幼馴染みは顔がいい   作:しぃ君

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 ゴールデンウィークに大量の課題を貰った私です、しぃです。
 最近やってるのは海外ドラマ『スーパーナチュラル』のオマージュ作品の制作だったり、卒業制作だったり公募用原稿だったり色々です。
 辛いですけど、私は生きてます。


 今回もさっくり読めるレベルですが、どうぞお楽しみください!


再会と邂逅、先にある問題

 近所では有名なお嬢様学校である、宮益坂女子学園。例外のない限り、原則男子禁制であり、許可証がないと入校すら許されない女の園。そんな、思春期男子からしたら夢の楽園を、湊は一人居心地悪そうな表情で歩いていた。

 

 

(……やっぱり、何度来ても慣れないな、ここの空気は)

 

 

 幼馴染みである雫と志歩が通ってる関係上、湊は極稀ではあるがこの学園に顔を出す。理由はその時々で違うが、大体は雫の所為だ。

 仕事の送迎、部活動のサポート、酷い時は学園の教師陣から呼ばれることもしばしばある。その度に来ては、雫の隣を歩くので、彼女を慕う下級生から、親の敵でも見るような殺意の籠った視線を向けられるし、異性で顔も悪くないことから、好奇の眼差しを向けられることも少なくない。

 

 

 もっとも、好奇の眼差しは雫が微笑むだけで明後日の方向に散らしてしまうので意味はないが。

 

 

「えっと……雫と愛莉がいるのは──あ」

 

「あ」

 

 

 偶然の再会。

 運よく。いや、運悪く。湊は、知り合い以上友人未満の人物と目が合った。可愛らしい制服に似合わぬ、大きな弓道具を持った知り合いと。

 朝比奈(あさひな)まふゆ、それが彼女の名前だ。ポニーテールに纏められた、本紫色のウェーブがかった髪と、淡藤色から本紫色へのグラデーションを描いたように見える綺麗な瞳を持つ少女。

 端正な顔立ちをしており、微笑みを絶やさない。外見だけなら、雫と同等のポテンシャルがある。そんな少女。

 

 

 湊にとっては、雫の友人兼部活仲間であり、何度もお世話になった人物だが、どんなに頑張っても彼女のことは好きになれない。

 何故なら、目の肥えた彼には見えてしまうから。笑顔の仮面の下にある、虚無の素顔が。見惚れた者を吸い込む、深淵を落とし込んだ瞳が。見えてしまうから。

 できるなら会いたくなかったが、会ってしまったものはしょうがない。湊は感情をできる限り胃の底に押し込み、まふゆの方に歩いていった。

 

 

「お久しぶりです、朝比奈さん。雫がいつも世話になってます」

 

「こちらこそ、日野森さんには親しくさせてもらってるので、気にしないで下さい。それより、月野海さんはどうしてここに?」

 

「えっと……色々あって。今後は放課後に、ちょくちょくこっちに来ることになったんです」

 

「そうなんですね。……あぁ、日野森さんなら、今日は部活に来ないそうなので、まだ教室にいると思いますよ。確か、クラスは2-Dだったかな」

 

「ありがとうございます。……それじゃあ、俺はこれで」

 

 

 世間話、もとい挨拶もそこそこに湊は走り去っていく。

 それを見送ったまふゆは、一瞬、光の点っていない瞳で彼の背中を見つめたあと、ため息を吐いて弓道場に歩いていった。

 

 ◇

 

 夕暮れの屋上。

 あの後、なんとか雫たちと合流した湊は、三人のダンスを真剣な表情で見守っていた。スピーカーから流れる音楽に合わせて、ステップを踏む彼女たちの動きを見逃すことなく、見守っていた。

 

 

 そして、その中で湊がわかったことだが。

 ついこの間まで現役だった雫は問題ない。

 ブランクがあって心配だと言っていた愛莉も、今のところ大丈夫。

 問題があるとすれば、みのりだ。まだまだ未熟な部分があることはわかっていたつもりだが、それでも尚酷い。心の揺らぎがモロにブレとして現れている。

 

 

 素質は十分にあるみのりだが、このままやってもいい方向に転ぶことはない。集中できなければ事故で体を壊すことだってありうる。

 アイドルのレッスンに携わったことの多くある湊は、そういう人間が自然と壊れていくことを理解している。だからこそ、音楽を止めた。

 

 

「ストップ。やめだやめ。このままやっても、疲れるだけだ意味がない」

 

「はぁ……はぁ……湊さん……。わたし、まだ!」

 

「桐谷のことだろ? 言わなくてもわかるよ。俺だって気になる。けど、それで練習に集中できないようじゃダメだ。怪我をするのがお前だけならまだしも、他の奴にも迷惑をかけるかもしれないだろ?」

 

「すみません……」

 

「怒ってるわけじゃない。寧ろ、あんなこと言われて、気にするなってのが無理だしな」

 

「あの……日野森先輩も、桃井先輩もすみません! わたしのせいで……」

 

「大丈夫よ、みのりちゃん。遥ちゃんのことは、私たちも気になるもの」

 

「まぁ、それが歌や踊りに響くかは経験よ。みのりにはまだなくてもしょうがないものなの」

 

 

 そう言って、謝るみのりを二人が慰める中、湊は先を見ていた。遥はみのりにとってのキーパーソン。みのりの目標であり憧れ。だがしかし、今はそれが枷になっている。

 取り外す鍵があればいいが、彼からしたら皆目見当がつかない。雫のレッスンの効率を上げるためにも、二人以上の協力者は絶対に必要だし、みのりの夢だって応援したい。

 

 

 当面の目標は、みのりの枷を外す鍵を見つけるか、それか遥の真実を知ることだ。どちらかでも達成できれば、作用しあって全員で前に進める。

 雫や愛莉を救ってくれた恩返しだって、夢じゃない。

 

 

 みんなで未来で笑うために、今できる最善の行動を模索する湊。彼の前に、ヒントは唐突に落とされた。

 

 ◇

 

 レッスンを切り上げて、屋上から降りてきた四人。気を紛らわせるように、話題をみのりのオーディション事情について変えて話していると、校門前で一人の少女に出会った。両端で纏められた焦げ茶色の髪と、新緑色の瞳が特徴の可愛らしい少女。

 見覚えがあった。湊とみのりには、見覚えがあった。目の前に現れた彼女は『ASRUN』に所属していた元アイドル。名前はそう、──真衣(まい)

 

 

「えっ!?!? ASRUNの元メンバーの真衣ちゃん!?!? ど、どど、どうしてここに真衣ちゃんが!? あ、あの! わたし、アルバムで遥ちゃんとふたりで歌ってた『虹色バラメータ』が大好きなんです!! 遥ちゃんと真衣ちゃん、ふたりともすっごく息ぴったりで……! そ、それに、それに……!」

 

「え、えーっと……あ、ありがとう……?」

 

「……限界オタクムーブがすごいな、みのりは」

 

「ファンとして、雫のことを話してる時のアンタもあんな感じよ?」

 

「マジで? ……いや、違う違う、そうじゃない。……なぁ、真衣ちゃん、君はどうしてここにいるの?」

 

「……その……えっと……」

 

「……もしかして、遥ちゃんに会いに来たの?」

 

 

 こくり、と雫の言葉に頷く真衣。その表情は、怯えや不安が溢れていて、見ていてとても気分のいいものじゃなかった。だから湊は、愛莉とみのりに声をかけ、雫を留守役に置いて、遥を探しに駆け出したのだが……残念なことに、彼女は既に下校していたらしく、校内に姿はなかった。

 空振りしたことを伝えると、真衣はまた悲しそうに笑って去ろうとする。

 踏み込んではいけない領域だと、空気が物語っていたがそんなの関係ない。

 

 

 今やるべきことは一つだった。

 

 

「話、聞かせてくれないか?」

 

「……………………」

 

「このまま帰っても、ずっとモヤモヤするし。寝覚めが悪そうだから、よければ話して欲しい。真衣ちゃんが、桐谷に話したかったことを」

 

「……私の所為なんです。遥ちゃんが、アイドルを辞めたのは」

 

 

 泣かないように、真衣が必死に振り絞って出した言葉は、その場に居た全員を動揺させるのに容易くないものだった。




 なな、なんと! 皆さんのお陰で一万UAを超えました!!!
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 本編の投稿には影響のないように制作しますので御容赦を。

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