幼馴染みは顔がいい   作:しぃ君

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 お待たせしました、変わらず一週間ぶりの私です、しぃです。
 夏休みも半分以上が終わり、学生の私は課題に追われていますが、更新はしっかりしますよー!

 今回は申し訳ありませんが、四コマの方はお休みです。
 来週は定期更新以外にも記念短編の更新を予定しておりますので、悪しからず。
 投票の結果を踏まえまして、来週中に投稿されるのは温泉回になります。一番人気は嫉妬ifなのですが、嫉妬が嫉妬の定義から外れる可能性があるので、こちらを選ばせていただきました。

 本編とは違いシリアスのないゆったりとしたイチャラブ話になりますので、気長にお待ちください。

 それでは、長話は終わりに、本編をお楽しみください!


独りじゃないと気付いて

『ロミオ 〜・ザ・バトルロイヤル〜』

 この物語は、9人のロミオが ひとりの女性を愛したことから始まる殺しあいだ。死闘に次ぐ死闘。真実の愛とは何か。時に怒り、焦り、そして迷いながらも問い続けるロミオ達。 そして、ジュリエットの決断。

 真のロミオが決まるクライマックスでは、 涙を禁じ得ない展開が──というのが、大部分のあらすじだ。

 

 

 もっとも、その涙を禁じえない部分の展開は、世界を救うためにロミオが宇宙に旅立ち、概念存在になるというものなのだが。愛するジュリエットのために自己を犠牲にするシーン、だと考えれば悲恋と言えなくもない。

 

 

 湊が演じるキャラは、原作の『ロミオとジュリエット』との中では、ロミオの親友役であり死して物語の転換点を作った『マキューシオ』をベースに作られた、『最強槍のロミオ』。

 ヒロインであるジュリエットのことを慕ってはいるが、親友である『最強剣のロミオ』と並ぶ目的もあり、バトルロイヤルに参加した。

 

 

 友愛に重きを置いており、できるなら最後は『最強剣のロミオ』に勝ちを譲り、二人で添い遂げて欲しいと思っている。そんな設定を持った役。

 演劇や演技を学ぶ中で、湊は役を深く理解しその身に下ろす、憑依型の技法に目をつけた。天性の才能がものをいう、最初の一歩が一番難しいとも言われる技法。極めれば極めるほど、人を壊しかねない悪魔の御業。

 

 

 自分の才能を誰よりも理解しているからこそ、それを手に取った。一歩だけなら、一歩でいいなら、可能性は十分にあったから。

 原作における役と、司が形作った役を比較し、吸収する。セリフの一つ一つの意味を汲み取り、本当に役がそこにあるように感情を篭める。

 自分のための努力ではなく、頼ってくれた親友のための努力。

 

 

 約一ヶ月の歩みは無駄にならず、湊は堂々と演劇の世界のドアをノックした。

 

 ◇

 

 湊が過労により倒れ、熟睡した翌日。

 予定通り文化祭は始まり、劇の幕は上がる。

 最初は迷惑をかけたことを謝っていた湊だったが、文化祭準備期間の行動を見ていたクラスメイトから温かい言葉を貰い、舞台に登った。

 

 

 劇の進みは練習通り──いや、それ以上に順調に進んだ。

 後に司から聞いた話によれば、湊が倒れたあと、心配しながらも負けてられないと皆が奮起したらしい。衣装班も、小道具大道具班も、演劇班も、全員が彼に感化されたとか。

 

 

「……見せ場だな」

 

「あぁ。実質、俺とお前の共演のラストシーンだ。物語的にはクライマックスだな」

 

「信じてるぞ、湊」

 

「頑張るよ、司」

 

 

 物語のクライマックス。世界を救おうと、ジュリエットの幸せを守ろうと宇宙へ行く『最強剣のロミオ』とそれを悲しみながらも見送る『最強槍のロミオ』。

 山場も山場、本命のシーン。

 劇の中で一二を争う外せない、ワンシーン。

 これを滑らせたら、全てが水の泡になると言っても過言ではない、詰まった一幕。

 

 

 それが今、始まった。

 

 

「どうしても、行ってしまうのかい『最強剣のロミオ』──いいや、我が友よ」

 

「そうだ。私は行かなければいけない。愛するジュリエットが生きる、この世界を救うため。済まない『最強槍のロミオ』──いいや、我が友『マキューシオ』よ」

 

「そうか……ジュリエットは、哀しむだろうね」

 

「お前なら、彼女を任せてもいい。頼む」

 

 

 真剣な声音で、よく通るセリフが室内に響く。

 落ち着きと哀しみのあるBGMと、ただただ夜空を描いた背景が、その全て語っていた。『最強剣のロミオ』は尊き自己犠牲により、死して世界を守ろうとしている。愛する人が生きる世界を、守ろうとしている。

 そこに恐怖はなく、幸せを願う優しき心だけがあった。

 

 

 止められる人間は『マキューシオ』、ただ一人。『最強槍のロミオ』として、隣を歩んできた親友、ただ一人。

 望みも想いも全てを知り、歩んできた親友が一人。

 この後の流れは、決まっている。

 

 

『マキューシオ』が友の願いを聞き届け、見送る。それだけだ。

 苦しそうに、息辛そうに、言の葉を受け止め、送り出す。

 望まれた答えを持って、ジュリエットの下へ向かう。

 けれど、「本当にそれでいいのか?」と、『マキューシオ()』は思った。誰よりも友を思い、ジュリエットのことも慕う彼だからこそ、思った。

 

 

 自分が傷付いて、それで上手くいって、はいお終いのトゥルーエンドなんて、あっていいのか。いいわけない。当たり前だ。

 傷付いた人を見て、傷付く人がいる。それはきっと一人じゃない。

 多くの人を傷付けるし、大切な人の幸せを、叶えられなくなってしまう。

 

 

 確かに、命は自分のものだ。誰のものでもなく、自分のものだ。

 だが、大切な人がいる命は、大切な人と想い合っている人の命は、必ずしもその人だけのものではない。欠けてはならないピース。

 湊が気付きながら、見て見ぬ振りをせざるを得なかった考えを、『マキューシオ』は否定した。彼の声で。

 

 

「嫌だ」

 

「……マキューシオ?」

 

「君を行かせたくない。君の居なくなった世界で、ジュリエットは幸せになれないんだ。私じゃ──僕じゃ、幸せにできないんだよ」

 

「……………………」

 

「そんな自己犠牲、誰も望んではない! 僕も! ジュリエットも! 散っていったロミオたちも! 誰も望んでないんだ! 考えようよ!! 時間はまだある! 何も浮かばなくても、最期の時間を誰でもない君のために使ってくれよ! 我が友!」

 

 

 篭めた。

 乗せた。

 出し切った。

 セリフに全部を乗っけて、吐き出した。

 

 

 アドリブだ。司も答えなんて用意してない。

 簡単には答えられない、最悪の演技。

 のめり込み、下ろした未完成の憑依型故の失敗。

 後悔の感情が浮かばなかったのは、根底にあった湊の本心だったからなのか、はたまた──

 

 

「ありがとう」

 

「……我が友」

 

「私を想ってくれて、ありがとう。そんな優しい君だから、彼女を任せられる。私にはない、君のやり方で、彼女の幸せを作ってあげてくれ。マキューシオ」

 

「酷いな……君は。そんなことを言われたら、なにも返せないじゃないか。僕が貰ったものも、言葉も」

 

「今は泣かないでくれ、マキューシオ。飛び立つその時まで、私は君と笑っていたい」

 

「嫌な代役を頼まれたよ、全く」

 

 

 完璧な返し。

 紛れもないロミオの言葉で、司は返した。

 見間違えるはずはないくらい、天馬司は輝くスターだった。

 星空に飛び立ち、去ったあとも、照らす光が消えないような、スターだった。

 

 ◇

 

 幕がおり、舞台裏。

 最初の公演が無事終わり、皆が安心する中、湊は一人申し訳なさそうな表情で司の方に歩いていった。

 

 

「……さっきは悪い。急にアドリブ入れて。マキューシオだったら、ああ言うかなって思ってさ……」

 

「ふふっ、心配しなくとオレはスターだ! アドリブの一つや二つ即興で対応できなくては、やっていけん!」

 

「そうか。……なら、よかった」

 

「……それに、役を演じるお前が思ったことなら一理ある。今後の公演ではあのセリフを台本に加えよう。少し時間は伸びるかもしれんが、問題はないだろう」

 

「ありがとう」

 

「気にするな、お前の演技はよかった。あの言葉、お前自身にも届いたんじゃないか?」

 

 

 そう言うと、司はトンと湊の胸を叩き、笑った。

 軽くない言葉に、どこか懐かしい笑顔が、温かくて。湊はようやくわかった。

 

 

(すっと……支えられてたんだ、俺)

 

 

 戦う時はいつだって一人。

 努力する時は削って、補って、また一人。

 苦しい時も辛い時も一人。

 頼っていなかったといえば嘘になるが、ずっと支えられてることに、湊は気付いていなかった。

 

 

 誰かを支えたいとは思っても、誰かに支えて欲しいとは思わなかったし、積極的に頼りたいとも思わなかった。

 違ったのだ。最初から寄りかかって、支えられていたのは自分だった。

 支えているつもりが、支えられていた。

 気付いたと思ったことには、完璧には気付いていなかった。

 

 

 進んだ距離はここまで来ても本当に一歩だけで、やっと周りを見渡せた。

 走るだけで精一杯な自分と、あのセリフでさよならを言えた。

 

 

「……お前のお姫様も来てる、会ってきたらどうだ?」

 

「本当、余計なお世話だよ……司」

 

 

 照れ隠しかお返しか、湊は司の胸を軽く叩いて、教室の後ろで劇を見ていた雫の下に向かった。余所行きの変装をして、志歩と共に佇む彼女。チラッと見えた涙の粒を誰にも見せないように、昨日の心配を払うように、強く抱き締めた。

 

 

「みぃ……ちゃん……?」

 

「心配かけて、本当にごめん。二度と、あんなことしないから」

 

「……絶対に?」

 

「絶対に、しない」

 

「ありがとう。そう言ってくれるだけで、嬉しいわ。でも……ここじゃ、少し不味いわね?」

 

「っ!? 悪い……」

 

「いいのよ。痛いくらい抱き締められて、好きを感じられたから……」

 

「──二人とも? 言っとくけど、隣に私、居るからね?」

 

 

 居心地が悪そうな表情で呟いた志歩の言葉で、二人は即座に我に帰り、見つめ合うのをやめて、一旦教室の外に出る。

 次の公演は丁度一時間後。少しくらいなら案内ができることは事前に伝えていたので、適度な距離感で廊下を歩く。

 衣装を着たままなのは面倒だが、脱ぐわけにもいかないので、湊が気を使いながら歩く中、三人の間で会話が流れていった。

 

 

「司くんが宇宙に行くっていう時のみぃちゃんの演技、すごくよかったわ。あのシーンは本物の気がした」

 

「本物……?」

 

「本気の言葉だって、思ったの。マキューシオだけの想いじゃないって」

 

「……わからない、けど。ずっと支えられてたことには、気付けたよ」 

 

「誰に?」

 

「みんなにかな。結局、独りじゃなにもできなかった……」

 

「大丈夫よ……安心して、みぃちゃん。あなたが前を向けば、あなたが周りを見渡せば、最高の仲間がいるから。きっと、あなたを助けてくれる。独りでやろうとしないで、頼ればいいの。誰も見捨てたりなんか、しないから」

 

 

 穏やかな微笑みを浮かべて、雫はそう言った。

 朝日に照らされた彼女が、湊にはいつもより一段と輝いて見える。

 歯車の回りが、少しだけ変わり始め、空に月が残っていた。




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 次回もお楽しみに!

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