俺の絶対(選びたくない)選択肢   作:イニシエヲタクモドキ

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そのパンツは桃色だった、というお話。


①過去完了形ハーレム男 ②無自覚鈍感系ハーレム男

もはやそういう才能があるのではないでしょうか?会場を静かにする才能。

 

…という皮肉を実況の人から受けた後、俺はゴミを見る視線に突き刺されながら自分の席に戻った。

今度は副将戦。本来なら吉原と夢島先輩が戦うことになっているのだが…

 

最初のメンバー紹介の時に言われていたように、夢島先輩は病欠している。

よってこの勝負は、俺たちお断り5チームの不戦敗となってしまうのだが…

それでは流石に味気なさすぎる、と現在観客席の全員が実況の人に猛抗議しているのだ。

 

でもそれの決定権限あるのって実況の人じゃなくて実行委員の人達なのでは?

 

『…皆さんの気持ちもわかりますが…お断り5チームの不戦敗で3対1、これで表ランキングの勝利が決定してしまうんですって』

『あの、一ついいでしょうか?』

『は、はぁ…なんでしょうか』

『どうしても対決したい人がいるのですが…その人との対決結果を、副将戦の結果にしてもらえませんか?』

『……えーっと…もしかしてその相手って…』

『はい。天久佐先輩です』

「ま、まじか…」

「天久佐のやつ、滅茶苦茶呼ばれるじゃん」

「でもあの全校放送の因縁って考えたら…」

「なるほど、女の取り合いか…」

「二枚目対三枚目…!」

「いいぞいいぞー!」

「見たーい!」

 

吉原…お前、まだあの件引きずってたのか。

俺が突然「連絡先交換しようぜいぇいいぇい」って言っても平然と交換してくれたのに、その裏ではいつ俺の寝首を掻こうかと黒い考えを抱いていたのか。

 

…まぁただ好きになった子に告白したら関係ない奴にキレられたなんら、引きずるよな…

 

『……はい、確認取れました!「全然オッケー、寧ろもっとやれ!」だそうです!』

 

ノリノリだな実行委員!?

イケメンに大勢の前で敗北させられるとか恥ずかしいんだけど!?

 

…いや、始まる前からネガティブじゃダメだ。

何事も全力で、勝つ気で挑まねば無礼だろう。

 

『というわけで天久佐選手、前へどうぞ!』

 

【選べ ①王者の風格と共に登壇。第一声は「叩き潰す」 ②敗者の風格と共に登壇。第一声は「ま、まいりましたぁ~ん」】

 

…いい事教えてやるよ絶対選択肢。

俺にだってなぁ…プライドはあるんだよぉ!

 

『―――叩き潰す』

『す、すごい威圧感です!まさしく『王位の復権』!』

 

それデ●デ大王の二つ名だからね?●安の殿堂だからね?

…あ、ド●ペンは似てるだけか。

 

『…では天久佐選手。再びパネルをお選びください!』

『なら今度は…』

 

【まぁまぁ、ここは私に任せときなって】

 

任せたくねぇんだよ!

また下ネタなんだろ!?

 

【①「6÷2(1+2)で」と知識人アピール ②「1+1は2じゃない。3にも4にもなれる!」と熱血主人公アピール】

 

①計算方法によって答え違う奴だろ!ってか一時期話題になってたんだから、知識人も何も関係ないわ!

で、②は②で全然関係ないだろ!結局何番のパネルがいいんだよ!?

 

『…ろ、6÷2(1+2)で』

『えーっと…1?』

『俺のやり方だと9です』

『9ですか……いや、9番はもう使われてるんですけど』

『そうだぞー。あたしが縊り殺しの9って最初に言ったじゃねぇか』

 

…あ、そうだった。

なんかもう、対決の内容が濃すぎて全然覚えてなかった。

しっかりパネルの9番のところも色あせて『もう使えません』って雰囲気出してるのに、なんでそのまんま9って言ったんだろ。

 

『では1番でもよろしいでしょうか?』

『あー…いや、だったら12番で』

『平常時のサイズですか?』

『え?』

『え?』

 

実況の人まで下ネタ使い始めたら収集つかなくなるだろ…

それにほら、そんなこと言ったら選択肢がまた悪ノリ――――

 

【選べ ①「もっと小さいですよ。親指一本分」と倍率を自慢する ②「ええ。でっかいでしょう?」と通常時の大きさを自慢する】

 

…悪ノリするんだって。こういう風に。

①だとその後の意味を察してもらえなかったら『小っさ』って感想だけで終わると思うんだけど。

 

…けど実際①の方が正しいんだよな…あれ?そう考えたら俺って●起時は二倍近く大きくなってるんじゃねぇの?

 

『…も、もっと小さいですよ。親指一本分』

『あっ……なんか、ごめんなさい』

『謝らないでもらえます!?なんか惨めなんですけど!?』

『気にすることは無いわ天久佐君。相手には「これが普通だから!」って言えばなんとか』

『わざわざマイクオンにしてまで話に入ってこなくていいから!』

『…ごめんなさい。そんな相手いないわよね』

『よ、余計なお世話―――』

 

【選べ】

 

…今度はなんですかね。

 

【①「さぁ、どうかな?」と強がる ②「は、はん!俺には性欲処理ペット、ショコラが居るんだい!」と見栄を張る】

 

悩む余地はないな。

 

『さぁ、どうかな?』

『…虚勢を張るのは結構だけど、余計惨めなだけよ』

『う、うっせーほっとけ!』

『大丈夫だよお兄ちゃん!だってお兄ちゃんには私が』

『はいはい、ありがとありがと』

『全然感情籠ってないじゃん!』

『そうっすね』

 

ゆらぎのその手の発言に本気で関わっていたら体力が足りなくなるからな。

何度も言うが、アイツからすればこの世の男性は『自分の兄』であり『愛を向ける対象』なのだ。

そんな誰にでも無償の愛を向けるような輩相手に、俺の本気の想いは向けられん。

 

アイツが他の男をお兄ちゃんと呼ぶたびに、寝取られたかのように感じてしまうからな。

寝取られは嫌いなんだ……っと、少し話がズレてたな。

 

『ではなぜ12に?』

『そりゃあ』

 

【まぁまぁ、こういう時こそ選びましょうや】

 

どういう時だよ。

いっつも選ばさせられてる気がするんだけど…って痛い痛い!悪かったって!

 

【①「俺が今まで抱いた女の数だ」 ②「俺が今まで抱いた男の数だ」】

 

俺は童貞だよ!

悪かったな小学生までしか許されないはずなのに高校生まで未経験のままで!

 

『…お、俺が今まで抱いた女の数だ』

 

え?なんで男の方にしなかったのかって?

そりゃ、観客席見てみてくださいよ。ホモがたくさんいるでしょう?

しかもかなりアクティブな。

 

もしここで『男抱いた事あるぜ(大嘘)』なんて言ったら『やっぱりホモじゃないか!』ってなって、この場がハッテン場になってしまうかもしれない。

奴らにはそういうスゴ味がある。

 

…まぁ、女を抱いたなんて嘘をついたところで、ドン引きされることに変わりはないんですけどね。

 

『……ま、マジですか?』

 

【選べ ①「ど、童貞ちゃうわ!」 ②「マジかなぁ?」】

 

否定させて!?

頼むからしっかりとした否定をさせて!?

 

『ど、童貞ちゃうわ!』

『あ、その反応で大体わかったので大丈夫です』

 

大体わかったはわかってないの証拠ですよ。

それは破壊者か。

 

…けどまぁ、俺が女を抱いた事があるなんて誤解が広がることは無くなっただろうし、これで良かったんだよな。

いやぁ、このままじゃスクールカースト最底辺の男のくせにヤリチ●って誤解されちまう所だったな。

 

【選べ ①「体が火照ってきた事ですし、全裸になっていいですか?」 ②何も言わずに全裸になる】

 

……今度は俺が変態であるという誤解を広めたいらしいなお前。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

『なんか、すまんな。無駄に時間とっちまって」

『いえいえ。先輩らしさじゃないですか』

 

卑猥な発言と奇行をひたすら繰り返すのが俺らしさなのか。

ちょっと泣いてきていいですか?

 

【選べ ①この場で大号泣 ②対抗戦終了後大号泣】

 

冗談だったんだけど。

なんでマジで泣かなきゃなんだよ……まぁ、この対抗戦が終わってからなら良いけどさ。

 

――で、肝心な対決方法だが…なんと、腕相撲だそうだ。

変則的なルールも何もない、ただ相手の手の甲を机に触れさせれば勝ちというだけのシンプルな対決。

選択肢さえふざけなければ、すぐにでも終わるだろう。

 

【選べ ①敢えて左手で挑む ②敢えて足で挑む】

 

そうそう、こうやってふざけなければー…っておい。

なんで腕相撲に足で挑まなきゃいけねぇんだよ。

 

けどまぁ、①はギリギリ許容範囲だ。

左でも勝負できない訳じゃない。

 

『あの、天久佐先輩』

『ん?なんだ?』

『…どうせなら右でやりませんか?いえ、左が得意だって言うんだったらそれでもいいんですが』

『右にしようぜ!やっぱ右だよな、右右!』

『は、はぁ…』

 

選択肢側も、左手で構えた事で許してくれたらしく頭痛は無い。

ちょっとハイテンション気味になってしまったが、やっぱり利き手で勝負できるのはうれしい。

 

もしこのまま左手で勝負して敗北したら、納得がいかないだろうし。

 

『…あの、宴先生。レフェリーをお願いしたいのですが』

『あ?めんどくせぇーな…ま、やってやるかー』

 

先生、マイクマイク。

 

やたら面倒くさそうにしながらこちらに歩み寄り、すでに硬く握り合っている俺と吉原の手を上から掴む。

気だるげにしつつも、ちゃんとやってくれるようだ。

 

『カウントはこっちで勝手にやっていいのか?』

『はい。ですが、両選手の準備ができているかは確認してもらっていいですか?』

『…だってよ。で?』

『僕はいつでも』

『俺も…』

 

【選べ】

 

…準備できてるんだけど。

いつ始められても全然構わないんだけど。

 

【①「もう少し、もう少し待ってくれませんか?」 ②「あと小一時間待ってもらっていいですか?」】

 

待たせすぎだろ!

なんでこの状態から後小一時間も待たせるんだよ!?

心の準備できてなさすぎだろ俺!

 

で①は具体的にはどれくらいだよ!?

 

【①「もう少し、後二、三分待ってくれませんか?」】

 

あら親切。

けどその親切さを、選択肢を提示しないという方法で見せて欲しいんだよな…

 

『…もう少し、後二、三分待ってくれませんか?』

『ダメだ。四十秒で腹括れ』

 

四十秒で支度しなって事ですか。

いやもういつ始めてもいいんだけどね?

 

『四十秒あるなら、一つ宣言していいでしょうか?』

『あ、はい。お好きにどうぞ?』

『―――僕は、この勝負に勝ったら…ショコラさんに告白します』

 

もうすでにしてると思うんだけど……いや、あれは俺に妨害されたのか。

 

というか別に、俺に勝ったらーとかしなくてもいいと思うんだけど?

それはショコラと吉原の問題であって、俺の関係する話ではないと思うんだけど?

 

あー、でもあんな謎のマジギレされたら、一応許可取るような事しておきたいよな。

どうせならこの対決での勝利を、許可という事にしようと。

…あれ?俺のせいじゃない?この状況。

 

『…あの犬っころにか?』

『い、犬っころ?』

『はい。ショコラさんに告白します』

 

大事な事なんだな。二回も言ってるし。

 

…けど、この会場に本人が居るわけだし、こうやってマイク越しに言ったらもうそれはすでに告白なのでは…?

 

『…時間だ、さっさと構え直せ』

 

【選べ ①「先生はジムバッジが足りないので、言う事聞きませんよ」 ②攻撃を開始する。具体的には手を握りつぶす】

 

う、うわぁ…どっちもどっちなんだけど…?

だってほら、先生相手に①みたいなふざけた事言ったら殴られるだろうし。

けど②なんて卑怯な真似、とてもじゃないがしたくない。

 

少なくとも、今の吉原のような…俺じゃ眩しすぎて直視できないような奴相手にそんな真似はしたくないな。

けどなぁー…先生に、ジムバッジ云々かぁ…

 

『せ、先生はジムバッジが足りないので言う事聞まぶげあ!?』

『ふざけてねーでさっさと構えろ。お前の準備できてない状態で始めさせんぞ』

 

言い切る前にビンタされた件。

けどまぁ、ふざけた俺が悪いか……不本意だけど。

 

…しっかり相手の目を見据えて、腕に力を入れて…よし、いつでもいけるな。

アイツが本気で挑んでくるなら、俺が手を抜くのはダメだろう。

他人の恋路を邪魔するような真似な気もするが、ここは本気で勝たせてもらおう!

 

『レディ……ファイッ!』

『はぁあああああッ!』

『おぉっ…!?』

 

先手を取ったのは…いや。先に傾けさせたのは、吉原の方だった。

 

その細腕からどうやってその力を、と面喰ったが、まぁ案外余裕はある。

まだ様子見程度なのか、それともこれが力量なのか。

 

―――取り合えず、押し返してみるか。

 

『なっ…!く、おぉおお!!』

 

言葉にならない呻き声をあげる吉原と、ひたすらに無言な俺。

俺の場合はまだ余裕があるから無言なのだが、吉原は…多分、これが全力なんだろう。

 

まぁ、元々選択肢のせいで隙があれば逆立ちやら腕立て伏せやらとやらさせられていた俺が、大して鍛えているわけでもない(そういう事をしなさそうだという偏見)吉原と大接戦を繰り広げたり、ましてや呆気なく敗北することも無いんだろうが。

 

―――さて。本気で勝ちを狙うと決めている以上、もう続ける理由はない。

吉原には悪いが、勝たせてもらおう。

俺も、この勝負に勝って且つ黒白院先輩にも勝って、先輩から好きだと言われた上で参加者の女子の胸を両手で揉むという使命―――というか義務があるんだ。

 

こうして言葉にすると圧倒的にこっちの理由の方が酷いが、これも全て名も知らぬ神が悪い。

俺は悪く…悪く、ない…はず。そんな天罰を受けるような事した覚えないし。

 

【選べ ①もう少し遊んでみる ②一気にパワーダウン。大接戦を繰り広げる】

 

今考えたことが天罰に値する内容だったのか。

 

…①は選ばない。本気のアイツに、こちらが遊ぶようなつもりで相手をするわけにはいかない。

 

けど、えぇ…②ぃ…?これで負けたらお前、どうしてくれんの?

本気を出せずに敗北したって事になるんだけど?

それじゃ俺も嫌だし、何より吉原に申し訳が立たない。

ってかもう後がないんだよお断り5チーム!負けたら黒白院先輩に好きって言ってもらえないんだけど!?

 

つまり絶対選択肢が永久不滅になるって事なんだけど!?

 

―――ッ、催促が…!

 

仕方ない、パワーダウンを選ぶか…

大接戦とは書いているが、敗北するとまでは書いていないし…うん、これにしよう。

 

『ッ…!?』

 

瞬間、一気に右腕から力が抜けた。

徐々に、というわけではなく、ごっそりと持っていかれたかのような感覚だった。

 

…っと、そんなのに一々反応している場合じゃないか。

 

さっきまで押していたのが、このパワーダウンのせいで最初の均衡状態まで戻されてしまっている。

吉原も、突然力の抜けた俺に好機と感じたのだろう。

先程までよりも強い力で、俺をゆっくりと押している。

 

『ぐ、ぉおおおおおッ!』

『あああああッ!』

 

俺も声を出すようになり、次第に巻き返していく。

やはり声を出した方が力の入りがいい。

 

だが、現在の俺と吉原のパワーはほぼ互角。

後は、持久力での勝負だろう。

 

 

 

中心で拮抗しては、俺の方へ寄り。

再び拮抗したかと思えば、吉原の方へ寄り。

行ったり来たりを何度も繰り返させ、しばらく経った頃、ようやく吉原の力が弱くなってきた。

 

どうやら、先に体力を使い切るのはあちらのようだ。

ここでダメ押しに力を入れてしまってもいいが、それでは俺の体力が先に切れて逆転負けする可能性がある。

敢えてここは、そのままの力で…

 

【選べ ①脱力も大事。一気に力を抜く ②出し惜しみなどしない。後先考えずに全力で行く】

 

両極端なんだって!

俺、頭使って勝とうとしてたよね!?なんでそこで【自ら負けに行くような真似】か【馬鹿みたいな博打】の二択なの!?

 

…くっ、選択肢の妨害を頭に入れておかなかった俺の失態か。

だがどうする?

①が、ほんの一瞬脱力するだけですぐに許してもらえる物だと賭けるか?

それとも、②でこのまま押し切れる可能性に賭けるか?

 

……俺は…

 

『う、ぉおおおおおお!!』

『なぁッ…!?』

 

俺は、②に賭けた。

①があまりにも希望的観測すぎたというのが一番の理由だが、他にも『吉原の体力が、考えている最中にも目に見えて減っていたから』という理由もある。

 

予期せぬタイミングで、こうして全力を出せば…この状態なら、もしかしたらいけるかもしれない、と思ったのだ。

 

結果、俺は賭けに勝った。

 

吉原の手は若干の抵抗を感じさせつつもすんなりと倒れ、その手の甲を机へとくっつけたのだ。

 

『ゲームセッツッ!ウィナー、天久佐!!』

 

先生がやたらハイテンションで俺の手を取り、そのまま上に掲げさせる。

そこでようやく、『あぁ、勝ったのか』と完全に理解した。

 

言われるまで、どこか夢見心地だったのだ。

それくらいに力を出し切ったのか、はたまた別の理由か。

 

『…いやぁ、すごい戦いでしたね!』

 

実況の人(この人が実況しているのを、なんだかんだ聞いていない気がする)の言葉が、耳を通り抜けて反対の耳から出ていくように感じる。

 

何というか、それくらいに疲れたのだ。

いやぁ、こんな熱く腕相撲したのなんて、それこそ小学生以来じゃないか?

今日はもう、何もしたくないな…

 

『まいりましたよ、先輩』

『…吉原……いや、そんな大敗ってわけでもないだろ。運がよかっただけだ』

 

実際、あそこで吉原に踏ん張られてたら俺は呆気なく負けていただろう。

選択肢の指示にすぐに従わなかった事とか、そういう偶然が重なっての勝利だと思うな。

 

『…今回は、大人しくショコラさんは諦めます。ですが、次は…次は、絶対に勝ちます』

『―――なぁ、吉原』

 

【選べ ①「王者は逃げん。力をつけて、再び挑むといい」 ②「いや、勝ってもショコラ渡さねぇから」】

 

別にお前がショコラに告白しようが何しようが、俺にはあんまり関係ないぞーって言おうとしてたんだけども。

 

『王者は逃げん。力をつけて、再び挑むといい』

『―――はい!』

 

爽やかにいい返事をした吉原に、俺の良心がきゅっと痛む。

だが、彼がそれでいいと思っているなら今更否定するのもアレだろう。

俺は大人しく…

 

【選べ ①右手を突き上げて「そそり立つチン●の真似」 ②下半身を露出させ、実際に股間をそそり立たせる】

 

そうそう、大人しくチン●の真似ー…ってバカ。

今いい話風にしようと頑張ってたじゃん。

なんでそこで下ネタぶっ込んで来るかなぁ?

 

『……そそり立つチン●の真似』

 

会場の反応は、言うまでもなく。

 

絶対零度の眼差しと、数名の嘲笑であった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

さて。

休憩時間を数分もらってようやく落ち着いてきたが、まだ完全に復活したわけではない。

 

何とか二勝二敗まで持ってこれたは良いが、最後は俺対黒白院先輩。

勝たなければ俺は社会的死。勝てば現状維持である。

 

―――はは、なんでこんな人生インフェルノモードなんだろ。

 

っとと、嘆いていても仕方ない。

今は状況を正しく確認しよう。

 

まず、俺は先程の戦いで疲弊しきっている。

何とか普通に会話したりできるレベルには回復したが、それでもベストコンディションとは言えない。

 

しかし黒白院先輩は現状、体力を消耗していない。

つまり、万全の状態という事である。

 

さて、体力云々を加味しなくても、黒白院先輩という『三年生になっても生徒会長を任せられる程の超人気者』と全校生徒の前で戦うというのは、明らかにアウェーである。

俺にだって一応コアなファンがいるらしいが、奇行に走る基本ハイスペックとソレの上位互換(奇行なし)なら、後者を応援するものだろう。

 

そして黒白院先輩自身も、俺レベルのスペックの持ち主である。

つまり、戦うには万全の状態且つ、俺が有利になりうる可能性のある場所であるのが最低条件だと言う事だ。

 

―――だが、現在の俺は疲弊状態。その上周りはほぼ全員敵で、先輩は万全の状態―――

 

「あれ?無理ゲー?」

「お兄ちゃん。戦う前から負けた気でどうするの?」

「そうよ天久佐君。あなたなら大丈夫。――あんな素晴らしいチン●の真似が披露できるんだもの。きっといけるわ」

「それ関係ねぇだろ!?」

 

二人が励まして(?)くれるのがありがたい。

完全に敵だらけというわけではないと実感できるのが、これほどまでに救われるとは。

 

ステージ上で微小と共に俺を待っている黒白院先輩から感じる威圧感が、若干減った気がした。

 

【選べ ①今ならいける。パンツを見せてもらおう ②今ならいける。おっぱい揉ませてもらおう】

 

いけねぇよ。

何をどう判断していけると考えたんだよ。

 

…うん、微塵も変わらないね選択肢君。

催促の痛みだけしか感じな―――痛ッ!?突然強くするのやめてくれません!?

 

「…あの、黒白院先輩。おっぱい揉ませてもらっていいですか?」

『え~?そういう事は、人前でしていい事じゃないと思いますよ~?』

「…ど、どう言う事だ?」

「まさか天久佐、マイクの電源入れてないからってめっちゃエロい事要求したんじゃ…」

「変態…」

「黒白院会長に何を言ったんだー!」

 

う、視線が痛い…

 

け、けどまぁ。さっきまでのオチをつけるかのような変態発言の時から―――いや、いっそ全校集会の度に向けられている視線だ。

別段ダメージは…ばっちり入ってますね、はい。

 

『あら~?なんか、まだ疲れてるみたいですけど…もしあれでしたら、私も違う人と対決することにしましょうか~?』

「はい?」 

『いいですよね~?』

『えっ?…す、スタッフさ~ん?』

 

ちょ、ちょっと待ってくれ。

トントン拍子で話が進められているが、俺以外と…つまり、雪平かゆらぎと対決するって事なのか?

 

それは困る。いや、ゆらぎは最悪頼みこめばちゃんと真面目に勝ちを狙ってくれるだろうけど、雪平は明らかにふざけにふざけるだろう。

それじゃダメだ。こっちは(社会的な意味で)命が懸かっている。

だというのに『選手を交代させられて、挙句ふざけられて負けましたー』なんて事になったら…うぷっ、考えただけで吐き気が…

 

『ちょ、ちょっと待ってくださいよ黒白院先輩!』

『ダメで~す。待ちませ~ん。そんな疲れ切った状態で戦うなんて、アンフェアじゃないですか~』

 

アンフェア云々を気にするというのなら、そもそも先輩とこの場で戦うという時点でほぼ負け確だと思うんだが。

唯一勝てる可能性があるのは、マジで失うものがもうほとんどない俺だけだろう。

 

そんな俺も現在満身創痍なのだが、それは最悪気合で何とかなる…はず。

 

とにかく今は、勝たなきゃダメなんだ。

勝って好きと言われて、ついでに誰かのおっぱいを揉まなきゃいけないんだ。

 

『あ、許可出ました!では、対戦相手を指名してください』

『え、いやいや俺は全然戦え…』

 

【選べ ①ここは大人しく引き下がろう ②ここは雪平を推薦しよう】

 

くっそコイツ②で雪平を引き合いに出すことによって逃げ場をしっかり奪っていやがる。

 

もしかしたら雪平が勝つ可能性だってあるが、そんなの宝くじで連続で一等当てれるレベルの可能性だろう。

そんなほぼ無に近い可能性に賭けるくらいなら…ここは、先輩がもっとマシな人を指名する可能性に賭けよう。

 

そうだな、阿邊とかどうだ阿邊とか。

アイツなら先輩の魅力に引っかからない(というかホモだ)し、友情を優先してくれる奴だからな。

…ただ問題点があるとすれば、先輩が阿邊を知らないという事と、俺がどんな見返りを要求されるかわからないという事があるが。

 

『……いえ、なんでもないです』

『ふふふ、天久佐さんは、しっかり休んでいてくださいね~。―――では、私は…ショコラさんを指名しま~す』

『しょ、ショコラ?吉原選手も言っていましたが…そんな生徒いましたっけ…?』

『生徒じゃねーな…天久佐のペットだ』

『ペット…あの、小動物と対決というのは…』

『いや女だ。金髪のな』

『―――はい?』

 

ちょっと待ってください先生。

その言い方は誤解を招くんですよ。

 

ほら観客たちの目が段々鋭く…元からだったわ。

 

「およびでしょうかっ!」

『あーマジで来ちゃったよこの子…』

「え、誰あの子…」

「滅茶苦茶可愛いな…」

「ちょ、あれは惚れるわ…」

「ってか、前の全校放送に出てたよな?」

「けど、天久佐先輩の『ペット』って話だよな…」

「え、どういうこと…?」

 

観客席から、ショコラがステージへと上がって来た。

しっかりその両手には菓子が抱えられており、餌付けされていたというのが目に見える。

 

『えっ、めっちゃ可愛い子じゃないっすか。この子が…?』

「はいっ!金出さんの…」

『あ、天久佐さん、ショコラさんにマイクを渡してあげてくださ~い』

 

…い、嫌だ。渡したくねぇ。

だってお前、ショコラだぞ?

 

確かに可愛いとは思うし、いっつも癒してもらってる。

それには感謝しかねぇし、食いすぎるのも多少は目を瞑ってやっていいだろうとは思っている…

 

けどなコイツ…アホの子なんだよ。

言葉だって、なんかひらがな多めって感じだし。

 

そんなので、あの黒白院清羅に勝てるのか?と聞かれれば…うん、コンマ数秒で首を横に振るだろう。

スリランカとかギリシャとかなら、首を縦に振るだろう。

それくらいには勝率がない。全くない。

いや、大食い対決とかならワンチャンあるか…?

 

『おお、声がおおきく!』

「…マイクで喜んじゃってるよこの子…」

『あ、じゃあ自己紹介をしてもらっても?』

 

じ、実況の人!?頼むからコイツに喋らせないでもらえません!?

だってコイツ、いつぞやの『揉んだり絡みついたり…あとバナナ』の話みたいに、変な誤解を招くような言い方を―――

 

『金出さんのペット、ショコラです!』

「学業補助ペットな!?」

 

学業補助、と付け足しても犯罪臭しかしないが。

もし数年前の、もう少し下ネタを多用していた俺なら『学業って、保健体育だろ~?』とか言って茶化したんだろうが…なんと、現在の俺は当事者である。

 

皆さんの反応は…はい、予想通りのゴミを見る目ですね。

「ペットだって…」とか「信じられない…」とか色々言われてますね。

 

『あ、ペットといっても別にひどい事はされてませんよ?いっつもかわいがってもらってます!』

「か、かわいがってもらってる!?」

「ベッドの上でって事か天久佐ァ!」

「ふざけんな!」

「そんな純粋そうな子になんて酷い事を!」

 

観客席の反応に、慌てて俺を擁護するような発言をしたショコラ。

だが、それは火に油を注いだだけだった。

 

そりゃ可愛がってるとか、意味深にしか捉えられないよな。

 

『時々いじわるもされますけど、すっごくいい人なんですっ!』

「…調教されてる…」

 

今「調教されてる」って言ったやつ誰だよ。

そんなことしてねぇんだよ。

 

『い、意地悪というのは…例えば何を?』

「そこそんなに話広げなくていいんですけど」

『そうですね…おかずを一品へらされたり…もまれたりしてます!』

『揉ッ!?』

 

実況さん、そんな大きな反応する必要…うん、主語がないからそうなっても仕方ないな。

 

実際には朝どれだけ呼んでも起きない時に頬っぺた摘んでるだけで、やましい事は何一つしていない。

おかずを一品減らしたのだって、アイツが俺の取っておいた菓子類を全部食ったからだ。

食い過ぎはダメだろ、という事だな。

 

―――いっつもクラスメイト達からお菓子恵まれてるらしいけど。

 

【選べ ①取り合えずいつもやってるみたいに()()()()()揉んでみる ②否定せず、威風堂々と構える】

 

否定させてください。

だってほら、周りの視線、冷めきってる。(字余り)

 

…はぁ、仕方ないのか…

 

『ほ、他には何かされてるんでしょうか!?』

『ほか……からみつかれたり、パンツを――』

「だぁああああそれは違うんだって!!」

 

うぐっ、痛い。

『否定せず威風堂々と構える』が続いているのに、無理矢理止めに入ったからか。

 

しかしこれは止めなきゃまずかった。

だってお前、絡みつく云々はまだ誤解だと言えるが……パンツを見せるように強要したのは、マジで言い逃れできないからな。

 

事情を説明しても『あぁ、選択肢のせいか』ってなるわけでも無し。

こればっかりはどうしても止めなければならなかったのだ。

 

『大丈夫ですよ天久佐選手。もうこれ以上何も失う物は無いじゃないですか』

「失う物あるから!まだほんの一握りくらいは残ってるから!」

『あの、マイク無しでマイクありと同じくらいの声量出すのやめてもらっていいですか』

「あ、発声練習の賜物ですかね?一時声優を目指してたり…いやそれは今どうでもよく!」

 

【選べ ①自ら誤解を招くような言い方をする ②「あの時のショコラのパンツはピンク色だったな」と言う】

 

お前…俺の事、嫌いなのか?(青春風)




一方その頃 【遊王子謳歌】

「…あれ?遊王子さん?」
「戻ってたんだー。さっきね、天久佐君が吉原君と滅茶苦茶いい勝負してたんだよー!」
「そ、そうなんだー!」
「ていうかどこ行ってたのー?」
「そうそう、いきなり叫んで走り去ってっちゃってさー?何があったの?」
「え、えーっと…あ!もう二人とも前出てるよ!見よ見よっ!」
「あ、誤魔化した~!」


数分後


「そ、そりゃ俺だってよく揉んでますよショコラの事!」
「えっ」
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