馬鹿の一つ覚えみたいにする挨拶も恒例になってきましたかね?
まぁ、それは、それとして、またまた皆さんのお陰で日間ランキングにのることができました! ありがとうございます!
因みに、今回の顔がいい四コマはマシュマロに届いていたシチュエーションを少し改変したものになります。弄ったのはこちらの都合なのです……すみません。
最後には、アンケートも追加してあるので、投票お願い致します!
p.s.
夏型さん☆10評価、ミラさん☆9評価、ありがとうございます!
今後とも、よろしくお願いします!
昼休み。廊下の掲示板に、これでもかと貼りだされた文化祭の出し物のポスターを、湊は一人ぼーっと眺めていた。その視線は、数あるポスターの中でも一際目立つ、後夜祭のステージについて書かれたものに注がれている。
食い入るようでもなく、かと言って興味がないという訳でもない、微妙な眼差しは彼らしい。
しかし、そんな彼らしい行為は、懐かしい声によって遮られた。
「珍しいな、お前がこんなの見てるなんて」
「……お前の方こそ、冬弥と一緒じゃないなんて珍しい」
どこか皮肉を込めた言い回しで、湊が言葉を返した相手は、一個下の後輩であり昔馴染みの友人、
整った顔立ちだが、湊に向けられた表情は、表情筋を使っていない無愛想な顔で、二人の関係性が伺える。
「そんないつも一緒なわけねぇだろ。……で、何見てんだよ?」
「後夜祭のステージ。司が出るって言ってたから、どんなのか俺も見てみようかなって」
「げっ……司センパイ出るのかよ。どうりで、冬弥がなんか言ってたわけだ」
「だろうな、冬弥は司のこと尊敬してるし。お前だって、俺のこと尊敬してくれてもいいんだぞ?」
「はっ。嫌なこった。誰が、お前みたいな奴を尊敬するか」
毒と皮肉を吐きあいながら、湊と彰人はポツポツと会話を交わす。
特段、人との会話が嫌いでも好きでもない二人。会話の間に間はあれど、完全に途切れることはなく、流れるように会話は続く。
「……結局、お前がビビットストリートに居た時は、一回もイベントで歌ったりはしなかったよな」
「まぁ……な。俺があそこで歌やダンスをやってた理由は、単に教える為に上手くなりたかったからだ。誰かと競い合いたい心もなければ、誰かに何かを伝えたいと思ったこともない」
「そうかよ。ほんと、腹立つなその言い方」
「別に、お前だって俺と似たタイプだろ? 俺は努力し続ける才能なんてなかったけどさ」
苦笑する湊がそう言うと、彰人はばつが悪いと言わんばかりに顔を逸らす。
悲しいことに、二人は互いの違いを知っていた。がむしゃらに努力し続けられる人間と、そうでない人間。諦めず這い上がろうと踏ん張れる人間と、届かない背中に折れて諦めてしまう人間。
ビビットストリートという、音楽好きが集まる場所で湊はその成長速度故に天才だと揶揄されたが、そんなことはなかった。あくまで一が二になるのが速かっただけ。わかる人間にはわかる、徹底的な努力型のタイプ。
たった一年間しかいなかったが、いなくなったあとも、彼の存在を惜しいという人間は後を絶たなかった。だが、もう一度誘おうとする人間もいなかった。
その程度なのだ。
どんなに頑張っても、その程度が関の山。
本物の天才なら、どこかのバカが強引にでも引き入れようとする。けれど、湊は違う。湊は本物ではない。
今の彼は、本物になろうと足掻く偽物だ。
「彰人。もし、俺がこれに出るって言ったら、付き合ってくれるか?」
「……半端な真似しないなら、やってやるよ」
「そっか……。ありがと、ちょっと気が楽になった。挑戦は向き合う為の第一歩だしな」
「どういたしまして」
「あぁ……あと──」
「絵名のやつなら元気でやってる。夜中に偶にうるさいけど」
「わかった。……気が向いたら、よろしく伝えといてくれ」
「気が向いたら、な」
別れの挨拶もなしに、彰人が去っていき、湊はまた一人になる。
正直、彼のやっていることは激務に激務を上乗せする愚行だが、必要なことだ。やらなければいけないことだ。
自分の大切なものと、向き合うために。
◇
天馬司は夢を見ていた。
幼い頃……と言っても、数年前の夢だ。妹である咲希が今より病弱で、病院から殆ど出られなかった頃の夢。
彼は毎日、と言わずとも、行ける日は必ずと言っていいほど咲希が入院している病院に行っていた。勿論、面会時間いっぱいまで喋り、日も暮れた夜の電車に乗って帰ることも少なくなかった。
湊もそれに付き合うことは少なくなかったが、そこまでの頻度はない。彼には彼の大切な人がいて、司もそれを知っていたから無理に付き合わせることもしなかった。
日々スターになるため精進してるとは言え、長時間の電車移動に加え、日中は普通に学校に通ってる身。流石の司にも体力の限界と言うものがある。そんな時、彼を支えたのは言うまでもなく、湊だった。
感謝を断り、恩を押し付けることもなく、湊は司をフォローした。寝不足だとわかれば、強引に眠らせてノートを取り。体調不良に気付けば、肩を貸して保健室まで連れて行き。熱がある中、無理にでも病院に通おうとする司を、力づくで帰らせた。
他にも、細かいながらも数え切れない恩が、司にはあった。
互いの夢を真剣に語り合うことも、楽しかったし、嬉しかった。スターになる、なんていう荒唐無稽な夢を、湊は笑わずに聞き。何気なく言った「いつかお前の服も作れたらいいな」と言う言葉も、司は忘れていない。
湊が苦しくて悲しくて、記憶の底に置いてきた言葉を、司だけが覚えている。
「……懐かしい夢だったな」
文化祭準備のため机に向かっていた司が、疲れ故に眠り、見た夢。
彼にとって、湊はただ幼馴染みの枠に収まらない。類とは違う、無二の親友とも言うべき存在。違う道でありながら、夢に向かおうとする仲間。
「なぁ、湊。お前は、あの時の言葉を覚えているか?」
手に撮った写真立てに飾られた、過去の彼を見ながら、司は呟く。
そこに写っているのは、妹である咲希の幼馴染み、一歌と穂波と志歩。加えて、志歩の姉である雫と、雫の幼馴染みである湊。最後に、司自身。
いつか行った花見、夜桜の木下で撮った一枚。咲希を囲むように座る一歌たちと、湊をサンドするように立つ司と雫。
雫に手を握られ、司に肩を抱かれた湊は仏頂面だが、悪くない表情をしていた。
顔がいい四コマ「寒がりな雫さんと暑がりな湊くん」
夏、それは暑さ恨み、涼しさを求める季節。
月野海湊は暑がりである。エアコンの設定はドライ、温度は22℃まで下げる徹底ぶりを見せる暑がりである。しかし、対照的に雫は寒がりである。元々線が細い彼女は、冷えやすい体質なのか、あまり寒いのが得意ではない。
だからこそ、湊は雫が家に来る時は、基本的には設定温度を上げて、隣に座ってくる彼女に膝掛けをかけるのが習慣だ。そして、それは今日も今日とて変わることはない。
「……いつもありがとう、みぃちゃん」
「体壊したら、不味いからな。これくらい普通だ」
「でも、みぃちゃんはちょっと暑いんじゃない?」
「それは……」
心配そうでありながら、どこか小悪魔のような笑みを浮かべる雫。そんな彼女の笑みに湊の心はザワつき、言葉が詰まる。
思考がストップし、無防備な彼に、雫が噛みつかないはずがなく、そっと腕を絡めて自分の体に寄せる。
「お、おい!」
「二人きりの時は我慢しない、そういう約束でしょ? それに、私の体って冷たいから、気持ちいいんじゃないかしら?」
「それは……そうだけど……」
「……湊は、ズルい私のこと、嫌い?」
「っぅ〜〜!! そうじゃなくて……当たって……」
口篭る湊に対して、雫はクスクスと笑みを零す。
攻められるのにとことん弱い彼が、今から立て直せる訳もなく、ジリジリと理性を削られていく。
この後、耳たぶを甘噛みされ、耳元で囁かれたのを最後に、湊の記憶は飛んだ。
起きたら膝枕されていたとは、後の談である。
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