いやぁ……ホワイトデー、終わりましたね。イベント話を投稿しようか迷ったんですけど、ネタが浮かばなかったし伏線張る意味もなくて書けませんでした。
基本的に、イベント話は私が思いついたら書くか必要だったら書くって感じなので、期待していた方がいたらすみません。
p.s.
かもなべさん☆9評価、冷たい雨さん☆9評価ありがとうございます!
もう、いつも通りを振る舞うことすらできなくなった雫を、湊が背負い帰ってから早一時間が経過した。今、彼の目の前に居るのは、精神状態が最悪な雫ではなく、妹である志歩だ。以前より一層不機嫌そうな表情で、湊を睨んでいる。
口を開けば文句が一つに、罵倒が五つは飛んできそうな表情だ。無言でいるのは彼女なりの優しさなのだろう。
「雫のことだけど、愛莉からメッセージがきてた。なんでも、一悶着あったらしい。詳しいことは書かれてないけど、お互いに地雷を踏みあった感じだ」
「お姉ちゃんの容態は?」
「しぃが帰ってくる前にシャワーには入らせて、今は自室で休ませてる。相当ずぶ濡れだったけど、そこまで問題はなさそう」
「ん……わかった」
姉である雫に冷たい態度をとることも多い志歩だが、されど彼女たちは姉妹だ。それ相応の距離感で接してたとしても、心配はするし、なにかと気にかける。
現に雫の容態が酷くないと聞いた時の志歩は、湊が見てもわかり易いくらいに、ほっとした表情をしていた。
「おばさん……
「無理。お母さん、仕事中は集中しててスマホ見たりしないし。お昼になったら見てくれるから、そこで折り返し連絡くると思う」
「なら、俺がいるのもお昼までだな。正直、今の雫の傍にいるのは、逆に辛いかもしれないし。しぃに任せるよ」
「……湊にい、変わったね。細かくはわかんないけど、変わった」
姉妹らしく、雫に似た柔らかい微笑みを浮かべて、志歩はそう言った。湊自身、自分がどう変わっているかはわからないが、少しは強くなったと思っている。弱い優しさは残したまま、強い優しさも手に入れようとしている。
矛盾しているようにも感じるが、片方だけ持っていても意味がないのだ。優しさを使い分けるのも、また優しさであり、一つだけじゃ肝心な時に役に立たない、なんてことが起こりうる。
全ての人を助けたい、なんて馬鹿げた理想は湊にない。湊の理想は、大切な人を絶対に助けること。どんなに間違えても、どんな道を選んでも、大切な人を幸せにする。後悔だけは、して欲しくない。
それが、湊の理想であり、想い。
だからだろうか、雫の嗚咽が頭から消えない。目を閉じたらクシャクシャになった表情が見えて、耳を澄ましたら苦しそうな声が聞こえる。
まだだ。まだ、湊は変わりきってない。ゴールは少し遠く、足取りは重い。けれど、止まるなんて選択肢を取るつもりは決してない。
「向き合いたいって思ったから、変わった。それだけだよ」
「……ねぇ、私も変われるかな?」
「さぁな。変われるか変われないかなんて、俺にはわかんないよ。ただ、変わりたいって思ったなら、一歩踏み出してみればいいんじゃないか? 悪い方向に行くか、いい方向に行くかなんて考えずに。歩み寄ればきっと、変わるさ」
志歩は志歩で違うものを抱えている。湊には、それをどうこうする術はないし、聞き出す気もない。何故なら、彼は信じているから。
芯の強い妹分は、自分が無理に動かなくても、ちょっと背中を押してやれば大丈夫だと。
◇
日は過ぎ、翌日。
湊は、類や司とよく来るファミレスに、友人から呼び出されていた。相手は言わずもがな、愛莉である。
正面に向かい合う二人の表情は対照的で、湊は穏やかな、愛莉は申し訳なさそうな顔をしている。
「で、呼んだ理由は?」
「……その、今日、雫が休んだから、大丈夫かなって聞きたくて。メッセージも既読にならないから、心配で」
「雨に濡れてびしょ濡れだったからな、念の為に休んだだけだよ。体調的には問題ない、体調的には、な」
「あの子……わたしのこと何か言ってた?」
「いや、なにも」
モヤモヤと暗くなる雰囲気は、昨日のメッセージの時点で察していた湊だが、ここまでダメージが大きいとは流石に予想外だった。すれ違いどころか、捻れて絡まって、千切れる寸前に見える。
励ましてやりたい気持ちと、こいつの所為で、という感情が同時に湧いて、湊の喉を詰まらせる。
優しい彼も、聖人ではない。大切な人を傷付けられれば、怒るのは当然、憎みもする。しかし、今回の件は、間に入るべき自分の不甲斐なさも問題の一つだと認識している。
故に、湊は愛莉を責めることはせず、かと言って過度に慰めることもない。悪意と善意、その二つが譲歩できるギリギリのラインで留まる。
もっとも、湊の悪意と善意には天と地ほどの差があり、どう足掻いても善意に寄ってしまうのだが。
「最低よね、わたし。アイドルだったのに、希望を与える側の存在だったのに、自分の親友を裏切って、傷付けるなんて……」
「それに関しては同感だ。やっちゃいけないことだったと思う。けど、愛莉には愛莉にしかわからない苦しみがあった。真実を知っていても、心の傷は簡単にはわからない」
「……怒らないのね。アンタは」
「怒ってるよ。でも、雫だけが大切な訳じゃない。一番は雫でも、他に大切な人はいる。愛莉もその一人ってだけだよ。それに──お前だけの責任じゃない」
湊の言葉は、全部が本音だった。
悪意を善意で捩じ伏せたわけでもなければ、善意だけで動くわけでもない。全てを引っ括めた自分の想いを、愛莉にぶつけた。
そして、それを聞いた愛莉は呆れたように笑って、こう言った。
「優しいわよね、ホントに。雫が湊を好きになる理由、わかった気がする。アンタ、天然のたらしよ」
「失礼だな。俺はたらしじゃない、人がいいだけだ」
「それ、自分で言う?」
「言ったもん勝ちだろ。ほら、バイトのシフト代わってもらってまで来たんだ。なにか話してくれよ、あるだろ、面白い話題」
「はいはい、わかったわよ。──そうね、最近会って練習に付き合ってる、アイドル志望の後輩の話、なんてどう?」
「いいね、頼むよ」
その後、二人は談笑し、重かった空気は消えた。愛莉の心も少しだけ軽くなった。
◇
愛莉と会った日の夜。雫の散歩に付き合う形で、湊は幼い頃によく遊びに来ていた公園に足を運んでいた。
昨日よりかマシになったとはいえ、雫の精神は若干不安定で、手は湊と握ったまま離さないし、その手も僅かに震えている。まるで子供のように、置いて行かないでとせがんでるように彼は感じた。
会話はなく、ただ互いの体温だけが主張し合う。
遊具を見て懐かしさを感じる余裕も、今の雫にはないらしく、弱々しくベンチに腰をかけた。それに倣うように湊もベンチに腰を下ろし、辺りを見渡す。
枯葉が舞い散り、所々に積もっている。
土遊びで泥団子を作り、おままごとをした砂場。並んでこいだブランコに、一緒に乗ったシーソー。何度も滑った滑り台に、高い所に登っては夕日を眺めたジャングルジム。
何気ない日常が過去になり、思い出になる。振り返ってみれば、あの頃はみんな笑顔だったな、と感じられる。湊が、そんな過ぎ去ったものに浸っていると、握っていた手が引かれ、隣から声をかけられる。
雫が、真剣な表情で湊に向き合っていた。
「みぃちゃん」
「……どうした?」
「みぃちゃん」
「……だから、どうした?」
「話が、あるの」
「あぁ、わかった。聞くよ、全部聞く」
「長くないわ。一つ、報告があるだけだから」
報告、その一言に、湊は強く反応し最悪な未来が想像する。ありえないと心が叫んで、おかしくないと脳が警鐘を鳴らす。
耳を塞げ、声を聞くな、理解するな。脳の命令は強くなり、鼓動が早くなっていく。
聞いたら、絶望するかもしれない。けれど、聞かなかったら絶望することすらできない。雫を、理解できない。
残された選択は、相も変わらず一つだけ。
NOなんてものは、存在してはいけない。
だから、雫の口からその言葉が放たれるのは必然だった。
「私ね──アイドルを辞めたの」
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