金出君豚になる、というお話でもある。
「あ、居た居た。おーい、柔風ー!」
「…天久佐君?」
柔風のいる教室…二年十五組にたどりついた俺は、教室に入ることなく柔風を呼んだ。
別に入ってもよかったのだが、明らかに入ったら選択肢が何かふざけさせるのが目に見えていたのだ。
【選べ ①このまま柔風が来るのを待つ。もしかしたらテロリストが学校を占領するかもしれない ②一度教室に入って、逮捕確定の卑猥なことをする。確実に爆撃に遭う】
…ほらな。
①選ぶけど、頼むからテロリストは来ないでくれよ…?
「えっと…どうしたの、かな?」
特に何も起きることなく、柔風が俺の元まで来た。
よし、テロリスト云々はセーフ…だな。
「大したことじゃないんだが…ほら、昨日俺、お前ら全員に好きって言わせるーみたいなこと言ったろ?」
「あ、あれね…もしかして」
「ああ。そのまさかだ。―――ほら、俺って普段から奇行ばっかで嫌われてるだろ?だからこうして誰かに「好き」って言ってもらえたらやる気も出るかなぁって」
「そ、そうなんだ……わかった。そういうことなら―――」
【選べ!】
なぜ感嘆符。
【①「因みに俺は柔風の事、好きだぞ」と爽やかに言う ②「俺は柔風の体が好きだぞー!」と二年十五組の生徒全員に叫ぶ】
いや②ふざけてんの!?
なんだよ体が好きって!言えるかそんなの!
―――そういやなんか、こいつ俺に爽やか路線攻めさせすぎじゃね?
イケメンスマイル(笑)といいさ、なんかこう―――ネタ枠からイケメン枠へ移動させようとしてくれている…?
だとしたらそのまま頑張ってほしい。もしかしたらお断り5からの脱出もあり得るかもしれないしな。
「わ、私は天久佐君の事―――」
「因みに俺は柔風の事、好きだぞ」
「えっ、好っ…!?」
爽やか、というのはあまり上手くできる自信がなかったが、案外何とかなったのだろう。
見ればほら、柔風こそ真っ赤になって硬直しているが、二年十五組の皆さんはドン引きしているというわけではなく……あれ?どうしてそっちまで硬直する必要が?
俺まだ普通に「(人として)好きだぞ」としか言ってないんだけど?
あっ、爽やか(笑)だったけどさ。
「くっ…やっぱ無理だ…!野郎ども!」
「「「うぉおおおおお!!死ぬときゃ一緒だぜ!!」」」
「えっ!?何事!?―――おぉおおお!?」
突然背後から聞こえてきた男たちの声に反応して振り向いた次の瞬間、俺の体は四人の男たちによって持ち上げられていた。
―――まっ、まさか親衛隊!?
驚愕と混乱のせいで抵抗がおろそかになってしまった俺は、例の場所(校舎裏)まで連中に運ばれてしまうのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「……あいつ等すげぇよ。自分が弱み握られてるってのに…」
その真っ直ぐな愛がどうしてこのような形で発露してしまっているのか、それがどうしても理解できない。
サドル盗むとかはまぁわからんでもないが…パンツを贈るとか、歪みすぎじゃねぇかな。
好きと言われそうになった事と、好きと言った事―――その二つの理由から、結局俺はボコボコにされた。
いやね?本当は脅しをちらつかせてその場を切り抜けようとしたのよ?
そしたらさ。
【選べ ①全てバラす。なんだかんだで彼らは死刑になる ②何も言わない。脅しはせず、このまま殴られる】
なんて両極端な選択肢が出てきてさ?
仕方ないから②選んだら、これだよ。
あ~、青あざが痛む。
「天久佐君!」
「柔、風?どうしてこんなこの学校のアンダーグラウンドみたいな場所に…」
「いつも私に話しかけてくる男の人を連れていく人達に、天久佐君が連れていかれたから…気になってついてきたら、こんな事されてて―――もしかして、いっつも同じ事してるのかな…だったら、許せないよねっ」
珍しく起こった様子を見せる柔風…だが、全然怖くない。
なんだろうこの癒しの波動。人ってやっぱり純朴なものを求めてるのかな。
【選べ ①「ほんと、酷い奴らだよなー!あぁ、痛ぇ、痛ぇよぉ!!」と泣き叫びながら柔風に抱き着く。というか泣きつく ②「アイツ等の事、あんまり悪く言わないでやってくれ。俺にも責任はあるんだ」と言って庇う。誰かの好感度が上がる】
別にアイツ等が悪いわけじゃないんだよなぁ…実際、お断り5の中での最強各と言われている俺が、自分の好きな相手に『パンツ見せろ』だの『M字に足を開け』だの『好きと言ってくれないか』だの言ってたらそりゃ心中穏やかじゃないだろうし。
普通の人にやる分には過激すぎるだろうけど、俺相手なら別に…客観的に見れば、普通なんじゃない?
でもね、その誰かってのがよくわからないんだ。
もしこれで全くこの場に関係ない権藤大子さんの好感度とかが上がってもマジで困るだけなんだよ。
そしてそれを平然とやってのけるのがこの選択肢なんだよ。
普通ならさ?ここだと柔風が『こんな目にあわされても庇うなんて―――素敵!』ってなって好感度が上がるとか、こっそり見てる親衛隊の皆さんが『俺たちを…庇ってくれたのか…?―――いい奴!』ってなって好感度が上がるとかじゃん?
でも選択肢は別に『この場にいる』とも『この話に関係する』とも言ってないのよ。
で、そういう時に限って俺にとってあんまりよくない事ばっかり出てくんの。
権藤大子さんとかね?
まぁ、②にするけどさ。
はぁ…帰り道に、気を付けよう。
「アイツ等の事、あんまり悪く言わないでやってくれ。俺にも責任はあるんだ」
俺にも責任はあるなんて言ったが、実際は九割くらい俺が悪いんだよな。
そりゃ好きな子が変態(実際は違うのだと声を大にして言いたい)に『パンツ見せろ』とか『M字に足開け』とか『好きって言ってくれよ』とか言ってたら心中穏やかじゃねぇよな。
まぁやりすぎだとは思うが。
ちょっと殴りすぎだと思うのよ私。
「あ、あのね?―――私、好きだよ。天久佐君の事」
「―――えっ?」
「い、いや人として、ね!?別に男の子と女の子のーとかじゃなくって!?」
「あー、それはわかってるんだ。――ただ、まさか本当にそう言ってくれるとは思ってなかったなぁっと」
完全に不意打ちだったな。
けどまぁ、おかげでミッションはクリアできたし、なんかちょっと満たされた。
うんうん、可愛い子から好き(感情などは問わないものとする)って言われるのって素晴らしいな。
―――まぁそんなの世の男性はほとんど味わえてないんだけど。
この時ばかりはミッション様様だな。
…いや、俺って選択肢さえなけりゃモテモテなんだし、普通に可愛い子から好きって言われてたんじゃね?
だとしたらやっぱ大損じゃん。あっぶねー、少しだけ見直すところだった。
「……おい天久佐ぁ!!」
やべぇ、再び親衛隊たちが!
もはや自分のことなどどうでもいいと、柔風に好きと言われた俺を制裁するために進軍してきている親衛隊たちが!
…ミッションもクリアした事だし、ここは奴らにゃ悪いが逃げさせてもらって―――
【選べ ①天久佐金出こそが最強。この場に残り、どれだけ殴られても地に倒れない不動の姿を見せつける ②天久佐金出は最弱。柔風を盾にし、殴られないようにする】
……柔風を盾にするなんて真似、するわけないじゃないですかやだー。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「うぅ…普通に痛い……」
泣き言が止まらない。
なんだよアイツ等、俺が抵抗せず倒れずにいたってのに、全然気にせず殴ってきたじゃねぇか。
不動だったせいで衝撃は逃げなかったし、余計に痛かったぞこの野郎…
柔風が選択肢のせいでどっか行ったせいで(①なぜか柔風も巻き込まれる ②柔風がこの場を去る代わり、痛覚二倍という選択肢が出てきたのだ)癒しもないし…
【選べ ①泣きながら教室に戻り、ショコラか遊王子、あるいは雪平に抱き着く。運河悪ければ宴先生にタックル ②ミッションを優先。強者のオーラを出しながら麗華堂の元まで行く】
①選ばせる気ないやん。
というわけで麗華堂が入る教室までやってきたのだが、まぁ開幕から酷かった。
「あら、誰かと思えば昨日の…想像を絶する屑じゃない」
「なんだその『想像を絶する屑』って…」
極めて自然な感じで吐かれた毒は、普段から言いなれているのだろうということを容易に想像させた。
しかし俺はマゾではない。
いや好きな子がサディストならいくらでも被虐的になれる自信はあるが、少なくともその相手は麗華堂ではない。
つまりまぁ、ただちょっとムカつくなぁというだけである。
―――そういう趣味でもないのに酷い言われようだと、イライラするよね?
「確か、天久佐金出だったかしら?」
【選べ ①「そうかなぁ…?」 ②「そうなのかなぁ…?」】
そうなんだよなぁ…
「そうかなぁ…?」
「なぜあなたがわかっていないのよ」
「いやあってるけどさ」
「ならなんでわざわざ質問を質問で返したのよ」
おっ、吉良吉影か?
【選べ ①「やめとけ!やめとけ!俺は付き合いが悪いんだ」と、吉良の同僚構文を披露する ②「フフ……勃起…しちゃいましてね…」と、自分の初めての勃起について語る】
あんな呪いじみた性癖もってねぇから!
それと、同僚構文はあくまで他人を紹介するときのやつだからな?
自分自身について話すときに『悪い奴じゃあないんだが』なんて言わねぇだろ普通。
「やめとけ!やめとけ!俺は付き合いが悪いんだ」
「はい?それとさっきの発言と何が関係あるの?」
「『どこかへ行こうぜ』って誘っても楽しいんだか楽しくないんだか……天久佐金出、十六歳独身。普段は真面目でなんでもそつなくこなすが今一つ常人の理解の及ばない男…それなりに良い顔とそれなりに良い性格をしているため本来なら女子にはモテるはずが、普段の奇行のせいでお断り5なんだぜ。―――悪いやつじゃあないはずなんだが、これといって快く思ってくれている人のいない……味の濃い男さ」
「…自分で褒めるのね」
「自分の事も他人の事も、悪口以外は隠す必要はないからな!下手に誤魔化してどうするって話ですよ!だからほら、前に麗華堂の事正当な評価したろ?」
先ほどからのセリフはすべて選択肢に言わされているものです、本心ではありません。
確かに悪口以外は態々隠さなくていいんじゃねぇのっていうんは賛成だが、実際なんでも思ったことを口に出しているわけではないし。
麗華堂に正当な評価云々だって、別に俺が感じた内容を話しただけだから間違ってる可能性だって大いにあるからな。
「……まぁ、そのスタンスに文句はないけど…」
「というわけで、昨日の件。頼――」
「それは嫌よ」
「でっすよねー…」
そりゃこんな得体のしれない変態に、そういった意図がないにしても『好き』とは言いたくないよな。
でも言ってもらわなかったら俺は一生その『得体のしれない変態』のままなんだよ。
ここは何としてでも好きって言わせなくては…
「そもそも、どうして急にそんなはしたない事を言い出したのよ」
「え?そりゃ―――」
おっと、理由を聞いてきたか。
そうしなければならないから、なんて言ったところでどうせ信じてもらえないだろう。
かといって柔風とか遊王子とか雪平とかに言った理由で「はい、そうですか」ともならないだろうし…
【選べ】
おっと?まさかの救いの手か?
【①滅茶苦茶でかい声で「お願いしますッ!好きって言ってくださいッ!」と、土下座しながら叫ぶ。叫び方のイメージはすべてに濁点を付けたような感じ ②「好きと言わないのならこちらにも考えがある」と言って、その豊満なパイオツをいやらしく揉む】
残念、救いなんてなかった。
えっ、②なら色々大事なものを失う代わりに特殊ミッションをクリアできるし、こっちでよくね?
―――とはならないんだよなぁ……はぁ、中途半端に常識人でかつ偽善者な自分が憎い。
「なっ、なんでいきなり土下座なんて…!?」
「お”ね”か”い”し”ま”す”ッ!!す”き”って”い”って”く”た”さ”い”ッ!」
「は、はぁっ!?」
困惑している様子だが、土下座は続行。
…まぁ、自分の意志じゃなくてさせられてるんだけどね?
教室中から「うわぁ、土下座してるぜアイツ…」だの「好きって言ってください、だってさ…身の程知らねぇのかよ…」だの「ここまで来るといっそ同情するわー」だの失礼な声が聞こえてくるが、俺のハートに傷がつくだけであんまり問題はない。
「……頼む麗華堂!俺を助けると思って!」
「い、嫌に決まってるでしょ…?」
「ならどうすればいいッ!?マジで言ってもらわないと困るんだッ!」
「そ、そんな力強く言われてもね…」
【選べ】
今忙しいんで後にしてもらっていいですかね!
――あいたっ!?
選択肢の内容が出てくる前なのに頭痛ってお前…
わかった。で?何が言いたいんですか?
【①麗華堂の秘密(胸がシリコンということ)を利用し、脅す ②天久佐・
「えっ、マジで!?」
「今度はいきなり何を―――」
「お前、それ…シリコン―――」
「きゃあああああ!!?」
こ、この反応は…
結構衝撃的だったせいで声にしてしまったが、それを聞いた麗華堂の反応を見るに、マジの事なのだろう。
―――まぁ、親衛隊の秘密の時もしっかり本当の事だったし、疑う余地は元々そんなになかったんだけどさ。
…あれ?それってつまりあの時俺の頭の中に流れ込んできたあれは…ホモセックスは―――
「う、うわぁあああ!?」
「ど、どうしてあなたが叫ぶのよ!?」
「ただの精神的ダメージなのでお気になさらず」
思い出すんじゃなかった。
…いや、選択肢のせいで頭の中に刷り込まれてる映像だからなぁ…忘れようにも、鮮明に覚えてしまってるんだよな…
「そんなことより、だ。―――俺はとある事情からお前の秘密を握っている」
【選べ ①「つまりお前にエッチなことし放題という事だ!ぐへへへ!」 ②「つまりお前のパイオツを握っているということだ!フハハハ!」】
「つ…つまりお前のパイオツを握っているということだ!フハハハ!」
「なっ…!?わ、私にどんないかがわしい事をするつもりなの…!?」
姫騎士かこいつ、と反射的に思ってしまうくらいには姫騎士な麗華堂だが、あまり悪い話の広げかたをされなくてよかった。
これ雪平だったら下ネタの応酬になってたからなぁ…
さて、ここで話の軌道修正をすれば…
「いやいや、俺の要求はただ一つ…最初から言ってることだぜ?」
「くっ……そ、そんなことを言うくらいなら死んだ方がマシよ!」
「ごふっ…!?―――い、いいのか麗華堂?シリコンだぞ?シリコンなんだぞその」
「好き!好きよあなたの事!!ほら、これでいいでしょ!?」
「ありがとうございましたッ!!」
大きな声で礼を言い、顔を真っ赤にしている麗華堂から離れる。
この後何されるかわかったもんじゃないからな。
―――よし、これでミッションはほとんどクリアだ。
あとは雪平と黒白院先輩から好きと言われればミッションコンプリート……おかしいな、まったくクリアに近づいた気がしない。
【選べ ①ちょっと生まれ変わってみる(転生先は問わない) ②生まれたままの姿になる(場所は問わない)】
あの、そんな軽いノリで転生させないでもらえませんかねぇ!?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【選べ】
「くかぁ…」
「すぴぃ…」
【①このまま黙っておく】
「ぐごぁー…」
「ふしゅるるる…」
【②思ったことを叫ぶ】
「うるせぇええええ!!」
時は授業中。
珍しく授業に集中せずに『雪平と黒白院先輩から好きと言われる方法』と『対抗戦出場者女子誰かの胸を揉む方法』を必死こいて考えていたのだが、すぐ隣の
何度か選択肢に叫ぶか否かを迫られていて、授業中に叫ぶわけにはいかないと我慢していたのだが…うん、無理。
すっげぇうるさいんだよこいつら。
特にショコラ。ふしゅるるるってなんだよふしゅるるるって。
「おい天久佐。うるさいぞ」
「あ、ごめんなさい…ていうか、この二人の寝息の方が…」
「あー、そいつらはほっとけ。起きてる方がうるさいからな」
「え、えぇ…」
「それに、えーっと…ショコラの方はお前の学業補助ペットなんだろ。お前が何とかしろ」
…何かが間違ってるよ。根本から。
【選べ ①「は?調子乗ってんじゃねぇよ絞め殺すぞハゲ」と宴先生をイメージしたキレ方を披露 ②「でも家じゃ俺の方がペットなんですよ。ワンワン!」と四つん這いになって言う】
…全てが間違ってるよ。根本から。
「で…」
「で?」
「でも家じゃ俺の方がペットなんですよ。ワンワン!」
「――――お前後で、宴先生に指導してもらうからな」
「…はい」
あぁ、教室内のほぼ全員の冷たい視線を感じる……
「…はぁ、ひどい目に遭った」
授業終了後、指導室に大人しく(当社比)向かったが、到着と同時に出待ちしていた宴先生に絞められた。
それを見て、あのハゲ教師は満足そうに帰っていった。
―――ほんと、なんで俺がこんな目に?
【選べ ①「雪平の机が舐めたくなってきたな」と言って近づく ②「雪平の机に舐められたくなってきたな」と言って近づく】
超☆ド変態じゃねぇか俺!
そしてなんで机をチョイスしたよ!?雪平本人でも椅子でもなく!?
「はぁ……ゆ、雪平の机が舐めたくなってきたなー」
「ひぃっ」
今めっちゃドン引きした女子、顔、覚えたぞ?
さて冗談はさておき……近づいたらなんか、机の中からなんか出てきたんだよな。
もしかしたらこれに雪平攻略のヒントが…って言ったらなんか雪平狙ってるみたいだな。やめよう。
「……これって…」
「あ、しろぶた君じゃん!」
背後から、遊王子の声がかかる。
彼女の言っていた通り、その紙に書かれていたのは『UOG』が最近推して来ているマスコット、『しろぶた君』だった。
というかこれ、チラシだったのか。
「しろぶた君か…そういや、近日しろぶた君のイベントがあるらしいな」
「そーそー!ていうか天っちもそういうの見るんだねー」
「実は結構可愛いものが好きでな。部屋にも何個かそういうマスコットのぬいぐるみがあるんだよな」
「へー…あ、もし良かったらしろぶた君の中身、やってみる?」
「……お前そんな子供の夢ぶっ壊す発言を平然とするなよ…」
「でもでも、天っちはもう『ミ●キーの中身は人間』ってわかってるでしょ?」
「わー!バカお前やめろよそういうこと言うの!この作品削除されちゃうだろ!?」
「だいじょーぶだって!そんなに見てる人いないから!」
それはそれで傷つくけどなー…っておい。メタネタと夢の国ネタはダメって新古今和歌集にも書いてるだろ。
まぁメタな話は俺から始めたんだけどさ。
「しかし俺inしろぶた君か…やってみたい気もするな」
「でっしょー?実はまだ中の人決まってなかったし、即採用イケるんだー」
「専門の人とかいねぇの?」
「ほら、しろぶた君って過去のトラウマで複数の人格があるって設定じゃん?だから、毎回入る人を変えて、しかも素人を使うようにしてるんだよねー」
「なるほど…」
そういえば、子供向けにしてはやたらヘビーな設定の持ち主だったなしろぶた君。
…さて、いい機会だし入ってみていいかもな。
着ぐるみの中に入るなんて、滅多に体験できないことだろうし。
それが自分の好きなキャラのーともなれば金を払ってもいいレベルだ。
―――いや、さすがに金とられるか?
【選べ ①なんか気になるし、裏面を見てみよう ②雪平が悲しんでいる顔が見たいので、原形をとどめないレベルに破こう】
虐厨か!
ていうかまだこれが雪平本人の持ち物と決まったわけじゃないだろ!
ほら、弟とか妹とかのやつかもしれないし―――そういや俺、アイツの家族構成とか微塵も知らねぇな。
遊王子は家族が有名人だから知ってるけど。
「…んだこれ」
「おー。随分と熱烈に愛してますなー」
選択肢の意志のままにチラシの裏面を見てみれば、そこにはまぁ…落書き?があった。
揺れたり震えたりした線で描かれたしろぶた君(新宝島並)と、『しろぶた君可愛すぎるよぉ、大好きっ』という字が書かれており、このチラシの持ち主が大層しろぶた君を愛している事が見て取れた。
―――まぁ、その丁寧×3(新宝島並)な絵は『しろぶた君可愛すぎ(以下略』の文がなければしろぶた君と理解できないのだが。
いや…見る人が見ればわかるのか?
「ふむふむ…なるほど。わかりましたよ金出さん」
【選べ ①「あんたなんかに!何がわかるって言うのよ!」と裏声で叫ぶ ②「この泥棒猫!」と言って頬を叩く。もろちん裏声】
なんかショコラに当たりきつくない?
それと②。お前バレてないと思ってるんだろうけど『もちろん』じゃなくて『もろちん』って書いてるのしっかりわかってるからな?
「…許せショコラ……あんたなんかに!何がわかるって言うのよ!」
「もちろんすべてです。まさしくなるほどざ・わーるど」
「それクイズ番組だからね?」
「ことばのあやです―――で、ですね?わたしはこう言いたいわけですよ」
…助かったぞショコラ。おかげで俺の裏声怒鳴りは全員の意識から消え…てねぇな。
みんな全然流してくれてねぇわ。小声でめっちゃ悪口言われてるわ。
「これをみるに、ふらのさんはしろぶた君のことが大の好きなのでしょう」
「そりゃまぁ『大好きっ』って書いてるくらいだしな…いや妹か弟のやつを持ってただけかもしれないけど」
「つまりですよ。金出さんがしろぶた君の中に入れば、ふらのさんから好きと言われるかのうせいがあるのです!」
【選べ ①ショコラの名推理をこれでもかってくらい褒める ②本心を出す】
「何が言いたいんですかね」
「ですから―――」
「つまりショコラっちは『しろぶた君の中に入れば、しろぶた君に対して発せられた『好き』って言葉を天っちが受け取れる』って言いたいんでしょ?」
「そう!そのとーりです!」
「……そんなうまくいくもんかね」
「いちばんげんじつみがあると思いますよ?」
ショコラさん。それじゃ俺は俺のままじゃどう足掻いても好きって言われないような奴だってことになっちゃうんですけど?
―――まぁ実際嫌いって言われたけどさ…
「天久佐、君…?」
「ん?あぁ、雪平か。どうしたんだよ、そんなに顔真っ青にして」
「―――それ、見たの?」
「あん?…ああ、見た、けど?」
恐ろしく速い手刀。俺も見逃したね。
雪平は自然と俺の隣に来ており、そのまま素早く喉めがけて手刀を繰り出したのだ。
防御も回避も間に合わなかった俺は、それはまぁ無様にも大ダメージを受け…
「げほっ、うごっ、がほがほっ…」
こうして、地に這いつくばりながらせき込む事になってしまったのだ。
いや痛ぇなオイ!なんだよこいつ強すぎねぇか!?
「どうして…どうしてこうなっちゃうのー!!」
「ゆきひ…げほっ、ごほっ」
小さな声で叫びながら走り去っていった雪平に手を伸ばすが、まだせき込むのが収まらない。
…つまりこれは、あのチラシはアイツのだったという事…なのか?
まぁ以外っちゃ以外だが、可愛いもの好きくらい恥じらう程の事でもないと思うんだが?
俺の喉に手刀するとか、ちょっとやりすぎな気がするんですがそれは…
「―――今のでかくていですね。あきらかにふらのさんはしろぶた君が好きです」
「…あぁ、そうだな」
【選べ ①「乗せてください!―――僕はしろぶたゲリヲン初号機パイロット、天久佐金出です!」 ②●ッキーマウスかミ●ーマウスの中の人になる】
だから夢の国ネタやめろというに。
「話は聞いてるよ天久佐君。僕は遠藤。このイベントの…まぁ、主任?みたいなものだ」
「あ、はい。天久佐金出です。よろしくお願いします」
翌々日…つまり日曜日。
イベント会場に向かうと、三十代くらいのおじさんが俺を出迎えてくれた。
遠藤さん、か…ネームプレートのところには『飼育員:前原』って書いてるんだが…
しろぶた君に関連しての、キャラ作り…か?
【選べ ①あいさつ程度の軽い下ネタ ②あいさつ程度の新鮮なネタ】
②の方のネタって、まさか寿司の話か?
…握ったことないんだが、大丈夫だろうか…え?①?知らない子ですね。
「とりあえず、お近づきのしるしに…」
「これは…」
「イカ2貫です」
「イカ2貫!?」
お、ノリがいい人で助かった。
寿司を握らずに、手の動きだけでネタを握ったように見せかけての『イカ2貫』だったが、何とか通じてくれたようだ。
「…で、僕が入るしろぶた君って…」
「あ、あぁ…これだよ。一応通気性はいい、あまり暑くならないタイプにはなってるんだけど…」
【選べ ①「白式」と呼びかける ②「これがペガサスの
しろぶた君なんですけど。
そしてなんでその二つなんだよ。
類似点色しかねぇからな?ジャンル別だからな?
「…白式」
「別にこれ、女しか入れないわけじゃないからね?」
「…単なる気分の問題なので気にしないでください」
遠藤さん、ISご存じなんですね。
因みに何党の方なので?
そんな質問を心に留め、一度しろぶた君に入る。
中は殆ど空洞になっていて、メッシュ生地でできていた。
なるほど、確かに涼しそうだ。
…まぁ、見た目通りの重厚感なせいで、動かすのが少し難しいのが難点だが…そこは慣れればいいだろう。
「…そういえば、遊王子は?」
「あー、謳歌ちゃんはね。昨日の夜、あんまりにも今日が楽しみすぎて寝れなかったせいで今も熟睡中で来られないってご両親から…」
「子供かっ!」
そういや子供だったな、アイツは。
でもまさか遠足が楽しみで結局寝れずに遅刻する(もしくはいけなくなる)現象がこの年になって起こるなんて、さすがに予想できなかったぞ俺。
ショコラはショコラで起きる様子がなかったっていうか…また俺で腐った夢を見てたから放っておいたっていうかだし…前途多難な気がしてきたぞ。
まぁ雪平に好きと言わせようとしているということ自体がかなり高難易度だからな。
今更ショコラと遊王子がいないくらい、気にしてちゃダメか。
その後、しっかり司会のお姉さんと台本を見ながら打ち合わせをし、いざ本番、ということになった。
実際俺の仕事は司会のお姉さんの言葉通りに動き、子供たちと適度に触れ合えば終わりらしいし、あんまり緊張はない。
顔を出すというわけでもないしな。
《みんなー!こーんにーちはー!》
「「「「「こーんにーちはー!」」」」」
《あれれ~?聞こえないぞ~?じゃあ、もう一回!こーんにーちはー!!》
「「「「「こーんにーちはー!」」」」」
うん。ヒーローショーでよく見る光景だな。
まぁこういう子供向けイベントではもはやテンプレなのだろう。
俺も最近、仮面ライダーショーで同じように…
【選べ ①子供たちに混ざって「オッハーーー!(激寒)」 ②舞台袖から「イクゾーーー!!オエッ」】
今から子供たちに混ざるの!?
…あ、選択肢が自動転送してくれるタイプ?
「オッハーーー!(激寒)」
「えっ、しろぶた君?」
「いつの間にここに?」
「わーい!しろぶた君だー!」
「もふもふだー!」
いきなり転送されたはいいが、まさかど真ん中にとは思わなかった。
どんな手品だよオイ。手品が特技と豪語する俺でもドン引きだぞ。
しかし会場の子供たちは深く考えないらしい。
しろぶた君がすぐ近くにいる、という事が頭の中を埋め尽くしているのか、嬉しそうに触れ合ってくるだけで、不思議そうにしている子はいなかった。
…まぁ、保護者の方は首をかしげているが。
あぁ、足元見ないでください。タネも仕掛けもないんで。
《え、えぇ…なんでしろぶた君がそこに…?―――んんっ。今日のしろぶた君は、マジシャンみたいだね~!》
ナイスフォローありがとうございますお姉さん。
迷惑かけてすみませんね、ええ。
でも今日のしろぶた君はマジシャンみたい、というのは誤魔化せているのか?
確かにマジックは得意だが…
「すっごーい!」
「ねぇねぇ!他のも見せてよ!」
「帽子からハト出してー!」
「宇宙空間から生身で生還して~!」
おうおう、子供たちの純粋なリクエストが…いや最後の子怖いな!そんなの金が足りねぇわ!(できないとは言ってない)
でもまぁ、タネも仕掛けも用意できてないわけではない。
着ぐるみの中?馬鹿を言うなよ。
この天久佐金出。選択肢のせいで下落する他ない好感度を何とか維持するために、必死こいてなんでもやったんだ。
予定外のマジックだって、アドリブで何とかしてやらぁ!
…つまり『いつそういうのが必要な状況になってもいいようにいっつもマジック道具を持ち歩いている』って事だ。
《え、えーっと…さすがにもう手品はできないみたいだから、今日はもうふれあいタイムで…》
『ぶひぶひ!ぶひひぶーひでぶ!(特別意訳:まだ俺のバトルフェイズは終了してないぜ!)』
《えっ?しろぶた君どうしたの?―――って、あれ?いつのまにかシルクハットが》
子供たちに一度離れてもらってステージまで行き、お姉さんの隣に立ってから、本格的に手品をスタート。
まずは何もない空間からシルクハットを取り出してみた。
え?解説?ねぇよそんなの。
『ぶひぶひぶー…ふごふごぉ!(特別意訳:この帽子から……じゃじゃん!)』
「あー!ハトさんだ!」
「すごーい!」
「えっ、うそ本物…?」
「今回のしろぶた君すげぇよ…」
シルクハットをこれまた虚無から錬成した杖で叩き、中からハトを出す。
タネ?仕掛け?だから言わねぇって。
その後、ハトを身振り手振りで呼び寄せて帽子の中に全てしまう。
そして、シルクハットを会場の方へ投げ、杖の先を向けると…
「わー!」
「しろぶた君だー!」
「かーわいー!」
シルクハットが破裂し、大量のしろぶた君人形が子供たちへとゆっくり落ちていった。
大人たちすら拍手しているし、中々うまく決まったんじゃないか?
あ、この人形は自費なんですよ。財布が痛いね。
『ふごふご、ぶひひふご?(特別意訳:みんなからリクエストとってもらっていいっすか?)』
「り、リクエストなんて…大丈夫?」
『ぶっひい!ふごひひぶひご!(特別意訳:大丈夫だ。問題ない)』
《じゃ、じゃあ……何か、しろぶた君にしてみて欲しい手品がある人ー!》
「はーい!」
「はいはーい!」
「最高に『ハイ』!」
今DIOいなかったか!?
おっと、後ろの方の子が当たったなー……ってその隣に雪平ぁ!?
ま、マジで居たのか…まぁいなかったら困ったんだけどさ。
よし、雪平がここにいると知れたのはいいことだ。
取り合えずリクエストのマジックをいくつかこなして、雪平のところまでふれあいタイムで行けばいいか。
「おっきーすいそうからだっしゅつするやつ!!」
《す、水槽?―――し、しろぶた君》
『ぶっひ。ぶひひっひ。ふぐふぐ。ぶっひぃ!(特別意訳:俺になせない事はない。まぁ任せておきなさい)』
なんだ、水槽か。
それくらいなら手品で何とかなるな。
…だから、タネも仕掛けも言わないって。くどいよ?
…さて、ここにありますは一枚の黄色いハンカチ。
それを軽ーく振ると……大きくなっちゃった!(耳並)
そして、大きくなったハンカチを背後に投げ、それっぽい踊りをすると~~?
『ぶひっ!ぶひひひー!(特別意訳:はいっ!水槽で~す!)』
「おー…」
「マジですげぇな…今回プロ入ってんじゃねぇの?」
「本当に脱出マジックやるのかな…」
さて、今度はしろぶた君に手錠をつけましょう。
マゾではありません。雰囲気づくりです。
―――はい、つけましたね。
では今度は足に重りをつけましょう。
もちろんこれも雰囲気づくりです。
…よし、準備完了っと。
『ぶひぶひ。ふごふごひひぶ?(特別意訳:お姉さん、上まで連れてってくれません?)』
《つ、連れてくって…階段も何も―――ある…》
『ふごふご。ぶひっふご。(特別意訳:用意してありまっせ。抜かりはないです)』
水槽と一緒に階段も出しておいたんですね。
お姉さんに導かれるままに階段を上り、さながら囚人のごとき手枷足枷をつけた
無論水で満たされているし、お姉さんに頼んで水槽の蓋を閉じてもらった上でカギもかけてもらった。
…さて、本領発揮だ。
《さぁーて!果たしてしろぶた君は脱出できるかな?》
お姉さんはもう開き直ったらしいな。
もう俺に不可能はないとすら思っていそうだぞあれ。
…っと、着ぐるみの中だから普段と勝手が違うんだった。
えーっと、これをこうしてこうすれば…よし。
『ぶひ、ぶひ、ぶひ……ぶっひぃ!(特別意訳:3、2、1…はい!)』
手を大きく動かし、スリーカウントした次の瞬間。
しろぶた君の姿は水中から消えており、お姉さんのすぐ隣に手枷と足枷の外れた、ちょっぴり湿ったしろぶた君が立っていた。
…で、会場の反応は…?
「すっごーい!」
「ほんとにだっしゅつしちゃった!」
「おいおいまじかよ!?」
「あのしろぶた君やべーぞ!?」
「あれ、魔法なんじゃないのー?」
「じゃあ僕は、君の魔法の虜だね…」
「もう……大好き」
おいこらァ!!そのど真ん中でいちゃついてるカップルァ!!
お前ら顔覚えたからな!二度とここには来れないように、ブラックリスト入れとくからな!!
俺の手品を!お前らのイチャイチャの道具にすんなやぁ!!
…おっと、取り乱してしまった。
だがまぁ、一部を除けばいい反応だな。
もっと披露してしまいたい。
だが時間も時間だし、そろそろ終わりにしないとな…
どうしよう、ラストマジックは何がいいかな。
《じゃあ、そろそろさよならの時間だからー…最後にでっかい、すごい手品を見せてくれるんだよね?》
なんすかその圧。
正直しろぶた君人形の雨をラストにすりゃよかったなぁって思ってるよ俺。
えー?すっごいの?すっごいのって……
あっ、あれでもやるか。
『ぶひふごひ。ぶひひぶーひぶぶ(特別意訳:では皆さん。お手を拝借)』
そういって拍手の動きをすると、リア充を除く全員がキラキラした目でこちらを見ながら拍手を始めた。
よしよし、だんだん早くしていって……
最高速度に達した時、奇跡の大マジック!
『『ぶひぶひ~!!(特別意訳:二人になりました~!)』』
昼間なのによく見える花火を大量に打ち上げ、夏も近いというのに雪を降らせ、その上しろぶた君を二人に増殖。
本当は一つずつ披露する気だったが、全部一気にやればすごいインパクトになっただろう。
実際、会場の全員も驚きで何も反応できてないしな。
そりゃ突然花火(しかも打ちあがってる場所を見ても大砲などが置かれていないように見える)が上がって雪が舞って、しろぶた君が二人のなったらねぇ?処理しきれないだろうよ。情報を。
実際二人になったとか言っているが、同じスーツの中に人型のものを入れて固定して、マイクで二人分声が出てるように錯覚させてるだけなんだけどさ。
…あっ、解説しちゃった。
でもまぁ……大成功だったし、いっか!
【選べ ①この後、手品をしながら広場内を歩き回る。俺はエンターティナーだ ②雪平が最優先。このまま雪平を探しに行く】
…もうすでに、見つけてるんだよなぁ…
IFルート 【②●ッキーマウスかミ●ーマウスの中の人になる】
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