幼馴染みは顔がいい   作:しぃ君

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 一昨日ぶりですね、私です、しぃです。
 はい。記念短編から二日と経ってませんが、定期更新なので忘れられず更新はされます。寝違えて首と肩が痛かったですが、湿布貼ってお昼寝したら治りました。化学の力ってすごい。

 というわけで、オリイベ第二話。
 告げられたチャンスに、湊くんはどう動きどう考えるのか?
 本編を楽しんでお読みください!


期待に欠けた月、夜を照らせない太陽

 まるで夢を見ているかのような、そんな現実。突然訪れたチャンスに、湊はただただ驚くしかなかった。

 今まで、こんなことはなかったのに。いきなり、いきなりだ。誠は仕事を見せることはあれど、手伝わせたり家族の輪の中に仕事の話を持ち出す人じゃなかった。

 それが、今になってなんで。そうやって、湊は理解のできない現実から逃避するように考える。

 

 

「……驚くのも無理はないか。だが、手伝いと言っても大きな仕事は振らない。最初は雑用のような細かい作業ばかりになるし、リテイクも何度も厳しくするだろう。でも、それを乗り越えて私たちが一人前だと判断すれば、一から十までお前だけの大きな仕事を振りたいと思ってる」

 

「俺だけの、仕事」

 

「あぁ、そうだ」

 

「……………………」

 

 

 頷く誠。

 項垂れる湊。

 二人は対照的だった。誠は大人として、父親として力強い立ち振る舞いを。湊は子供らしく、息子らしく弱々しい立ち姿をしていた。

 親の心子知らず、子の心親知らず。例え血が繋がっていようと、心なんて不鮮明なものは計り知れない。けれど、親には親なりの勘があり、誠のそれも鈍ってはいなかった。

 

 

 昔、本当に昔、幼い頃にしたように。湊の頭をポンポンと撫でて、優しく言った。

 

 

「迷っていい、悩んでいい。お前の人生だ。未来を決める権利はお前にあるんだ、湊」

 

「父さん……」

 

「一週間、待てる。仕事自体も切羽詰まってないからな。だから、答えが決まったら、教えてくれ。どんなものでも、私はお前の意志を尊重したい」

 

「……うん、ありがと」

 

 

 最後にくしゃくしゃと髪を乱すように撫でて、誠は穏やかな微笑みを浮かべながら部屋を出た。

 言葉にしない信頼が、湊の肩にのしかかる。

 意図なんてないし、誠からしたら普通の言葉。先を行く人間として、当たり前の言葉だったが、彼はそう受け止められなかった。

 

 

 ミシミシと、心が軋む音がした。

 

 ◇

 

 夕食の時間。家族団欒の時間。大切な温かい時間の中で、湊だけが上の空だった。友香と雫が作った大好きな鍋の味も、食卓を囲んで話したことも、何一つ覚えていない。

 頭の中には、誠から言われた言葉だけが強く残っていて、それ以外が入り込む余地がなかった。隣にいる雫の言葉さえも。

 

 

「……わかんねぇよ、なにも」

 

 

 自室のベッドの上で、考える。

 この先どうするか。

 どうすればいいのか。

 迷い、悩むフリをする頭で、考える。

 後悔のない選択なんてなくて、後悔が少ない選択肢もなくて。

 デザイナーとして、夢を叶える道か。

 マネージャーやプロデューサーとしてみんなの活動を支える、夢を与える道か。道の左右を選ぶような、正解のない問題。

 

 

「昔から、父さんは認めてくれてたっけ……」

 

 

 中途半端な才能を、誠は認めてくれていた。今と変わらず不器用で、素直に湊を褒めることはなかったけれど、いつだって「悪くない」と、言ってくれた。もっとも、それだけでは終わらず、色々な指摘とアドバイスもしてくれた。

 記憶に蓋をしていただけで、見ないようにしていただけで。湊の周りにいる人は誰一人、彼の才能を否定しなかった。寧ろ、凄いと褒めてくれていたはずだ。

 

 

 いつからか、その言葉を真っ直ぐ受け止められなくなって、年相応の無垢も消えて、逃げてるだけになった。

 信頼が怖かった。

 信用が怖かった。

 崩れる瞬間も、無くなる瞬間も予測できない、形のない押し付けがのしかかるようになって。逃避を始めた。

 

 

 誰よりも才能を欲しがってるくせに、誰よりも自分の才能を嫌って、呪って、否定したのは紛れもない湊自身。弱かった。積もり積もった悪意のない期待に対して、彼の心はあまりにも弱く、脆かった。

 全部全部フリだけで。

 今もきっと答えが見つかって欲しくなくて、考えるフリだけをしている。

 

 

 無意味な逃避。無意味な迷走。

 その考えは、やっと想い合えた雫の心さえ揺さぶってしまうというのに。

 

 

「お待たせ、みぃちゃん。お風呂上がったから、入って大丈夫よ」

 

「…………ん、あぁ。すぐ、はいる」

 

 

 焦点の合わない淀んだ瞳。血のように赤い、淀んだ瞳。そんな瞳を、雫が見逃すわけはなく、自分の横を抜けようとする湊の肩を掴み、止まらせた。

 

 

「……何かあったのよね? 全部、話して」

 

「面白くないぞ?」

 

「そんなの関係ない! 私はみぃちゃんが心配なの! だから……抱え込まないで、ちゃんと話して」

 

「……わかった、わかったから。肩掴むの止めてくれ。自分で向き合いたい」

 

「……はい」

 

 

 優しく手を離した雫を見て、ようやく湊も正気に戻る。今、目の前にいる彼女が、自分よりも辛そうに無理をして笑おうとしていたから。そうさせてしまった自分が情けなくて、白状するように全部を話した。

 とは言っても、話したのは誠との会話の部分だけ。本当のことは、話さなかった。話せなかった。

 

 

 相槌を打つ雫が真剣なのも、自身のことを大事に想っていてくれてることもわかっていても、湊が話せるわけもなかった。

 何故なら、それは雫を傷付ける行為だから。彼女から貰った期待も、湊の中では少なくない。それに救われることはあったし、それがあったからこそ今があるとはいえ、未だに重くのしかかってる一つでもある。

 

 

 どれだけ自分が苦しくても、どれだけ自分が辛くても。できるなら、彼女に傷付いて欲しくない。わがままだ。支えられていると気付いていながらも、独りじゃないと気付いていながらも、湊はまだわがままを捨てられない。

 

 

「そう……そんなことが」

 

「正直、どうすればいいか、わからないんだ。お前を──お前たちを世界一のアイドルにするって言ったのも忘れてないし、夢だって簡単に諦めきれるものでもない。だってこれは、お前たちが思い出させてくれた夢だから」

 

「……同じになってしまうけど、みぃちゃんの好きにしていいと思うの。それがどんな選択でも、みんなきっと納得してくれるわ。悲しくても、私たちはアイドルだもの。人の夢を応援して、後押しするのがお仕事だもの。だから、大丈夫」

 

 

 違う。

 大丈夫なんかじゃない。

 雫は怖がっている。湊に訪れる変化に、怖がっている。それを必死に隠して、背中を押している。それがわからないほど、湊は堕ちていなくて、吐きそうになった。

 

 

 視界の端で震える手が、微かに歪む表情が、全てを物語っている。押し殺して、自分の幸せを願う彼女がとても愛おしくて、苦しい。

 なにもしないなんてできなくて、このままではいられなくて、それでも逃げたくて、力の上手く入らない手で湊は雫を抱き締める。

 

 

 窓の外、空には十六夜の月が物悲しく、淡い光で二人を照らしていた。




 顔がいい四コマ「遠足のおやつとうまい棒」

 お昼休みの屋上。
 神山高校の三馬鹿トリオーーもとい変人トップスリーは、昼食をとって特にやることもなく駄弁っていた。


「なぁ……小学校の頃、遠足のおやつって三百円までだっただろ? ああ言うのって、どうやって調整してた? 俺は10円ガム」

「藪から棒になんだいきなり。まぁ……オレはうまい棒だな」

「僕はラムネだね、笛ラムネ」

「……上手い具合に分かれたな」

「そうだね。でも、珍しくないことだろう? 感性は人によって様々だ」

「じゃあ、うまい棒だったら何味選ぶ? 俺はサラダ」

「コンポタ一択だ」

「ラムネだね」

『……は?』


 湊と司の声が揃って漏れる。
 ラムネ味なんて聞いたことがない。
 というか、そんなのがあっても普通買うやつはいないし、類に至ってはラムネラムネラムネとラムネづくしだ。一種の中毒じゃないかと疑う二人だが、流石類言うべきか、回避方法は考えてある。


「寧々も居たからね。二人で分けて食べてたんだよ。僕も彼女から貰うこともあったし。全部が全部ラムネだったわけじゃないさ」

「……それなら、まぁ……いやでも、結局はラムネ三昧だろ?」

「まぁね」

「じゃあ、今の回避発言はなんだったんだ!?」

「いやぁ、君たちの反応が面白かったから、つい」

『……………………』

「悪かった、僕にも非があったことは認めるから。無言でフェンスに押し付けるのはやめてくれないか?」

『……………………』

「二人とも!? 流石の僕もここから落ちたら不味いんだが???」

「飛べ」

「心配するな、いつもオレがやってる演出と大差ない」

「命綱がないんだけど?」

『知らん』


 こうして、類くんは屋上から落ちかけ、みんな揃って職員室に呼ばれました。
 あーあ、これもそれも三人がお馬鹿なことをする所為です。
 何気ない神山高校の日常風景はこんな感じ。
 めでたしめでたし。

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 次回もお楽しみに!

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