俺の絶対(選びたくない)選択肢   作:イニシエヲタクモドキ

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しばらくこの作品すら投稿が難しくなりそうです。
できるだけ書き溜めできるように頑張りますが。


①まさかの水着回!? ②まさかの下着回!?

【選べ ①奇声と共に扉を開ける ②規制と共に扉を開ける】

 

…という訳のわからない選択肢に始まり、数回程奇行に走った後にようやく落ち着くことができた。

俺がふざけている(ふざけさせられている)間に、クラスの連中はショコラが自分たちの知るショコラに戻った事を知ったらしい。

その間ずっと無視されてたんだけどさ。それでもずっと奇行に走らされるわけよ。

 

マジで特殊ミッションって何だったんだろうね、あははは。

 

―――まぁ、今回の場合はやり直し権なんて言う素敵ワードが出てるんだ。

絶対にクリアしてやろうという気ではいる。

具体的には、ショコラをプールにでも誘って濡れ濡れ(物理)にさせるとか。

最悪手を水に濡らしてもらって…でもいい気はするが、流石にそれじゃ失敗になる気がするのでやめておくが。

 

淡い期待とか、持つだけ無駄だし。

 

「…天久佐君」

「ん?」

「ショコラさんが普段通りに戻ったようだけど…結局昨日のは何だったのかしら?」

「あー…俺にもよくわからん」

 

アイツ自身が昨日全体に説明していたが、その説明が実際の理由だと受け止めた奴は少なかったらしい。

それは先程の奇行の間のクラスメイト達の会話からもわかっていたことだが、雪平もその一人らしい。

 

けど本人からの説明が納得できないからって、俺に聞くのはどうかと思う。

俺の方が良くわかっていないのだ。神が云々とか知ってしまっている分余計に。

 

「…やっぱりそういうプレイだったんじゃないの?」

「なんでそうなる…」

 

今日の雪平は平常運転みたいだ。

まぁ不機嫌なオーラは変わらずだが。

 

別に俺とショコラにそういう事があるわけ―――

 

『金出さん。好きです』

『loveの方です』

『恋することに、理由は不要だと思います』

 

―――ここで思い出すかぁ…

 

いや、昨日の今日だし、忘れてたって事はないよ?

ないけどさ?

なんで今これが頭に浮かんじゃうのかなぁ…って、なるじゃん。

 

顔が赤くなっていたら嫌なので、手で隠す。

すると、やはりまぁ雪平が不審そうにこちらを見てくるじゃないか。

 

「…そんな自ら顔を覆いたくなるようなハードプレイを…」

「ねぇよ!なんもねぇから!」

「何もしない…放置プレイって事?」

「なんでそうなんの!?」

「否定はしないのね」

「明らか否定の意志が込められた発言だっただろ!」

「でもしっかり否定したわけではないわ。言葉なしに理解し合えるなんて、所詮は幻想よ」

 

何とまぁ否定しがたい事を…

確かにな。言葉にしなくても伝わる…なんて、そんなの現実にはそうそう無い事だしな。

 

なんでコイツ時々深い事言うんだろ。

 

「…というか、何もしなかったの?」

「してねぇよ。するわけねぇだろ」

「―――おめでとう」

「え、何が?」

「あなたは正真正銘の『ホモ』だという事が証明されたわ」

「俺にそっちの気はねぇよ!ってかそれで責めるのやめろよ最近LGBT云々が厳しいんだからさぁ!」

「別に誰も見ないような作品なんだから何してもいいでしょ。メタな話とか」

「それはプライドも何もかもを捨てきったネタだろ!」

 

雪平まで()()()()ネタを使いだしたら、マジで収拾がつかなくなる。

流石に軌道修正が必要だ。―――ついでにホモ…いや、ゲイの話は逸らしておこう。

 

「あのな。俺はショコラとは何もしてない。けどそれは俺が女に興味がないからじゃない」

 

【そうそう。こういう理由だもんね】

 

…どういう理由だよ。

 

 

【①「だって男じゃなきゃ興奮しないし」 ②「幼女じゃなきゃ興奮できないよ」 ③「性欲って一周回ると悟れるようになるんだぜ」】

 

どれも違うわ!

なんで三択用意してコレなんだよ!?

 

…いいか?俺は別に女に興味がないわけじゃない。

寧ろ有り余ってるさ。性欲も、情熱も。

けどな?紳士なんだよ俺は。

いくら好きだと言われたからと言って、そういう関係でもないいたいけな少女と淫らな行為に及ぶというのはダメだと思うんだよ。

常識的に考えてな?

だから―――痛いッ!?つい最近のソレと比べ物にならないくらいにあばばばばっ!?

 

「ぐっ……いいか雪平。性欲って…一周回ると悟れるようになるんだぜ」

「…」

 

おい、なんだその無言は。

そしてなんだその目は。

言いたいことがあるならはっきり言えばいいじゃないか。

 

【そうだよ(便乗)】

 

ちょっと待って?

選択肢さん?

 

【それはそれとして ①「だって男じゃなきゃ興奮しないし」と言って服を脱ぐ ②「幼女にも穴はあるんだよなぁ…」 ③ショコラを呼び、ナニも無かった事を説明してもらう。本当にやましい事がないならね】

 

やましい事?あるわけねぇだろそんなの!

③だ③!一択だろ!!

 

【じゃあ質問】

 

し、質問?

 

【風呂場で抱き合った事や、キスしそうになったこと。舐めまわそうとした事はやましい事に入らないんですか?】

 

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ゛!!

今ソレを掘り返すんじゃねぇよッ!

 

【えっ、あなた的には居候の交際関係にもない金髪美少女の裸体をしっかりと、そうしっかりと目に焼き付けた挙句キスの一歩手前まで行ったのは全然…全ッ然やましい事じゃないって事になってるんですか?マジで?】

 

うぐっ…い、いやそれは!

 

【「一生心に残る傷をつけてやる」】

 

ヺア…(言葉にならない呻き)

そ、ソレはさ…なんつーか、男の怖さを舐めてた様子だったからで…

 

【で、ナニをするつもりだったんです?まさか、そのナニで?(笑)】

 

笑うなぁああああああああ!!

 

く、くそっ!良心の呵責なんか知るかっ!

俺は③を選ぶ!選んでやるからな畜生!

 

「しょ、ショコラ!」

「んみゅ?どうかしましたか?」

「…昨日、俺たちには何も無かった事…ちゃんと説明してやってくれ」

「昨日ですか…ピッツァがおいしかったですね!」

 

何を説明してんだコイツ。

…けどまぁ、このままピッツァの話に持っていけばいいか。

ナイスアシスト?

 

「そうだ。俺は昨日コイツにピッツァを作ってやっただけだ。石窯でな!」

「…ショコラさん。つかぬ事を聞くのだけど…それ以外で何か記憶に残っている事は?」

「目がさめたら金出さんとおふろに入ってました!」

「\(^o^)/オワタ」

 

渾身のオワタの真似で誤魔化そうとしたが、ダメだったようだ。

 

雪平どころか教室内の全員がドン引き…もしくは嫌悪感にあふれた瞳を向けている。

 

あははー…ですよね。

俺もそっちの立場だったら同じ反応してるもん。絶対。

 

「…ほら、ピッツァの話しようよピッツァの」

「風呂?やっぱり白濁としたいかがわしいイカ臭い行為に耽っていたんじゃない」

「違うわ!無実だわ!」

「…と、犯人がそう言っているけど。ショコラさんの意見が聞きたいわ」

「犯人ておま」

「んー…私はそのかんのきおくがないので、わかりません!」

「ッ!?記憶が飛ぶくらいに…ですって…!?」

「いやいや無いから。全然ないから」

 

でもショコラにその間の記憶がないのは確かだし、覚えているのは俺だけで…もっとしっかりと言うなら、覚えているのは犯人の烙印が押されている俺だけで。

それなら、雪平達の邪推の方が信ぴょう性が高いという事になってしまう。

 

本当に何もしてないんだけどなぁー…

寧ろ何もしないように必死だったんだけどなぁー…

 

「…あなたが目を覚ました時、天久佐君は何か言っていた?」

「えーっと…なんでしたっけ。確か…お…おし…あっ、『無理矢理おしこんだせいで』って言ってました!」

「違うだろ!?」

「無理やり押し込んだ…ッ!?」

「お前もお前でなんだよその反応!」

 

でも自分自身なんて言ったのか全然覚えていない。

あの時はとにかく「無事で良かった」としか考えてなかったし…

 

あ、待って違うんです皆さん。

マジで何もしてないんですよ俺。

 

…え、前科?バナナの件?

それも誤解なんですけど!?

 

「…なるほどね、やっぱりそういうプレイを」

「ち、違う違う!そうじゃ、そうじゃない!!誤解だ!」

「五回?盛りすぎじゃないかしら」

「その同音異義流行ってんのか!?」

 

ダメだ、これ以上この話題を掘り下げてもいい事がない。

今は何とか話を逸らし―――うん?

 

なんだ?窓の外に何かが……あぁ、遊王子が浮いてるのか。物理的に。

 

「えぇええええええ!?」

「叫んだ所で罪は消せないわよ」

「いや外!窓の外!遊王子!浮いてる!」

「そんな原住民みたいな説明をした所で騙されないわよ。人が空を飛ぶなんてあり得ないもの」

「信じる信じないは良いから取り合えず見てみろよマジで!」

 

窓の外で浮遊している遊王子を指さし、結構本気で叫ぶ。

しかし誰も俺の言葉を信じようとしない…まぁ当然だろうけども。

 

だがこの光景は現実だ。

騙されたと思って見てみろと全員に訴え、窓の外へ視線を向かわせる。

 

そこには、空中でポーズをキメている遊王子の姿が。

 

「「「「えええええええええっ!!?」」」」

「ほらな!?」

 

…良かった。俺にだけ見えてる幻覚かと思った。

 

しかしアイツ、なんで浮いてるんだ?

いくらUOGとは言え局所的な無重力空間を生成するような物は作れないだろうし…

ってか遊王子の今居る場所が無重力だったら、このまま地球の外へ放り出されてるはずだし。

 

あ、ポーズ変えた。

 

【選べ ①負けてられない。自分は地面に埋まろう ②遊王子にできて自分にできないなんてあり得ない。飛ぼう ③元々()()()()し、良いじゃん】

 

ムカつくなコイツ…

①も②も正直選んだら酷い目に遭うだろうし選べないが…③だと、俺が()()()()奴だと認めることになるわけで…

 

別に良いんだけどさ?

事実なんだけどさ?

―――第三者に、しかも浮いている原因であるコイツに言われるのは…ムカつく。

 

まぁ自分の安全と天秤にかけたらムカつきなんてどうでもいいんだけども。

 

「よっ、と…みんなおはよう!」

 

ポーズを何度か変えた後、空中で一回転し、その勢いのまま教室に入って来た遊王子。

着地の姿勢も綺麗で、体操の選手かかと思ってしまう程だった。

 

…そんなとんでもない事を何度か重ねて行っておきながら、本人はいたって自然体なのが不思議でならない。

これが遊王子謳歌が遊王子謳歌たる所以なのだろうか。

 

「あれ?どしたの天っち。そんな鳩が―――」

「そりゃ人が空中浮遊なんてしてたら誰だってそんな反応になるに決まってるだろ」

「―――来いよ豆!鉄砲なんか捨ててかかってこい!って言ったみたいな顔して」

「どんな顔だよ!?」

「豆イトリクスって事ね」

「何上手い事言ったって顔してんだよ…」

 

そもそもメイトリクスは挑発した側であって、遊王子の発言における豆はベネットを指しているはずだ。

その時点でちょっとネタとして破綻……なんで真面目に批評してるんだよ俺。

 

「…あのな遊王子。普通人ってのは知り合いだろうがそうじゃ無かろうが、空中に浮いている奴がいたら驚くもんなんだ。そうじゃない奴は驚きのあまり反応できていないだけでな」

「えー?でも天っちいつも浮いてるじゃん」

「同じ事もう言われたわ!…ってか『空中に』って言ったろ!」

 

選択肢だけならず、遊王子にまでそれを言われるとは思いもしなかった。

別に好きで浮いてるわけじゃないんだけど。

 

【嘘だぁ】

 

嘘じゃねぇし!

そしてよりによってお前がそれを言うのかよ!?

 

【①それはそれとして、遊王子にパンツの件について質問する ②一昨日のパンストについての感想を千文字で述べる ③言葉は不要。スカートをめくってパンツを確認する】

 

ふ゛さ゛け゛ん゛な゛ッ゛!゛!゛

 

…いかんいかん。クールになれ天久佐金出。

勿論KOOLではなくCOOLだ。

えーっと、順番に確認しよう。確認。

 

一つ目。恐らく対抗戦の時の話を掘り返そうという事だな?

せっかく名実ともに本調子になって帰って来たというのに、わざわざ俺の方から切り出す必要はないだろう。

本人も触れて欲しくない話題だろうし。

 

二つ目。これは何も言うまい。

感想なんて言ったって気持ち悪いだけだ。

 

三つ目。論外。

これでは名実ともに変態になってしまう。

…いや、対抗戦のラストのアレのせいで、もう変態扱いは板についてしまったかもしれないが。

 

――――全部アウトに決まってんだろうがッ!!

なんで①から③まであってソレなんだよ頭に盲腸でもできてんのかお前ああああああああッ!?痛いっ!?

 

…ち、畜生。催促が来やがった…!

う、ぐ…こ、こうなりゃ自棄だ、やってやらぁ…!

 

「ゆ、遊王子!」

「んん?どしたの天っち?―――あ、もしかして」

「そう、そうだ。そのまさかだ!」

 

敢えて俺から口にするような真似をしなくて済んだのはありがたい。

催促の痛みも消失したし、これでオッケーなのだろう。

 

「ふふふ……このスパッツが目に入らぬかー!」

 

なんの衒いも無く、遊王子はスカートを捲り上げた。

次の瞬間、俺の視界に映っていたのは、パンストと、その上から着用されたスパッツだった。

 

…な、なんという…

 

【①股の下に潜り込んで「ぜ、絶景だー!」と叫ぶ ②残念そうに「スパッツかぁ…」と呟く】

 

ふ、不幸だー!(神浄並感)

 

「す…スパッツかぁ…」

「っ、しょ、ショックなんだ…んんっ。これでいつブルマを履かされてもモーマンタイだよっ!」

「そんな機会そんなにないと思うんですけど」

 

普通に生活していてブルマを着用するタイミングなんて、そうそうないだろう。

女子の体操服だって、今はジャージが主流だからな。

 

「……じゃあ、どうして浮いてたんだ?」

「えっ、あー…それは怪人から逃げてたからで――――」

「み、つ、け、た、ぞォヲオオヲヲヲオオオオ!!」

 

扉が勢いよく開かれる音と、地獄の底から響いているかのようなおぞましい声に肩を震わせ、そこに目を向ける。

そこにはハゲで有名な生活指導の岸辺先生がいて、恐ろしく獰猛な表情をして遊王子を睨んでいた。

 

「ど、どうしたんですか?」

「……聞きてぇか?あ?聞きたいかよお前のお仲間さんが何しでかしてくれたのかをよォ~~~!!」

 

ま、マジでどうしたって言うんだこの人…

 

話を聞く所ではないだろうと判断し、視線を遊王子に向ける。

俺の視線に気づいたアイツは、たははーと笑ってから事の顛末を話始めた。

 

「いやぁ、岸辺センセってハゲじゃん?」

「曇りのない瞳でえぐい事言うなぁ…」

「で、最近かなり強力な育毛剤が開発できたし、試作品だけど使ってみる?って聞いてみたの」

「本当になんでも作るなUOG…」

「勿論副作用が何かわからないし、そこは気を付けてねーって注意したんだけど…ぶふっ、しっかり副作用が出てねー?」

 

何笑ってんだコイツ。

その副作用が、そんなに面白かったというのだろうか?

 

「見てよ岸辺センセの頭!ワカメだよっ!」

「なんだよワカメって……うわっ、マジじゃん」

 

笑いながら先生のカツラの隙間を指さす遊王子。

それに対し半ば訝しむようにして目線を動かすと、本当にワカメが視えた。

 

―――えっ?頭から生えてきたって事?

 

「そうだ…その通りだ……コイツが、コイツが俺の頭を…ワカメ畑にしやがったんだァあああ!!」

 

【選べ ①大爆笑 ②中爆笑 ③小爆笑】

 

全部爆笑じゃねぇか!

 

「あっははははっははっはははは!!」

「て、天久佐ゴルルァっ!笑ってんじゃねぇ!!」

「…いや、だって先生は「副作用がある」って聞かされてたんですよね?」

「そりゃそうだが…」

「それを承知で使って、ワカメが生えてきたからキレてるんですか?」

「う…それを言われたらまぁ…」

 

激昂していた先生だが、俺の指摘によって冷静さを取り戻していく。

別に遊王子を庇っているとかではなく、俺が爆笑したことが有耶無耶になればいいなぁと思ってやっているだけなので悪しからず。

 

「…もうすぐ予鈴もなりますし、終わりにした方が良いのでは?」

「………ち」

「ち?」

「チクショーッ!!」

 

時計を見つつ進言すると、先生は顔を真っ赤にして走り去っていった。

…生活指導教員的に、廊下を走るのはありなのか?

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

時は流れ昼休み。

俺はある重大な危機に瀕していた。

 

「……なんで先輩がここにいるんですかね」

「あら~?いつもみたいに清羅って呼んでくれないんですか~?」

「やめてください。その発言は俺に効く」

 

厳密には俺を殺意に満ちた目で見てきているクラスメイト達に、だ。

 

おかしい。

俺はただいつも通りに食事をとろうとしただけで、それ以外には何もしていないはずである。

だというのに、黒白院先輩(悪夢)が教室の中に入ってきて、俺のすぐ隣にまで歩いてきた。

もう一度言おう。おかしい。

 

「本当にどうしてここにいるんですか」

 

先輩は答えない。

…恐らく、名前で呼べばすぐさま返事をしてくれるだろうが…そんなの、こんな状況でできるわけがない。

 

【選べ ①「清羅たん」と呼ぶ ②「清羅にゃん」と呼ぶ ③「清羅ママ」と呼ぶ ④「清羅姉」と呼ぶ ⑤「清羅たそ」と呼ぶ ⑥―――】

 

せめて普通に「清羅」って呼ばせて!?

なんでそんな距離感おかしい呼び方を強要するんだよ!?

 

「せ、清羅たん…」

「たん?」

「なんでもないですッ!!」

 

力強く否定する。

これで無かった事になればいいなぁ…なんて事は考えない。

どうせ無駄だし。

 

ただこの勢いのまま、話を逸らす事は可能だ。

 

「名前は呼びましたし、いい加減ここに来た理由を教えてくれていいんじゃないですかね?」

「理由ですか~…では、これをどうぞ~」

 

相変わらずの間延びした声と共に、先輩は封筒を俺に手渡してきた。

金一封とかだろうか?

 

「開けても?」

「どうぞ~」

「……これは…アクア・ギャラクシーのチケット?」

 

確か、巨大なプールだったか。

他にも飲食店等のスペースが多数存在しており、水着で遊べるテーマパークという扱いをされていたのを覚えている。

今でもよくテレビ番組で紹介されてるからな。

 

しかしそんな所のチケットを、どうして俺に?

 

「対抗戦で勝利したチームに、副賞として渡すようにしてるんです~」

「なるほど…」

 

俺、疑問には思ったけど声には出してないんですよね。

どうしてわかったんでしょうか。

 

…気にしたら負けか。

 

「あれ?じゃああたしも貰えるのー?」

「もちろんですよ~」

 

俺の背後から顔を覗かせてきた遊王子にも、チケットを渡す。

…よくよく見たらコレ、一日フリーパスじゃん。

確か一万ちょっとするらしいが…口ぶりから察するに、お断り5陣営全員分用意しているようだ。

 

どこからその金捻出してるんだ…?

 

「しかしプールか…しばらく行ってなかったなぁ」

 

プールだけでなく、海とか川とか…水辺に行ってない気がする。

泳げないって訳でもないんだけどな。

 

《呪い解除ミッション アクア・ギャラクシーにて、遊王子謳歌の泣き顔を撮影せよ》

 

――――また二つのミッションに奔走させられるのか…

 

振動と共にスマホの画面に表示されたメールの内容に、俺は両手で顔を覆って嘆いた。





「因みにチケットって、ショコラとかゆらぎの分もあるんですか?」
「はい。ありますよ~?」
「…夢島先輩は?」
「あの人は出場すらしていないので、ありませんね~」


ちょっと溜飲が下がった天久佐であった。(※吉原と対戦するようになってしまった理由を参照)

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