俺の絶対(選びたくない)選択肢   作:イニシエヲタクモドキ

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天久佐ファンクラブ会員は隠れキリシタンと同じ扱いですので、というお話。


①公開 ②後悔

『では黒白院選手、パネルの番号を』

『1番でお願いしま~す』

『1番ですね』

 

微笑みを絶やすことのない黒白院先輩が、今は(いやいつもだが)恐ろしくて仕方ない。

 

だって、俺が(社会的意味で)生きるか死ぬかがこの勝負で決まるのだ。

勝負のカギを握る存在である黒白院先輩の一挙手一投足にビクビクしないわけがない。

 

『えー…じゃんけんです!』

「え、じゃんけん?」

「さっき腕相撲ってあったんだし、別にあり得なくはないよな」

「けどなんか…」

「物足りない感、ありそうだよねー…」

 

観客の人たちの発言はもっともだが、実は結構安堵していたりする。

 

だってじゃんけんなら単純な運勝負。

そして、ショコラは結構ツイている人間である。

 

下手に知能とかを必要としない単純な勝負なら、まだショコラにも勝ち筋がある。

 

【選べ】

 

なんだよ、俺もう何もすることないだろ?

何故かお前のせいでステージ上に残されてるけど、ただ突っ立ってるだけで良いって言ってたじゃんか。

 

【①全校生徒の好感度が下がるような事が起こる代わり、ショコラが勝利する】

 

どんな事だよそれ!?

というか俺の好感度ってまだ下がる余地があるんですね。

 

日ごろの努力のおかげかな?

 

…で、②は?

 

【②全校生徒が爆上がりする代わり、ショコラが敗北する】

 

全校生徒()!?

全校生徒そのものが爆上がりってどういうことだよ!?

 

少なくともデメリットしかない②は選べない…最悪好感度が下がったところで、選択肢さえなくなれば回復は可能なはず。

なら、俺が選ぶべきは①。①だろう。

 

『では早速、じゃ~んけ~ん』

『ぽんっ!』

 

ショコラが出したのはグー。

それに対して黒白院先輩が出したのは…チョキ。ハサミだった。

 

つまり、ショコラの勝利だ。

 

『かちましたっ!』

 

【選べ ①全力で褒める。具体的には撫でまわす ②全力で褒める。具体的には舐めまわす』

 

②だとお仕置き…いや、もはや拷問だと思う。

 

「よーし偉いぞショコラ~!流石だ!」

『えへへ~!』

「よし、今日はご馳走だ!何食べたい?」

『おすしが食べたいです!』

「おうおう、回らない店に連れてってやるぜ!」

 

素早くショコラへ近づき、ひたすら撫でまわしながら褒める。

殆ど晩飯の話になったが、回らない寿司くらい今の俺にはなんて事無い。

 

俺を社会的死から救ってくれたショコラはまさしく命の恩人。金だっていくらでも出すぜ!

 

「えー、なんか呆気なーい」

「あいこがもっと続くならまだいいけど…」

「ちょっと早すぎるよねー」

「天久佐-!そんな元気があるなら会長と戦えー!」

「もう他のお断り5でもいいからもっと楽しませろー!」

 

観客たちからのブーイングが聞こえてくるが、そんな事全然関係ない。

つーか気にならない。

 

んっふっふっ、だって黒白院先輩は『ショコラとの対決の結果を適用させる』と言っていたのだ。

なら、これから誰とどんな勝負をする事になろうが問題無し!

多少の奇行に走らせられようが、俺は全然気にせんぞ!

 

【じゃあ ①マイクを返してもらった上で「乳首当てゲームならやります」 ②マイクを返してもらった上で「ポッキーゲームの皮を被ったディープキスならやります」】

 

多少じゃねぇだろこれは!

…けど、実際にやるわけじゃないだろうし…言うだけならドン引きされるだけで済むか…?

 

『…乳首当てゲームならやります』

『それはちょっと無理ですね~』

 

でしょうね。

そこでノリ気になられたらこっちが困ってましたよ。

 

…しかしまぁ、会場の皆さんが許してくれるというわけでもなく。

罵詈雑言、殺意の籠った目線の集中砲火が…っておい、まだやるのか。

 

【選べ ①「喚くなよ小娘ども。乳首摘むぞ?」 ②「あんまりうるさいと、こうだぞ?」と言って乳首を摘む(山田アッー!太郎か阿邊源四郎)】

 

乳首ネタ続けんなよ!?

そして山田アッー!太郎ってなんだよ!?発音できてないだろお前!

 

…因みに阿邊源四郎は、阿邊の本名である。

 

『…わ、喚くなよ小娘ども。乳首摘むぞ?』

「ひっ…!?」

「いやぁ!!」

「ち、乳首!?」

「気持ち悪い…」

「天久佐きゅんならあり寄りの無し」

 

うん、予想通りの引かれ具合ですねーってオイ待て最後誰だ!?

権藤大子さんみたいな脂っこい声が聞こえた気がするんだが!?

 

『…えーっと…天久佐選手との対決で勝ったとしても、お断り5チームの勝ちには変わりはないのですが…構いませんか?』

『はい~。私がやりたいだけですので~』

『じゃあ、天久佐選手。また番号を…』

 

実況の人が、この混沌とした空気の中でも気にせずに進行させる。

…ってやべぇ、また番号を選ばなきゃなのか!?

それはつまり選択肢がふざけるという事なのでは―――

 

【選べ ①「英語で言ったら●ックスみたいなんで6で」 ②「10で」】

 

ほらこうやってふざける……

 

うーん…なんだろう、これだけ見る分には②がまともそうに見えるが、理由を明言していないだけで本当はとんでもない意味が隠されているのでは?と思ってしまう。

ってか選択肢が提示してきてるもんなんだし、十中八九酷い理由が隠されているだろう。

 

…だからって、①みたいな小学生か中学生みたいなくだらない理由を言うのもなんか嫌だ。

それだったら、②を選んで理由を聞かれないという偶然に賭けた方がマシな気がする。

 

これは…②にしておくか。

 

『10で』

『10?それは一体どうしてでしょうか?』

 

やっぱり理由は聞かれるか…まぁ、ここでどんな理由が出てくるかはまだ決まっていない。

 

頼むっ、①よりもマシな内容でありますように!

 

【選ぶ余地はないぞ】

 

えっ…それって…

 

【つまり一択だ】

 

それ単なる命令じゃないっすかね!?

 

【「僕の好きな《トップバストとアンダーバストの差》ですよ。つまりAカップです」】

 

あああああ言いたくねぇえええええ!!

 

だってお前、俺何度も『胸の大きさなんてどうでもいい(キリッ)』なんて言ってた(言わされてた)んだぞ!?

それなのにお前いきなり『ちっぱいだいすき~(意訳)』なんて…もうなんていうか、お断りって感じじゃん!

 

そこ!『もうすでに』とか言わない!

 

―――しかしもはや選択の余地はない。よしんばあったとしてもこれより酷い物が提示されるだけ…

腹を括るしか、無いのか。

 

『ぼ…僕の好きな《トップバストとアンダーバストの差》ですよ!つまりAカップです!』

『えー、10番は…しりとりです!』

『頼むから反応してくれよ!』

 

無視はダメでしょ無視は。

そもそも理由聞いてきたのそっちなんだけど?

 

「天久佐…貧乳が良いのか」

「アイツの部屋、ロリゲーばっかり置いてあるからな」

「ん?おねショタの方が多くなかったっけ?」

「男の娘もイケるらしいよな…つまり俺でも…」

 

あ、アイツ等コラァ!

田中の奴前に俺の部屋でスマ●ラやった時、しっかりエロゲー探索してたのか!

佐藤もしっかり俺のショタがお姉さんに好き勝手されるゲーム見つけてるんじゃねぇ!

赤川は赤川でなんだその反応!ラブコメで主人公の好きな女のタイプ聞いた時のヒロインか!

 

そして阿邊はなんで俺が男の娘まではセーフって言った(言わされた)のを覚えてるんだよ!?

何よりお前は男の娘と比較するまでもなくガチムチだからアウトなんだよ!

……そもそも男の娘だろうと同性はNGだからな俺は!!

 

…で、しりとり?

これまたシンプルな勝負だけど…選択肢がふざける余地がたくさんある勝負なんだよなぁ…

 

『あ、先攻後攻は腕相撲の時と同じくコイントスで決定いたしますので。表の場合は黒白院選手が、裏の場合は天久佐選手が先攻となります』

 

さっきと同じって事か。

まぁコイントスに変則的なルールも何もないだろうし、そこはあまり気にするもんでもないか。

 

―――っと、先攻は俺か。

スタートからしっかり考えないとな。

 

【選べ ①「おっぱいの《む》からで」 ②後先考えずに実況の人の胸を揉む】

 

男の胸をおっぱいと言わなかった事は褒めてやる。

けどな、①だと過剰に反応する奴が確実に居るんだよ。

そして②を選んだが最後、阿邊とかその他の俺を狙うホモが黙ってないのよ。

 

『俺が先攻みたいですし……おっぱいの《む》からで』

『え、その単語に《む》なんて…あっ、《無》ってことですか!』

 

あー!なんで言っちゃうかなー!

言われなかったらもしかしたらバレなかったかもしれないだろぉ!?

 

…しかしまぁ、俺が最もバレたくなかった相手はそう言う事に過剰に反応するからな。

全校生徒から冷たい目で見られることなんてもうどうだって…よくはないな。うん。

 

『では、天久佐選手。《む》から始まる単語をどうぞ!』

『じゃあ…』

 

末尾が同じ文字になるようにしたいな。

それも、パッと出てこないような難しい奴。

うーん…ラ行とか、ナ行とかか?

 

【選べ ①「《(おっぱい)》」 ②「《(ちっぱい)》」】

 

確かにナ行だけども。

間違ってはいないんだけども。

…いや、胸というのは別にやましい単語ではない。

 

卑猥に感じる方が悪いのだ。

それってあなたの感想ですよね、って言って誤魔化そう。

 

ん?ルビ振ってるからアウトじゃね?

 

『《(おっぱい)》』

『《猫》』

 

お、ルビ振ってあるからそうやって読む事になるのかと思ったけど、全然そんなこと無かったな。

読み方は普通に胸で良かった。

 

『《小物》』

『《海苔》』

『《倫理》』

「あぁ、天久佐の欠如してるやつか」

 

欠如してないし!

倫理観ちゃんとしてるし!

 

俺に…というか選択肢にないのはあくまで道徳と優しさだから!

そんな人の命?軽いよそんなの、とかは言わないから!

 

…ていうか、倫理観が欠如してるって言ってきたのが趣味で拷問器具のミニチュアを作ってる赤川なのがムカつくんだけど!?

あんな毎日嬉々として拷問の話してくる奴に言われたくないんだけど!?

 

『《理科室》』

『《釣り》』

『《リカバリー》』

 

リカバリー…あれ?そういや末尾が伸びる時ってどうするんだ?

 

『あの、伸ばすときって母音を採用するんでしょうか?』

『あー…伸ばす前の文字でお願いします』

 

【選べ ①「《リストラ》」 ②「《利用客減少》」】

 

い、嫌な単語出すなお前…社会人じゃないし経営者でもないからどちらの苦しみもわからないけども。

ただまぁ、下ネタとかよりは全然いい。

 

『《リストラ》』

『《ラスク》』

『《蔵》』

『《ランドセル》』

『《ルビー》』

『《ビニール》』

『《ルックイースト》』

『《トースト》』

 

【選べ ①「黒白院先輩のトイレになりたいですね」 ②「黒白院先輩を肉便器(トイレ)にしたいですね」】

 

あーぶっ飛んだ奴が来ちゃったよこれ。

 

別に《トイレ》って返そうとしていたわけじゃないんだよなぁ…

実際は《盗聴器》と言おうとしていたんだが…

 

【あ、なら ①「《盗聴器》…実はこの学校の女子全員の自宅に…」 ②「趣味は盗聴です。プライベートな会話とかを聞くと興奮しますよね」】

 

なら、じゃねぇよ!

そんなノリでんな事言わせんなよ!

 

…いや、言うけどさぁ…

 

『《盗聴器》…実はこの学校の女子全員の自宅に…』

「「「「いやぁあああああ!?」」」

『嘘嘘冗談!冗談ですから!』

 

盗聴器なんて思い浮かべた俺が悪かったのだろうか。

 

【そうだよ】

 

返事しなくていいから。

 

『《キツツキ》』

 

選択肢が来る前に言われたか。

まぁあのまま盗聴器ネタを続けさせられても困るしな。

 

…で、何を言えばいいんだよ?

 

【① 「《亀頭》」 ②「《鬼門》」】

 

下ネタか敗北か、って事ですか。

…どうしよう。正直もう敗北してしまっても全然問題は無い。

「好き」って言ってもらうのも、ショコラの勝利で確定してるし。

 

『あ、このまま天久佐さんが勝っても何のメリットも無いのはアレなので~…そうですね、さっき言ってた()()、させてあげもいいですよ?』

『―――マジですの!?』

 

そ、それってつまり―――おっぱい揉ませてくれる(特殊ミッションもクリアさせてくれる)って事っすか!?

 

語尾が若干おかしくなりながら聞き返した俺に、先輩は平素と変わらぬ笑みを返してきた。

無言は肯定、笑顔は肯定…つまり、このしりとりにさえ勝てば俺の完全勝利…?

 

…よし、勝つぞ。

 

『なら負けられませんね…《亀頭》』

『《牛》』

 

あれっ?スルー?

おかしいな、こんなド直球な下ネタでも全然意に介さないなんて…

 

観客たちも、亀頭なんて言ったのに全然引き気味じゃなかったし…あっ、もしかして《亀頭》じゃなくて《祈祷》だと思ったのか!

 

じゃ、邪推されなくて良かったー…

 

【選べ ①「因みにさっきのはチン●の話です」 ②「因みにさっきのはこれの事です」と言って見せつける】

 

そうそう、こうやって実物見せながら説明したかったー…ってオイ。

 

『ち、因みにさっきのはチン●の話です…《触覚》』

 

至る所から「うわぁ…」と聞こえてきた。

違うんだって。本当ならあんな事言ったりしないんだって。

 

ってか俺のファンが居るのだとしたら、こういう発言の時にこそいい反応をするべきじゃないのか?

…やっぱ嘘だったんじゃ…

 

『《口調》』

『《調理》』

『《理科室》』

『《ツリー》』

『《林檎》』

『《胡麻》』

『《前》』

 

【《選べ》】

 

べ?べか、ならベーカリー……って、なんでお前まで参加してる風なんだよ。

 

【①「《エスカリボルグ》」…出現するかも? ②「(僕の股間の)《エクスカリパー》」…露出させる?】

 

させねぇから!露出癖とか持ってねぇから!

 

で、①は●クロちゃんのやつだろ!

R‐18Gになっちゃうだろ!

 

…まぁ、出現する可能性は無いだろうし、大丈夫…だよな?

 

『え…《エスカリボルグ》』

『えすかりぼるぐ?…それって、本当にある単語なんですか~?』

『あ、はい。ありますよ。撲殺天使ド●ロちゃんってライトノベルに登場する…魔法?』

『なるほど~…では、《グラス》』

『《スリランカ》』

『《蚕》』

 

【選べ ①ゴー★ジャス風に「《コスタリカ》」 ②ゴー★ジャス風に「《バハマ》」】

 

伏字が機能してないと思うんですが。

 

…で、②。お前のソレはアレだろ。

何回かに一回やる、明らかに違う国の名前を言うのかと思ったら「そんな馬鹿な(バハマ)」って言う奴だろ。

●ー☆ジャスは俺のツボだからな。知ってるよ。

 

『Want You!君のハートに、レボ☆リューション!』

『…はい?』

 

黒白院先輩が、いつもの微笑を消して首をかしげてくる。

 

だが、選択肢の傀儡となった俺は、その程度では止まらない。

 

『俺の名はゴー☆●ャス、宇宙海賊さ!…ショートコント、転校生』

「は?」

「は?」

「は?」

「は?」

 

ゲーム仲間四人衆(田中、佐藤、赤川、阿邊)の心無い「は?」に泣き出しそうになるが、まだ肝心なコスタリカを言えていないので続行。

地球儀も無いし、そもそもあの派手な見た目をしているわけでもない…が、勢いで行くしかない。

 

『どうも!転校してきた、小須田里香です《コスタリカッ》!!』

 

もはや無反応である。

誰一人、何も言わない。

 

しかしネタはまだ終わっていない。

 

何も持っていないのにも関わらず、俺は地球儀を回すかのような素振りをした…というかさせられた。

その数秒後、地球儀がある(ように演じている)場所を強く指し、観客席に向かって叫ぶ。

 

『ここっ!《コスタリカ》!―――レボ☆リューション!』

 

…す、スベッたな…これは明らかにスベッた時の反応だ…毎日向けられてるからな、こういう視線。

 

いやこんな感情の無い瞳を毎日向けられてるって何やらかしてんだよって感じなんだけども。

…実際色々やってるよな、俺。

 

『えーっと…《小須田里香》でいいんでしょうか~?』

 

【選べ ①「コスタリカですよ。何ふざけてるんですか」 ②「コスタリカですよ。何馬鹿な事言ってるんですか」】

 

最初にふざけたのはお前だし、バカもお前だよ!

 

―――えぇ…①の方がマイルド、かなぁ…?言い方とか内容とか…

でも内容ほぼ同じじゃねぇの…?

 

『コスタリカですよ。何ふざけてるんですか』

「ふざけてんのはお前だろ!」

「そうだそうだ!常識人ぶってんじゃねぇぞ!」

「流石お断り5最強…やっぱり変人だな…」

「マジキチの天久佐ってあだ名…本当だったんだ…」

「最初の勝負の時のイケメンムーブから一転しすぎだよなぁ…」

 

酷いバッシングだな。

けど俺も同じ事考えてたから何とも言えない。

 

ふざけてるのも馬鹿なのもこっちなんだよなぁ…

 

『じゃあ、《カステラ》』

『《乱獲》』

『《空洞》』

『《浮き輪》』

『《和菓子》』

『《不知火》』

『《犬》』

『《ぬいぐるみ》』

『《三日月》』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『《帯》』

『《美容》』

『ま、また()か…う、う…《ウスターソース》』

『《墨》』

 

―――お、終わらねぇ!

 

そりゃすぐに決着がつくなんて思ってなかったけど、全然()を言う素振りを見せないぞこの人!?

 

何度か誘導したり、同じ言葉を続けてみたりしたが…なんかこっちの方が追いつめられてないか?

もう《う》から始まる言葉なんてパッと出てこないぞ?

 

【選べ】

 

…と、ここで選択肢か。

数分近く黙ってたが、何を言わせる気だ?

 

【①「《ミミミン!ミミミン!》」…両ミッション成功 ②「《蜜柑》」…両ミッション失敗】

 

ウーサミン!!―――じゃ、ねぇんだよ!

しかもソレ単語じゃねぇだろ!

 

…で、なんで同じ敗北でもミッションが成功か失敗かに別れるんだよ。

②だと、もう既にクリアさせてもらえる事になってる「好き」の件までアウトになっちまうのかよ…

 

『《ミミミン!ミミミン!》ウーサミン!(裏声)』

『うわキツ…天久佐選手、一体どうしたのでしょうか!?』

 

なんだとこの野郎。ウサミンの何処が電波だって?(言ってない)

―――実際、電波なんだよなぁ…

 

『あの~、結局続きは言わないんですか〜?』

『えっ、続き?』

 

それはつまり歌えという事でしょうか。

流石に嫌ですけど?さっきの時点で大分観客達の呆れ具合増してるんですけど?

 

まぁ呆れられてるのは最初からなんだけどね、HAHAHA!

 

『ですから~、まだ《墨》の後の言葉を言ってないじゃないですか〜』

『あっ、そっちか!』

『それ以外にありましたか〜?』

 

いや、無いですよ無い無い。ミミミンミミミンを《墨》の後にだす訳ないじゃ無いですかやだー!

 

【選べ ①正直に「《ミミミンミミミン》が単語です」…敗北 ②嘘をつくのも大事「あ、《密教》ですよ」…勝利】

 

なんで密教って言ったら勝利になるんだよ…ってそうか!

先輩がひたすら《う》で終わる単語ばっかり言っていたせいで、《う》で始まる単語がもう思いつきそうに無かった。

次に言われたら俺の負けだ、と思っていたが…それは先輩も同じ事だって事か!

 

『あ、《密教》ですよ』

『密教……《う》ですか~…』

 

悩んでいる様子だが…残念。多少卑怯な気もするが、俺の勝利はすでに選択肢によって確定している!

 

『ん~……《有頂天》』

 

―――ほらな。

 

『おーっと!黒白院選手、ついに《ん》で終わってしまったー!』

『あら~。負けちゃいました~』

「…お、おぉ…天久佐が勝ったのか」

「何というか…終わりはなんか…」

「味気なかった、っていうかね…」

「会長が二回も負けてるってのは中々インパクトある気がするけど…」

「それでもさ…」

 

あまり気にする様子もなく微笑む黒白院先輩と、ブーイングじみた呟きの聞こえてくる観客席。

 

そして平然とした顔をしつつ滅茶苦茶大喜びな俺!

 

やった!やったぞ!これでミッションクリアだ!

後は先輩を人気のない場所へ連れて行って、終了前に形だけの告白をしてもらった上で胸を揉ませてもらえばヨシ!

 

『はいは~い。皆さんが何やら物足りなさそうなので~…重大発表、しちゃいたいと思いま~す!』

 

―――重大発表?

 

実況の人(今更になって思ったことだが、この人司会だったんじゃなかろうか)が進行し始める前に、黒白院先輩が前に出た。

全身から『何かとんでもない事をしでかすオーラ』を感じるが…一体何をするつもりなのだろうか。

 

…ま、重大発表って言ってもそれほどすごい内容じゃないだろうし、終わるのを待とう。

話してる間に終了の準備をしておく…なーんて事、この学園の生徒(黒白院先輩を崇拝する人達)はしないだろうし、いくら話が長くなろうが終了時間に影響したりはしないでしょ。

 

『私、黒白院清羅は―――』

 

一度言葉を切り、一瞬だけ俺の方を見てきた。

 

その瞳は、いつもの表情の読めないものでも、鋭い猛禽のようなものでもなく。

―――まるで、いたずらが成功した子供のような…その癖どこか大人びた雰囲気を感じさせる…これまた不思議な瞳だった。

 

『…男性として、天久佐金出さんを好ましく思っていま~す』

 

そんな不思議な瞳と共に、そう言い放った先輩に、俺は……

 

『御冗談でしょう?黒白院さん』

 

思考回路をショートさせた。

 

―――えっ?何言ってんのこの人?えっ?

馬鹿なの?もしかしてもしかしなくても馬鹿なの?

 

いや嘘だって事も、俺が(というかショコラが)勝利したからそう言ってもらってるって事もわかってるけど…それって俺と先輩にしかわかりませんですよねぇ!?

 

だというのに、それを全校生徒の前で?全校生徒の前で言っちゃったの?

そんな事したら―――

 

「な、なんだってー!?」

「ウソダドンドコドーン!」

「うわぁああああ!!ふざけるなっ、ふざけるなっ!バカヤロォおおお!」

「どーしてぇええええええ!!」

「て、天久佐テメェゴルルァ!!黒白院会長とゴルルァ!」

「野郎オブクラッシャー!」

 

ほら混沌とする…

 

泣き叫ぶ者、現実を受け入れられない者、俺に怒りを向ける者、俺に刃物を投げつけて―――刃物!?

 

『―――えいっ』

 

ハサミやらなにやらを回避している俺に、黒白院先輩が可愛らしい声と共に抱き着いてくる。

常の俺ならば、こんな事を黒白院先輩だなんていう学園のマドンナ(半死語)に抱き着かれたりしたら幸福感で死んでしまっているだろう。

 

常ならば、だが。

 

既に俺にとってこの人は『神かそれに準ずるナニカ(取り合えず俺にとって良くないやべー奴)』という認識で確定している。

ショコラの正体に感づいているかのような発言に、あの『呪いをもう一個増やす』という脅し。

明らかに俺をこんな目に合わせている元凶もしくはその部下あるいは上司ですありがとうございました。

 

強いて超希望的観測をするなら、大勢の前で告白し、こんな抱き着くくらいに好きなのだと見せつけて他の女子をけん制しようとしているのかもしれないと考えることも―――うん、無理。あり得ないわ。

 

「て、天久佐!卑怯だぞ!」

「黒白院会長を盾に使うなんて!」

「お前人間じゃねぇ!」

「このデケェ害虫が、俺が今から駆除してやる!」

「これが人間のやる事かよぉおお!」

「オイコラそこ代われ!」

「黒白院先輩が、晴光の●頭に!?」

 

で、観客席は観客席で鬱陶しいな!

そりゃその反応もわかるぞ?俺だってその立場だったら同じ事やるだろうし。

 

けど言われる立場になると不快なだけだから。

いつもでもここまで酷い言われ方はしてないから。

 

『……とにかく先輩。離れてください』

『けど~…良いんですか~?』

『…くっ…で、でもやっぱりあんな事…』

『したいんでしょう?』

 

そりゃミッションクリアが目的ですからね。揉みたいに決まってるじゃないですか。

 

…だが、ここはステージの上。

この観客たちの前で、その人達が敬愛するような女性の胸を揉むなんて真似、とてもできない。

 

【選べ】

 

…ここでか。

 

恐らく、揉むか揉まないか、という選択肢だろう。

大勢の前でも、ミッションのクリアを優先するか。

特殊ミッションくらいは諦めて、通常ミッションがクリアしたという事だけを喜ぶか―――え、メール?

 

《呪い解除ミッションクリア達成まで あと一人》

【①揉まない ②自分のやりたい事をやる】

 

待って、情報を理解しきれていないタイミングで攻めてくるのやめて。

 

えっ?ミッションクリア…まだなの?

他に誰が……まさか、宴先生?

 

いや、それは無い。

だって宴先生は参加したというよりも、俺が演技力対決の余った時間を潰すために呼ばれた時に手伝ってもらっただけだ。

何より女子じゃない。―――見た目は女子なんだけども。

 

じゃあ他に誰が…あっ、ショコラ?

 

確かにショコラは黒白院先輩と『お断り5のメンバーとして』戦ってた…えっ、つまり俺はショコラからも言われなきゃなの?

―――ま、それなら全然難易度低いし問題無いんだけどね?

 

そんで……痛い痛い。わかってるって。ショコラに好きって言ってもらうよりも先に黒白院先輩の胸を揉ませてもらうから。

②のやりたい事は、ミッションを両方クリアすることだから。

 

本人の許可も下りてるし、大丈夫だろ。

ショコラは言えばすぐに好きって言ってくれそうだし(吉原には申し訳ないが)もう全校生徒から嫌われまくるのは諦めるとして、ミッションをクリアしよう。

 

 

 

 

…という軽い考えが、後にあんな事態を引き起こすとは、この時の俺には微塵も予想できなかった。

 

そりゃ普段の冷静沈着さが維持できていたならもう少し踏みとどまれたのだろうが、生憎当時は黒白院先輩の柔らかさやらいい匂いやらミッション終了が近づいている事の危機感やら全員からの目線やらで、特に考えずに行ってしまったのだ。

 

その結果がアレなのだとしたら、俺はもう少し考えて行動しただろう。

 

……まぁ、考えた所で現実は変えられなかっただろうし、変わらなかっただろうが。




UOG社の開発段階商品 【天久佐&遊王子】

「ねぇねぇ天っち!ちょっと騙されてこれ飲んでみてよ!」
「騙されてってなんだよ!?怖いんだけど!?―――けど味は普通に…なんだろ、塩辛い…?」
「あたしのお父さんの汗からとれた塩で作った塩水だよっ!」
「うぼぉるるろろろろろぉえ…!」



「な、なんてもん作った挙句飲ませてくれてんだお前!」
「いやぁ、なんか『優秀な遺伝子の持ち主の体液には特殊な何かがあるはずだー』って話になって、じゃあ身近な優秀な人って事であたしのお父さんの汗を――」
「爪の垢を煎じて飲んだ方が何倍もマシ―――いや、同じレベルか。ってか何にしろ他人の体から出たモノなんざ飲みたくも食いたくもねぇわ!」
「え~?けど、ちゃんと人体に害はない程度に綺麗にしてるよー?」
「それでもだわ!」

【選べ】

「――――ま、まぁ遊王子の汗なら直にでもいただきたいがなっ!」
「お、おぉ。すっごい良い笑顔でとんでもない事言うねぇ」
「若干引くのをやめてくれよ称賛するならさぁ!」

【多分褒めてないと思うんですけど】

「返事しなくていいからッ!」
「んぇ?あたし何も言ってないよ?」
「――――そんな事より、脇舐めさせてくれない?」
「んー?……いいよ?」
「そこをこそ否定してくれませんかねぇ!?」
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