俺の絶対(選びたくない)選択肢   作:イニシエヲタクモドキ

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何事も笑顔でパンツと面白さが大事、というお話。


①ミッション其の一、完! ②第三部、完!

「―――はっ!?俺は何を!?」

「…おはよう、天久佐君。こんなところで寝ているなんて、ね」

「雪、平?どうしてここに…って、屋上?なんで俺、屋上に…」

 

何だろう、何一つ思い出せない。

言葉で説明するのなら、直近五分間の記憶だけがすっぽり抜け出てしまったかのような感覚だ。

 

実際は何処までの記憶が喪失しているのか分からないのだが。

 

「…とか考えてる場合じゃねぇ!!ミッションだよミッション!!」

「…いきなり叫んだりして、一体どうしたの?」

「え?…あ、あぁ…いや、ちょっと色々あってな」

 

 

携帯電話を確認するが、ミッションは未だに達成できていないようだ。

…まぁ、俺が覚えていないだけでミッションが達成されているなんて都合のいい事、ある訳がないか。

 

「…仕方ない、か。コイツに頼るしか」

 

【選べ】

 

俺がカバンから『女の子を笑わせる十の方法』を取り出そうとしたその時、絶対選択肢が出現した。

…くっ、ここに来て、またスベリ芸を披露しろと!?

 

なんとしてもミッションを成功させたくない、か…!

 

【①「ウボァー!」と叫びながら、空から美少女が降ってくる ②空からタライが降ってくる。激突の衝撃で直近五分間の記憶を取り戻す】

 

「ウボァ!?」

「…ウボア?」

「あっ、いや。こっちの話」

 

そのウボァはどのウボァなんだろうか。

…そして何故美少女を落下させたがるんだ選択肢。

 

これはもう、タライ一択か…

 

「はぁ……まぁいいわ。私は乗馬のレッスンがあるから、もう帰るわね」

「あー!待って雪平、そんな見え透いた嘘をついてまでこの場から逃げ去ろうとしぬぁっっ!!?」

 

溜息を吐き、そのまま屋上を去ろうとした雪平を呼び止める…が、しかし、その途中で俺の頭部に巨大なタライが落下してきた。

 

喋っている最中だったから舌を噛むことになったし、結構タライが重かったせいで地面に這いつくばる事になったしで散々だった…が。

 

「あっ、思い出し――」

「…ぷっ、はは…あはははははは!!」

「どぅえぃ!?何事!?」

「た、タライ…!!タライって!あはははは!!昭和かっ!はははは!」

「……ゆ、雪平…?」

 

呆然と、腹を抱えて爆笑し続ける雪平を眺める。

……あの、雪平が?

タライで大爆笑?

 

…でもまぁ、実際にコレを目撃したら俺も笑うだろうしなぁ…

なんならバナナで転ぶとかでも笑うぞ俺。

 

―――ん?メール?

 

《MISSIONCOMPLETE!! 次のミッションを楽しみにお待ちください》

 

「え、えぇ…」

 

確かに大爆笑しているが…これでいいのか。

 

 

 

………なんというかまぁ、色々衝撃的な一日だったなぁ…主に雪平関連で。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「うわぁあああああああああ!?」

 

脂汗を流しながら目を覚ます。

今日は酷い夢を見た。

本当に酷い夢だった。

 

…まさか、鎌を持ったラリホーラリホー言ってくるやつに殺されそうになる夢を見るとは…

やっぱり寝落ちするまでジ●ジョ三部をループし続けるのは良くないな、うん。

 

雪平ふらのを心の底から笑わせるなんていう頭のおかしいミッションを何とか達成できたせいで、ちょっとテンションが最高に「ハイ!」ってやつになっていたのが原因なんだが…

いや早速DIOのセリフじゃん。

 

「んみゅ…」

「そしてこんだけ叫んでても目を覚まさないのかコイツは……ん?」

 

おかしい。

今、俺の右腕に何が抱き着いていた?

 

もう一度右腕の方を見てみる。

そこにはしっかり、俺のシャツを着て眠って居るショコラが……ショコラァ!?

 

「なんでお前がここに居るんだ!?」

「んんぅ…金出さぁん…だめですよ、そんな事…」

「……なんつー夢見てんだお前」

 

普段とはうって変わって艶やかな雰囲気を身にまとうショコラに、冷静にツッコみつつも生唾を呑み込む。

 

…こ、こうしてみるとコイツ、やっぱり…

 

「い、い…意識を失っている金出さんをおそうなんて、きちくです!!」

「いやなんつー夢見てんだお前!!」

 

前言撤回…つってもまだ言い切ってないからセーフか。

 

この女、人のシャツ着て人のベッドにまで侵入してきて、挙句人が意識を失っている最中に襲われる夢を見てるとか…山より深く、海より高い寛大な心(当社比)の持主である俺でも、流石にキレるぞ。

 

少なくともコイツの今日の食卓からおかずが一品消失することは決定事項だ。

 

「金出さんが受けなんて、そんなのありきたりすぎます…夏×金はもはや使い古されたジャンルです…」

「おうまずその認識を変えろや。そして俺で勝手にカップリング作るなっていうか夏の部分誰だよ」

「む、そこまでの覚悟があるなら私に止める事はできません」

「止めろよ」

「ではこのハンカチにしみ込ませた睡眠薬をどうぞ!」

「んなもん勧めんなや」

「あとはそのバナナで、金出さんをせめたてるだけです!さぁ、夏彦さん!」

「夏の部分ソイツか!!」

 

そして名前を言われても誰だか全く分からない。

ただコイツの脳内が腐っているという事くらいしかわからなかった。

 

【選べ ①許してやる。慈悲の心は大事。 ②許さん。渾身のグラウンド・コブラツイストを喰らわせる。】

 

…慈悲の心、か。

確かにそれも大事だよな。

 

「喰らいやがれ俺のバナナ・スプレッドォ!!」

「いぎゃああ!?」

 

朝の自室に、ショコラの叫び声が響いた。

 

―――因みにバナナ・スプレッドは、グラウンド・コブラツイストの別の呼び方である。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

それは、登校中に現れた。

教室に向かう廊下を歩いている途中、突然メールが来たのだ。

 

《呪い解除ミッション 柔風小凪のパンツを着用されている状態で目撃せよ》

 

酷すぎる。

何が酷いって、この柔風小凪という女と、全く面識がないのである。

 

ではなぜ俺がその少女を知っているのかというと、彼女が『表ランキング』という学校の人気者たちが名を連ねるランキングにて三位として君臨(三位で君臨は正しいのだろうか)しているからだ。

 

なんでも親衛隊なるものが存在するくらいに人気らしく、彼女に告白しようとする男が居ようものなら校舎裏に連行され、そいつらに殴る蹴るの暴行を受けるとか。

 

「いやいやいや。死ぬって流石に」

 

告白とか、デートのお誘いとかだけでもボコボコにされると言われているのに、『パンツを見る』だなんていう凶行に及んだら、一体どういう目に遭わされるかわかった物じゃない。

それこそ、校舎裏から俺の死体が発見されたっておかしくないのだ。

 

「…ん?お。おっす雪平」

「おはよう、戦闘力5のゴミ」

「平常運転過ぎだろお前…」

 

まぁ、昨日あんな大爆笑している所を目撃してしまったせいで、普段と違う態度を取られたりしたらどうすればって不安だったし…いつも通りでよかったって事にしておくか。

 

―――昨日の、あの涙も忘れておくとしよう。

 

【選べ ①昨日の出来事を全て忘れる。 ②昨日の出来事の内、必要な物以外を全て忘れる。忘れたこと以外を思い出すたびに大爆笑してしまう。】

 

どういうことなの?

出来事全ては流石に生活に支障をきたすだろうしやめておきたいけど…忘れたこと以外を思い出すたびに大爆笑ってどういう事だよ!?

 

…しかしどちらか選ばないといけないというなら仕方ない。ここは諦めて②を選ぼう。

 

「……ぷっ」

「いきなり噴き出したりして、どうしたの?」

「あ、あーいや。ただの思い出し笑いだから気にしなくていいぞ」

「そう。――そう言えば昨日の事だけど」

「ぶはははは!!き、昨日!昨日って!!」

「…どうしたの?」

 

駄目だ面白れぇ。

何がどう面白いのかわからんが、何故か昨日の事だけはどの場面でも面白おかしく感じてしまう。

 

いや、選択肢がそうなるように仕向けてるから仕方ないんだけどさ。

 

「…い、いや?なんでも…ぶふっ」

「―――とにかく、先に教室に行っているから」

「お、おう…だはは、いや無理だろこんなの!!あはははは!!」

 

駄目だ。何が何だかよくわからないのに笑いが止まらん。

 

廊下のど真ん中で笑い転げる俺に、全員が一周回って恐怖に染まった目を向けてくるが、それでも笑いは止まらない。

腹筋が痛くなってきても、それでも笑いが止まらない。

 

―――あ、雪平が歩き去っていった。

 

【選べ ①笑わなくなる代わり、パソコン内のフォルダ、『きしめん』が消失する。 ②笑わなくなる代わり、『True My Heart』を学校内のどこかで全力で歌う】

 

…『きしめん』は、俺の長年かけて集めたえっちな画像が入っているフォルダーである。

既に投稿者が消した物もいくつかあるので、消されたらかなり困るが…

 

学校内の()()()で『True My Heart』を歌うというのがかなりアウトだ。

別に教室とかならもう気にしない。

なんなら上半身裸の条件がついていてもやった。

 

だが()()()は駄目だ。

最悪女子トイレとか更衣室とかで歌わさせられる可能性もある。

 

考えてみて欲しい。高校二年生の男子が女子トイレもしくは更衣室でエロゲのオープニングを熱唱している姿を。

どう足搔いてもアウトですありがとうございました。

 

「――――あぁ、笑いが止まったって事はつまり…」

 

俺の『きしめん』は消えたのだろう。

それはとても悲しい事だが、まだ予備フォルダとUSBは残っているので問題ない。

 

一番開きやすくバレにくい場所に配置してあったので愛着がわいていたが、無くなったのなら別のフォルダに『きしめん』になってもらえばいい。

中身は全部同じだしな。

 

「天っちおはよーーーーー!!」

「うぉっ…」

 

気を取り直して教室へ向かおうとしたところで、背後から何かが突っ込んできた。

 

それを見ることなく回避し、走り去っていったソイツに目を向ける。

 

「朝から随分元気そうだな、遊王子」

「えっへへー!」

 

笑顔で応じて来るが、別にいい意味で言ったつもりはない。

皮肉ったつもりなんだが…

 

「謳歌ちゃーん!待ってよー!」

「げぇっ!?」

 

遊王子に呆れていると、突然廊下の奥の方から声が響いてきた。

その甘ったるい気もするような可愛らしい声の発生源の方を見ると、そこには俺が今最も会いたくなく、会いたい相手が居た。

 

―――柔風小凪だ。

 

「…きゃっ!?」

 

廊下を走って…いや、早歩きでこちらまで向かって来ていた柔風小凪は、突然何もない場所で足を滑らせ、転倒しそうになった…の、だが。

 

【選べ】

 

この状況でも黙っているつもりはないらしい。

 

【①転ぶ前に高速移動して抱きかかえる ②柔風小凪のためにマットレスに転生する】

 

…これで親衛隊に殺されたりしたらお前、許さないからな?

 

「…はへ?」

「危なかったな。怪我は?」

「あっ、あぁっ?あ、ありがとう…?」

「おぉ。凄かったね天っち…一瞬でそっちに」

 

ガラス細工を扱うように、丁寧に抱きかかえて支える。

しかし長い間物理的接触をしていたらマジで暗殺されかねないので、すぐに手を離して安否を確認。

 

…うん、足捻ったとかそういう訳でもなさそうだし良かった良かった。

 

――しかし限界を超えた高速移動のせいで体が痛いな。マットレス転生よりはマシだけどさ。

 

「え、えっと…天久佐、金出君…だよね?」

 

【選べ ①「さんをつけろよデコ助野郎!」 ②「―――さあどうかな。戦斧(おの)かも知れぬし、槍剣(やり)かも知れぬ。いや、もしや弓かも知れんぞ、柔風小凪」】

 

どっちも嫌だなー…

けど、親衛隊が見ている(のだろう)し、デコ助野郎なんて呼び方をするわけにはいかない、か…

 

「―――さあどうかな。戦斧(おの)かも知れぬし、槍剣(やり)かも知れぬ。いや、もしや弓かも知れんぞ、柔風小凪」

「え、えぇっ!?天久佐君の名前って、弓だったの!?」

「いや天久佐金出であってます。ほんの悪ふざけです」

 

純粋。眩しい。

こんな子相手に何悪ふざけしてんだよ選択肢。

 

…いや、これからこの子のパンツを着用されている状態で見ようとしている俺がコイツを咎める事なんてできない、か。

 

「…しかし、何故俺の事を?」

「えっとね。謳歌ちゃんが、いっつも天久佐君の事話してくれるの!だからすぐわかっちゃった!」

「ん?遊王子が?」

「うん!」

 

生粋の変人として紹介されているのは聞くまでもなくわかってしまう。

くそう、違うんだ。俺は悪くねぇ!悪いのは…

 

【選べ ①「お前が見たいのはこれだろ?」と言ってリンチされている最中の豚の鳴き真似を披露する ②「なら、俺のコイツはご存じかな?」と言ってレジギガスを披露する】

 

―――俺だ!(諦め)

 

「お、お前が見たいのはこれだろ…?」

「?これって…?」

「――――ぶひぃいいいいいいいいいんん!!ふごっ、ふぎゅっ、ぶひっ…ぶひぃいいいん!!」

 

小さく首をかしげた柔風に対し、もはや話す事はないとその場に寝転がり、リンチされている最中の豚を披露する。

 

…何故レジギガスではないのかというと、恐らく彼女はポケ●ンを知らないだろうと判断したからだ。

知っているやつならきっと大爆笑に違いないんだがなぁ…あれ?じゃあ雪平が昨日笑わなかったのはポ●モンを知らなかったから?

 

「わ、わぁ…」

「いや引かないで!?」

 

ごめんね、引いて当然なんだろうけど、こうやってギャグテイストに終わらせないとただの変な人じゃん。

ジョークって事にしておかないと、ね?

 

「あっははー!やっぱすごいね天っち!リアルで見たのは初めてだよー!」

「だろ?案外似てるよなー?………じゃねぇ!なんで俺が豚の真似しなきゃなんねーんだよ!?」

「自分からやったじゃん。『天っちの真似する豚』の鳴き真似」

「俺はあんなんじゃねぇ!!」

 

遊王子は普通に凄いと賞賛してくるが…なんだろう、あまり嬉しくない。

どや顔はするものの、どうしても心の底から喜べない。

 

そりゃ選択肢に強要されたリンチされている最中の豚の鳴き真似を褒められたところで…って感じだもんな。

 

「つーか、柔風と遊王子って…」

「マブ!」

「えへへ…去年同じクラスだったんだー」

 

サムズアップする遊王子に、淡く微笑む柔風。

二人の背後から光が差しているように感じるせいで、余計に自分という存在の汚らわしさを自覚させられる。

 

―――俺は、これからこの子のパンツを…

 

【選べ!】

 

活きが良いなお前。

どうしたよ?

 

【①「そんな事よりパンツ見せてくんない?」と爽やかな笑顔で言う。 ②「生オナシャス!」と言って暖簾のように柔風小凪のスカートをまくり上げ、中に入る。】

 

……は?

今、なんて?

 

【①「そんな事よりパンツ見せてくんない?」と爽やかな笑顔で言う。 ②「生オナシャス!」と言って暖簾のように柔風小凪のスカートをまくり上げ、中に入る。】

 

態々二回も言ってくれてありがとう。そして死ね。

 

「…あり?天っちどーしたの?」

「…すまん、柔風。許されないことだが、許してくれ」

「ふぇ?」

「――――そんな事よりパンツ見せてくんない?」

 

爽やかに、それはもうとても爽やかに、もはやこの言葉が普通なのではと思ってしまうくらい平然と言う。

 

柔風はどうやら何を言われたのかよくわかっていないようだし、遊王子も「お~」と言って何とも言えない反応してるだけだし…よし、このままマシンガントークで別の話題に変えて誤魔化せば或いは…!

 

「へい、天久佐金出君や」

 

背後から肩を掴まれ、握りしめられる。

痛みを感じるが、それよりもやってしまったという後悔やらなにやらの方が勝っているせいで何とも思わない。

 

【選べ ①「おっと、俺は男のパンツでもイケるクチだぜ?」と言ってズボンかスカートを下ろす(この場に居る人物の中からランダム) ②「すまない、ノンケ以外は帰ってくれないか」と言って自分はノーマルである事を示す】

 

①が壊滅的に駄目なんだよなぁ…

そして何でこの場でノーマルである事を示す必要があるんですかね…

 

「すまない、ノンケ以外は帰ってくれないか」

「……ちょっとツラ貸せや」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「あぁ…酷い目に遭った…」

 

あの後、しっかり親衛隊の皆様にボコボコにされた俺は、這う這うの体で教室までたどり着いたのだ…が、遅刻扱いになっていたらしく、宴先生に首を絞められることになった。

 

いや、最初はただ叱られてるだけだったんだけどさ?

いきなり【選べ ①「先生にも痛い目に遭わされたいんですけど」と言って逆ギレ ②「その合法の体に悦びを教えてやるからそこに寝転がれよ」とベッドヤクザぶりを披露する】なんていう、どっち選んでもアウトな物が出てきてさ?

仕方ないから①選んだら、俺の撤回を聞き入れる事無く首絞めてさ?

 

―――本当、つくづく不幸だ。

 

「いやぁ、すごかったね天っち。まさか先生に首絞めてってお願いするなんて」

「不本意なんだがな……まぁ言ったところで、なんだが…それよか柔風親衛隊の方だ。アイツら悪鬼羅刹のソレと変わりねぇぞ…」

「そりゃ小凪たんは天然物のドジっ子だからねー。みんな守ってあげたくなっちゃうんだよ!」

 

あれはもはや守るというより…いや、これ以上はやめておこう。

 

「そりゃ表のランキング三位となりゃああれくらい熱狂的なファンも出来るか……そんな奴とお断り5のお前が仲良しってのが未だに信じらんねぇが」

 

お断り5。

柔風小凪等が名を連ねる所謂『表』のランキングの者達を眩き光とするならば、俺達は闇…いや、汚泥だろう。

容姿は良いのに、発言や行動の油分が多く、恋愛対象としてはないわーという風に扱われている鼻つまみ者たちの称号であるソレを与えられた俺達が、表の存在と関わるというだけでも重罪扱いと言っていい。

 

だというのに仲良しって…すごいなコイツ。

 

「天っちもいい加減に自分がお断り5だって事を受け入れればいいのに」

「いやそれは……」

 

絶対選択肢のせいだ、と言ったところで通じはしないだろう。

それで「なるほど、そう言う事だったんだね!」なんて言われたら俺は驚きのあまり一晩で法隆寺を建設してしまうだろう。

 

「…しかしどうしていきなり小凪たんのパンツを欲しがったり」

「だああああああらっしゃい!!」

 

あ、あっぶねぇ。

俺が表ランキングの美少女相手にパンツを強請ったなんてことが教室内で広まったら、真面目にどうしようもない。

 

今はまだあまり人に実害を出していないから許されているようなものなのだ。

これで何か実害があったと知れ渡れば……考えたくもねぇ。

 

「……はぁ、良く聞け遊王子」

「?」

 

【選べ ①ありのまま話す ②落語風に話す】

 

何故落語!?

…ありのままって、神様云々とかは言わなくてもいいんだよな?

 

―――頭痛はない。オッケーとのことらしい。

 

「俺はとある事情で、十一日の土曜までに柔風のパンツを着用された状態で見なきゃならないんだ」

「おぉ…そんなセリフを真顔で言える天久佐さん、マジパネェっす」

「だが誤解しないでくれ。俺は別にやましい気持ちで見たいわけでは無い。ただ見なきゃならないだけだ」

「ふむふむ。エロい気持ちは全くないと。――あっ、小凪たんが好きとか」

「恋愛感情も一切ない。本当に『義務』なんだ」

「曇りのない瞳でゲスイ事言うねぇ」

「あぁ。最低な事を言っている自覚はある。ただ見なかったら俺は…俺は…」

「うーん。つまり天っちは好きでもない女の子のパンツを穿かれている状態で見たいと」

「…まぁ、そうなるな」

「好きでもない女の子のパンツ剥ぎ取ってクンカクンカしたいと」

「誰がそこまで…ッ!?」

 

【選べ(笑) ①「ふっ…言うまでもないだろ?」と意味深に返す。 ②「クンカクンカするならお前のが良い」と遊王子の下着を上下共に剥ぎ取る。】

 

何笑ってんだお前。

もう一回言おうか?―――何言ってんだお前。

 

「ふっ…言うまでもないだろ?」

「ほうほう…」

「あの、天久佐君」

「アッ、ハイ」

「お客さんが来てるんだけど…」

 

委員長に声をかけられ、言われた方を見る。

するとそこには、若干照れくさそうにしながらこちらを見てきている柔風の姿が―――

 

「…えっ?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「…して、何の御用でしょうか?」

「あ、あのね?今朝の、事なんだけど…」

「ああ、その…本当、ごめんな?俺としてもそう言うつもりじゃなかったっていうかなんて言うか」

「うぅん、違うの。謝ってほしいわけじゃなくってね?―――ただ、私ね?男の子からあんな事言われたの初めてで…」

 

そりゃ慣れてるんだよね、なんて笑いながら言われたら色々と気絶するだろうな。

俺だけじゃなく背後で俺の様子を窺っている親衛隊とか。

 

「えっと、ね…?こんなこと言うの、は、恥ずかしいんだけど……ぱ、パンツは!好きな人になった人にしか見せちゃいけないと思うの!」

「ごぶろおげぼろじゃぁあああ!!?」

 

喀血した。

二日連続でも喀血だった。

 

泣き出しそうになりながら、顔を真っ赤にしてまでそう言ってきた柔風はまさしく女神だった。

これは、俺ごときが関わってはならない御方だったのだ、と、本能がようやく理解した。

 

―――あぁ、俺は最ッ低だ…!!

 

「本当ッ…!!すみませんでしたァああああ!!!」

 

いっそ焼き土下座でもしてしまいたかった。

このままこの窓を突き破って飛び降りて、同じ階に居るという不遜な状況を変えてしまいたかった。

 

それくらいの、罪悪感。

 

これほどまでに美しく、穢れを知らず、尊き物に、俺はなんともまぁ愚かな事を言ってしまったのか願ってしまったのか。

 

着用された状態でパンツが見たい?そんな事出来るわけないだろいい加減にしろ!

親衛隊云々関係なく、手を出すべきではない存在だろうこの方は!!

 

「て、天久佐君…!?そんな、謝らなくていいんだよ?わ、私はあまり気にしてないし…」

「で、でも…!」

 

俺がやったことは、どれだけ償っても許されない事だ。

それは許されてはいけない事なのだ。

 

…だが、これだけは心に誓おう。

 

ミッションがなんだ選択肢がなんだ呪いがなんだ。

俺がどれだけ被害を被ることになっても、もう柔風のパンツを見る事は諦めよう。

 

その結果俺の平穏が、本来享受すべきまともな人生が無くなるとしても、そんな理不尽に苦しむことになろうとも、彼女に被害を出さないように―――

 

【選べ】

 

やってみろ、俺は屈しない。

なんならこの場で舌噛み切って死んでやる。

 

【①死なない ②死ねない】

 

…その選択肢を使いまわすのやめてくれねぇかな。

まぁ①にしとくけどさ。

 

―――さて、これで逃げ場を失ったが…どうなる?一体何が来る?

 

【選べ ①「御託はいいからさっさと見せろ。スカートたくし上げてM字に開くんだよ」 ②「俺自身が柔風のパンツになるという事だ」】

 

あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!??

嫌だぁアアアアア!!絶対選びたくねぇエエエエ!!

 

「痛ッ…!!?」

 

普段の倍くらいの痛みに視界が眩む。

しかし気絶はできない。

――逃がさない、という事らしい。

 

…腹を、括るか。

 

「ご…」

「ご?」

「御託はいいからさっさと見せろ!!スカートたくし上げてM字に開くんだよM字によぉ!!――――あっ」

「カモーン」

 

血の涙を流しながら叫んだ俺を温かく迎えてくれたのは、柔風親衛隊の皆様でした。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「このド畜生が!」

「お断り5のくせによぉ!」

「身の程を知れよ身の程を!」

「でもM字開脚小凪ちゃんという新しい世界を見せてくれたのは感謝するぜ!」

「お前ノンケかよぉ!」

 

いやそっちにもやべー奴いるだろ!?

そして最後の奴誰だおっそろしいなぁ!!

狙われてたのかよ俺!?

 

「ぺっ…二度とその面柔風さんの前に出すんじゃねぇぞゴミムシ」

「M字…はぁ、はぁ…」

 

…俺以上にやべー奴がそちら側に居るんですがそれは。

 

そんなツッコミをする気力もない程にボコボコにされた俺は、それはもうボロ雑巾のようにその場に投げ捨てられていた。

 

「ちくしょー…絶対選択肢さえなけりゃ俺だって…」

 

けど絶対選択肢が無かったらまず柔風と関わろうなんて思いもしないんだよな。

そう考えたらやっぱり諸悪の根源はコイツでは?

 

「うっひゃー。随分と派手にやられたねー」

「遊王子か…」

 

うつ伏せに倒れていた俺の前に現れ、しゃがみこむ。

そのせいでスカートの中身が見えそうになったので急いでその場を離れようとする…が。

 

【選べ ①移動などしない。男ならガン見すべき。 ②「おい、パンツ見えてるぞ」と鼻血を出しながら教える】

 

ガン見するが、これは断じてやましい気持ちがある訳ではない。

鼻血を出しながら教えるという事を避けるためだ。

 

「ねぇ天っち。あたしが手を貸してもいいよん」

「…はい?」

「だーかーらー。小凪たんのパンツが見たいんでしょ?手伝ってもいいよ?」

「…なんで?」

「おもしろいから」

「お、おもしろいってお前…」

 

因みに先程の柔風のパンツを見ることを諦めた云々は暴力を受けている間に無かった事になった。

あんな事言わされた後でもそんな意思を貫くつもりはない。

 

こうなりゃ自棄だ。最悪スカートめくりでもやってやらぁ!

 

…けどコイツが手助けしてくれるってのが、よくわからない。

面白いからって言ってるが…そんな滑稽か?俺って。

 

「なんかおかしい?だってつまんない事はやりたくないじゃん?」

「けどお前、俺はお前の友達のパンツ見ようとしてるんだぞ?」

「んー…天っちってさ。なんか不自然だよね」

「不自然?」

「そ。いっつも変な事やったり言ったりするのに、普段は真面目かつ成績優秀かつスポーツも部活の顧問から助っ人に呼ばれる事もしばしばあるくらいに出来て、それこそ非の打ちどころがないって感じじゃん?」

「……それでも、変な事したり言ったりするからお断り5なんて汚名を被ってんじゃないのか?」

「じゃあ聞くけどさ。天っちってアレ、本気でやりたいって思ってやってる?」

「―――遊王子、お前」

「なんか嘘っぽいって言うかさ。小凪たんのパンツの件だって、本当にただ『見る』だけでいいって思ってるみたいだし」

 

…凄いな、コイツ。

選択肢云々は他の人に知られないように振る舞ってる(気づかれたら真面目に精神疾患を疑われるから)っつーのに、よく気づくな。嘘くさいって。

 

まぁ態と棒読みやったりするときあるけど。

 

「それにほら。小凪たん男子に免疫無いし、一度パンツくらい見られた方がいいんだって」

「いいのかそれで!?」

「よーし!面白くなってきたぁ!」

「いや聞いてねぇし…」

 

【選べ ①レジスチルのモノマネをする ②レジアイスのモノマネをする】

 

そして謎のレジ系押しを止めてくれないか。

あの時レジギガスを選んだ俺が悪かったから、さ?

 

 

――しかし、選択肢が変わる事は無かった。




IFルート 【②柔風小凪のためにマットレスに転生する】

「…あれ?痛く、ない?」
「おー。マットレスがあって助かったねぇ」
「でも、どうしてこんなところに…?」
「どうしてだろうねー?…あれ、そう言えばどうして私達ここに居るんだっけ?」
「それは謳歌ちゃんが突然立ち止まるから……でも、どうして立ち止まったの?だれも居なかったのに」
「…どうしてだろ」




二人は、不思議そうにしながら歩き去っていった。

後には、マットレスとなり、人々の記憶から消え去ったのだろう俺だけが残った。



――――あぁ、咄嗟にとは言え、こんなもの…選ぶべきじゃ、なかった。
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