本当に、本っ当にお待たせしました!!
諸事情があったとはいえ、楽しみにしてくれている人には申し訳ないとしか言えません。
今週から本編更新を続けて、終わりまで持って行くつもりなので、もう少しお付き合いお願いいたします!
それでは、本編をごゆっくりどうぞ!
※今回は試験的にある機能を使わせてもらってます。見にくいようならご連絡お願いします。
セカイで決まった今後の方針。
普段は見られないようなオフショット。ありのままの姿を見てもらう、そんな配信。最初はダンス練習や歌の練習の様子と、トークで場を繋ぐ形でやることが決まった。
みんな、ファンが喜んでくれるために真剣だったから、ネガティブな意見が出るのも仕方がない。湊だってありのままを見せるが故の不安はある。
問題なのは、雫が一番最初にその意見を否定──までとはいかないが、検討した方がいいと言ったこと。朝から違和感はあったのだ。彼だって、それくらい気付いている。ただ、返された大丈夫のその先に進もうとしなかった。
それが最悪の一歩目。
◇
完璧なアイドルである日野森雫を演じ切る。
それができればいい、それさえできればなにも心配はいらない。
みんなに迷惑をかけない為に、そうであらなければいけない。
自分の所為で活動の幅を狭めたくない。
目が回りそうになる現実には慣れたから、きっと大丈夫。なんとか乗り切れる。吐き出しそうになる弱音を飲み込んで、あくまで湊の前ではいつも通りに。
「……あっ」
雫のその甘い考えは呆気なく砕けて、折角作ったハンバーグは丸焦げ。あとちょっと発火するところまでいっていた。
どうしよう。どう誤魔化そう。演じなくちゃ。彼にこれ以上、重荷を背負わせたくないんだから。でも、ここからどうすれば。
ぐるぐると、頭の中を気持ちの悪い感覚が駆け巡り、彼女がよろけそうになった所に湊はさっと現れて肩を支えた。
「雫!? 怪我してないか? 平気か?」
「ご、ごめんなさい! ハンバーグ、作ってたんだけど……少しぼーっとしちゃって。まだ残りがあるから──」
「もういいよ。今日は初配信で疲れただろ? あとは俺がやるから、休んでてくれ」
「で、でもそれはみぃちゃんも……」
申し訳なさそうな表情を見せる雫の頭を優しく撫でて、湊は「大丈夫」と微笑みを向ける。確かに疲れは彼にだってある。それでも、今は目の前に居る彼女の方が心配だから、ちょっとやそっとの疲労には目を瞑れる。大切故に心配なのだ。
納得したのか諦めたのか、雫は大人しく頷き、リビングに戻ってソファに腰かける。それを見届けてから、湊は残りのタネを焼き始めた。どこか歪で、不揃いなタネは心が揺れている現在の彼女を表しているようで、彼の胸をキュッと締め付ける。
何かが雫を追い詰めている。わかることは、たったそれだけ。
支える立場に居るのだから、何かしてあげるべきだと思っても、肝心の原因がわからない。
日野森雫に対する理解の深さが足枷になって、気付けないのだ。誰よりも彼女に敏感である彼は、時に鈍感になる。理解──愛の深さが盲点を生む。周りとの差が違い過ぎた、原因はそういう防ぎようのないものだった。
善い意味でも、悪い意味でも、理解や愛の差は穴を作る。何故なら、それがあるだけで相手を見る視線が百八十度変わってしまうから。
月野海湊は、『完璧なアイドルとしての日野森雫』と『ありのままの日野森雫』を同一のものだと考えている。数年間の努力で積み上げた偶像と十六年間生きた軌跡は、比べてはいけないし、どちらも雫だと認識している。
それこそが、違い。雫本人との決定的な溝。
変化を、変わるものを恐れ、ファンの気持ちをわかってしまう。彼女だからこその欠点。雫の中で、『完璧なアイドルとしての日野森雫』と『ありのままの日野森雫』はキッパリ分かれてしまった。
そうして、気付けないまま、すれ違ったまま時間だけが過ぎていく。
◇
午前一時、別の言い方をすれば二十五時。
ベッドで雫が眠りに就いたのを確認したあと、湊は一人、できうる限りの策を考えた。
以前までに考えていた炎上対策から派生させて、色々な事件を調べ。起こりそうな問題をピックアップし、大まかな分類に合わせてリスト化。何時、どこで、誰が、何をしても対応できるよう、細かい作業を積み上げる。
自分の身体は二の次三の次。
顔の売れている三人が居る以上、出だしが肝心なことなんて湊もわかってる。現状は綱渡りだ。一歩のミスがその後の活動に響かないとも限らない。
しかし、逆を言えば出だしさえ間違えなければ、元のファンが盛り上げる形で、別の違う層の視聴者にも届く可能性は低くない。
配信活動の実績なんて、『MORE MORE JUMP!』の誰にもない。その為のサポート要員として、湊は居る。
役に立ちそうな本は片っ端から読んだ。
参考になりそうな動画は何本だって見た。
撮る技術も、編集の知識も試して、自分なりに試行錯誤した。
みのりに遥、愛莉に雫、彼女たちが全力を尽くせる舞台を整えるのが湊の役目であり仕事。
「後悔だけは、しないようにしないと」
手伝うと決めたからには、責任がある。
逃げ出すなんてできない所まで来たのだ。
◇
二回目の生配信となった翌日。
不安を残しながらも時間は流れ、配信はなんとか門題なく進んでいった。
開始前に愛莉と話したからか、表情に活気が戻った雫を見て、湊の肩も軽くなり安心に胸を撫で下ろしたのも束の間。
イメージを崩さず完璧なアイドルのままダンス練習を終え、休憩に入った時。些細な、本当に些細な事件が起こった。
そう、みのりが水分補給用の水を零したのだ。
「ちょ、みのり! 大丈夫!?」
「うう……わたしは大丈夫だけど、お水が全部こぼれちゃった……」
「しょうがないわねぇ……。あ、でもわたし全部飲んじゃってたわ」
「じゃあ、私のでよければ飲まない? まだ水筒に半分残ってるから」
「えっ、本当?」
「ありがとう、雫ちゃん……!」
これだけなら、微笑ましい光景だ。
言い方はあれだが、グループ内の仲の良さはネタにもできる。
けれど、どうしてか、湊は今朝の記憶が突然フラッシュバックした。汗で冷えた体があったまるから、と温かい味噌汁を水筒に入れる彼女の姿が脳裏に過った。ようやくここで、湊は気付いた。配信に覚える不安は、愛莉と話すことで鳴りを潜めた。自分ではなく愛莉だから抑えられた不安。その理由。
同期として積み上げた絆、同じアイドルとしての理解。
舞台を作る湊ではわからない、近過ぎた彼ではわからない、理由。
以前までの日野森雫に固定化されたイメージの崩壊。それが理由だと、この土壇場で彼は気付いてしまった。用意していたカンペは間に合わない。言葉を書きこめない、陰だから声でも伝えられない。致命的なミスに、もうどうしようもないタイミングで、頭の回る湊は辿り着いた。
『完璧に踊り、歌い、儚さとミステリアスな雰囲気を漂わせた、高嶺の花のような美少女』、そんな理想の偶像は崩壊する。
「うふふ、冷めないうちにどうぞ」
「冷めないうちに? あったかいお茶とか?」
「ううん、お味噌汁よ」
「え、ええっ!? お味噌汁!?」
「練習のあとに味噌汁はないでしょ、さすがに!」
「そうかしら? 疲れた時に飲むとほっとするし、汗で冷えた体があったまるからいいと思うけれど……」
「た、たしかにそうかもしれないけど、私も練習のあとは、水とかスポーツドリンクが良いかな……」
「ま、雫らしいけどね」
「あははっ、そうだね! ……あれ? コメントが……」
もう遅い。
限界まで頭をフル回転させた湊はなんとかフォローを入れようと、愛莉に目配せをするが間に合わない。
心ない言葉。けれど、長年応援してきたファンからしてみれば仕方のない言葉。
憧れていたアイドルの新しい一面、なんて都合のいい言葉だけでは片付けられないリアル。
「あ……!」
「…………っ」
「し、雫ってば冷え性だから、温かいもののほうが好きなのよね! だから……」
「どうしよう、コメントが止まらないよ……!」
録画じゃない。編集なんて魔法は使えない。
生配信だ。このままブツ切りなんてすれば、燃える燃えないに関わらず、尾ひれを引く結果になる。それ以上に、雫の心にどんな影響が出るかわからない。湊はもう一度愛莉にアイコンタクトを送り、遥と一緒に一度配信を切り上げる算段を付け始めるが、最悪はこういう場面で決まってやってくる。
最善最高の選択肢を彼は掴み取れなかった。
顔がいい四コマ「こたつver.2」
冬真っ盛りの一月。
猫もこたつで丸くなるように、人もこたつで暖を取る。勿論、それに例外はなく。月野海家のリビングにはこたつが置かれ、湊と雫は当然のように二人あって座っていた。
ノートパソコンで次の配信の企画を考える湊と、それを隣で見守る雫。かれこれ一時間液晶とにらめっこする彼を見るのに、彼女は少しずつ飽き始めていた。というより、構って欲しいなぁ、と思い始めていた。
「…………」
「みぃちゃ~ん?」
「…………」
「もう……えいっ♪」
「っ! いきなりなんだよ?」
「だって、みぃちゃんが無視するから……嫌なら、出ればいいでしょう?」
「……はぁ」
こたつの中で絡められた足の感触。外に出る予定もなかったため、ストッキングなどを履いていない生の感触が否応なしに伝わってくる。加えて、雫が身を寄せ、腕を組んできたことで当たる水枕のような柔らかいもの。自分から触りに行ったことのないそれは、湊の理性をゴリゴリと削り、心臓の鼓動を早める。
動揺したら負け、平然としてなければバレてしまう。
彼だって男だ。この状況が長く続いてほしいと思うのも無理はない。
尤も、必死にいつも通りのフリをしてるのは、伝わる心音で雫にはわかっていて、彼女は耳を真っ赤にした湊の横顔を眺めている。
いつになったら限界なのか。
反撃をしてくるのか。
小悪魔のような微笑みを零す。
しかし、その後数十分に渡り彼は耐え続け、試合は泥沼化。自分の心音も伝わるのを失念していた雫が湊の不意の仕草にトキメキ。互いの胸の高鳴りは最高潮に達して(──以降は記載できません
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マシュマロ URL↓
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