幼馴染みは顔がいい   作:しぃ君

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 お待たせしました、お気に入り200人突破記念短編です!
 記念短編のタイトルは、既存タイトルのオマージュだったりなかったり。
 ※注意 オリ主の都合上、志歩に若干のキャラ崩壊があります。苦手な方はブラウザバックを推奨致します。

 それでもいいと言う方はごゆっくりお楽しみ下さい!


志歩if「Depends on you」

 初恋。

 初めての恋、と書いて初恋。

 それはきっと、人生により豊かな彩りを与えるもの。人生により濃い深みを与えるもの。

 仮令、報われない恋をしたとしても、その答えに間違いなんて存在しない。

 存在するのは、答えの先にある罪だけだ。

 

 

 これは、もしも(IF)のセカイ線のお話。

 湊と雫が付き合うことになって、初めて自分の想いに気付いてしまった、志歩()のお話。

 

 ◇

 

 私には、姉と兄が一人ずついる。

 姉──お姉ちゃんの日野森雫。元アイドル、いや、また始めたから現在進行形でアイドルをやっている、綺麗な人。天然なのか、世の中の悪いことを知らないんじゃないかってくらい、ほわほわしてる。

 兄──幼馴染みで血の繋がりのない兄貴分、月野海湊。お姉ちゃんを支え続けて、私の兄であろうとしてくれたお人好し。偶に度が過ぎてて、過保護かって思うけど、優しい人。

 

 

 お姉ちゃんは湊にいが好きで、湊にいもお姉ちゃんが好きで、二人はずっと両想い──両片想いだった。自分だけを見て欲しいお姉ちゃんと、お姉ちゃんに幸せになって欲しい湊にいは、いつも大事なところで噛み合わなくて、それが少し見ていてもどかしかった。

 最初は、それが二人が自分にとって近しい人だったからだと思ってたけど、最近になって気付いた。二人が苦難を乗り越えて、付き合い始めたことを報告してきたのが切欠で、気付くことができた。

 

 

 好き、だったんだ。私は──日野森志歩は、月野海湊が好きだったんだ。

 寄りかかったら、なにも言わず支えてくれて。

 突き放しても、なにも言わずに見守ってくれて。

 都合のいい時だけぶつかっても、優しく笑ってくれる湊にいが、好きだったんだ。

 

 

 幼馴染みであっても、好きな人の妹でしかないのに。それなのに、本当の妹みたいに接してくれて、お姉ちゃんに向けるのと遜色ない優しさを与えてくれた。

 本当にズルい。

 好きにならないって思ってたのに。好きになっても、後悔するだけだってわかってたのに。気付いたら、どうしようもなく好きだったなんて、無理だよ。

 

 ◇

 

 意識してからは、もうダメだった。

 湊にいの家に、半分同棲みたいな形で住むようになったお姉ちゃんを見て、気持ち悪い妄想が止まらなくて、ベースを弾いて落ち着こうにも、チューニングすらまともにできなくて、手が震える。

 やっと始められた、やっと戻れた一歌や咲希、穂波とのバンド練習にも身が入らない。やればやるほど音が乱れて、心も苦しくなって、グチャグチャになる。

 

 

 心配してくれた穂波に嘘をついた。

 気晴らしに出かけようと言った咲希の誘いを断った。

 好きな音楽を共有しようとしてくれる一歌を遠ざけた。

 また、自分から戻ろうとしてる。一人になった、あの頃に。

 なんのしがらみもなく、ベースだけを弾き続けたあの頃に。

 

 

 変わらないのに、意味なんてありはしないのに。現実を見たくなくて、突き放して、一人に戻ろうとしてる。

 冗談が笑えない。

 妄想もマイナスばかりで、構わないでって駄々こねてる。

 自業自得なのに、胸が痛い。みんながどうだっていい存在じゃないのに、何かをやろうとすると湊にいの顔がチラつく。

 

 

 全部吐き出したい。

 全部ぶちまけたい。

 想ってることを、全部全部全部出せば、楽になれるのかな。

 

 

「行か、なきゃ」

 

 

 閉じこもってるだけなら、あとから幾らでもできる。

 砕けてもいい。

 粉々になっても、構うもんか。

 なにもしないで、なにもやらないで後悔するくらいなら、全部やってから泣きたい。泣いて泣いて泣いて、スッキリすればきっと、なくなってくれる。

 

 

 プロになるために、この想いは、重荷だから。

 

 ◇

 

 久しぶりに入った湊にいの部屋は、微かにお姉ちゃんの匂いがした。

 一緒に過ごしていたからわかる、家族の匂いがした。それが、湊にいの部屋からしたことが……悲しくて、お茶を持ってくると言った湊にいを待つのが苦しい。

 混ざる匂いが気持ち悪くて、辛くて、意識を外すように家具に目を移す。……が、それは逆効果だった。

 

 

 視界内に映る多くの物が、湊にいの私物でありながら、お姉ちゃんのために買ったものだと、わかったから。

 ボイストレーニング用やダンストレーニング用の参考書に、アイドルのインタビュー記事が多く載せられた雑誌、流行を取り入れるための女性ファッション誌。

 きっと、全部がお姉ちゃんのためのもの。

 当たり前だ。湊にいが好きなのは、お姉ちゃんで、私ではない。

 あの瞳に、私は映っていても、私だけが映ることは決してない。

 

 

 優しい人だから、浮気なんてしないし。

 誰かを傷つけることだって、絶対にしない。

 

 

 だから、今から私がやるのは自己満足な嫌がらせだ。

 

 

「……お待たせ。お茶、持ってきたぞ」

 

「ありがと」

 

「大切な話だって言ってたから、雫には下に居てもらってる。そこまで大声で喋らなければ、内容はバレないよ」

 

「ほんと、優しいよね、湊にいは」

 

「これくらい、普通だろ。……それで? 話ってなんだ?」

 

「…………私、好きな人ができたの」

 

「……そうか。しぃも、年頃の女の子だもんな、そりゃ、好きな人の一人できてもおかしくないか」

 

「おかしいよ」

 

「え?」

 

 

 私の一言に、湊にいは酷く驚いた顔をして、こっちを見つめてくる。

 もう、止まる理由はない。止まっても意味がない。

 驚いて固まる湊にいとの距離を詰めて、胸に頭を預け、全てを告白する。私の想い、その全てをぶつける。

 

 

「その人はね、ずっと前から好きな人がいて。好きな人の隣に立つために頑張ってたんだ。優しくてお節介なお人好し。私は、ずっと見てるだけ。他人事だって、二人の関係に深く関わろうともしなかった。でもね、その人が好きな人と結ばれて、ようやく気付けた。私も、好きだったんだって。それからずっと、ずっと、苦しくて、気持ち悪くて、悲しくて、グチャグチャになりそうなの! 湊にい……私、どうすればいいかな?」

 

 

 言わないようにしていた言葉は、思ったよりも簡単に出てくる。遠回しだけど直球で、私は全部をさらけ出して、委ねた。

 目頭が熱くなって、涙が自然と溢れる。

 抱きしめて欲しい。一度でいいから、二度は願わないから、今だけは私を見て何も言わず抱きしめて欲しい。

 自己満足な私を嫌ってもいいから、終わったら忘れていいから、湊にいの腕の中で泣きたい。

 

 

「ごめん。俺は、それに答えられない。──ううん、答えちゃいけない」

 

「……わかってるよ」

 

「だから、泣きたい時は泣いていいよ。全部ぶつけていい。お前の心が楽になるまで、付き合うから」

 

 

 あぁ、もう、ズルい。

 そんなこと言われたら、私は抜け出せない。

 ずっと苦しいだけなのに、ずっと辛いだけなのに。

 甘い夢を見ていたいと、思ってしまう。

 

 

 ごめん、お姉ちゃん。

 許されたいなんて思わない、だから、湊にいを独り占めするのはもう少しだけ待って。私が、壊れて居なくなるまで。




 次回もお楽しみに!

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