幼馴染みは顔がいい   作:しぃ君

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 お久しぶりです、相も変わらず週一投稿を続ける私です、しぃです。
 Twitterでは呟きましたが、記念短編は、私の都合により少し先の投稿になります。プロットを作ってないってのもあるんですけど、学校の課題が忙しくて……えぇ。

 サボってたツケが回ってきて大忙しです。
 ……まぁ、いらない近況報告はこれまでに、今回のお話をどうぞ!


仲間と笑って、最高のステージ

 全三回に及ぶ公演も無事終了し、日も傾きはじめた頃。誰もが後夜祭に向けての準備に精を出し、賑やかなムードが学園を覆っていた。

 そんな中で、湊だけが独り、ぼーっと廊下を歩いている。

 飛び入り参加もOKなステージが開始されるまでは少し余裕があり、かと言って独りだと特にやることもなく。劇で着ていた衣装から、文化祭用のクラスTシャツに着替え、歩いていた。

 

 

 類を呼びに行くと言って消えた司を追うでもなく、劇を見に来ていた彰人たちを探すでもなく、雫に言われた言葉の意味を考えながら、彼は独り彷徨っていた。

 階段を上がったと思ったら、下りて。

 渡り廊下を進んだと思ったら、戻って。

 いつの間にか、屋上に続く扉の前にやってきていた。

 

 

 扉の奥からは、楽しげな声が漏れていた。

 面倒臭そうだったり、自信満々だったり、色々な種類はあれど、根底には楽しさがある声が、聞こえてきた。

 整理できない考えを隅に追いやって、惹かれるままに扉を開けて、湊は外に出る。そこには、見覚えのある顔が並んでいた。

 

 

「おや、君までここに来るなんて。探しに行く手間が省けたね、司くん?」

 

「だなっ! 今日は共演だけだったが、ステージの上で輝く俺を、とくとお前にみせてやろう! 湊!!」

 

「うるさ……。ねぇ、湊。コイツのことどうにかしてよ、幼馴染みなんでしょ?」

 

「劇、お疲れ様でした、湊先輩。最後のシーンの演技、凄く感動しました。司先輩から聞きましたけど、あれはアドリブだったんですよね? 土壇場であそこまで役にはまったセリフを考えられるなんて……」

 

「へぇ〜、湊さんのところの劇、そんなにすごかったんだ? なら、見に行けばよかったなぁ……」

 

「いやぁ……冬弥くんのは少し過大評価混じってるからあんまり……まぁ、面白かったのは事実だけどさ」

 

「あぁ……えっと……」

 

 

 注目が一斉に自分に向き、湊が困惑する中。彰人だけが、揺れることのない真っ直ぐな視線で、彼を射抜いていた。

 苛立ちか、はたまた心配か。

 向けられる視線の意味を考えてる間に会話は流れて行き。そろそろステージの時間だと、屋上から皆が出ていく。

 

 

 二人──湊と彰人を残して。

 

 

「出るんだろ?」

 

「……一応な」

 

「面倒臭いけど、オレも司センパイのやつに出るから、やるとしたらその後だ。しっかり、覚悟決めとけよ」

 

「あぁ……ありがとな」

 

 

 湊の放った礼の言葉を聞こえなかったふりするように、彰人も皆の背中を追う。

 それはきっと、彼なりの優しさの表れだった。

 

 ◇

 

 ステージの舞台袖。

 後夜祭のため、わざわざ校庭に建てられた、代々使われているそのステージの舞台袖で、湊は独り目を閉じ呼吸を整えていた。

 目を開ければ、ステージの上で輝く司や、バックコーラスの彰人と冬弥が見えて、後ろを振り向けば舞台裏で演出家として励む類が見える。そんな場所で、湊は独り目を瞑る。

 

 

 数分もしない内に、自分の番が回ってきて、上がったことのない。上がることのないはずだった舞台に上がる。今まで自分が見上げるだけだった舞台に、劇の時とは客の数も比にならない舞台に上がる。

 怖い。

 隣に彰人が居ても、怖い。

 考えるだけで、足が震える。

 

 

 劇の時にはなかった感情が、心をざわつかせ、思考を掻き乱す。

 踏み出せない。たった一歩が重い。そんな弱音が零れそうになったその時、聞こえるはずのない声が、届いた。

 

 

『みぃちゃんなら、大丈夫!』

 

 

 急いで目を開けて振り返る湊。だがしかし、彼女がいるわけはなく、そこに居たのは誤魔化すような笑みを浮かべた瑞希だけだった。奥を見れば、一緒に後夜祭を回ると言っていた杏もおり、湊の困惑は余計に広がる。

 一体どうして。

 その言葉が出るより早く、類が口を開いた。

 

 

「湊くん、そろそろ出番だ。大丈夫かい?」

 

「……わからない」

 

「驚いた。先輩でも弱音って吐くもんなんだね」

 

「当たり前だろ。俺だって人間だ。弱音の一つや二つ、吐く時もあるさ」

 

「じゃあ……さ。ボクも一緒に歌おうか? 弟くんだけじゃ、不安なんでしょ?」

 

「それは──」

 

 

 流石にいいよ、そう続く言葉は喉元で抑え込み、考えた。

 湊は、このままじゃダメなことをわかってる。独りじゃないと言えど、彰人だけでは難しいことなんて、わかってる。

 頼ればいい。

 厚意を素直に受け取って、瑞希を頼ればいい。他の皆を、頼ればいい。

 

 

 誰も断らない。誰も拒まない。

 彼の周りに集まった人間は、彼に少なからず救われているから。

 だから、一言、言えばいい。『助けて欲しい』の、一言を

 

 

「……頼っても、いいか?」

 

「ふふっ、もちろん! 任せてよ! 歌にはそこそこ自信あるからさ」

 

「なら、僕も頼られようかな? 君とは前から、一緒にショーをやってみたいと思ってたからね」

 

「類まで……」

 

 

 流れとして一度作られてしまえば、そこからは湊の心も楽になり、司と冬弥も加えた即席の六人チームが完成した。

 個性の塊のようなチームだが、湊が中心に立ち、司が前に出て、類と瑞希が全体の潤滑油となり、彰人と冬弥がバックアップする形は理想的だった。

 

 

「ぶっつけ本番だけど、いけるか?」

 

「問題などあるわけないだろう! スターだからな!」

 

「僕も平気だよ。少しワクワクするくらいだ」

 

「いつでもOKだよ。気張っていこー」

 

「俺も大丈夫です。喉は温まってますから」

 

「中途半端はなしだからな。本気でやってやるよ」

 

 

 返ってきた言葉に笑みを漏らし、湊は仲間を引連れて、舞台袖から駆け抜けていく。

 夕暮れ。夕陽と月が顔を合わせる時間。

 最高の歌声が響き渡った。




 顔がいい四コマ「寝起き」
 
 月野海湊は朝に弱い。
 特に寝起きの機嫌は振れ方が激しく、起こしてる側がクジを引いている気分を味わえるレベルだ。……もっとも、雫か志歩が起こした場合は、殆どの場合上機嫌で、ふにゃふにゃとした彼を見ることができる。
 
 
 それがこれだ。
 
 
「みぃちゃん? 朝ご飯何食べたい?」
 
「……キムチ鍋」
 
「鍋はちょっと難しいわね……他に食べたいのはある?」
 
「……焼きそば」
 
「それならなんとかなりそう! ちょっと待っててね、すぐ作ってくるから」
 
「……コーヒーはブラック」
 
「牛乳は後で持ってくから待っててね〜♪」
 
 
 基本的に、この時の湊に苦いものや辛いもの、味の濃いものは御法度。食べたらまず間違いなく目が覚めて、真顔に戻ってしまうため、雫は絶対にそれをしない。
 加えて、ふにゃふにゃ湊は口数が減り、自分の欲求を偽らないため、ストレートな感想がポンポン出てくる。
 
 
 褒め殺しで雫と志歩を赤面させた回数は数知れず。
 昔の湊に近いが、それ以上に素直な所為で、困り事も多い。
 今回はうとうとして、イスに座って船を漕いでいるが、偶に料理中の雫に後ろから抱き着いて甘い声で「好き」を囁くという、いつもならありえない行動を取ってくるため要注意なのである。
 
 
「みぃちゃん、どう? 今日の焼きそばは美味しい?」
 
「……美味い」
 
「そう。よかった──」
 
「雫の作る料理は、全部好き」
 
「…………もう」
 
「……雫? 顔、赤いぞ?」
 
「みぃちゃんの所為なんだから……」
 
「……?」
 
 
 そんなこんなで、訳もわからず焼きそばを啜るふにゃふにゃ湊。
 今日も月野海家は平和です。

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 これにて、文化祭編は終了です!
 次回は幕間を挟んで、オリイベになりますのでお楽しみに!

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 次回もお楽しみに!

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 歌われた楽曲『Blessing』

お気に入り200人突破記念短編(現在のシチュエーション)変わる可能性あり

  • 悲恋if(ヒロインは雫)
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