幼馴染みは顔がいい   作:しぃ君

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 皆様、お待たせしました、一週間ぶりですね、私です、しぃです。
 なんか、最近はモンハンやってプロセカやってウマ娘やってのサイクルができつつあってやばいです。
 体が3個くらい欲しい……

 あぁ、あと、今回でプロローグは終わりになります。いやぁ……長かった。
 最後にはサービスシーン……という名の、私の妄想の発露があるので、やばいと思ったらブラウザバッグを推奨します。R17.9、みたいな感じなんで。


 p.s.
 Wattaさん並びに、タコ壺さん。☆9評価ありがとうございます!
 ごゆっくり本編をお楽しみください!!!


やっぱり、幼馴染みは顔がいい

 約一ヶ月の時は流れるように時が過ぎ、日常の朝から始まった物語も、エンドロールに差し掛かる。

 雫とのおはよう。

 みのりとの初めまして。

 愛莉との久しぶり。

 遥とのこんにちは。

 

 

 セカイと、リンとの出会い。

 類との考察。

 瑞希との問答。

 KAITOとの自白。

 雫とのぶつかり──告白。

 

 

 あったことを上げていけばキリがないくらい、様々なことが湊に起こった。

 大円団の一歩手前。

 ようやく辿り着いた、幸せの結末(ハッピーエンド)

 

 ◇

 

 セカイでライブが行われた翌日の夜。

 月明かりと街灯が道路を照らす時間。バイト帰りの湊の下に、雫は一人で訪れた。話したいことがあって、伝えたいこともあって、けれどこれだけは誰かに頼るのも嫌で、散々迷いながらも、丁度彼が帰る時間に着くことができた。

 

 

 しかし、冬場も冬場。都会の寒さは、田舎ほどには及ばずとも、身に刺さる。真っ赤鼻に、冷たそうな白い手で自分の前に現れた雫を見て、湊は呆れたようにため息を吐き、自分用に持ってきていたマフラーを首にかけて、コートのポッケに入れていたココアを手渡した。

 

 

「ここまで来なくても、家で待ってればよかっただろ」

 

「みぃちゃんに一秒でも早く会いたかったの。……これが理由じゃ、ダメ?」

 

「……………………ダメだ。今度からは、家で待っててくれ。電話ならしてきてもいいから」

 

「……イジワル」

 

「はいはい、イジワルだよ。ほら、ココアが冷めないうちに、家に帰るぞ」

 

「じゃあ……手、握って欲しいわ」

 

「ん」

 

 

 他愛ない会話の端々に好意を覗かせる雫に対し、湊は若干の照れを見せながらも、言葉を返す。握った手の感触が簡単に折れそうなくらい繊細で、柔らかくて、冷たい。

 待たせたかな、という罪悪感と。

 手を握れて嬉しいな、という幸福感が同時に湧いて、せめぎ合う。

 勿論、罪悪感が適うはずもなく、彼の心は温かい幸福感に満たされ、柔らかい表情を浮かべた。そして、それを横目に見た雫も嬉しくなって、クスリと笑みを零す。

 

 

 家に帰るまでの間、色々なことを話した。

 みのりや遥、愛莉と一緒にアイドルやることになったこと。

 そのグループ名が『MORE MORE JUMP!』になったこと。

 事務所に所属するかも未定だが、それでも希望を届けるために走り出したこと。

 そして──できるなら、湊にも自分たちの活動を手伝って欲しいということ。

 

 

「……お願い、できる?」

 

「雫がそうして欲しいなら、俺はなんだってやるよ。みのりたちのことも、放っておけないしな」

 

「やっぱり、みぃちゃんはみぃちゃんね。変わらないわ、昔から。大きくなっても、全然。優しいままの──私の湊」

 

 

 恋する乙女でありながら、アイドルでも居続ける傲慢を突き通す。囁き声で彼の名前を呼ぶ姿が、全てを物語る。

 握られた手に込める力を、雫は少しだけ強くした。

 強く、した。

 

 ◇

 

 別れるのが惜しかった。

 手を離したくなかった。

 あともうちょっと、一緒にいたかった。

 そうやって理由を積んで、家に着いても、湊と雫はソファに隣り合って座っていた。握られていた手はソファの上で重なるだけになってしまったが、それでも構わないと言わんばかりに、二人は喋り続ける。

 

 

 話さなければいけない、大切な話しがあったから。

 

 

「なぁ、雫? これから先、雫はどうしたい?」

 

「私は……どうしたいのかしら。よくわからないわ。ただ、みぃちゃんと一緒に居たい。ずっとずっと、一緒に居たい。あなたの隣に、私は居たいの」

 

「ずっとずっと一緒に……か。俺もそうだよ。俺も雫の隣に居たい。──けど、世間体を考えたなら、アイドルに恋愛事は御法度。事務所のOKがあっても、業界全体に暗黙の了解がある」

 

「それはっ……わかってるわ。でも、みぃちゃんと一緒に居たい! 手だって繋ぎたいし、抱き締めて欲しい! 好きだって言いたいし、言って欲しいし! キスだって……したい」

 

「……じゃあ、付き合うか」

 

 

 簡単な結論だった。

 単純な答えだった。

 この問い掛けで返ってくる言葉を、湊は予想していた。だからこそ、あっさりとその終着点を口にする。

 一緒に居たいなら、手を繋ぎたいなら、抱き締められたいなら、好きだって言いたいなら、キスをしたいなら、付き合えばいい。

 

 

 以前の彼なら出せなかった回答。雫の幸せの為なら、自分も自分以外の何もかもを犠牲にしても構わないと覚悟した、月野海湊だからできる回答。

 けれど、そこでは終わらない。グループを組むなら、仲間に迷惑はかけるのは最低の行為だ。

 

 

「ほ、本当にいいの……!?」

 

「一つの条件さえクリアできれば、な」

 

「その条件は……なに?」

 

「簡単だよ。お互いの家以外では、過度な接触を避ける。適度な距離感を保つこと。……まぁ、外に出かけるのは難しくなるけど、この条件をクリアできれば問題は起こらない。最低限、付き合うことは親御さんやしぃ、みのりたちには伝えないとだけど……それでもいいか?」

 

「えぇ! えぇ! みぃちゃんと一緒に居られるなら構わないわ!」

 

 

 子供のようにキャッキャっと喜び抱き着いてくる雫を宥め、湊はほっと胸を撫で下ろした。

 納得してくれるかなんて、わからなかった。

 さっき提示した条件が譲歩できる最高点。あれ以上は、雫のアイドル生命に危険が及ぶ。いや、正直に言えば、先程の条件でも危険はすぐ傍にある。スキャンダルとして文春にすっぱ抜かれてもおかしくない。

 

 

 結局、最後の最後もエゴだった。

 彼は──湊は、自分の手で、日野森雫を幸せにしたかったのだ。

 

 

「雫……好きだよ」

 

「私も、好きよ。大好きよ、みぃちゃん……」

 

 

 重なっていた手の指を絡めて、唇の距離を詰めていく。雫が待ち、湊が動く。

 付き合った経験はなくても、幼馴染みのしたいことはなんとなくわかる。初めては自分から、という湊の意思を雫は汲み取り、ほんの少し欲を抑えた。

 近付けば近付くほど、互いの整った顔立ちが、二人の視界を埋め尽くす。顔がいい、そうとしか表現できない。

 

 

 五感も、思考も、感情も。全てが、想い人に支配され、染められていく。

 唇が触れた瞬間、なにもかもが溶けていった。

 柔らかくて温かい唇の感触が、ほのかに香る花の甘い匂いが、蕩けるような蜜の味が、脳を犯す。

 

 

 理性の糸が先に切れたのは──想いを諦めていた湊ではなく、想いを押し潰してきた雫だった。優しく、それでいて大胆に、彼をソファに押し倒し、一旦唇を離す。

 

 

「みぃ、ちゃん……? 今は、我慢しなくて、良いのよね? 私、もっとキスがしたいわ」

 

「……………………」

 

「ふふっ、可愛いわ。目が蕩けちゃってる……良いってことよね?」

 

「……………………」

 

 

 なにも、言えなかった。

 ペロリと唇を舐めたその色っぽい表情が、服越しに伝わる体温が、湊の理性を追い詰めていく。

 

 

 その日、長年続いた幼馴染みの関係は一度終わり、新たな関係に生まれ変わった。背伸び彼氏と同い年のお姉さん彼女という、不思議な関係に。

 もし、一つ言えることがあるなら、今後の二人にバットエンドがありえなくなった、ただそれだけである。

 

 

 




 追伸。
 翌日の神山高校は、湊が首周りに絆創膏をつけまくって登校したため、大騒ぎだったとかなんとか。めでたしめでたし。

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 アンケートを取ってる200人記念短編は、ifENDの方向で構想を進めています。誰のifかは……お楽しみに、ということで!

 次回もお楽しみに!

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