最近、雲行きが怪しくなってきて、今回のオリイベが終わったら定期更新を中断して不定期にすることを考えています。
理由は課題です……
いやもぉ、ほんとに、大体私の所為なんですけど、辛いんですよね……ははは。
今回のオリイベが終わったら雫イベをやる予定だったので、そのイベントだけは手を抜きたくないので少し時間をいただくかもしれません。
状況次第で変わるので、またなにかありましたら活動報告の方に載せさせていただきます。
お待ちしていた人は申し訳ありませんが、暖かい目で見守っていただけると幸いです。
何度来ても色褪せない、慣れの来ないセカイに訪れた湊。今日もどこかでライブが行われているのか、いつもだったらすぐに自分を見つけるであろうバーチャルシンガーたちの姿はなく、ポツンと客席側に独り、彼は立っていた。
急いで走り出そうとするが、想いの場所に来たことで落ち着いたのか、ろくにフォローもできなかった絵名のことを、湊は思い出す。
「……瑞希に頼むしか、ないよな」
悪いとは思いつつも、今の自分じゃ逆効果だなんてわかりきっている。だからこそ、今の彼女を支えている後輩に任せる。辛い時、逃げ出さず今の彼女を支える瑞希の方が適任だと、彼は感覚でわかった。
「よし。あとは、俺がやるべきことをやる番だ」
あの日、遅かったとしても、自分が変わるきっかけをくれたKAITOのもとに向かって、走り出す。無意識の中で、湊は自分が一番したくない行為をしながらも、変わるために動いた。
縋っていた。
頼っていた。
全部が全部、二度目の後悔を作らないために。
◇
永遠と続くステージのセカイを、息も絶え絶えになりながら走り、探し回った果てに湊は、懐かしい場所。KAITOと初めてであったステージの舞台裏で、あの時と同じように機械を弄る彼を見つけた。
集中しているのか、湊には気付かず真剣な表情で仕事に向き合う姿は、幼い頃に彼が見た父親──誠の横顔にそっくりで、声をかけるのを躊躇ってしまった。
表に立つバーチャルシンガーでありながら、KAITOは裏方としての仕事も本来の仕事と同じような気持ちで取り組んでいる。きっと、それは、来てくれたファンを笑顔にするため。
どこまで遠くを歩けば、あの形に成れるのか。
どんな速さで歩けば、あの形に近付けるのか。
そんなビジョンは、湊の頭に浮かんでくれやしなくて、ただただ真摯に向き合う姿勢だけが瞳に映っていた。
待つこと数分。ようやく一段落したのか、KAITOはマフラーの代わりに首にかけていたタオルで汗を拭き、湊の方を見た。
向けられた優しい笑顔が嬉しくて、少しだけ痛い。
「なにか、あったんだね?」
「うん」
「話せるかい?」
「あぁ……その為に、ここに来たんだ」
「そっか。じゃあ、話してみて。僕が力になれることなら、一緒に考えるから」
柔らかい声音で、話しやすい状況を作ってくれたKAITOに感謝してから、湊はゆっくりと抱え込んでいた全てを下ろして、吐き出した。
夢のこと。
自分に本物の才能なんてないこと。
中途半端なもので評価され、期待や信頼を押し付けられ、崩れていったこと。
逃げて、諦めて、迷ったフリをして大切な人を裏切っていたこと。大切な人を傷付けていたこと。
それでも、それでも、まだ全部捨てきれていないこと。
話せること、話さなければいけないことを全て話した湊は、ぐちゃぐちゃの感情に苦しんではいたが、楽になったのか顔色は酷くなかった。
しかし、ここまでなら、ただの告白に過ぎない。懺悔と同じだ。彼はここから、変わらなければいけない。逃げないために変わることこそが、今回の目的なのだ。
「難しい問題だ。……だけど、湊くんなら解決できる」
「本当に?」
「勿論さ。湊くんは一歩を踏み出す勇気を持っている。なら、必要なのはきっかけだけだ。わかってるんじゃないかな、君も? それが欲しくて、ここまで来たんだろう?」
「それは、そうだけど」
可能性を信じて、湊はここに来た。だが、だからと言って、保証なんてどこにもない。もしかしたら、あの時の一回が奇跡で、本当は二度目なんて起こりえないのかもしれない。
そんな恐怖が、今も彼の中にある。
目を伏せて、直視したくないくらいには、しっかりそこにある。
けれど、目を伏せたその先には希望が落ちていた。小さい宝石のように、見える光の球体が。
ステージで使う何かの器具なのか。湊が訝しむようにそれを見ていると、KAITOが驚いたように声を漏らした。
「想いの欠片? まさか、もうこのセカイにも来てたのか……」
「カイトは、この光のこと知ってるのか?」
「あぁ。その光の球体は『想いの欠片』。セカイに至れなかった想い。名前の通り、誰かの想いの欠片なんだ。触れれば、少しの間だけだけど、想いの欠片のセカイに行けるよ」
「なぁ……これって、誰の想いの欠片かわかったりするのか?」
「ううん。でも、君の前に現れたってことは、今の君に必要な想いかもしれない。……触れてみたらどうかな? 変わるきっかけになるかも」
「でも……」
間違えれば、間接的とは言え、人の想いに踏み込むことになる。しかも、無許可で。あくまで、想いの欠片は、
セカイに転がる希望。
次はないかもしれない選択肢。
取るか、取らないか。
いつだって、選択肢を選ぶのは自分で、人生を歪められるのも自分。
考えて、考えて。
迷うフリをもう、したくなくて。
巡り巡って出された答えは──
◇
「……ここ、どこだよ」
薄暗く、目の前すら覚束ないセカイ。想いの欠片のセカイに、湊は独りやってきていた。結局、彼がとった選択肢は、YES。
変わるきっかけを望んで、湊はその想いに触れた。
だがしかし、彼が訪れたそのセカイは異常だった。
遠い、遠い場所の儚い光以外、なんの明かりもないこのセカイは、そこに辿り着く道を妨害するように、『keep out』のテープが貼られており進めなくなっている。
無数にあるテープは、湊の目でもなんとか認識することができて、そこまで問題なく破ることもできるだろうが、彼の手は一向に動こうとしない。不味いと警鐘を鳴らす脳と、その先は地獄だと叫ぶ心が、湊の一歩を止めているのだ。
「変わるって……決めたんだろっ」
自分の体にムチを打つように、言葉で喝を入れ、テープに触れる。その瞬間、閉じ込めていた記憶がフラッシュバックした。
『いいよな〜。月野海は、なんでもできて』
それは羨望の声だった。
いつか聞いた。
どこかでかけられた、羨む声。
1を2しかできない自分の才能を本物だと、祀りあげる声。
気持ち悪くて、吐きそうになって、それでも進むためにテープを破り捨てた。その時にやっと湊は理解した。
これは、自分の想いだと。記憶の片隅に押し込んで、見ないようにしていた、封じ込めていた自分の想いだと。
見たくない。嫌だ、怖い。
後ろ向きな気持ちがふつふつと湧いてきて、それでも止まれないと自分を鼓舞する。
光が、きっと答え。
そこまで辿り着くことができれば、変われる。湊はそう信じて、また一歩踏み出した。
『月野海なら大丈夫でしょ! 任せたぜ!』
思い出す。
『お前ならできるよ、月野海。期待してるからな』
思い出す。
『信じてるぜ、月野海。なんとかできるよな?』
思い出す。
『なんで月野海ばっかり……ウザイよな、アイツ』
思い出す。
『どんまいどんまい、お前なら次はいけるって! がんばれよ!』
思い出す。
無責任な信頼も期待も、信用も恨みも慰めも。全部全部、痛くて。痛くて痛くて。勝手で、考えなんてなくて。放り捨てるように、関心を無くす。
きっと、多分、なんとか、できる。なんて言葉を並べて押し付けて、任せたという便利な言葉で逃げる。
一枚、一枚、破る度に思い出して、吐きそうになって、それでも耐えて歩き続ける。それは、償いだったのかもしれない。傷付けた人たちへの、身勝手な贖いだったのかもしれない。
光まで、あと半分。
そんな距離まで来た時、思い出すものが段々と温度を取り戻し、冷たい過去に埋もれた温かい思い出が蘇る。
『悪くない。上手くなったな、湊』
誠の言葉を、思い出す。
『いいわ、凄くいいわよ、湊! やっぱり、あたしと誠さんの息子ね!』
友香の言葉を、思い出す。
『お前のことは嫌いだけど、お前の歌は、嫌いじゃねぇ』
彰人の言葉を、思い出す。
『ふーはっはっは!! 流石は俺の親友だな! お前の作る衣装は最高だ!』
司の言葉を、思い出す。
『あんたが服を作って、私がキャラを作る。二人だったら、最高の絵を描けるわ!』
絵名の言葉を、思い出す。
『いつもありがと。湊にいの作る服、嫌いじゃない』
志歩の言葉を、思い出す。
『これ、くれるの!? ふふっ、ありがとうみぃちゃん! 私……みぃちゃんの作る服、好きだわ。だって、すごく温かいんだもの』
雫の言葉を、思い出す。
違った。
違ったのだ。
確かに、周りから押し付けられた言葉は、のしかかった期待や信頼は、嫌いだったし、嫌だった。しかし、もっともっと近くにいた人の言葉は温かかった。
ずっと、ずっとしまったまま忘れていた言葉──思い出。それが今、湊の中で蘇り、癒していく。
最後のテープはいつの間にか破り終わっていて、儚かった光は眩くなって、セカイ全体を照らし闇を消し去った。
そこに広がっていたのは、白の壁や床、至る所に絵の具やペンキをぶちまけ空間で、あちこちに服のデザイン画や完成された服が飾られていた。
ごちゃごちゃで、片付けなんてされていないその場所は、昔見た誠のアトリエのようで、湊は懐かしむかの如く辺りを見渡す。
ある程度辺りを見渡せば、
「なんで……あの服が……」
「ん? この服がどうかした?」
「いや、この服は──」
「へへ、すごいだろ? 俺が作った服なんだ! まぁ…・俺がやったのは絵を描くまでで、作ってくれたのは父さんと母さんなんだけど……初めて作った服なんだ!」
「……あぁ、そうだっけ。そうだったな。これが、初めて作った服だ」
目の前に飾られているのは、水色と黄緑色の色違いのワンピース。シンプルなデザインで、特に凝ったものでもなく、市販で売ってるものとそう変わらないであろう、二着。
湊が幼い頃、両親の真似事をして作り、喜んだ二人が形にした初めての服。
そして、偶然、家が隣同士になって出会った雫と志歩にプレゼントした、最初の服。
「これ渡してから、ようやくしぃが懐いてきてくれたんだっけ……」
「そうそう! それで、雫が今まで見たことないくらい笑顔になってくれて! 俺、もっともっと服を作りたいって思ったんだよ!」
「単純だよな、俺って。けど、なんだよ……簡単だったんじゃないか」
デザイナー目指した理由は違う。デザイナーが夢になった理由でもない。
しかし、これは湊の夢の根幹にある想い。単純明快、それ故になによりも大切なこと。忘れてはいけなかった大事な、本当の理由。
月野海湊は、自分の作った服で大切な人に笑ってもらいたかった。
彼にとっての太陽──日野森雫が教えてくれた、服を作る想いの原点。
「
「うん! 大好きだよ! 兄ちゃんは?」
「俺も、好きだよ。だから……絶対に、その想いは忘れるな。大切なもんだから」
「わかった!」
無邪気に笑う過去の自分を見て、湊は誠がよく自分にしてくれたように、頭をポンポンと撫でて、最後はくしゃくしゃと髪を乱して、その場を去った。
想いの欠片のセカイが溶けていく中、湊は自分の中で答えを見つけた。
夢を追うか、まだこのまま歩くか。自分の想いを信じて。選びとった。
顔がいい四コマ「こたつ」
冬。それはこたつとみかんが恋しくなる季節。あとは、焼き芋もそうだろう。猫だってこたつで丸くなりたくなる、そんな寒さが続くある日。
久しぶりに、日野森家にお呼ばれした湊は、雫の部屋で彼女と志歩と一緒にこたつを囲んでぬくぬくと温まっていた。
「あったかいわね〜」
「あぁ。寒い日は布団とこたつから出るのが嫌になる」
「……そう言いつつも、屋上で練習してるじゃん」
「それとこれとは話が別だろ。ほら、皮剥けたぞ、しぃ」
「ん、ありがと」
「ずるいわ、みぃちゃん! 私も欲しい!」
「はいはい……」
次のみかんの皮を湊が剥いていると、雫がそっと体を寄せてくる。よほど温まりたいのか、それともただ隣にいたいのか、細かいことは聞きはせず、彼は剥き終わったみかんを彼女の口に放り込む。
美味しそうに食べる雫を湊がぼーっと眺めていると、彼女はお返しと言わんばかりにほっぺたに軽く唇を触れさせた。
柔らかい感触を湊が感じたのも束の間、彼のスネを鈍い痛みが襲う。顔を顰めつつも、湊が正面に居るであろう志歩を見ると、鋭い目付きで睨まれていることがわかった。
された側が蹴られるなんて理不尽だ。
そう言っても、蹴りが止まるわけもなく。
その後も、雫がベタベタとする度に、志歩に蹴られる湊だった。
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マシュマロ URL↓
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