幼馴染みは顔がいい   作:しぃ君

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 お久しぶりです、一週間ぶりの私です、しぃです。
 堂々の最終回を迎え、完結しましたがアフターは不定期で続きます。
 私の気力と、やりたいなぁ欲が溜まると投稿されます!

 p.s.
 tomo.sinさん☆10評価、リセイさん☆10評価、蛭貝さん☆9評価ありがとうございました!


隣を歩く二人のアフター
鍋の〆はおじや


 配信も最初の難所を乗り越え、安定期に入りつつあったある休日のおやつ時。先日配信された鍋の動画を見ながら、湊はこう思った。「久しぶりに鍋、食いたいな」と。配信の影響かと言われればそうだが、最近の彼は雫が用意してくれたものを食べ続ける毎日。美味しいし、彼女は好きな物を用意してくれるが、アイドル活動がある手前、中々手の込んだ料理は難しい。

 

 

 既製品ではなく、昆布やかつおから出汁を取ったりなんやりする、月野海家の少し本格的な鍋だったら尚更。

 

 

「石狩鍋、いいよなぁ。寒くなってきたし、味かよく染み込んだ白菜とか、愛莉がもってきたおでんなんかも悪くないよなぁ……」

 

 

 丁度いいことに、今日はレッスンもなければ配信の予定もない。今から用意すれば夕食には十分間に合うだろう。

 だがしかし、悲しきかな。湊は今日も今日とて仕事が山積み。コメントを確認しながら、次回の配信のカンペや台本作りに加え、企画のストック作成。同じサイト上でブームになってるものの吸収。

 

 

 先読みの力や、今求められてる物を形にする技術は、デザイナーの勉強の中で学んだが、時間は有限。他のことに費やせる時間は長くない。

 短く見積っても二時間弱はキッチンから離れるのが難しい料理なんて、やってる余裕がないのだ。

 

 

「……鍋、食べたい」

 

 

 独り言として呟いた淡い願望──それは誰も気付かないはずだった。

 同じ家に入り浸り、半ば同棲している顔がいい幼馴染みがいなければ。

 

 ◇

 

「──だから、また鍋をやりたいと思うの!」

 

「また、いきなり呼び出したと思ったら、鍋って……」

 

「でもでも、前回の配信の時のお鍋、おいしかったもんね! 湊くんが食べられなかったの残念だったし……わたしは全然大丈夫だよ!」

 

「私も、湊先輩にはお世話になってるし、それくらいやってもバチは当たらないかな、って」

 

「みのりちゃん……! 遥ちゃん……! ありがとう!」

 

「はぁ。これで、わたしだけ嫌なんて言ったら、悪者になるじゃない。……まぁ、元々断る気もなかったけど」

 

「愛莉ちゃんも……ありがとう! 張り切って、みんなでお鍋を作りましょう♪」

 

『お〜!』

 

 

 二階に籠って作業をする湊にバレないよう。時に大胆に、時に細々と、鍋パーティーの準備が始まった。雫の家で配信をやった時に使った鍋と、月野海家にあった鍋を使った鍋パーティー。

 一つは、みのりたちが来る前にせっせと買い物に出て、道中迷いながらなんとか手に入れた、前の鍋と同じ具材たちで作る石狩鍋。

 もう一つは、湊の好物の中の好物であるキムチ鍋。

 

 

 この布陣なら、きっと彼も笑顔になってくれる。雫のそんな考えの元、四人は調理を進めた。アクシデントも多々あったが、両家の長い付き合いの中で鍋の道を極めた雫がみんなをまとめて、一つ一つの鍋を作り上げていく。

 

 

 一時間、二時間、三時間。最高の鍋を完成させるための時間は、あっという間に流れ、時刻は七時手前。いつもの夕食の時間になっていた。雫たちが煮込みに煮込み、しっかりと味が染み込んだ鍋とその取り皿、箸にコップ。諸々を並べたタイミングで、湊が階段を下りる音がリビングに届いてきた。

 

 

「雫、今日の夕飯は──ん?」

 

「お疲れ様、湊くん!」

 

「お疲れ様、湊。ほら、あんたが最後なんだから、さっさと座りなさい」

 

「雫の隣、空けときましたから」

 

「ほらほら、みぃちゃんこっちこっち」

 

「え? ……あぁ、うん」

 

 

 何故か自宅にいるメンバー。

 二つ置かれた鍋。

 気を遣われて用意された雫の隣のイス。

 

 

 考えることは色々あったが、仕事終わりの湊にツッコミを入れる余裕なんてあるわけもなく、ただただ目の前の好物にかぶりついた。

 辛さと甘さが混ざりあい少し汗をかく、キムチ鍋。

 具に染み込んだ濃い目の味にホッとする、石狩鍋。

 交互に食べ比べながら、湊は満面の笑みを漏らす。

 

 

 加えて、箸休めに用意されたきんぴらごぼうやきゅうりの浅漬けも豪快に頬張り、もきゅもきゅと食べる様子はリスのようで、傍から見ても美味しいんだろうな、とわかるほど。

 雫は勿論。集められた側の三人も、その表情を見れば自然と微笑みが零れ、温かい食卓のできあがり。なんの変哲もない、しがらみなんてない、友達同士の輪がそこにあった。

 

 ◇

 

 賑やかな雰囲気は、落ち着いたものに変わり、五人は二人になった。昔から変わらない、湊と雫の二人に戻った。彼は、みんなの前では行儀が悪いからと言ってやらなかったおじやを作り出し、彼女はそれを陽だまりのような笑顔で見つめていた。

 

 

 なんてことはない、慣れ親しんだ流れ。

 わかっているからこそ、雫は少し多めに米を炊き、湊の分は小盛によそった。

 

 

「……? 雫も食べるか?」

 

「んーん、大丈夫。もう、お腹いっぱいだもの」

 

「そっか」

 

 

 一人キッチンとリビングをトテトテと移動しながら、湊はキムチ鍋のおじやを完成させる。流石の彼も、ダブルおじやは胃に来るらしい。そして、ハフハフアツアツなおじやに舌鼓を打つ湊とは対照的に、雫は冷たい麦茶を飲んで体を冷ます。

 彼女の中でのお決まりのパターンだと、このあとの彼は、焦げた部分が美味しいんだと言って食べようとして──火傷する。

 

 

「アッツ! アッツ! ひふく、みじゅ!」

 

「ふふっ、はいはい、どーぞ」

 

 

 いくら気を張ってる湊でも、好物の前では背伸びもできない。

 子供らしくドジを踏む光景は、みんなには教えられない、雫の秘密だった。




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 やって欲しいお題とかあれば、このマシュマロに!
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 次回もお楽しみに!

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