朝、朝である。
あの対抗戦から早三日…と言っても土曜と日曜を挟んだので、実質あの
あの後、結局俺は全校生徒の前で黒白院会長の胸を揉みしだき、挙句はショコラに好きだと言わせた。
ミッションは確かにクリアになったが、会場はもう大荒れ。
実況の人からも『死ね』の一言をいただいたし、何より観客席からの投擲が酷かった。
俺に何の恨みが―――はい、
気まずいやら何やらでさっさとステージから降りたかったのだが、そうは問屋が卸さない―――というか選択肢が許してくれなく。
やれ【①このままもうしばらく揉んでおく ②ついでに獅子守先輩の胸も揉む】だの【①「俺もショコラが好きだ」 ②「俺はチョコラータが好きかな」】だの【①全て回避する。勿論逆立ちで ②自ら全弾被弾する。勿論全裸で】だのと酷い選択肢が連続して出てきて―――ラストはもう、思い出したくもない。
まぁ権藤大子さんが召喚されて、ステージ裏で思い切り抱きしめられただけなんだけどね。
それが
「いよっ、天久佐!」
「おはよ、佐藤。随分元気そうだけど、どうし―――ごぶぁっ!?」
「え?あっはは、だろ?」
鳩尾に強い衝撃を感じると同時、少し体勢が崩れる。
その衝撃と痛みが『佐藤に殴られた』せいで発生したものだと知るのに、数瞬を要した。
いやいや、なんで笑顔を保って且つノーモーションで腹パンできるんだよ。慣れてないっすか?
「げほっ、ごほっ…佐藤テメェ、なんでいきなり俺を―――ぎゃばんっ!?」
「おっすおっす~!なんだよ天久佐、宇宙刑事みたいな断末魔して」
「お前が踏みつけてきたからだろうが…!」
田中に背中を蹴りつけられ、完全に地面に這いつくばる形になった。
それだけではなく、上からグリグリと踏みつけてきているのがタチが悪い。
これじゃ起き上がれないぞ…
ってか宇宙刑事みたいな断末魔ってなんだよ。
「……な、なんだってんだよお前ら―――ぶげぅ!?」
「お、悪ぃ悪ぃ。うっかりボーリングの玉顔面に投げちまった」
「大暴投すぎるだろオイ!ってかボーリングじゃなくてボウリングだからな!伸ばしたら穴開けるって事だからな!」
「じゃあ俺がお前のケツ、掘ってやるよ♂」
「ぎゃああああああ!?阿邊っ、おまっ、待て!待って!?マジでやめろくださいってか本当に脱がせようとするのをやめろよ!?」
恨みがましく田中を見上げていると、顔面にボウリングの玉がぶつかった。
歯は折れていないし、鼻血も出ていないが…まぁ痛い。痛いに決まっている。
だってボウリングの玉って、一般的な(何が一般的かはわからないが)ソレ成人男性の生首と同じ重さなんだろ?
どんだけ重たいんだよって話だよな。―――いや、成人男性の生首の重さって言っても全然わからんけど。
そして阿邊お前ズボンに手をかけるのをやめやがれください!
あっ、ちょっと待って、マジでベルト外しにきてるじゃないですかヤダー!
【しょうがねぇな助けてやるか ①この窮地を脱出できる。代わりに受難は続く ②もういっそ阿邊を受け入れてみる】
た、助かった?…うん、助かったな!
この後何か起こるのはまぁ仕方ないとしても、この地獄のような状況を脱することができるのはありがたい!
感謝っ…!圧倒的感謝っ…!
「……くっ、こんな訳の分からん空間に長々と居られるか!俺はもう教室に向かうぞ!」
「なっ、待ちやがれ!」
「よくもトーマスを!」
誰がトーマスを食った奇行種だ!
テメェ阿邊が強行に及ぶのを一回中断したら覚えとけよ!
「天久佐ッ!なんで俺を拒むんだッ!」
「お前が男だからだっての!」
別に俺に同性愛を否定するつもりは無い。
だが、それは第三者が俺の知らない場所でやっている場合だ。俺が巻き込まれるなら断固拒否する。
俺、普通に女が好きだし。
女好きかと聞かれれば頷けないけど、女にしか興味ないし。
【選べ ①「お前が男の娘になったら考えてやってもいいぞー!」 ②もういっそ自分が男の娘になる】
男の娘もなぁ!俺からすりゃ男なんだよ!(各方面に喧嘩を売るスタイル)
けど俺が今の容姿から変わるのは、親に対して失礼だと思うんだよな…まぁ二人なら気にしないだろうけど、俺が気にする。
ここは、言いたくないが…①にしておくか。前に似たような発言をしたことあるわけだし。
「お前が男の娘になったら考えてやってもいいぞー!」
「―――その言葉に偽りは無いな!?」
「偽りしかねぇけど!?男の娘でもアウトだけど!?なんで真に受けられてるの!?」
否定するが、阿邊は反応を見せない。
そりゃさっきの選択肢の『この窮地を脱出できる』の効果が続いてるせいで、意思に反して走り続けてるからな。
―――あぁ、変な誤解が残ったまんまになってしまう……
ま、まぁ?阿邊みたいなガチムチが男の娘になるなんて決してあり得ないだろうし…いいか!(脳死)
今はもう、さっさと教室に行くとしよう。
……あ、カバン向こうに置きっぱなしだ。後で回収しなきゃな。
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【①「ヘイヘーイ!」と声をかける。反応がもらえるまで繰り返す ②軽いスキンシップ。子供を作る】
なんていうふざけた選択肢が出てきたため、教室に向かう途中で遭遇した
…まぁ、この人なら軽く許してくれるだろ。
「ヘイヘーイ!ヘイ!ヘーイ!」
「ぁ……っ」
「へ?…ヘイヘイヘーイ!」
おかしい、なぜか無視されてるぞ?
虫の居どころが悪いのか?そりゃ女神にだってそんなときはあるだろうけどさ。
…まぁ、ヘイヘーイって声をかけるのも終わったし、もう
【選べ ①敗北を認めるのはなんか嫌だ。このまま続けよう ②敗北を認め、普通に挨拶する】
――――俺、敗北者でもいいかなって。
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「ヘイへーイ!」
「ぁ…」
天久佐君が、声をかけてくる。
挨拶しようって思っても、なぜか言葉にならない。
―――でも、それもそうだよね。
『私、黒白院清羅は……男性として、天久佐金出さんを好ましく思っていま~す』
…黒白院先輩の言葉を思い出すだけで、胸がズキリと痛む。
『こ、これがおっぱい!なんて柔らかさ!』
黒白院先輩の…む、胸を両手で触って、嬉しそうにしていた天久佐君を思い出すと、涙が出そうになる。
『ショコラ!お前は、俺の事好きか!?』
『はいっ!大好きですっ!』
胸を触ったまま、ショコラちゃんに好きかって聞いて…好きって返されていた事を思い出すと、目の前が真っ暗になったみたいに錯覚しちゃう。
「へ、ヘイヘイヘーイ!」
ずっと、ずっと不思議で仕方がなかった感情。
天久佐君について考えるだけで、モヤモヤして、苦しくて…けど、温かくて嬉しくなっちゃう理由。
黒白院先輩に告白されて、その…胸を触って、ショコラちゃんからも告白されてる所を見て―――そこでやっと気づいたの。
―――私、天久佐君の事好きだって。
気づいたら、『あぁ、初恋に気づいたら、終わっちゃったんだ』って悲しくって。
『黒白院先輩にも、ショコラちゃんにも…私じゃ勝ち目ないや』って辛くって。
いつの間にか涙も流しちゃって、声に出ちゃいそうだった時に―――
『その、これ全部俺が勝利した時の賭けの報酬なんで、全然そう言う事は無いですからね。責めるなら俺だけにしてくださいね。―――因みに、恋愛的な云々は何もないですから』
その言葉で、少しホッとした。
少なくとも天久佐君は黒白院先輩やショコラちゃんから告白されても、恋人云々な話にはしていなくって。
いけない事なんだろうけど、まだ…私にも、チャンスがあるんじゃないかって。
冷静に考えたら『あの二人でも恋愛的に見ないのに、私なんかが…』ってなっちゃうんだろうけど、こう思わないと―――辛くって。
けどそれとこれとは別だよね……今こうして天久佐君を無視してるのも、絶対よくない事だよぉ…
「…て、天久」
「あ、髪飾り変えたんだな。似合ってるぞ」
「ふぇっ!?」
前使ってたのは罅が入ってたから変えたけど……今それを指摘されたら…似合ってるなんて言われたら…!
「―――ごめんなさいっ」
「えっ、ちょっと!?」
背後から聞こえてくる声を無視して、走る。
廊下を走るのも、天久佐君を結局無視したまんまなのもどっちもいけない事だけど―――そんな事、気にしてる余裕…ないよぉ…!
だってだって、す…好きな人とお話するなんてぇ…しかも、髪飾りも褒められちゃって……
結局、教室につくまでは、走りっぱなしだった。
…こういう時に限って、珍しく一度も転ぶことは無かった。
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どうも。結局完全に無視され、傷心中の天久佐です。
いやぁ、対抗戦の件がここまで周りに溝を作っていたなんてなぁ…自分、泣いても良いですか?
「あ、委員長。おはよ」
「…おはよう」
お、挨拶返してくれてんじゃん。
やっぱりクラスのリーダー的存在は違うな!姉御と呼ばせてもらうぜ!
【選べ ①「姉御!」 ②「兄貴!」】
本気で呼ぶつもりでは無かった。
それだけは伝えたかった。
「あ、姉御!」
「な、なんで姉御なの?」
「あっ、いや。何というか…」
【選べ ①真実を話す ②敢えて全然違う理由をでっちあげる】
なんで?なんで敢えてでっちあげる必要があるん?
「ほら対抗戦の時、色々やったじゃん。そのせいで、俺まともに挨拶返してくれる人すらいないんだよね」
「自業自得じゃなかったっけ…?」
「そ、それを言われると何も言い返せないんだけどさ…」
だってあれは選択肢が【①責任は自分にあると話す ②開き直ってハーレム王を名乗る】とか出してきたせいで…
まぁ後半に『恋愛的なサムシングはない』って自分で勝手に付け足して、変な誤解がないようにしたけどさ?
そこは一応選択肢のおかげっていうか?
いやどうせ自分で否定しただろうし、何も感謝する場所がないじゃないか!
「そこまでして、お…胸、触りたかったの?」
【選べ ①「今おっぱいって言おうとしてただろ」 ②「今パイオツって言おうとしてただろ」】
確かに気づきはしたけども!けどそれって普通は言わないじゃん!
ってか委員長相手にここまで絡むの初めてだろ!
「い、今おっぱいって言おうとしてただろ」
「うわぁ…天久佐のやつ、委員長にまでセクハラしてるぜ…」
「委員長がそんなこと言う訳ねぇのにな…」
「ま、メガネ外したら表ランキング狙えるレベルって言われるくらいの美人だし…」
「天久佐がセクハラしててもおかしくない…な」
おかしいからね?
なんで俺が悪いみたいになってるん?
そりゃセクハラチックな発言をしたのはよくないだろうけどさ、実際委員長だっておっぱいって言おうとしてたじゃん。
だのに、委員長がそんなこと言う訳ないって…委員長にだってそういう事言いたくなる時くらい、あるだろ。
【選べ ①有象無象に興味はない。さっさと雪平に会いに行こう ②もう少し、おっぱいと言おうとしていたかどうか問い詰めてみる】
問い詰める必要はないけどさ、なんで雪平に会いに行くって話になんの?
確かに席は近いけど、雪平目当てで席に座るわけじゃないからね?
「よ、雪平」
「…おはよう、【凄く卑猥な罵倒】君」
今、なんて?
なんか知らんけど、伏字みたいな音聞こえたぞ?
ってか文字に起こせないって書いてるじゃねぇか!俺の事なんて呼んだんだよコイツ!?
「あの、なんでそんな」
「あら、【とても人前では使えないような単語】君。随分やつれているようだけど」
「お前のその訳のわからん呼び方のせいじゃい!なんで現実で伏字聞こえてくるんだよ!?」
絶対選択肢があるんだから、あまりに酷い言葉を使ったら謎の力で伏せられるのもおかしくはない…?
いや、やっぱりおかしいだろ。
何があっても現実で『ピー音』がなっちゃダメでしょ。
でもその理論が適用されるなら、俺のこの絶対選択肢もあっちゃいけないものだと思うんだけど。
じゃあやっぱり伏字があってもおかしくはない…?
―――やめよう。このまま一人で考え続けてても埒が明かない。
「…ところで天久佐君、昨日の事だけど」
「昨日は休みだぞ」
「―――ほんの痴呆ジョークよ」
「なんつー冗談だよ!?」
「過ぎたことに拘泥するのは愚かな事だと思うわ。―――話を戻すけど、あの時…対抗戦の時の話だけど」
「過ぎたことだろそれこそ!もう全面的に俺が悪いって事で決定したろ!?」
その結果全員から結構マジで嫌われて(ファン的には大喜びだったらしい)挙句はその場でレンチとか鉄アレイとかそんなのを投げつけられるようになっちまったんだけどな。
…ってか雪平、いつもとなんか違くないか?
雰囲気と言うかなんというか…何かあったのか?
まぁ敢えて聞いて面倒くさい事になったら困るし何も言わないけどさ。
「…黒白院先輩やショコラさんとのアレについてだけど」
「だからアレは俺が賭けに勝ったからで」
「パイオツを揉んで、随分と嬉しそうにしていたじゃない」
そりゃ、初めて触ったからなぁ。
感動とか色々…あんな状況でも、ポジティブな感情の方が勝ったんだよ。
【選べ ①「結局お前は何が言いたいんだよ」 ②「俺が誰とナニしようが勝手だろうが!」】
なんでちょっと喧嘩売る風にいう必要があるんだよ!
…けどまぁ、聞き方はアレだが①は悪くない。
実際なんでコイツがここまで問い詰めてくるのか気になるしな。
下ネタには寛容な(なお彼女自身の胸の話はNG)雪平が、なぜ黒白院先輩の胸を揉んだことに関してこんなに怒っているのか。
…あ、怒ってるっていうのは確定してるわけじゃなくて、俺が勝手にそう思ってるだけだからな。
本当はどうなのか、なんてのはわからん。
人の感情を読むことに長けている俺でも、絶対にそうですと言い切るような自信は持ち合わせていないのだ。
―――と、そろそろ痛くなってくる頃だし、さっさと①選ぶとしますか。
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私が通う学校、晴光学園。
県内有数…いや、もはや日本有数とも言っていいマンモス校であるここには、あるカーストが存在する。
それが、『表ランキング』と『お断り5』。
どちらも男女各五名で構成されていて、生徒たちの投票により、『是非お付き合いしたい人』と『顔はいいのに言動のせいで恋愛的にはNGな人』が毎年選ばれることになっている。
私は後者。
それもそうだと思う。口を開けばエッチな事とか酷い事とかばっかりな女の子、好きになる人なんていないだろうし。
…それで、今大事なのはこの『表ランキング』の一位である女性……黒白院清羅先輩。
同じ女だけど…何というか…すごい、って思う人。
成績優秀、文武両道、ミステリアスな雰囲気をまといつつも、どこか人懐っこい性格。
ある種の宗教団体のように、黒白院先輩を崇拝している人たちもいるのだとか。
そんなあの人が―――
『男性として、天久佐金出さんを好ましく思っていま~す』
天久佐君を…私の好きな人に、告白した。
全校生徒に発表する形で。
最初は、なんの冗談だろうって思った。
確かに天久佐君はかっこいいし頭はいいし運動もできるし優しいし、私が変な事言っても反応してくれるし…何より、本当の、この私を見ても可愛いって言ってくれたし(その後その記憶を無理やり消したのだが)…こ、後半はあまり他の人には関係ないだろうけど、とにかくまぁ、黒白院先輩と並んでいても別におかしくないような人だと思う。
…けど、私以上にエッチな事言うし、しようとしたりさせようとしたり…豚の真似はするし突然踊りだすし歌いだすし叫ぶしブリッジするし服も脱ぐし……お断り5の最強って呼ばれてるくらいに変な人で、私以外に天久佐君を好きになる人なんて、いないと思ってた。
けど…
『えいっ』
天久佐君に自分から抱き着いたのを見て、現実なんだってようやく理解して。
『こ、これがおっぱい!』
その後、天久佐君が先輩の胸を揉んで感動してるのを見て。
『ショコラ!お前は、俺の事好きか!』
『はいっ!大好きですっ!』
ショコラさんにも好きだって言われてるのを見て。
―――あぁ、もう無理だって思った。
だって、
けど、天久佐君は天久佐君だった。
普通の人、の枠に当てはまらない事しかしなかった。
『本当、彼女らに俺への恋愛的好意なんて微塵もないんで!それに、先輩の胸触っちゃった時点でこんな事言うのはもう手遅れだと思いますけど、俺もそういうのは一切あり得ないってわかってるんで!身の程わかってるんで!』
はっきりと言ったわけではないが、二人の告白を断ったのだ。
恋愛的な事は一切あり得ない―――彼の自己評価がかなり低い事も関わっているのだろうが、とにかくあの二人相手にそういった感情を抱くことは無い。
そう言ったのだ。
こ…これって、どうなんだろう。
あの二人でもダメなら、私なんて眼中にすら入れてもらえないのかもしれないし、同じお断り5だから身の程的にオッケーってなるのかも知れない。(奇行にさえ目を瞑ることができれば、全然黒白院先輩やショコラさんともお似合いだとは思うけども)
私的には、勿論後者の方がうれしい。というかこっちじゃなきゃ困る。
―――と、ここまでが対抗戦の時の話。
「結局お前は何が言いたいんだよ」
「……」
今の問題を、しっかりと見つめなおそう。
私は、あの時の発言が本当に正しい物なのかどうかを確かめたくって質問してた。
けどそのまま聞くのが恥ずかしくって、つい問い詰めるような…語調の強いような聞き方になっちゃって。
そのせいで、「なんでそんな強く聞く必要があるんだよ?」って意味を込めて、こうして聞き返されて―――今に至ると。
明らかに私のせいだよね。恥ずかしいのがバレないようにするにしても、もう少しマイルドな言い方とかあったと思う。
別ベクトルで恥ずかしいけど、いつものノリで冗談めかしてって感じにするために、エッチな事も言っちゃってよかったかもしれない。
「…?あの、雪平?」
「…何かしら」
「いや、だから…結局、お前は何が言いたかったんだろうなーって」
「……あなたの●茎チン●で、二人同時に満足させるなんて無理って話よ」
「失礼だなお前!それに俺はちゃんと剥けてる―――って何言わせてくれてんだ!?」
い、今のは自爆だと思うな…
けどそっか、む…剥けてるん、だ。
そうだよね、15…なんだよね。うん。定規で測ってみたけど、確かに―――いやいや別に確かめてみたとかそんな事はなくって!
…誰に弁解してるんだろ、私。
「冗談よ。ただのタートルジョーク」
「―――タートルネック?」
「…そういえば、そういう聞き間違いをされるから『亀ジョーク』と呼ぶようにしていたわね。忘れてたわ」
…天久佐君、もしかしてあんな小ボケを覚えてたのかな。
だとしたらちょっと嬉しいかも。
あんなどうでもいい事でも、私との会話を覚えてくれてたって事だし。
―――って、今はそれどころじゃなくって。
「…私は、ね。その…」
頭の中には、二つの選択肢。
一つは、このまま素直な気持ちを伝えてみると言う事。
もう一つは……いつも通り、変な事を言って誤魔化すと言う事。
本当は、「私だって天久佐君の事が好きだから、あの二人から告白されてるのを見たら…気が気じゃなくって」って言いたい。
言えたらどれだけ楽だろう。
…まぁこれが言えるくらいなら、普段から本当の私で会話できてるはずなんだけどね。
でも、もう一つの方を選んでも…平行線のまま、何も変わらない事になっちゃうと思う。
いや、絶対なる。
だったら、素直に――――
「わ、私」
「そんな言いたくないなら別にいいぞ?なんか…オチが見えてるし」
「―――え、ええ。そうね……もう席に戻るわ。あなたも早く準備をした方が良いわよ」
「そうだな。時間も時間だしな」
…やっぱり無理!
無理だって!私って言っただけで心臓破裂しそうだったもん!
はぁ…天久佐君が被せて何か言ってくれなかったら、絶対いつもみたいにエッチな事か酷い事言っちゃって終わってたよぉ…
いつも通りの無表情を意識して歩くが、どうも足取りがトボトボしてしまう。
…そう感じているだけで天久佐君にどう見えているかはわからないけど、なんか恥ずかしくって……少し、早歩きになった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【選べ ①「目と目が合う~」 ②「コノメニウー」】
確かに現在進行形で遊王子と目が合ってはいるけど。
この目に遊王子がしっかり写っているけども。
けどさ?俺最後に遊王子と会ったの、俺が不可抗力でブルマ剥ぎ取っちゃったあの一件以来なんだけど?
気まずすぎて声かけにくいんだけど?
それにほら、遊王子の方も顔真っ赤にして俯いてるし。
…なんか珍しいな。コイツが何日も前のこと(と言っても三日前なのだが)をずっと引きずってるの。
パンツ見られたのがそれくらい恥ずかしかったんだろうけど……コイツの羞恥心はイマイチよくわからない。
今だって制服はヘソ出し状態のまま来てるし、足だって…す、ストッキング?いや長さが違う。
これは…ぱ、パンスト…だと!?
えっ、今気づいたけどコイツパンストじゃん!前まで生足だったはずなのに、どうして急に!?
…ま、まぁ。俺の性癖にぶっ刺さってるからって、そういう意図のないだろう遊王子相手に欲情するわけにもいかない。
ここは冷静に、遊王子の足を見ないようにして会話しよう。
【あ、もう一つ ①「な、なんてエロいパンストなんだっ!」と言ってから歌い始める ②本当にパンストかどうかスカートを巻くって確かめてから歌い始める】
お前、お前…(言葉にならない)
「お、おはよう。天っち」
「な、なんてエロいパンストなんだっ!」
「はぇっ!?」
遊王子が顔を赤くして、大仰に驚く。
だが俺の口は止まらない。
既に俺の自由は選択肢に剥奪されているのだ。
「コノメニウー」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「トオイヒノー」
え、えっと…全然わからない。
「マナツノー」
ついさっき、天っちがあたしに、なんてエロいパンストなんだー!って言ってきて。
「カゲロウー」
で、突然歌い始めて。
―――全然わかんないんだけど!?
いや、いつも通り過ぎてちょっと「くすっ」ってなっちゃったけど、あたしの事褒めた直後にこれってどういうことなの!?
…ていうか、エロいって誉め言葉なのかな…?
ま、まぁ天っちが前に好きだって言ってたから履いてるんだし、意識してもらえてるなら良いかなぁ…
「けどやっぱりなんで歌いだしたのかわかんないんだけどっ!?」
「―――お、珍しいな遊王子。お前がツッコミに回るとは」
あたしも驚いてるよっ!
基本天っちが何やっても笑って流してるし(純粋に面白いから)一緒になってふざけたりしてるけど、ちょっと今はそういう気分というかなんというか―――とにかく乗れないのっ!
…でもやっぱり、天っちって自分でやりたくてやってるって感じじゃないよね。
無理してるっていうか…ぎこちなさ?とかがあるような気がする。
「しかしまぁ…明るさは戻ったな」
「明るさ?」
「いやほら、あんまり触れて欲しくないかもだけど…さっきまでいつもより暗かったって言うか…余所余所しかったっていうか?」
「あっ、あー…うん。それは大丈夫だよ、うん」
だってちゃんとスパッツも履いてるし。
ちょっと蒸れちゃってるけど、あんまり気にならないし。
…けどやっぱり…天っちを直視するのは…まだ、無理かな。
恥ずかしい、し。
「そ、そういえば天っち、あたしが居なくなった後でまたなんかやらかしたって聞いたけど」
「何も聞くな……俺が悪いんだ」
…いや、一応知ってるんだけどね。
みんな言ってたもん。天っちが生徒会長とショコラっちに好きって言われて、しかも生徒会長の胸を揉んでたって。
―――でもこの雰囲気…いつもの奇行と同じで、望まずにやった…?
「ね、ねぇ天っち」
「…ん?」
「前にも聞いたと思うけど、どうしてそんな心底やりたくなさそうにしながら変な事するの?」
「えっ」
「そんなにしたくないなら、しなきゃいいじゃん」
「えっ」
目を丸くして驚かれる。
でもそんな反応するような事でもないと思う。天っちって結構わかりやすい所あるからね。
「…いや、確かにしたくない。したくはないんだが…」
「?何かあるの?」
「そうだな……絵本で例えるなら、『くもだんなとかえる』って感じだ」
「…?そんな絵本があるの?」
「あー、知らなかったか。じゃあ」
「
真剣に言葉を選びながら、あたしにわかるように説明しようとしていた天っちに、後ろから誰かが声をかけた。
ちょうど天っちの影に隠れて見えなかったけど、次の瞬間にはあたしにも見えるようになったし、何より声で分かった。
―――黒白院生徒会長だ。
因みになんであだ名で呼んでいないのかと言うと、結局あだ名呼びの許可を取っていないからだ。
流石に先輩に許可なくあだ名呼びはダメかなって。
「…なんでここに?」
「えへへ、会いたくなってきちゃいました~」
「説明になってな――――」
「天っち?」
「…お、俺も会いたかったぜマイハニー」
「あら~、それは嬉しいです~!」
…天っち、また嫌そうに言ってる…
いつも以上に露骨だよ、これ。
で、黒白院会長の方は何考えてるのか全然わからないし…
本当、何があったんだろ?
ショコラっちに聞いたらわかるかな?
「…はぁ…もうこの際来た理由は聞かないんで、要件を」
「ですから、会いたかっただけですので~。要件も何も、ありませんよ?」
「絶対嘘だろ……げっ」
また嫌そうな顔をする天っち。
けど今はそっちよりも、自分のこのモヤモヤの方が気になる。
なんでだろ。天っちが(確実に自分の意志とは関係なしに)マイハニーとか言っているのを聞いてから、ずっとモヤモヤしてる。
黒白院会長が密着気味なのも…なんか、ヤダ。
「…あ、あのさ天っち」
「じゃちょっと外で話しましょうか二人で!これで良いんでしょ!」
「あら、情熱的なんですね~」
「その言い方やめてもらえませんかねぇ!?」
あたしが声をかけるのを遮るように、天っちが声を張り上げた。
ほんの少し伸ばしかけていた手を引っ込めて、二人の間に視線を走らせる。
ニコニコ笑顔な黒白院会長と……前に天っち本人が言ってた言葉を借りるなら、苦虫をスムージーにして口の中をゆすいだうえでそのまま飲み干したような顔をしてる天っち。
明らかに天っちが迷惑そうにしている(けど客観的には天っちから誘っている)のに、モヤモヤしたのは収まらない。
それどころか、もっと強くなってる気がする。
結局、あたしが声をかけるタイミングも無く、二人は教室を出て行ってしまった。
……因みに教室を出ていくときの天っちは逆立ち歩きだったけど、それもまた嫌そうな顔をしながらやっていた。
今まで没になった選択肢たち【その1】
【①スカートを捲って「さては黒だな」 ②ズボンを下ろして「俺も黒だよ」】
【①空から地面が降ってくる ②地面から空が出てくる】
【①居候に息子を差し出す(意味深) ②外で軽く脱いでみる】
【①一時間の間、発する言葉が全て逆さまになる ②一時間の間、自分の重力だけ反転する】
【①ふんどしで生活する ②ふんどしになる】
【①注目を浴びてから脱ぐ ②ク塩酸を浴びる】