幼馴染みは顔がいい   作:しぃ君

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 一日投稿が遅れて申し訳ありません。お久しぶりです、私です、しぃです。
 なんとか課題という名の執筆を終わらせて、こちらに取り掛かった次第ですよ。
 色々ありましたが、就活もありまして、週一投稿はギリギリになりそうなので、その時は活動報告かTwitterの方で告知させていただきます。

 もしよろしければフォローして、確認してみてください。
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 p.s.
 鳥っ火ーさん☆8評価、ゆきまちさん☆9評価ありがとうございます!
 これからも精進致します!


行き先、家族の在り方

 想いを掘り返し、歩く道行も決まった翌日。湊は珍しく早起きをして、バイクである場所に向かっていた。昔は良く連れて行ってもらっていた場所──アトリエだ。作り自体は、広々とした空間を演出できる二階建てのコンクリート住宅で、そこらの一軒家となんら変わりがない。

 久しぶりに来た懐かしの場所に思いを馳せながら、少し着崩した制服を纏い、湊は玄関ドアをくぐった。

 

 

 相も変わらず、鍵のかけられていないことにため息を吐く彼だが、それ以上のリアクションを起こすこともなく、リビング兼友香の作業部屋のドアを開く。

 

 

「おはよう、母さん」

 

「あらまぁ、湊の方からこっちに来るなんて……何年ぶりかしら?」

 

「さぁ? 俺も忘れちゃったよ」

 

「そう。時が経つのは早いわねぇ……で? 話に来たんでしょう? 決まったの?」

 

 

 重い雰囲気を出すことなく、あくまで軽い相談事の答えを聞くような様子は、友香の母親としての気遣いか、はたまた同じ道を歩もうとする同士への激励か。その言葉に背中を押されるように、湊もまた一歩踏み出す。

 息苦しかったあの頃には、もう戻らないという決意。

 生き辛かったあの頃には、もう戻りたくないという意思表明。

 

 

 今ある幸せを守り、未来の幸せを作る。未だ灯火程度でしかないが、自分を信じてくれる仲間や、大切な人の行く先を照らす光になりたい。自分の作る服で、笑顔を生み出したい。

 落としてしまった、零れて落ちてしまった自我を拾い上げた湊の願いの一つ

 最優先は雫だが、夢を捨て切ることなんてできやしない。同じ道を隣同士で歩み、その中で夢も育む。

 

 

 取り戻した想いは、湊の心をより素直にさせたのだ。

 

 

「俺は……もう少し、雫と同じ道を行くよ。まだ時間はあるし、チャンスだってこの一回がラストじゃない。心配はあると思うけど見守って欲しいんだ。後悔しない未来を掴んでみせるから」

 

「……わかった。好きになさい。あなたの人生はあなたのもの。それをどう使おうが、自由よ。誰かに命令されても従う義務はない。──ただ、もしどうしようもなくなったら帰って来なさい。なにがあっても、私と誠さんはあなたの親なんだから」

 

「うん。ありがと」

 

 

 人生の責任は自分持ち。

 ギャンブルと何ら変わりはない。

 ただ、一つ違うことがあるとすれば、責任は自分だけにあっても隣で支えてくれる人がいること。友達、恋人、家族。きっと誰かが隣に居る。優しい心を持っていれば、優しくされた誰かが優しくしてくれる。

 そうやって、世界は回っているのだ。

 

 

 だからこそ友香の一言は、居場所は一つじゃないという思いやりで、湊の胸はいつかの日のようにポカポカと温かくなった。

 

 ◇

 

 二階にある誠の作業部屋に入って、約五分程の時間が流れた。整理され、作品がクローゼットに仕舞われていた友香の作業部屋と違い、誠の部屋は基本的に作品を出しっぱなしにしてあり、いつでも参考例を引き出せる状態。

 だがしかし、それと湊の存在に気付いていないのには、関係はない。誠の座る作業机から入口のドアには、特に大きな障害物はない。お陰で、視界が遮られることもない。

 

 

 純粋に、誠が集中しているから気付いていないだけなのである。酷いと思う人はいるだろうが、湊はそのことに怒るつもりは毛頭なく、そっと理想の背中を眺めていた。

 走っても走っても届かないと諦めていた背中。

 けど、それは幻で、こんなにも近くでゆっくりと歩いている。

 

 

 芸術家の成長曲線は一定じゃない。ある時、急に伸びたかと思えば失速するし、ゆるゆるとじっくり伸びていくパターンもある。誠ももう四十を過ぎた。湊が幼い頃より、成長のスピードは衰え、今では歩いているのと変わらないペース。

 けれど、確実に進んでいる。

 声をかけない間に、一歩、また一歩と差を広げられている。

 

 

 いつか、追い抜かせる日が来るのか。

 その時、誠がどんな表情を見せるのか。

 もう一度、果てしない道を歩き始めようとする湊の、数少ない楽しみの一つがそれだった。

 

 

 彼女の──雫の幸せを最優先事項に設定し、その上で夢も諦めない二足草鞋を履く生活。難しい道だ。牛歩のようなスピードで、誠に迫っていく苦しい戦いになる。それでも、湊はそれが楽しみだった。

 自分のやりたいことを、やりたいようにやる。

 最大限のパフォーマンスを絶やさず、最高のものを作り上げ続ける。

 

 

 辞書から失敗の文字は黒で塗り潰して、成功の文字にマーカーを引く。後悔という名の失敗は二度と繰り返さない意思表示。

 

 

「……ふぅ」

 

「一息ついた?」

 

「ん? あぁ、湊か。すまない。集中してしまっていた。待ったかい?」

 

「少しね」

 

「……なら、いい。予定より早いが、来たのなら答えを聞こう。月野海湊、お前はどうしたい?」

 

 

 息子としての湊。

 同士であり弟子としての湊。

 どちらにも問いかけるような言葉選び。

 問われた側の湊は、ゆっくりと深呼吸をして、話し始める。憧れ、破れ、それでも目指そうとして理想の話を。

 

 

「父さんは、俺の理想だった。最初の想いは違ったけど、憧れたのは違ってなくて、ただただ追いかけてた。一度は諦めて、捨てちゃった目標だけど、大切な人たちのお陰で立ち直って歩き出すことができたんだ。今は、それを返していきたい。だから──」

 

「手伝いはできない、か」

 

「うん。……怒ってる?」

 

「いいや。嬉しいよ。お前が自分の道を、誰にも縛られず、自分で決めてくれて。やっぱり、湊は私たちの自慢の息子だ」

 

 

 初めて聞いたその言葉に、俯き気味だった顔を湊が上げると、記憶にない父親の微笑みがそこにあった。少年のようにあどけなくて、清々しいほどに晴れた表情。そんな微笑みをもらしながら、誠はまたあの時のように湊の頭をポンポンと撫でた。

 グッと込み上げてくる涙を必死に堪え、湊は拳を握りしめる。

 本当に何気ない、けれど一番言われたかった言葉。

 

 

 不器用で、どこか気難しい父親の誠が、笑って自慢だと言ってくれた。ただ、それだけで止めどなく感情が溢れてきて、決壊ギリギリの涙腺にヒビを入れる。一雫、流れ落ちる涙を誠は指でそっと拭き取り、また問いかけた。

 

 

「今の生活は楽しいか?」

 

「……っ、あぁ、楽しいよ。すごく」

 

 

 久方ぶりに見る息子の制服姿に、誠は一言、どこか父親らしい言葉を言った。湊もそれに答えるように、どこか不器用な返事をした。

 きっと、この世界にありふれていて、どこにもないような、少しだけ普通ではない家族の在り方がそこにあったのだ。

 




 顔がいい四コマ「家族ご飯」

 日野森家の両親は家を空けることも多々ある。勿論、時期の差はあれど、週に一度から十日に一度くらいのペースで、家を空ける。
 その為か、成長しても、湊と日野森姉妹が揃って食卓を共にすることは少なくない。寧ろ、普通の家庭に比べたら多いくらいだろう。


 この場合の普通の定義が、どこら辺かはわからないが。


「湊にい、醤油」

「はいよ」

「ありがと。……お姉ちゃんは、醤油いる?」

「ううん、大丈夫よ」

「ん、わかった」


 今日の夕食のメインは焼き鮭。料理をする雫は基本薄味が好みなので、最低限の調味料で味を整え、あとは個々人の自由に味を変える。
 副菜にはきんぴらごほうにほうれん草のおひたし、あとは沢庵。寒くなってきたからか、汁物はかぼちゃの味噌汁だ。
 The和食の雰囲気を味わいながら、三人は食卓を囲む。
 大きく会話が弾むことはなく、雫の話に志歩と湊が相槌を打ったり、そこから話を発展させた湊の話に雫と志歩が相槌を打ったり。


 静かに、穏やかに時間が流れていく。
 数年間続けられたこの雰囲気も、今では気になることはなく。司や、彼の妹の咲希が居れば空気は変わるだろうが、それはまた別物。


 家族とも、家族じゃないとも言い切れない、微妙な塩梅のテーブル。
 今日も今日とて、箸が食器に当たる音が、リビングに響いた。
 
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