幼馴染みは顔がいい   作:しぃ君

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 お久しぶりです、一週間ぶりか私です、しぃです!
 いやぁ……ありがたいことに、最終話一個前で評価を貰い日間ランキングにのれました……嬉しいです!!
 長かったですが、取り敢えず、今日で最終話です。更新は不定期で続くかもだけど……まぁ、気にしないでください!

 気が向いた時に、チラッと覗きに来るくらいがちょうどいいので。

 p.s.fujisan.さん☆10評価、紅明緑酒さん☆5評価ありがとうございます!!
 それでは、本編をどうぞ。
 


いつまでも、どこまでも、君はきっと──

「今の──このままの私を、みんなに見てもらうことにしたの。今度こそ、ファンのみんなに希望を届けるわ」

 

 

 運命が変わるきっかけとなったいつもの屋上で、雫は答えを出した。悩んで、迷って、背中を押された果てに、彼女は自分の意思で未来を決めた。後悔も幸せも、自分のものにするために。

 そして、そこからは早かった。湊たちが必死に詰めた案を配信に盛り込み、舞台を整える。

 

 

 準備は万端。前回のようなミスは起こさない、その気概を持って、湊は用意した簡易台本を配り軽く確認を促す。今回の配信内容は『地獄のダンス特訓』。遥にすら難しいと言わせる、難易度の高いダンスを用意し、マスターするまで踊り続けるという企画。

 勿論、怪我をしないよう適宜休憩入れるが、ハードなものになることは予想がついている。

 

 

 ここで、本当の雫の姿を見せる。

 経験値があるから見えにくいが、純粋なセンスで言ったら彼女のダンススキルは並。振りコピを趣味とするみのりと大差はない。けれど、どんなに忙しくても、いつだってそれを、ステージの上で魅せる完璧なものまで、努力で押し上げてきたのを湊は知っている。後ろで、隣で見ていたから。

 

 

 だからこそ、彼は未来を読んでいた。雫は、他のメンバーが休憩を取っても、ダンスのステップ確認を止めたりしない。何度転んでも諦めない。水面下のバタ足を続けるだろう、と。

 

 

(最高の雫を映して、固まったイメージを打ち砕く。早ければ早いほど成功率は高いまま、配信が三回目の今なら……まだ間に合う)

 

 

 絶対成功するだなんて、嘘でも言えない。

 言っても意味がない。

 それでも、雫は湊たちの案を信じて、最後にファンのみんなと話す時間が欲しいとまで言った。ありのままの自分をさらけ出して、彼女は向き合おうとしている。なら、仲間として支えるのが役目。

 

 

 最終下校時間もあるが、空が茜色に染る前に決着はつく。

 笑って配信を終われるよう、湊は全力でサポートに徹することを誓い、間もなく本番のカメラが回った。始まりを告げる、愛莉の元気な声が響いて。

 

 ◇

 

 予想通りと言うべきが、お題である難易度の高いダンスに、四人は苦戦を強いられていた。特に──みのりと雫。まだ本格的に難しい場面まで進んでないが、みのりのミスは目立つ。怪我こそしてないが、しりもちをついた回数は既に片手の指では足りなくなっている。雫も、みのりの陰に隠れているが、細かいミスは愛莉や遥の比ではない。

 

 

 些細なミスだ。目が肥えた者でなければ誤差にしか感じない、そんなもの。

 だが、時間が経つにつれ、それは顕著になっていく。

 

 

(次は愛莉ちゃんの後ろに回って──)

 

 

 ステップや手の振りを混ぜながらの移動。

 ステージの上の雫なら完璧にやれていた動きはそこになく、足がもつれて倒れてしまう。重ねに重ねてようやく、ファンの中で造られていた理想の偶像が少しずつ壊れ始める。

 

 

「っきゃ……!」

 

「雫、大丈夫!?」

 

「うん、ごめんなさい。足がもつれちゃって……」

 

「いいのよ、もう一度やりましょ!」

 

(……っ、今度こそ……)

 

 

 長い経験の中でも難しいと感じる流れ。繰り返して体に染み込ませる雫のスタイルでは、二度目の成功の壁は高く。またしても、足がもつれて躓いてしまう。違和感は確信に変わり、やっと、認識が形を崩していく。

 

 

え、また間違えた?

ていうか、雫ちゃんより愛莉のほうがダンス上手くない?

意外……

 

「はぁ……はぁ……」

 

「……みんなバテてきたし、休憩する?」

 

「……ええ、そうね。みんなは休んでいてくれるかしら」

 

「えっ? 雫ちゃんは……」

 

「私は、ちょっとだけ練習してるわ」

 

「で、でも休まないと──」

 

「ふふっ、大丈夫だから、そんなに心配しないで。ちょっとだけだから」

 

 心の中でガッツポーズをしたいくらい、雫は湊の描いた未来図の通りに走った。彼が知る、彼女ならそうするだろうという、ある種の信頼を守るように。

 仲間を気遣う優しい雫であり、集中するために一人の時間を作り出す真剣な雫がいて、練習に励む。誰かに命令されたわけでもなく、ただ毎回のようにやっていたことをなぞるだけなのだ。

 

 

 使命感であり、元センターとしての責任感。そういうものもあるだろうが、ただ一つ、その中心にあるのは、ファンのみんなに希望を届けたいから。そんな、純粋な想い。

 

 

「でも、雫ちゃ……っ」

 

「みのり。……大丈夫よ。雫はいつもああなの。最初は全然踊れなくて……でもだからこそ、陰で努力してる。それで、少しずつ近付いていくの。みんながステージの上で見てる『完璧』な雫に」

 

「……………………」

 

 

 一人頑張る雫を見つめるみのりに、湊はそっと手招きをして、流れていくコメントを見せる。十四文字に込められた願いを。

 

 

雫ちゃんの自主練、見たいなー

 

「あっ……」

 

コケてるのあんまり見たくないんだけど……

私は見たい! 雫ちゃん見せて!

雫ちゃんにカメラ向けて〜

 

「遥ちゃん、愛莉ちゃん!」

 

「うん、見てもらおう」

 

「ええ……! 勝手に見せちゃうのは気がひけるけど、きっと雫も許してくれるわ」

 

「じゃあ、カメラをこっち側に……」

 

 

 みのりの誘導に合わせて、湊は自然と雫の方にカメラを向ける。

 踊るのは、完璧には程遠く、それでも足掻き続ける少女。懸命に、ひたむきに、理想に手を伸ばすアイドル。彼からしたら、何十回何百回見ても慣れない眩しさ。愛しい眩しさだった。

 

 

 輝くステージの上できらめく雫と同じくらい、大粒の汗を流して一心不乱にレッスンをする雫が好きだった。どちらも本気だったから。湊はそこに違いなんてないと思っていた。

 

 

(間違いじゃ、なかったよな)

 

 

陰でこんなに頑張ってたんだ

いつも涼しい顔してるから意外

めっちゃ必死顔w

 

雫ちゃんはなんでも完璧にできると思ってた

当たり前だけど、こんなに頑張ってステージに立ってるんだな

やっぱり、イメージと違うけど……

こうやって一生懸命努力した雫ちゃんが、あの完璧な雫ちゃんになっていくって考えると、なんだか感慨深いな

 

私も、もっと頑張ろうって思えるなぁ

 

 

(あぁ、良かった)

 

 

 変化を恐れている人はいる。

 違和感に戸惑う人もいる。

 けれど、雫の想いはちゃんと誰かに届いてる。見ているファンに届いてるのだ。それがわかって、まだなにも終わってないと言うのに、湊は少しほっとしてしまった。

 

 

 怖がらなくても、ファンはきっと雫を応援したことを後悔しない。

 心配しなくても、ファンに希望は届いている。

 

 その日、雫たちはダンスを──踊り切った。

 

 ◇

 

「あのね、みんな……聞いて欲しいの」

 

どうしたの?

聞いてるよ〜

 

「Cheerful*Daysの頃の私は、今よりももっと素敵なアイドルだったと思うわ。でもそれは、いろいろな人のサポートがあって、生み出せた姿で…………本当の私じゃないの。本当は……本当なら、前の私のほうがみんなは喜んでくれるかもしれない。けれど……ごめんなさい。それはもう無理なの。みんなが期待するような、完璧な姿はもう見せられないけれど──でも、今の私で精一杯、みんなに希望を届けるわ。だから、どうか……こんな私でよければ、もう少しだけ見ていて欲しいの」

 

私、どんな雫ちゃんでも好きだよ!

 

「あ……」

 

話してくれてありがとう!

もちろんこれからも推すよ〜

イメージは違ったけど、推したくなった

 

「みんな……! これから私達はMORE MORE JUMP!として、新しい一面をみんなに見せていけると思うわ。今まで以上に、みんなの期待に応えられるよう頑張るから──これからもよろしくね」

 

期待してるよ

みんな応援してる!

一緒に頑張ろう!!

 

「……みんな、ありがとう」

 

 

 感謝の言葉と満面の笑み、そのシーンで、湊は一度アーカイブを止めた。配信が終わってからもう二時間。付いたコメントを見返し、盛り上がってるうちに時間が過ぎて、最終下校時刻ギリギリに外に出た五人だったが、分かれ道を通って今は雫と湊の二人だけ。

 

 

 下校の途中も、歩きスマホがあーだこーだと言いつつ、彼はサイトに残った配信動画を見直していた。そして、見る度に惚れ直して、横を歩く雫に視線をやる。

 何かに気付いたのか、彼女はクスリと笑って湊の手を引き、走り出す。辿り着いたのはいつかの公園。この先の人生でも、あるかはわからない、雫の選択肢にNOと答えた場所。

 

 

「懐かしいわね、ここは」

 

「そうだな。本当に、懐かしいよ」

 

 

 前来た時は、二人の中に懐かしさに浸る余裕はなかった。

 一皮剥ける前、まだ怯えてた頃の湊と雫には、幼い記憶を掘り返すのが嫌だった。しかし、もうその感情はどこかに出ていってしまった。あるのは、触るとまだ少しだけ痛い古傷だけ。

 もっとも、それだって時間が経てば癒えていく。

 

 

 長かった、過去への決別は済んだのだ。

 

 

「みぃちゃん」

 

「……どうした?」

 

「みぃちゃん」

 

「……だから、どうした?」

 

「好きよ」

 

「っ……」

 

「あらあら、みぃちゃんは返してくれないの?」

 

 

 クスクスと、イジワルをした時の可愛らしい笑みを零し、雫はストレートな気持ちに戸惑う湊を見つめる。頬を朱に染めて、後ろ髪をかく彼は、息を整えてから短く言葉を返した。

 

 

「俺も、好きだよ」

 

「どれくらい?」

 

「ど、どれくらいって……」

 

「偶には聞いてもいいでしょ? ねぇ、湊……教えてよ」

 

「俺は、何千回──何万回生まれ変わっても、雫が好きだよ。例え、姿変わってわからなくなっても、見つけ出して、また好きになる。それくらい、雫が好き。……これじゃ、ダメか?」

 

「ううん! 最高に嬉しいわ!!」

 

 

 月を照らす太陽にも似た笑みを見せて、雫は湊に抱き着いた。

 どこにも行ってしまわないように強く強く抱き締めて、体重を預ける。服越しに伝わる体温に心が安らぎ、寒さは消えて熱くなった。

 視線が交わって、言葉もないままついばむように唇を重ねた。何人にも侵されない、二人だけの空間を作り上げて。

 

 

「……みぃちゃん、ありがとう」

 

「お礼なら、俺だって」

 

「違う。あの時、ここで一緒に逃げないでくれてありがとうって、言いたかったの。もしもの話だけど、私はきっとみぃちゃんの言う通り、後悔してたから」

 

「別にいいよ、俺も救われたし。それに、隣に居る限り、また助けるから。何度もお礼なんて言わなくていい。この瞬間だけでも、十分過ぎるくらいお礼になってるよ」

 

「……ふふっ、じゃあ、みぃちゃんもお礼は平気よ。私も、いっぱい貰ってるから」

 

 

 照れ隠しのように言った言葉に二人して笑って、そっと離れた。手だけは繋いだまま、そっと。

 一段落かと聞かれたら、一段落。湊たちがいるのは、そんなところ。これからまだまだ、やることは山積みで、色々な壁に立ち向かうことになる。傷付いて、泣いて、けど最後は笑って、二人は並んで歩いていく。

 

 

 何日後も、何週間後も、何ヶ月後も、何年後も、ずっとずっと寄り添って進んでいく。

 

 

 幼馴染みはきっと、何年経っても顔がいい。




 約一年、『幼馴染みは顔がいい』の連載にお付き合いいただきありがとうございました!
 私も、この一年でスキルアップを果たし、専門学生から社会人になります。いや、働くのは辛いですけどね。そんなこんなで、学校も卒業ですよ。

 この作品のオリ主である月野海湊は好きになって貰えたでしょうか?
 嫌いなまま、雫の可愛さに惚れて私の作品を読んでくださった方もいるかもしれませんが、なんだかんだ愛着が湧いた主人公です。

 ちょっと出来る子。ちょっと、って所の苦悩とか、文章的に表現できてたら嬉しいですね。
 今後は、まぁ、他の二次創作をやるかもしれませんし、オリジナルで連載をやるかもしれません。ふわっふわっなのですよ。まぁ、なので、またお会いしたら、試しに読んでやるかぁ〜? ってなってくれると嬉しいです!

 長い無駄話はこの辺で、長い間ご愛読ありがとうございました!!
 不定期更新になるけど、暇だったら読みに来てください!
 待ってまーす!

 by しぃ君

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 やって欲しいお題とかあれば、このマシュマロに!
 URL↓
https://marshmallow-qa.com/narushi2921?utm_medium=url_text&utm_source=promotion

 次回もお楽しみに!

 誤字脱字などがありましたらご報告お願いします!

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