幼馴染みは顔がいい   作:しぃ君

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 お待たせしました、一週間ぶりの投稿です、しぃです。
 一応、生きていますが、本格的に忙しくなってくるのはここからなので、更新は不定期になると思います。
 もっとも、週一更新は止めないよう努力しますが、最悪二週に一回の更新になるかもしれません。


 楽しみにしている人には申し訳ないですが、温かい目で見守っていただけると幸いです。


幕間「もう戻れないとは嘆かない」

 思い出して記憶に新しい、過去の出来事。

 同年代の四人で集まり、それぞれが好き勝手己を主張しあった喧騒に溢れた日々の数々。誰もが夢を見て、夢を語っていた、泡沫の夢のような優しい時間。

 そこには、未来への不安や絶望なんて暗い言葉はなくて、全部が明るく温かさに満ちていた。

 

 

 月野海湊も、日野森雫も、天馬司も、東雲絵名も。

 今とは違う関係で、今とは違う感情をお互いに向けていた。これはそんな短い湊の回想の話。

 傷つけた少女に謝りに行く前に見た、もう戻るのは難しいし置いてきてしまった過去のお話。

 

 ◇

 

 小学校の卒業式も終え、中学の入学式が始まる前までの空白期間──もとい春休み。宿題をさっさと済ませた湊は一人、暇を持て余していた。遊ぶ予定もなければ、出かける予定もなし。両親はアトリエで納期に追われている。

 気を紛らわすために、中学生になった雫に似合う服でもデザインしようかと、リビングのソファから腰を上げようとしたその時。突然玄関ドアが開かれ、絵名がまるで自分の家かのように堂々とした態度でリビングに入ってきた。

 

 

「あれ? あんた一人なの? 雫は?」 

 

「……いないよ。呼ぶ気もなかったし、今日は一人でゆっくりする予定だった」

 

「はぁ〜? どうせ、宿題終わらせて暇だったからぼーっとしてただけでしょ? ほら、早く雫呼んできてよ。絵のモデル、頼もうと思ってたんだから」

 

 

 シッシと手を払い追い出された湊は、喉まででかかったため息をなんとか飲み込み、家を出た。春にしては眩しいくらいの太陽に苛立ちを覚えつつも、すぐ隣にある日野森家に一歩踏み出そうとすると、後ろから聞き慣れた声がかけられた。

 元気ハツラツ、はーはっはっはと高笑いを上げながら挨拶をしてくる人間を、湊は一人しか知らない。隠さないでもわかるだろう、司である。

 

 

「はーはっはっは! 素晴らしい朝だな、湊!」

 

「……そうだな」

 

「むむっ。やけにテンションが低いな。何かあったか?」

 

「別に、なにもないよ。……あー、家にはもう絵名がいるから、テキトーに相手しててくれ。すぐに雫も連れてく」

 

「そうかそうか! 絵名も来ているのか! それでは、まずオレ考案の最新版ポーズでモデルになってやろうじゃないか!」

 

「がんばってくれー」

 

 

 明らかに面倒臭くなる気配しかしないが、湊は気にしない。というより、一人の時間を邪魔された仕返しのようなものだった。

 もっとも、絵名の機嫌が悪くなることは確定だが、雫を連れて行けば万事解決。押し付けるようで悪いが、湊は四人がいることによって生まれる喧騒が嫌いではなかった。

 

 

 いや、寧ろ好きだった。

 一人の時間を求める彼ではあるが、それはあくまで慣れているから。幼い頃から短くない時間、湊は一人だった。両親は彼を愛してはいたが、中々時間を作れず、家が隣の幼馴染みである雫や志歩の方がよっぽど長い時を過ごしていた。

 だからだろうか、湊はそこまで一人に寂しさを感じていない……と思っていた。無論、無意識の内に繋がりを求めていたからこそ、四人で過ごすのが好きだったのだが──湊は他者に鋭い反面、自分の深い部分には鈍感で、心の奥底にある感情はわからなかったのだ。

 

 

「……一応、いるか」

 

 

 念の為、雫の自転車があることを確認してからボタンを押すと、湊は何も言わず数秒待つ。本来なら声をかけて反応を伺うべきだが、彼はそんなことしなくてもいいことを、最初からわかってる。

 何故なら──雫はそんなことをしなくても、返事もなしに走ってくるからだ。

 

 

「お待たせ、みぃちゃん! 今日はなんの用かしら♪」

 

「絵名と司が家に来てるんだ。俺一人だと色々面倒だし、一緒に来てくれないか?」

 

「もう、一緒に遊ぼって言ってくれないの?」

 

「……四人で、遊ぼう」

 

「ええ、勿論!」

 

 

 いつも、いつでも、湊は雫に勝てない。

 

 ◇

 

 絵名の要望によるポージングごっこ、ならぬデッサンタイムは終了し、パーティゲームで遊んでいると。不意に、司が呟いた。

 

 

「……咲希とも一緒にやれたらいいんだがな」

 

「まぁ、しょうがないんじゃない? 病院でうるさくしても怒られるだけだし」

 

「でも、そうね。一緒になにか楽しむものがあればいいけど……」

 

「なら、作ればいいだろ。紙芝居だって作ったんだ。人生ゲームくらい、お前なら簡単だろ?」

 

 

 別になんでもないように、湊は呆気らかんと言ってのける。

 実際その通りだった。いつかの花見の時、司は自作の紙芝居を作って持ってきて披露したが、それはその場の全員が笑顔になれるものだった。

 細々としたイベントを作るのは難しいかもしれないが、司なら常識に囚われないヘンテコな人生ゲームを作ることなど難しいことではない。

 

 

 加えて──

 

 

「それに、お前一人じゃ難しいなら、手伝うよ。俺も雫も、勿論絵名もな」

 

「はぁっ? ちょっと、聞いてないんですけど!?」

 

「ふふっ、いいじゃない! すごく楽しそう」

 

「……よーし! やるぞ! オレはやってみせる!」

 

 

 こうして、楽しい時間は流れていった。

 絵名が転がして、司が抱えて、雫が支え、湊が押し上げる。本当になんでもないことを、全力で駆け抜けて呆れつつも笑った。

 かけがえのないもの、かけがえのない時間。

 一人のズレが、壊してねじ切ってしまった、取り返しのつかない淡い夢。

 

 

 無邪気にはもう戻れない。

 そして、時間は巻戻り、現在に。

 

 ◇

 

 あの日と同じ喫茶店に、あの日とは違い二人だけで、湊と絵名は会っていた。積もりに積もった話は腐るほどあって、数えてたら終わらないことなんてわかっている。けれど、湊は中々話題を切り出せず、静かな停滞を起こしていた。

 されど、時間は有限。無限ではない。

 無駄にすることは許されないもので、痺れを切らした絵名が重い口を開いた。

 

 

「で? 呼び出したわけはなに?」

 

「その……この前のこと、謝りたくて」

 

「……この前って……あぁ。別にいいわよ。私も言い過ぎたし、それに……謝りに来たってことは決まったんでしょ?」

 

 

 どうしてか少しだけ自慢げに絵名はそう言って、湊もこくりと頷いて、続きを話していく。

 誘いを断ったこと。

 雫と並んで歩む道を選んだこと。

 そして、また夢を追うと決めたこと。

 

 

 一頻り話終わると会話は消えて、もう一度静かになる。

 他愛ない話に花を咲かせる気軽さはそこにはなくて、重い話が終わって軽くなった心だけが置かれている。

 最高の相棒になる可能性は、今はなくて、未来にしかなくて。

 でも、関係が終わらないことだけはわかっている。

 

 

「もし、さ。私がまた服を作って欲しいって言ったら、あんたは──湊は作ってくれる?」

 

「作るよ。お前が望むなら、何着でも」

 

「……ばか」

 

 

 償いというには温かく。

 友情というには少し重い。

 その答えを聞いた絵名は、昔の気の迷いを思い出し、誤魔化すように微笑んだ。

 

 

 割れた皿が元に戻らないのと同じで、びび割れて崩れた関係は、簡単には修復できない。修復できたとしても、同じ関係には戻れない。

 だが、戻らないだけで、新しい関係を築けないわけじゃない。

 関わりを持つ心を捨てない限り、いつか、また、昔のように笑うことができる。

 

 

 遥か遠い、未来の話だとしても。




 顔がいい四コマ「ハロウィンのお化け」

 十月三十一日の夜。ハロウィンナイト放送と題した仮装姿の生配信も無事に終了し、『MORE MORE JUMP!』のメンツも雫を除いて家に帰った頃。湊は最愛の彼女に追い詰められていた。
 お菓子を持っていなかったーー正確には、配り終わってもう持っていなかった所を襲われた。単純な話である。


 もっとも、雫には朝から散々トリックオアトリートされて、お菓子の数を着々と減らされていたのだが、ここにきてようやく彼の所持菓子は尽きた。


「トリックオアトリート♪」

「……ないの知っててやってるだろ?」

「えぇ」


 魔女の仮装と称して、とんがり帽に黒のローブを着た雫はカワイイと言うより綺麗が似合う格好で、一度目が合ってしまえば逃げられない。仕事中はなんとか気を逸らしていたが、それも限界。
 ソファに押し倒された湊は、いつもと違う香水の匂いに酔っていく。甘い甘いその匂いは、彼の思考を溶かしていき、瞳に映る雫をより色っぽく魅せる。


 そして、極めつけは小悪魔のような微笑み。妖艶さと幼さを両立させながら、ゾクゾクと相手の心を揺さぶる表情。
 ローブのポケットからそっとアメを出すその仕草でさえ、ズプズプと思考を沼に落としていく。


「それ……なんだ?」

「このアメはね、みぃちゃん専用のあまーいアメなの。食べて、くれるよね?」

「断っていいのか?」

「嘘。みぃちゃんは絶対断らない。だって、私が食べさせるから」


 持っていたアメを先に自分の口に含ませた雫が、ゆっくりと唇を近付けさせる。力の差は明白だ。湊はやろうと思えば、拒むことだってできる。しかし、彼は拒まない。拒めない。
 やがて、唇は重なり、アメは湊の口の中で転がっていく。
 舌と舌が触れ合う感覚は新鮮で、記憶に刻まれるが、それよりより強い熱が湊を襲う。


 体の芯から燃えるような熱は、身を焦がし理性を溶かしていく。
 最後に微かに聞こえた声はーー


「まだまだ、イタズラは終わらないからね……湊」

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