本編だけで見ればユニットストーリー20話分……流石ですね、私!
……嘘です、全く計算してないし、ただの偶然です。ごめんなさい!
p,s,
紅乃葉さん☆9評価ありがとうございます!
お陰で、またまた日間ランキングにちょこっと乗れました!
元々、桐谷遥は義務感の強い性格で、アイドルとしての自分に誇りを持っていた。希望を届ける、その仕事に誇りを持っていた。
真衣を追い詰めて、壊してしまうまでは。
全てが変わった。遥の中で、全てが変わってしまった。
義務感に強迫観念が加わり、希望を届けたいという前向きな気持ちは、希望を届けられなければアイドルでいる資格がないという後ろ向きな気持ちに変わる。
そして、その強迫観念は少しずつ彼女の心を蝕み。
「ステージに上がろうとするとね、もう、足が動かないの」
「そんな……」
「事務所に相談して、病院にも行った。でも、心の問題だから、自分自身で考え方を変えるしかないって言われて。専門家に相談してみたり、本を読んだりしたけど……やっぱり同じ。それでも、私なりに頑張ったんだけどね。もう一度ステージに立てるように、頑張って、頑張って……でも、もういいの。全部受け入れて、諦めようって、そう決めたから」
どうしようもない、そう言って諦める遥の姿を見て。湊の脳裏には過去の自分が浮かんだ。重ねてはいけない、重ねるレベルにも達していなかった過去の自分を、今の彼女に重ねる。
夢だったものを、自分の才能を言い訳に諦めて、投げ捨てた。違う部分はあれど、同じ部分がある。
桐谷遥が、夢を与える彼女が、自分自身の夢を諦めようとしてること。
彼女の苦痛を知る湊なら、彼女の心の痛みがわかる湊なら、何も言わず諦めさせるのが一番優しい選択だ。しかし、優しい選択が、必ずしも誰かを幸せにできるとは限らない。
公園で雫の提案を拒んだ時も、そうだった。あれではダメだ、あれでは幸せになれないと、彼は察していた。だからこそ、口にした言葉だった。
状況的には変わらない。
月野海湊は、知っている。夢は捨てても、心に残り続ける。それへの思いが強ければ強いほど、恋や愛と同じ猛毒になる。痛みは和らがない、痛みは消えてくれない。どんなに幸せになろうとしても、心のどこかにひっかかり足を止める。
言わなければ、そう思った瞬間には口を開いていた。
「桐谷は、それで本当にいいのか?」
「……よくないって言ったら、何か変わるんですか?」
「さぁ……変わらないかも。けど、諦めてもそれは同じだ。お前の夢は絶対に消えてくれない、お前の心を殺し続ける。何年経っても消えてくれなくて、心のどこかにひっかかる。断言できるな。桐谷、お前は絶対に後悔する」
「……先輩、頑張ってもどうにもならないことだって、あるんですよ?」
悲痛な叫びが、穏やかな声で吐き出される。その言葉は、普通の十六歳の少女が出すものじゃなかった。
頑張って、頑張って、頑張り続けて、その先にある絶望を知った桐谷遥だから言えた言葉だった。
何かを口に出そうとして、その言葉が意味のないものだとわかって、みのりは苦しそうに拳を握る。
そして、先程とは逆に、諦めたことのある愛莉と雫が、逃げようとする遥の足を止める言葉を続けた。
「待ちなさいよ! たしかに……たしかに、簡単にはいかないかもしれないけど! でも、まだ諦めなくてもいいでしょう!? アンタまだ16なのよ!? まだわからないじゃない! もう無理だって思っても、まだ何か、変わることはあるかもしれないわ!」
「……私たちには、遥ちゃんの苦しさはわからないわ。でも、遥ちゃんは本当に……本当に、それでいいの? 自分の言葉を、自分の選択が正しいって……言える?」
「……………………ごめんなさい。もう、帰らなくちゃ」
投げかけられた言葉に対する遥の対応は、無かった。肯定も否定も、何もしない。無だった。
◇
「俺も、バカだよな」
自分の言葉に刺されるなんてブーメランも甚だしい。湊は自分自身を嘲笑うように、自室でペンタブレットを撫でる。
あれから、遥は去り。空気の悪さから、何もせずに皆解散した。
夕焼けが眩しく光る中にいても、彼女の心の闇を拭う方法はわからず、カーテンを閉め切った暗い部屋の中で湊は考える。
救う建前なら、幾らでもあった。
意識を逸らすだけなら、やりようはあったのに、彼は救うことを選んだ。一番大きい理由は雫の為であれど、理由を聞いたら遥の為に──自分自身の為に救いたいと思う気持ちが強くなる。
「……どうすれば、良いんだろう」
悩んでいると、ふと、KAITOに言われた言葉を思い出した。
『怖いなら怖いままでいいよ、大事なのは一歩踏み出すことなんだ。小さくてもいい、他人にどう思われようと構わないで、大切な人のために一歩踏み出そう! それができたら、あとは難しくない。大丈夫、勇気は自分自身の想いで大きくできる。それに、心配しなくていい。君は既に一歩踏み出してるんだから』
もし、遥が一歩踏み出す切欠を作れたなら。
もし、怖くても苦しくても、その一歩を踏み出せる──押してあげられたなら。
変われる可能性は0じゃない。
やろうと思えば、1%を100%にもできる。
「切欠。……そうか、切欠があれば変われる……かも」
役者は揃ってる。
舞台だってセカイがある。
切欠はやろうと思えば、何度でも作れる環境がある。
「……やれることは、全部やってやる」
即座にパソコンの電源を入れ、湊は計画を書き出していった。
その頃、セカイではみのりが、遥の本当の想いに気付き、湊と同じくある計画を思い付いた。大切に思ってる、大好きだと感じてる、青いペンライトの海を、ステージから見せるという計画を。
次回もお楽しみに!
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本日の九時頃には、kasyopaさんとのアイデア供給によってできた短編二作を投稿予定です!
そちらも、お楽しみに!!
お気に入り200人突破記念短編(現在のシチュエーション)変わる可能性あり
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悲恋if(ヒロインは雫)
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嫉妬if(ヒロインは雫)
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温泉回(個別orモモジャン)
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水着回(個別orモモジャン)