夢も現も同じ、というお話でもある?
…アウェイだ。
「あれ…」
「お断り5の、天久佐君よね…」
「すっごいイケメンじゃん」
「でも、前の放送見たでしょ?全員に好きって言わせるとか…」
「滅茶苦茶イケメンなのにね…」
見世物じゃねぇんだよ、と声を大にして叫びたい。
だが、この場において立場がしたなのは俺だ。
「成績優秀者のところにいっつも張り出されてるよね」
「あ、私前に困ってるときに助けてもらった事あるよ」
「普段はすっごい良い人らしいんだよね」
「運動の方も、獅子守君からライバルって言われてるくらいできるらしいよ」
「でも…ねぇ?」
「奇行がやばいって話だし…」
「あっ、目が合った」
「大丈夫?目が合っただけで妊娠させられるって話だけど」
目が合っただけで妊娠の話は、俺が自分で
「…黒白院先輩。少しお時間よろしいでしょうか」
「あら~。どうかしましたか~?」
この空気の重たくなった教室内でも平素と変わらぬ声を出し、相変わらずの感情の読めない微小を浮かべ、俺がここ……三年三組に来た理由である人、黒白院清羅生徒会長は首を傾げた。
…本当なら俺の奇行が受け入れつつある自分の教室以外には移動したくないのだが、対戦表を渡さないといけなかったりミッションの件があったりで、こうして足を運ぶことになってしまったのだ。
「対抗戦の、こちらの出場順が決まったので」
「なるほど~……あれ?この名前の前のはなんですか~?」
「それは…二つなのようなモノですね、はい」
「二つ名、ですか~…ええ、いいんじゃないですか~?」
良かった。
書き直してこいとか言われるのを覚悟していたが、あまり反応は悪くなかった。
【選べ ①呪い解除ミッションを優先。好きと言ってもらえるような質問をする ②特殊ミッションを優先。おっぱいを無理やり揉む】
…別に、選択肢が出なくても自分から言ったさ。
まぁ後押ししてくれてるということにしておこう。
もちろん、②からは目を逸らして。
「私と天久佐さんが戦うんですね~」
「ええ。そうですね。―――その、黒白院先輩。つかぬことを聞くのですが」
「なんでしょう~?」
「……俺の事、
瞬間、三年生たちが静まり返った。
『まじかこいつ』、そんな視線が俺を苛む。
元々全校生徒が見ている中で『好きと言わせる』なんて事を言ってただけでもなかなかなのに、まさか本当に他に人がいる前で言わせようとするとは。
恐らく全員がそう思っている事だろう。
―――さて、黒白院先輩の方の反応は…
「勿論、嫌いじゃないですよ~?」
「…つまり、裏を返せばそれは…」
「そうかもしれませんね~。けど、その言葉は将来の大事な人のために取っておくべきだと思います~」
普段と変わらぬ表情の読めない言い方をしている…が、人の感情を読み取ることにたけている俺だからこそわかる。
…この女、
俺が『好き』と言われなければ困るということを、知っていてこう言っている。
【選べ ①「じゃあ脱げばいいでしょうか?」といつものを披露 ②「あなた、知っている人…ですか?」と強者感を出す】
…なんで輪をかけて酷い方で真っ当な質問をすることになるんだよ。
①と②逆じゃねぇの?
「…あなた、知っている人…ですか?」
「さぁ~?
…なんの事だ、とは言わないんですか。
これはもう確実と言っていいだろう。この人は『選択肢関連の何か』を知っている。
…何とかして、詳しく聞き出したいところだが…
先輩の目を見てみるが、やはり表情が読めない。
これは、何を言ったところで飄々と返されるだけだろう。
「そうですね~…もし対抗戦で天久佐さんの方が勝てば、言ってあげてもいいですよ?」
「……一応聞きますけど、負けたらどうなるんで?」
「負けたら、ですか~」
一度言葉を切り、先輩はあの時の猛禽類のような瞳を俺に向け、普段よりも低い―――氷のように冷たい声音で、こう言った。
「……呪いをもう一つ、増やしてしまいましょうか」
間延びすらしていない、恐らく素の声。
他の生徒には聞こえていないのだろうし、恐らくその真意を知れるのも俺だけだろう。
――『呪い』。俺の場合は『絶対選択肢』。
それを、彼女は『増やしてしまいましょうか』と言った。
つまり、彼女は『
「……あなた、本当に人間ですか?」
最悪、消される可能性だってあった。
なのに、そういった先の危険を気にすることすら忘れて、自然とそう呟いてしまった。
言い終わって数秒経って、ようやく自分がなんてことを言ってしまったんだと後悔しかけて…
「…それは、神のみぞしる事です~」
間延びした、穏やかな声に戻った事に、いっそ泣き出しそうなくらい安堵したのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
時間の流れる速度というものは早いもので。
黒白院先輩が『神サイド』の存在だったと確信したあの日から、もう対抗戦本番当日になった。
マンモス校である晴光学園は、イベントステージなるものを持っており、そこで俺たちお断り5と、学園の華である表ランキングが戦う事になっている。
現在俺は、出場前の控室で茶菓子をショコラに与えつつ、アナウンサーのトークを聞いていたのだが…
【選べ ①フライング。フルチンで出場する ②パンはパンでも食べれないパン。なーんだ】
さっそく訳の分からない選択肢が来たよこれ…
え?②は確定だけど、なんなの?答えりゃいいの?
「…フライパン?」
【選べ ①カビたパン ②シャンパン】
いやわかるかッ!
①はともかく、②は『食べる』じゃなくて『飲む』ってだけだろ!飲食は一括りでいいじゃん!
「…なに一人で呟いてんだ天久佐」
「いや、別になんでも―――って、なんで先生がここに?」
突然背後から声をかけられて振り向いてみたら、そこには我らがロリ教師道楽宴先生が…
「ぐぇっ!?」
「今お前あたしの事『ロリ教師』とか考えただろ」
「な、なぜそれを…!?」
「マジだったのか!」
「ぎゃーっ!?カマかけられただけだった!?」
絞まる絞まる。
でも宴先生に絞められる分にはもういいかなって思いつつある。
だってほら、二年間もこうして首元ばっかり攻撃されてたら馴れ―――ねーな。全然思わねぇわ。
ロリコンを自称する俺でも、流石に首を絞められるプレイはNG。
…あっ、絞める力強くなった。これ明らかに心読まれてますね。
「…ていうか先生、今回解説担当じゃ…」
「実況の奴が長話だったからな。目を盗んでここまで来てやったんだよ」
「は、はぁ…どうして態々」
「―――ミッション、どこまでクリアできたんだ?」
なるほど、それを心配して。
通常ミッションだけだったらこうしてわざわざ足を運んでくることも無かったんだろうけど、特殊ミッションなんていう自分が知らないものが出ているとなっちゃ、気になってしまうのだろう。
確かになー…あとは黒白院先輩にさえ好きと言われればオッケーだが、それだけではなく『おっぱいを両手で揉む』というのが残ってるんだよなぁ…
最悪嫌われやすさ補正は気にしないものとして、特殊ミッションはスルーの方向でも…ダメか。
「通常の方は後黒白院先輩だけ。それもこれで勝てば言ってくれるらしいのでまぁ大丈夫です―――が」
「まだ特殊ミッションが残ってんのか」
「……あの、先生が乱入して出場者ってことになって、その上揉ませてくれたりは」
「やってもいいがお前、大学卒業までは病院暮らしだぞ?」
「いやナチュラルに大学まで残るようなダメージ残そうとしないでくださいよ…」
全治何年だよそれ…
けどまぁダメもとでふざけて言っただけだし、先生も先生で冗談だとわかっているのか、あまり絞める力は強くなってない。
【選べ ①思い切り抱き着き「…やっぱり胸の感触がねぇな」と言う ②ものっすごいイケメンスマイル(笑)と共に頭を撫で「…必ず勝ちます。あなたのためにも」と言う】
②さん。
あなたは普段は『①よりも酷い内容』なんですよね。
そっちの方で、胸の感触云々よりもまともそうに見える事させるって、それはつまり―――俺のイケメンスマイル(笑)はそのセクハラ発言以上の悪さだって事なんですかね。
俺さ、自分で言うのはなんだけど、結構顔はいい部類のはずなのよ。
そりゃもう、普段の奇行を知らない女子なら、俺が軽く微笑んでやっただけでイチコロ……かもしれないくらいにはな?
それがお前…セクハラ以下って…もっと悪い例って…
まぁ、先生相手ならセクハラよりもイケメンスマイル(笑)の方が怒りゲージも上がりにくいか。
……俺、自分の顔に自信持つのやめよっかな。
「……必ず勝ちます。―――あなたのためにも」
「なっ……!?あ、あたしは関係ねぇだろ…?」
その通りなんですよ。
選択肢がただかっこつけさせたかっただけで、別に俺が勝ったところで先生にはなんの利もないんですよ。
【選べ ①今ならいける。滅茶苦茶つまらないジョークで場を盛り上げる ②それっぽい理由でもつけてみる】
滅茶苦茶つまらないジョークでどうやって場を盛り上げるんだよ…
俺は普通に『関係なかったですね、申し訳ない』と謝罪したいだけなんですが。
「…ほら、俺が勝ったら、担任である宴先生も、なんやかんや紆余曲折あって評価上がるかもしれないじゃないですか。『あの天久佐金出達を輩出したあの!』とか」
「どの、だよ」
うぐ…べ、別にそんな俺だって先生に利があるなんて微塵も思ってないんだから、苦し紛れの理由ともならない理由しか説明できんって。
【選べ ①話を逸らす。話題はもちろん恋バナ ②話を逸らす。話題はもちろん自分の最近のズリネタ】
誰が言うか!
ましてお前、先生だぞ!?
そして未婚女性に恋バナとかお前、爆弾腹に巻いて突撃してこいみたいなもんじゃねぇか!
この先生、選択肢関係だってわかってても平然と首絞めてくるんだぞ!?
―――痛っ!?痛い痛い!わかった、わかったから!!
「…そういえば先生。先生って好きな人とか居たんですか?」
「あ?言うわけねぇだろ。馬鹿か」
ですよねー。
どーせそんな返答だろうと思ったよ。
でもそんな返答でも選択肢さんは満足…
【選べ ①食い下がる。なぜか教えてくれる ②食い下がる。なぜか小声で教えてくれる】
…してねぇなこれは。
あんまりこの話広げて、また首を絞められるとか嫌なんだけど。
「ほら、そこを何とか」
「――――いた」
「えっマジで!?」
「なんで聞こえてるんだよお前!鈍感難聴って話じゃねぇのかよ!?」
「いやどんな話だよ!?」
最近よく言われるが、俺のどこが鈍感難聴だというのだろうか。
小さい声で言われても聞き取れるし、もちろん人の感情を読むのには長けている。
そんなハーレム野郎のパッシブスキルみたいなのを、俺が持っているだと?
冗談にしたって、もっと面白いものがあるだろう。
確かに俺は選択肢による奇行だけ除けばパーフェクト(自称)だ。
まさしく優良物件という奴だろう。―――でも買い手がいないんですよね。今ならお買い得ですよ?
「…しっかしそうか…先生にも好きな人が……あ、未婚なのってまだ未練がとか現在進行形で好きとか――」
「あ”ぁ”!?」
「ごびゅっ!?じ、じまっでるじまっでる!がなりぐるじいでず…!」
今のは俺が悪いな、うん。
この一瞬で地雷ワード何個踏み抜いたよ?
「……別に、もうアイツに未練はねぇ、よ……たぶん」
「滅茶苦茶ありそうじゃないですか…まだ告白すらしてないとかじゃ」
「したけどよぉ!お前くらいのッ!超鈍感だったんだよアイツはァ!!」
「ぐぇええ…と、とばっちりでしょこれ…」
「―――あ、挙句…お前はお前で…」
俺は俺で、なんでしょうか。
まさかとは思いますが、その好きな奴ぐらいの鈍感で何か思うところがあるとかじゃないですよね。
あっははは、だから俺ほど人の感情に鋭い奴はいないんですって~。
【選べ ①Lみたいに問い詰める ②ハーレム系主人公がごとき聞き返し】
鋭い奴なんだよ俺は。
だからわかるんだよ。その①が明らかにアウトだって事。
「い、今なんて?」
「なんでもねぇ!……はぁ、やっぱり鈍感難聴じゃねぇか
「失礼な。少なくとも告白されても勘違いするような奴とは違いますよ」
でも選択肢のせいで、各教科の教科書の中で大事そうなやつ全部を『古い電話帳と間違えて』捨てさせられたからなー…俺、ワンサマーなるか?
いやなんだよワンサマーなるかって。
もしそうなったら、『優勝したら、付き合ってもらう!』→『買い物だろ?』とか『毎日酢豚以下略』→『奢ってくれるんだよな?』とか言う奴になってしまうのでは?
でも『嫁だ、異論は認めん』は是非是非言われてみたい。そこ代われ。
「…まぁ、今のところは5:5だ。まだアイツを諦められねぇのか…それとも…」
すっげぇシリアスな面持ちだけど、俺にはよく意味がわからないんだよな。
5:5ってのが今の先生の恋愛感情の向かっている比率なのはわかるけど、その前から好きな奴じゃない方の5が誰なのかが皆目見当もつかない。
もしかして、俺?
―――ないな。普段から選択肢のせいだったり自分からだったりで失礼な事言ってるし。
でもなー…宴先生かー…
【選べ ①男は度胸。試しに「俺は先生の事(人として)好きですよ」と言ってみる ②男は度胸。試しに「俺は先生の事(幼児愛的な意味で)好きですよ。ぐへへ」と言ってみる】
②の度胸天元突破してんだろ!
それに、どちらにせよ括弧で隠しちゃ変な誤解を生むんだよ!①の方で(幼児愛的な意味)と受け取られたらどうすんだよこれ!
…いや、①じゃないとぐへへって言わなきゃいけないしこっち選ぶけどさ?
「…俺は先生の事(人として)好きですよ」
「なぁっ…!?」
おっ?真っ赤じゃないですか宴先生。(嘲笑)
あっ、待って待って首絞めないで!?
ていうかなんで心の仲で嗤ったのは感知するくせに声に出していった言葉の真意は(恐らく)理解してないの!?
「言えばわかる、ねぇ―――なぁ天久佐」
「えっ、なんでいきなりまたそんなシリアスボイス」
「いいから黙って聞け。―――あたし、さ。すぐ手を出しちまう性格だろ?」
「は、はぁ…」
「言っちまうが、部屋の掃除だってしねぇし料理だってレンジでチンするしかできねぇ…いや、家事の一つもできねぇな」
「なんとなくわかってました」
「うるせ。―――けど、さ。こんな…こんなあたしでも」
『あれ!?宴先生!?そろそろ解説席に戻ってもらってもー!?あのー!?』
「――ッ!?あ、あたし今…」
「えーっと…行かなくていいんですか?」
なんか雰囲気が普段よりも柔らかくなった…というか、妙にオドオドした様子になった先生だったが、アナウンス(おそらく長話をしていたという実況の男だろう)の声でふと我に返った。
本当はあのまま何というのか聞きたかったが、このまま先生がここに残っていても俺(の選択肢)の餌食になるだけだろうし、向かうようにやんわりと促す。
―――しっかし、先生は何を言おうとしていたんだ?
『と、いう事で。今回の解説は道楽宴先生です!よろしくお願いします!』
『うぃっす』
『…えーっと、何か意気込みとか…』
『あ?なんであたしが意気込む必要があんだよ。やんのは表とお断りの連中だろーが』
『い、いや…そうですけど…』
『それによー…ここ人が密集しすぎて暑ぃじゃねぇか。普通こんなイベント見に来ねーだろ。真面目ちゃんか?』
『え、えぇ…』
おいおい、実況の人困っちゃってるよ。
というか、このイベントに解説も何もねぇと思うんだけど。
『…で、では。道楽先生が注目している選手は』
『どいつもひよっこに変わりねぇだろ。注目も何もねぇ』
『―――なんでこの人解説なんだろ』
『あぁ?』
『ひっ!?…さ、さっそく選手の入場です!』
心の声がうっかり出てしまったのだろう。
しかし先生にはそんな事情は関係なく、その鋭い眼光は実況の男を容赦なく苛んだ。
…が、その実況も実況でなかなか心得ているらしい。
無駄に先生に言い訳などをせず、話を逸らした。
初心者なら、ここで無駄に墓穴を掘って絞められるんだよな。
『まずは表ランキング側先鋒!男子のランキング一位にして生徒会副長!そのワイルドさと開かれた胸元からの色気が、女子たちや一部の男子のハートを鷲掴み!獅子守想牙だー!』
獅子守先輩がステージ上に姿を現すと同時、会場内に黄色い声援が響いた。
一部野太い声も聞こえるが、黄色い声援という事にしておこう。
しかし当の先輩は、その声援を鬱陶し気に思っているらしい。
眉を顰めつつ、胸元のピンマイクから、会場内の女子(+数名の男子)にこう言い放った。
『鬱陶しいから、あまり
うーん。普通なら「うわ何言ってるんだこいつ」ってなる事間違いなしなセリフだ。
しかし、会場の女子たちのボルテージはそれによりさらに上昇。余計にうるさくなった。
獅子守先輩も、「聞いてねぇのか」とか呟いている。
これは、無自覚系なのか、鈍感系なのか…はたまたわかっていてやっているのか。
いずれにしても、ムカつくことに変わりはないが。
…おっといかんいかん。先輩相手に何を考えているんだ俺は。
『続きましてお断り5側先鋒!助っ人の一年生という立場でありながら、全人類の妹を豪語するというある意味期待の次期お断り5候補!『生お兄ちゃんだけど関係ないよねっ』箱庭ゆらぎだ!!』
「ゆゆゆゆゆゆらぎぃいいい!!」「おぉん!はおぉん!ぬぉん!!」「お兄ちゃんが見てるぞー!」
やっべ、早速アイツの毒牙にかかってるやつがいる。
ゆらぎはゆらぎで自然体だし…実況の人、やけに名前を呼ぶときに力が入ってたし…まさかアイツ、実況も虜に…?
『みっなさーん!あなたの心の妹、箱庭ゆらぎでーす!よろしくねっ』
「い、妹…?」「なんかちょっと、俺目覚めそう…」「ばっかお前、お断り候補だぞ…?」「変な二つ名みたいなのもついてるしな」
ゆらぎを初めて知る人たちからは、賛否両論のようだ。
―――そりゃまぁ、いきなり自分の妹を自称されても困るよな。普通。
『お次は表ランキング側次鋒!超絶ドジっ子であり天然娘!そのゆるふわオーラは国宝級か!?柔風小凪っ!』
「「「「KO・NA・GI!KO・NA・GI!L・O・V・E・KO・NA・GI!!」」」」
柔風の登場と同時、今度は男性陣が沸き立つ…が、親衛隊の圧が強く、全てが霞んで見えてしまう。
アイツ等すげぇな…オタ芸してるぞ…
『あ、あのあのっ!こういうのは苦手だけど、私、頑張りばっ!?』
緊張からか舌を噛んでしまった柔風に、男子たちの頬が自然とほころぶ。
かくいう俺も若干癒された。
「うぅ~…いひゃい…」と呟いているところなんかが特に癒される。
『次はお断り5次鋒!発育抜群、知能もそれなりな社長令嬢――のくせに言動はまさしくお子様!『史上最強の遊王子』謳歌だっ!』
『いやっほぅ!!』
煙幕と一緒に高く飛び上がりながらステージ上に現れ、空中で三回転程した後、綺麗な二点着地をしてのけた遊王子。
そんな彼女に、全員が惜しみない拍手を送った。
勿論、俺もだ。
『さて次は表ランキングの中堅。無駄な言葉で飾る等無粋。刮目しろ男子諸君!!麗華堂絢女だぁああ!!』
実況。力入ってるな。
でもわからんでもない。現在進行形で大いに揺れているその爆乳は、男子であれば自然と視線が向かってしまうだろう。
俺はまぁ、あんまりサイズとかこだわらないからそこまででもないが。
…あ、獅子守先輩も視線が向かってる。流石のあの人言えど、あのでかさじゃ見ざるを得ないか。
中身の何割かはシリコンらしいけど、な。
『ふん、存分に見るがいいわ。卑しいゲスな男子たち』
「「「「「おぉおおおお!!」」」」」
見せつけるように胸を張ったせいで、またしても揺れる揺れる。
それに男子の視線が集まる集まる。
麗華堂をさほど知らない男子たちですら、「言い方腹立つけど、あの乳だからな」とか言っているくらいだ。
…ま、俺はさほど興味ないんでさっさと次行ってもらっていいですかね。
え?まだサービスタイム?
『…さて、紹介も後半戦へと突入しまして…お断り5側中堅!無表情から放たれる毒と下ネタは一部の層に大人気…だとか。自分は希少価値ではなく、スマートだとは本人談!巨乳爆乳は許さない!『パイオツスレイヤー』雪平ふらの!』
「なんかクールビューティーって感じじゃない?」「本当にお断り5…なのかな」「でも二つ名…」
雪平をよく知らない一年生たちがクールビューティーさを感じているが…まぁ、どうせすぐにぶち壊される幻想だ。黙っておいてやろう。
…つーかスマートってアイツ…下手にそういう方がよくないと思うぞ俺は。
まぁ、プライドとかあるんだろうけどさ。
『ドーモ。パイオツスレイヤーデス』
しっかり古事記に記されている通りのアイサツをしてのけた雪平に、幻想を抱いていた女子たちが硬直する。
…そりゃパイオツスレイヤーとかノリノリで言ってたら、ねぇ?
『さぁ続いては表ランキングの副将!例の全校放送以来、複数人の女性を幸せにするというスタンスをやめたと噂のこの男!未だに激モテハーレム状態なのはその存在故か!?頼むから爆発してくれとの要望多い、吉原桃夜だ!』
「きゃー!桃夜君ー!」「桃様ー!」「桃ちゃーん!」
…やっぱり大人気だな、アイツ。
女子生徒の声で会場が振動しているくらいだ。
しっかしなんか、雰囲気っつーの?違う気がすんな。
一応色々あって連絡先交換して以来(選択肢のせいです)よくメールするようになったが…あんな感じだっけか?
『―――僕が好きなのは女の子。それに変わりはありません―――が。僕は今、ただ一心に想い続ける人と添い遂げれるまでは、あの人だけを想い続けると決めたのです!』
そう言い切った吉原に、女子陣はさらにヒートアップ。
まぁ、かっこいいとは思うよ?俺はよくわからんけど。
…ていうかアイツ、まだショコラ諦めてなかったのか。
他人の恋路を邪魔する気はねぇしどうでもいいんだけどさ。
『さてさてお次はお断り5の副将―――なのですが』
…え、ですが?
『なんでも先日ひいた風邪がぶり返してしまったとのことで、現在自宅療養中でお休みです』
何休んでんだあの人!?勝手に副将の枠に自分の名前書いておいて何バックレてんの!?
―――まぁ、お大事にな!
『というわけで、今度は表ランキングの大将!現生徒会長にして才女。その美貌とお淑やかな雰囲気が男も女も魅了する!黒白院―――清羅ァアアアアアアアア!!!』
めっちゃ叫ぶな実況!?
そして会場の全員もすごい叫ぶな!?
…つってもこの会長相手に、なら仕方ない…のか。
確かに美人だし、俺みたいに事情を知らなきゃただただすごい人なんだろうけど…
俺からしたら、もはや選択肢を送り付けてきている側の存在…まさしく『敵』なんだよなぁ…
『みなさん、こんにちは~』
ただにこやかに挨拶しただけで、会場のボルテージはMAX。
この人前世ヒトラーだったんじゃねぇの?
『最後にお断り5の大将!成績は常に学年トップ、スポーツはあの獅子守想牙がライバル視する程!家事も得意で性格も良く、話し上手で聞き上手!当たり前のように容姿端麗だが、やはり突発的な奇行はお断り5最強にして最凶!全てを台無しにしている―――が、結構隠れファンが多いと噂のこの男!実は私、大ファンです!『王位の復権』天久佐―――金出ゥウウウウ!!!』
え、実況の人俺のファンだったの?
いやまずファンがいるって事を知ったのがつい先日なんだけど?
当事者である俺に隠れて何してくれてんのって話なんだけど?
…あ、でも意外と歓声が聞こえてくる。
そりゃまぁ全校生徒の二割が俺のファンだって話だしな…一周回るってすげぇや。
【選べ ①ここは場を盛り上げるべく、つまらないギャグを言う ②ここは場を盛り上げるべく、股間をもっこりさせる】
②だと盛り上げるもの間違えてんだろ。
ていうか①も中々おかしいからな?なんで場を盛り上げるためにつまらないギャグを言わなきゃなの?
―――それにな、俺は生粋のエンターティナーなんだ。
つまらないギャグなんて思いつきもしない。
【じゃあこの中から選びなよ ①全力のレジギガスの真似 ②自分が大好きな駄洒落】
俺のギャグセンスが低いって言いたいのかお前は!
いや、確かにレジギガスは雪平相手にはあまりウケなかったが……それはアイツがポケモンに関して無だったからだ。
しっかりあの劇場版を見ていたなら、明らかにあのモノマネで大爆笑していたに違いない。
…やめよう。なんか惨めだ。
②はまぁ、わからんでもない。
駄洒落って、なんだかんだウケる人とウケない人の差が激しいからな。
ここはまぁ、即席のくだらない駄洒落でも披露しましょう。
―――本当はファンサービス的な感じで手品でも披露したかったんだけどさ?
『えー……ワニがいるからー!』
会場の熱気が、一気に静まる。
ファンの人達は、次に何が来るのかと心を躍らせて。
そうでない人達は、次に何をしでかすのかと呆れた目を向けて。
…くそう。こんな雰囲気の中でスベらなきゃなのか…
『ナイル川には入りたくー…ナイルー!』
……え?反応?
ち ゃ ん と 空 気 が 凍 り 付 い た よ 。
…もうやだ、帰りたい。
【選べ ①ファンサービスだ。パイオツについて語ろう ②ファンサービスだ。新ネタを披露しよう】
あのー……新ネタって、なんですかねぇ!?
「…なぁゆらぎ」
「なぁに?お兄ちゃん」
「俺、昔彼女いなかったっけか?」
「―――えぇ?居るわけないじゃん!」
「いい笑顔で滅茶苦茶ダメージ出してくるなコイツ……いやぁ、なんかさ?中学二年…あたり?でなーんかとんでもない事があったような気がしなくもなくってさ?」
「…」
「その上なんつーのかな…そん時よりも前の記憶も、あるモノだけ無くして、無理やり整合性を持たせてるみたいな感じで違和感があってよー」
「……それで、もしかしたら自分に彼女が居たのかもって思いこんじゃったの?」
「思い込んだてお前……まぁそういわれても仕方ないけどさ。本当に…居なかったか?」
「――――居たわけ、ないじゃん。お兄ちゃんって、超が付くくらいの鈍感だもん!」
「言ったな?お前、それ以上は戦争だぞ」
「ふふーん!妹より優れた兄など存在しないって事、教えてあげるよ!」