きっと」
「わざわざ翌日のお休みまでもらったんでしょ? ならゆっくりしなさい。誰も、あんた達の幸せを邪魔なんてしないんだから」
「えぇ……ありがとう、愛莉ちゃん! 私、誘ってみる!」
押された背中の熱のまま、私は走り出す。
待ち遠しい、誕生日に向けて。
◇湊◇
夜。雫の誕生日当日の夜、俺は帰るべき場所に走っていた。数分前に送られてきた、彼女からのメッセージ。「待ってる」、そのただ一言に込められた意味。
どこで、とか、いつ、とか。そんなの、一言からじゃわかるわけない。だと言うのに、俺は考えるよりも早く足を動かしていた。
家族よりも長く、同じ時を過したであろう家に夢中で走って、走って走って。
家に着いたら着いたで、息を整える間もなく、勢いよく玄関のドアを──開けた。
「おかえりなさい、みぃちゃん」
「……ただいま、雫」
会ったら言いたかったこと、言わなきゃいけなかったこと、色々とあったはずなのに、今は慣れ親しんだ挨拶だけが口をついた。懐かしい日に戻ったかのような、温かい感覚。
微笑む雫を見て、俺はただ引かれるままにリビングに入り、彼女が用意してくれた料理とお酒を食べて、飲んで、話した。冷たい板越しでは伝わらない温度を感じながら、言葉を重ねて、時間を忘れて。
忘れて、忘れても、時は流れてゆく。時計の針が12時を示そうかという時になってようやく、改めて向かい合った。
「雫」
「……なぁに、みぃちゃん?」
「まず先に、謝らせて欲しい。今日の誕生日……俺から誘えなくて、ごめん。仕事とか、自分のことで勝手に理由付けして……お前のことを避けてた」
「それは、私もよ。臆病になって、会いたいってちゃんと言えなかった。おかしいわよね、たったそれだけ伝えれば、こんな簡単に会えるのに」
「そう、だな、ほんと。怖がってばっかりだ。……でも、これだけは言わせて欲しい」
言葉にしなくちゃいけないことは、ちゃんと考えてきた。想うだけでは伝わらないことをちゃんと、口にするんだ。
「好きだよ、雫。君が産まれてきてくれた日を、一緒に祝わせてくれてありがとう。……これを、受け取って欲しい」
「これは……?」
「春用の服。仕事の合間に、作ってたんだ。……雫がいいならさ、これ着て花見でもいかないか? みんな誘って」
「……そうね、みんな誘って行きましょうか。みぃちゃんが作ってくれた服、みんなに自慢しないと!」
「自慢って……」
嬉しそうに笑う雫を見て、やっと、心が解けた気がした。
今なら、もう一歩、もう一歩だけ踏み出せる気がする。彼女の人生を背負う、彼女と共に歩む一歩を。
「もしも、もしもさ、雫がいいなら。雫が許してくれるなら、この先もずっと君の隣でこの日を祝わせて欲しい。君に似合うウェディングドレスを絶対に作ってみせるから、俺だけのために……着てくれませんか?」
「──えぇ、えぇ! こちらこそ、喜んでっ!」
プロポーズにも等しい俺の言葉に、雫は眩しいくらいの笑顔のまま頷き、勢いのまま飛びついてくる。熱く、強い抱擁。久しぶりに全身で感じる温度に、俺も自然と抱き締め返し、唇を重ねた。
どうか、こんな日がずっとずっと先まで続きますように。続けられますように。願い、誓う。
今でも、俺の幼馴染みは顔がいい。
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