今回は本編の文字数控えめで、ボリューム感は少ないかもしれませんが、来週に備えてるということで見逃してください……
次回、最終話になります。
一区切り、じゃないですけど、この作品「顔がいい」は完結として、他の二次創作に顔を出すかもしれませんし、そうじゃないかもしれません。
気まぐれで帰ってきて不定期で書き殴っていくかもなので、気が向いた時に皆様も見に来てください。
それでは、本編をどうぞ!
夕暮れ時。オレンジ色の光が差し込む、放課後の教室。雫は委員会やら、なにやらの細々とした仕事を終えて、帰路に着く直前だった。体は昨日より幾分か軽く、帰りの準備もスムーズに進む。
答えは出た。
ただ、あとは一歩前に行くだけ。それだけだと言うのに、見ていた世界とは違う場所に飛び出す勇気が、微かに残る不安を蹴散らす勇気が必要だった。
もう一度、もう一回、誰かに背中を押して欲しい。
間違いじゃないとは言われなくても、間違いでもいいよと言われたい。
「本当、私って欲張りだわ」
「そう? わたし、アンタはもうちょっと欲張りになってもいいと思うのよね、雫」
「愛莉ちゃん……」
「レッスンが今さっき終わったの。よかったら、偶には二人で帰らない?」
「うん、そうね。いつもとは違うのも、いいかも」
日常の中に溶け込むような対等な関係。普通の女の子らしいとも、仲間らしいとも言える会話を交わして、帰路に就く。気を遣っているのか、愛莉は分かれ道に行くまで、一切嫌な話はしなかった。
配信の件も、答えの結果も、問はしなかった。
他愛ない話で場を繋いで、笑顔を咲かせる話題を釣り上げて、適当に投げる。バラエティーで学んだトークスキルとでも言うべきそれを、存分に活用して何気ない日常を演出した。
苦い記憶でもあるが、愛莉にとっても雫は大切な存在。ライバルと書いて親友と読む、はたまた心友と読むなんて言ってもおかしくないくらい。かけがえのない人。
隣にいるのに一歩分開いた距離を気にするくらいには、好きだった。だからこそ、悩みも葛藤もなんとなくは察してあげられる。
「わたしは、雫がやりたいことを好きなように選んでいいと思う。心配しなくても、いつも通りのアンタを好きな子はいるわ。例えばみのりとか。あの子、今日凄かったのよ? アンタがどんな答えを選んできてもいいよう必死に企画考えて、下校時間ギリギリまで湊と粘って、先生にも待ってくださいって迫ったんだから。……ほんと、いい子よ。遥だってそう。勿論、湊もわたしも。おっちょこちょいで、マイペースで、それでも苦手なことから逃げない。そんな、努力家な日野森雫が好きなの」
「努力家、かしら。私はずっと必死で、取り繕うのに精一杯で……」
「だからよ。人に見えない所でがんばって、完璧になろうとしてる雫は、白鳥みたいに綺麗で──憧れる。アンタはわたしの理想なの。何かあってもフォローするし、気負い過ぎないで信じなさい、ファンも仲間も」
「うん……うん! ありがとう、愛莉ちゃん! 私も愛莉ちゃんのこと大好きだわ!」
「ちょっ! 街中でくっついてこないで! 騒ぐとバレるでしょ!」
「ふふっ、平気よ平気!」
温かい言葉は雫に翼を生やした。本物の白鳥のように、どこまでも飛べる真っ白な翼を。揺れる決意すら羽ばたく糧にして、未来への道がようやく拓いた。
迷わない。
挫けない。
既に、足踏みする時間は終わったのだ。
◇
「みぃちゃんは、頑張り過ぎよ」
「……………………」
「私には、ソファで寝ると体を痛めるとか、色々言うのに……自分は疲れて眠っちゃうんだもの」
無理が祟ったのか、雫が帰ってくる一足前に家に着いていた湊は、ソファで眠りに就いていた。ここ最近、睡眠時間や休息時間を使って企画や対策を練り上げた彼の体は、実際に表に立つみのりたちと変わらないほどに疲れていたのだ。
周りを頼れと言っていた本人がこれなのだから救えない。救えないけれど、雫はそんな湊が嫌いになれないでいる。
自分たちのためだとわかっているから。そんな想いが行動から溢れているから。馬鹿な子ほど可愛い、そんな言葉で表すのも雫はあながち間違いじゃないと思える。
次の配信が分かれ目。
失敗は許されている。そう背中は押されている。
だとしても、できるなら完璧を目指したい。
誰も傷付かないなんて不可能だとしても、雫は一番いい選択肢を選び抜いて、笑顔で終わりたい。そう考えている。
心無い言葉が襲ってくるかもしれない。また、否定されるかもしれない。歩む先が茨の道なことなんてわかっている。だからこそ、みんなで乗り越えたい。
静かなリビングで、彼女は眠る湊の頭を撫でながら手を握る。配信の中で湊が助けられる場面は多くない。しかし、一緒に戦っている。それだけは事実だ。
「明日、がんばろうね、湊」
眠りの王子様に口付けをして、サッと離れる。
今の雫の夢は、見るものではなく、叶えるものだから。
顔がいい四コマ「お散歩」
休日のお昼過ぎ。
晴れて天気がいい日に、雫はよく散歩をする。特に宛もなく、うろうろと家の周辺からビル街まで歩いていく。
もっとも、お決まりのパターンとして、家に帰れなくなった彼女を湊が迎えに行くまでがワンセットである。
その日も、冬にしては温かいくらいのいい天気で、雫はるんるん気分で外に出た。モアジャンのみんながおすすめしてくれていたお店に顔を出してみたり、たまたま入った喫茶店で同級生に会ったり。
なんでもない休日をのんびり過ごしていると、自然の摂理とでも言うのかの如く、道に迷った。
「確か、駅はあっちの道に出れば行けるから〜……こっちに行けば〜……あら?」
そりゃあもう、目的の場所は真反対の方向に行き、余計に迷う。
わざとやってるのではないか、と疑うくらい明後日の方向に進んでいく。湊が彼女のスマホにGPSを入れるに至った理由の凡そ九割がそこにあった。
「そうだ、こういう時はみぃちゃんに電話を──」
「……はぁ……はぁ……いや、いいよ。今来たから」
「まぁ! すごいわ、みぃちゃん! どうして迷ってるのがわかったの!?」
「十分近く同じ場所をグルグル回ってれば、流石に気付くよ。……ほら、帰るぞ。湯葉の用意してたのに、これじゃあ台無しだ」
「はーい♪」
一週間後、雫はまたこの調子で迷子になり、湊が地図アプリの作成を検討し始めたのは、また別の話。
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次回もお楽しみに!
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