「じゃ、学校行ってくるから。小腹が空いたら、そこのクッキーでも食べてくれ。飯は…」
「だいじょうぶですよ。そこまで言わなくてもバッチリわかってます!」
「ほーう…じゃ何も言わないで出てった時、関係ない物に災害時用の乾パンやらなにやらまで食い尽くしたのは何処のどいつだろうな…?」
「む、なんとこうがんむちな輩ですかソイツは!」
「お前じゃい!―――はぁ、さっき言ったやつ以外は食うなよ?食ったらお前、頬っぺたムニムニしてやるからな」
「むぅ…金出さんのケチ…」
ケチってなんだケチって。
そりゃ人よりちょっと多く食べます程度だったら全然食わせてやっても気にしないが、コイツはちょっとどころの騒ぎではない。
先程会話に出てきたやつが良い例だ。
コイツはしっかり言いつけておかないと、恐ろしい量食う。
このままでは俺の財布がさらに薄くなってしまう。
―――え、神の金?あんな胡乱な物使える訳ないでしょ。
「…しっかり我慢したら、土曜日にケーキを作ってやろうじゃないか」
「ケーキ!?ほんとうですか!?」
「おーう。俺は嘘はつかんぞ?」
【選べ ①「鼻からスパゲッティも食ったし」と言ってもう一度食う(鼻から) ②今日一日、思っている事と反対の事を言ってしまう。】
俺嘘つきでもいいかなって。
―――あ、スパゲッティサラダは美味しかったと思います。
鼻から食ったからよくわからなかったんですけどね。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「…はぁ、おっぱい…上から読んでもしたから読んでも…いや下から読んだらいっぱおでは?」
「……朝から煩悩に塗れてるわね、乳久佐君」
「なんだその呼び方!?乳離れできてねぇみたいだろうがそれじゃあ!?」
「あら、私にはさっきからずっとパイオツパイオツ言ってるようにしか聞こえなかったけれど」
「パイオツとは言ってねぇよ!?」
そしてそのくだりを前にもやった気がする…いや、やってたな。
まぁ今回のは俺の過失だ。反省。
ほら、普段通りに見える雪平だって、なんかちょっと不機嫌そうだし。
そんな不快感を感じさせるような言い方してたのか俺…?
俺はただ、例の特殊ミッションのせいで悩んでただけで、その時につい口から漏れ出てしまったというだけだと思うんだが…
【選べ ①「そうだ雪平、その可愛いちっぱいモミモミさせてよ。勿論両手で」 ②「そうだ雪平、俺が遊王子のデカ乳モミモミするところを見ててくれよ」】
「馬鹿野郎かお前は!?」
「いきなり叫んでどうしたのよ」
「すまん雪平、ちょっと真剣にマズイ状況におかれてるから少しほっといて―――痛ッ!?」
いやまじでふざけんなよお前。
①はアウトだし、②だってもっとアウトだろ。
この場に居ない人間をネタにするなよ。
――いやそうではなく。
なんで?なんで急に警察沙汰になりかねない選択肢を出してきたの?
俺と雪平しかこの場に居ないならまだしも、今全員がこっち見てんのよ?
主に俺のおっぱい発言のせいだと思うけど。
――いや、教室内の全員が見てくるくらいだったの?声の大きさ。
「ぬ、ぐぅ…絶対言いたくねぇ…こればっかりはマジで社会的信用とかそう言ったものが喪失するどころの騒ぎでは無い…!!」
「…その、さっきからどうしたの?何かを拒否しているように見えるけど」
「見える、ではなく拒否――ッ!!?いってぇ!?」
いつもの内側から来るような痛みではなく、まるで何者かに強く鈍器で殴られたかのような痛みに、結構本気で大声を出してうずくまる。
あぁ、雪平どころか全員が心配そうな―――いや全然違うわ。アイツら「まーたアイツが変な事やってるよ」みたいな目を向けてきてるわ。
それにくらべて雪平はどうだよ?
結構本気で心配してくれてるような目じゃないの。
くそぅ、これで普段のアレとか明らかに俺の事を嫌ってるような態度さえなければもしかしたら告白してたかも知れねぇ。
そしてフラれて笑い話にされて、『お断り5の天久佐金出、同じくお断り5の雪平ふらのにフラれる』なんて見出しの校内新聞が張り出されたかも知れない。
―――恐ろしいなオイ。
「ぐっ……ゆ、雪平」
「えっと…何かしら?」
「今から言う事は真に受けなくていい、ほんと軽い冗談程度に受け流してくれたらマジでいいから…それだけで、いいから…」
「わ、わかったわ…それで、何?」
「そうだ雪平、その可愛いちっぱいモミモミさせてよ。勿論両手で」
教室内の空気が死んだ。
設置されている温度計の表示は微塵も変わっていないのに、何故だか物凄く寒い。
ハハハッ、デスヨネー!
突然謎の厨二ムーブ(にしか周りは見えないだろう)をした上で『可愛いちっぱいをモミモミさせてよ』とか、気持ち悪い通り越して虚無ですよねー!!
はい、謝罪謝罪。
これはもう俺の必殺コマンド、『驚くほど綺麗な凄まじい土下座』を披露する他無いな。
「なっ…なっ……」
「雪平さん。マジで…」
すいませんでしたぁあああ!!と叫びながら地面に頭を擦りつけようとしたところで、再びヤツの妨害が入る。
【選べ ①「大丈夫だって。俺は小さい方が好きだからさ」と本心を告げる。 ②「大丈夫だって。ほんの冗談。俺はおっきいのにしか興味ないんだ」と本能を告げる。】
アレか。俺がロリコンを自称しているにも関わらず部屋にある薄い本は半分がおねショタという事を揶揄しているのか。
そうだよ。男なんだから大きいのに興味が行っちまうよ。
けど心の奥底では小さいのに飢えてんだって何言わせてんだコイツは!!
いや今のは自滅か。
「だ、大丈夫だって。俺は小さい方が好きなんだから…さ?」
「……もういっそ死ね」
あ、あの雪平がついにとうとうダイレクトに死ねって言ってきたぞ俺に。
今までどれだけ下トークを(選択肢のせいで)してきても、決して暴言までは言ってこなかったアイツが、ついに俺に死ねと言ってきたぞ。
―――やっべ、泣きそう。ていうか涙が止まらんわこれは。
「うわ…見ろよアイツ、泣いてるぜ?」
「明らかに自業自得…よね」
「これは雪平さん可哀そう……気にしてるのよね、確か」
「そうだよな、前の校内放送の時に胸ディスられてすっげぇキレてたし…」
「ちょ、アイツ引き笑い始めたぞ…」
「なんかもう、気持ち悪いっていうか…」
「気色悪い…ってわけでも無くて……」
「「「「「「「「「「お断り、って感じだよな(ね)……」」」」」」」」」」
どういう感じなんですかそれは。
けどもうそのことに関して反応する気力も何もねぇですよ俺は…
【選べ ①具体的にどういう感じか、川柳で教えてもらう。 ②具体的にどういう感じか、AVのタイトル風に教えてもらう。】
俺にはそんな気力は無かった。
それだけは信じて欲しい。
「なぁ、そのお断りって感じって具体的にはどういう感じなんだ?」
「えっ、それは…」
「それは、なぁ…?」
「…川柳で、教えてくれ」
「えぇ…」
呆れてものも言えない、という雰囲気だが、答えてもらってないせいか知らんが頭痛は収まらない。
なんか鬼畜仕様過ぎませんかね絶対選択肢さん。
「…じゃ、じゃあ―――『気味悪い、恋愛とかは、ありえない』って感じかなぁ…?」
「あははは、包み隠さない本音をありがとう委員長」
「えっと…どういたしまして?」
乾いた笑いが止まらない。
でも目は濡れたままなの。なんでだろうね?
【選べ ①「上から来るぞ!気を付けろ!」と叫ぶ。下から何かが来る。 ②「せっかくだから、俺はこの赤の扉を選ぶぜ!」と叫び、ドアを開ける。自分の血で赤い扉になる。】
怖ぇよ!?
②を選んだら俺はもう楽になれる気がするが…なんだろう、選択肢に出てきたという時点で死にきれない気がする。
どうせ喀血か吐血して、それが扉にほんのちょっぴりつく程度だろ?
あーやだやだ。何が悲しくて俺がそんなダメージ受けなきゃなんですかね。
でも下から何かが出てくるのはもっと嫌なので、自分がダメージを喰らう方を選びまーす(投げやり)
「せっかくだから、俺はこの赤の扉を選ぶぜ!」
近い方の扉を開く。
しかし何も起こらない。
―――あれ?いつもならこの辺でヌーの大群でも出てきて踏み荒らされるか、精神的ダメージを受けて喀血するかするはずなんだけどな…
「あ、指切れてる……これ?」
取っ手の部分に、小さい切り傷からにじみ出ていた血液が付着している。
…え、これで赤い扉判定?
それとも元々教室の扉は赤ですよって事?
なーんか急に釈然としない奴が来たなぁ…
とまぁ、いつも通り(アレをいつも通りと言えてしまうのが非常に心苦しい)に酷い目に遭わされ(周りからすれば俺が勝手に奇行に走っただけ)いつも通りに一日が過ぎていく物だと思っていた…の、だが。
「えー、コイツは転校生じゃなくて、天久佐の『学業補助ペット』としてこの学校に通うことになってる。詳しい話はまぁ…コイツか天久佐にでも聞け。――ほら、自己紹介しろ」
宴先生の適当な前振りの後、ソイツはアホ毛をみょんみょん揺らしながらぺこりと頭を下げ、教室内にその笑顔を見せた。
「金出さんの学業補助ペットの、ショコラです。よろしくおねがいします」
「……は?」
しょこら…ショコラ。
金髪で、アホ毛で、アホの子で、ロングヘアーで、犬っぽくて、胸が大きい、ショコラだ。
俺の家に定住している、ショコラだ。
そのショコラが、何で学校に?
それに……なんだよその、学業補助ペットって。
「うぉおおおお!!」
「きゃわうぃー子が来たぁああ!!」
「ぬぉおおおおんん!!ぬぉおおおおおおおんん!!」
「金髪の超絶美女だぁ!!」
「うっぐ…えっぐ…ひぐっ、よがっだぁ…生きてて、よがっだぁ…!!」
そしてお前らはそれでいいのか!?
ペットとか言われてんぞ!?
―――いやまぁ、確かにショコラは可愛いしそうなってもおかしくはないと思うが…にしたって、なぁ?
【選べ ①注目を浴びるのは天久佐金出で充分。渾身の叫びで視線を集中させてやる。 ②自分もショコラに群がる一人でありたい。叫んで気を引く。】
叫ぶことは決定事項なんですかそーですか。
「ショコラァアアアアアッッ!!」
叫びながら、ショコラの元へ走る。
すると、まぁ予想通り教室内の熱気は一気に消失し、生徒たちは何事かと目を見開いた。
…あれ?①と②同時にクリアしちゃってない?
「いや今はどうでもいいか……おいショコラ、どうしてお前ここに…!」
「ホームルーム中に叫んでんじゃ…ねぇ!」
「げぶっ!?」
一瞬で首が90度倒れた。
この場において最強は、宴先生ただ一人らしい。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「……それで?なんでお前急に学校に?」
「神様がそうしろって」
「なんで?」
「わかりません」
「そっか……じゃなんで学業補助ペットなんて訳の分からない肩書で入ってきたの?」
「それもわかりません」
全て
後で迷惑なくらい鬼電してやろっと。
「…というかお前は学校に通う、でいいのかよ?」
「はい!やっぱり金出さんと一緒に居たいですし!」
あっ、教室内の雰囲気が以下略。
そりゃそうですよね。今のは明らかに誤解を生みますよね。
多分飼い主に懐いている犬みたいな心境なんだろうけど、そういう説明をしたところで『犬扱いとか…鬼畜すぎ…』みたいな感じでドン引きされるだけだろうし…詰み?
「おい天久佐ぁ!どういうことだそれはよぉ!」
「誤解だって」
「あぁん!?テメェショコラたんと五回もシたってのかァ!?」
「お前お断り5の素質あるぞその謎の卑猥な勘違い。雪平枠お前がやれよ」
「話逸らしてんじゃねぇ!今はテメェの小指と人差し指とナニを切り落とす話だろうが!」
「いつそんなバイオレンスな話になったよ!?」
おかしい。話しかけてくる男友達全員はしっかり笑顔なんだが……なんで目が笑ってないんだろう。
「……天久佐君、ちょっといいかしら」
「ゆ、雪平…」
や、やっと声を……もうあんな事は多分言わないからな。
選択肢が両方とも同じニュアンスの事を提示してこない限りは。
【選べ ①「で、アレの返事は?」と言って、希望を捨てないポジティブさをアピール。 ②「なんの用だよ?」とクールを気取り、自分の可能性をアピール。】
必然的に②を選ぶ事になるが……なんだその俺の可能性って。
基本的に俺はクール…ていうか平熱系だと思うんだが。
「なんの用だよ?」
「…あなたの『青春の衝動処理ペット』、ショコラさんの事なんだけど」
「オイ待てなんの話だそれは」
「?だから、あなたの『性の衝動処理ペット』、ショコラさんの話を…」
「違……はッ!?」
【選べ ①「ふっ…どうだろうな」とそれっぽくはぐらかす。 ②「べ、別にそんな事っ!し、シてる訳、な、無いだろ!?」と言う。ショコラもより誤解するような発言をする。】
否定させて!?マジで何もしてないんですけど!?
「ふっ…どうだろうな」
「っ……やっぱり、あの子は貴方のオナペッ―――」
「違うから!!全然そんな事無いから!!」
「…犯人は皆そう言うわよ」
「それ言ったらもう疑わしきは罰するのみじゃねぇか!」
「ええそうよ。疑わしくなる時点でその人に罪があるの。しっかり豚箱で豚になりきる事ね」
「まだそのネタ引きずってんのかよ!!」
【選べ ①「仕方ねぇな、見せてやるよ俺の『リンチされている最中の豚の鳴き真似』…!」と言って、その場で仰向けになり実際に行う。 ②「仕方ねぇな、見せてやるよ俺の『リンチされている最中の俺の鳴き真似をする豚の鳴き真似』…!」と言って、さり気なく雪平の胸を揉む。】
お前もそのネタ引きずってんのかよ!?
さては気に入ったなお前!?
「―――仕方ねぇな、見せてやるよ俺の『リンチされている最中の豚の鳴き真似』…!」
数瞬の逡巡の後、諦めて地面に仰向けに寝転がる。
そのまま自分を豚に見立て、恥などの感情を全て置き去りにして叫ぶ。
ただ只管に、リンチされているかの如き鳴き声を、この学園中に響かせるように。
「ぶひっ、ぶひぃいいいいんん!!びぃいいいっ、ふごっ、ふぎゅう!?ぶひっ、ひ、ぶひいいいいいいいいんんッんん!!」
「うわぁ…見ろよ、天久佐のやつ…」
「また豚の真似してる…」
「もう本物にしか見えねぇぞアイツ…」
「恥とかないの…?」
酷い言われようだが、もう気にしない。
外部の声はシャットアウト。俺はもう恥を捨てたんだ。
…え?顔が赤い?
はは、それは気のせいだよ気のせい。
「流石ね。けれどもう少しバリエーションを増やした方がいいと思うわ」
「すっげぇ真面目なアドバイスをどうも…」
もうツッコミに回る気にもならん。
――けどまぁ、雪平がショコラと俺の関係で暴走してたのも何とかなったし、結果オーライ…かな?
「それはそれとして、よ。――結局あなたはショコラさんとどこまでシたの?」
「ナニもシてねぇよ!?」
訂正。何も事態は好転していなかった。
「お二人とも、どうかしましたか?」
「しょ、ショコラ…お前からもちゃんと……ってオイ、なんだその大量の菓子は」
「これですか?…むぐむぐ…これは、みなさんからもらったものです!」
「え、餌付けされてる…のか…」
ちら、とショコラの背後に居るクラスメイト達を見ると、全員が菓子を持ってショコラに渡そうとしていた。
…ま、まさか半日も立たないうちにこの教室の殆どを制圧するとは…恐ろしい奴。
「…ショコラさん、ちょっといいかしら」
「はい?」
雪平は許可をとると同時、なんの衒いも無くショコラの豊満な胸を鷲掴みにし、それはもう凄い手つきで揉み始めた。
……いや何してんのこの人!?
「お前何してんの!?」
「見ての通り、普段あなたがショコラさんにしている通りの事をしているのだけど?」
「いやしてないって言ってますよね俺!?そしてその聞くまでも無かろうって雰囲気をどうにかしてくれませんかねぇ!?」
【選べ ①「俺は触れられないのに、お前は触れられるのか…」と悔しそうに言う。 ②「ま、家に帰ってからゆっくり堪能させてもらうさ」と自慢げに言う。】
ふざけてんのか!?―――痛てて…くそぅ、選択肢は揺るがないか。
「…お、俺は触れられないのに、お前は触れられるのか……」
「あら、素直ね。―――なんて言うとでも思ったのかしら?私に嘘は通じないわ。あなたはいつもいつもショコラさんのパイオツをそれはもういやらしく揉みしだいているんでしょう?」
「なんでだよ!?」
雪平の発言を聞き、教室内の女子たちが俺から胸を隠すようにして少し離れていった。
ついでに男子も数名同じようにしていた。
―――ねぇ君たちはなんなの?俺は男に興味ないからね?
「選びなさい天久佐君。あなたは毎晩揉みしだいているの?それとも男性としての機能が死滅しているの?」
「なんだその前提から破綻してる二択!?」
俺を何だと思ってるんだコイツは。
確かにまぁ俺にだって性欲はある。
あるが…そんな実行できるほど、俺に度胸はない。
もうヘタレ扱いされてもいいから、取り敢えず変な誤解だけは解いて……
【選べ】
今、ですか…
【①「柔らかかったぜ」とだけ答える。 ②「元気が無いんだよ…」とだけ答える。】
誤解を、解きたかったんですが…どうしてでしょうか?
「げ、元気が無いんだよ…」
「えっと…その、ごめんなさい。まさか本当だとは…」
「いや真に受けんなよ!?」
「あら、じゃあやっぱり揉んでるんじゃ…」
「なわけあるか!なんでその二択だけなんだよお前の頭の中はよぉ!―――ったく、なぁショコラ。俺は別に何もしてないよな?」
「はいっ」
ほら見た事か。
逡巡する事無く答えたショコラに、満足げに頷く。
やれやれ。とんでもない勘違いをされる所だった。
――まぁ普段の奇行のせいなんだけどさ。
しかし雪平さん、なんであなたが安堵している様子なので?気のせいですかね?
「―――あ、でも別の所は揉まれました!」
「……はっ?」
何言ってんだコイツ。
…えっ、何言ってんだコイツ!?
さも普通の事を話すかのように『揉まれた』と発言したショコラに、俺含め全員が硬直する。
いやいや、別に俺は何もしてないじゃないか。
なんだってそんな事言われなきゃ…
「この間は強く絡みつかれましたしねっ。すごかったですよ、金出さんのバナナ―――」
「「「「「バナナぁ!?」」」」」
「いやバナナ・スプレッドだから!!プロレス技だから!グラウンド・コブラツイストだから!!」
俺の必死の弁解も、悪い意味で盛り上がってしまったこの雰囲気の前には無駄だった。
もはや彼らの脳内には俺がショコラに対して揉んだり絡みついたり果てはバナナで何か(意味深)をしているという誤った事実が植え付けられてしまっているのだろう。
揉んだ、というのは十中八九頬の事だし…絡みついた、というのも前のコブラツイストの話なんだろうけど…なんだってコイツはこうも誤解されるような言い方をするんだ…?
「よっ、天久佐!ちょっと砂にしていいか?」
「おうその言葉をリアルで聞くとは思わなかったし駄目に決まってんだろ!」
悪友の田中が笑顔で声をかけて来るが、目は笑っていなかった。
因みに砂にするというのは……うん、『砂にする レべルE』で調べたら出てくるぞ。
「なぁ天久佐、醤油五百ミリリットル早飲み選手権に出場してみないか?」
「遠回しに死ねって言ってるつもりなんだろうけど滅茶苦茶ダイレクトだからなそれ!」
普段は温厚な佐藤が、満面の笑みと隠すつもりもない殺気と共に声をかけてくる。
言わなくてもわかると思うが、醤油はそのまま飲んだら死ぬ。
「へいへい天久佐!俺のこの鉄製の牛の中に入ってみないか?」
「ファラリスの雄牛じゃねぇか馬鹿!」
昔から工作が趣味な赤川が、サムズアップしながら恐ろしい事を言ってくる。
因みに古代ギリシャの処刑器具とされているファラリスの雄牛は、製作者が一番最初の犠牲者だったとされている。
…つまり、この場合では赤川が一番最初の……これ以上は考えないようにしよう。
「天久佐ぁ!!お前、俺とのあの日々は全部…全部嘘だったってのかよ!!」
「お前こそ変な嘘つくなよ!?なんでお前まで変な誤解されるような事言うんだよ!?」
どの日々の事を言ってるんだコイツは。
ちょっとゲイのケがあると噂されているコイツは、誠遺憾ながら俺の友人が一人、阿邉だ。
…ていうか、なんだそのマジな目は。
えっ、そんな覚えはマジでないんだけど?
「金出さん…」
「しょ、ショコラ…お前事態を余計に拗らせて……」
「私そういうの嫌いじゃないですから!」
「話を聞けや!!」
「では……あたしそういうの嫌いじゃないから!」
「本家に寄せろって話じゃねぇから!」
【選べ ①このままでは埒が開かない。女子たちに対して弁明する。 ②このまま諦めず、根気強く男子たちに弁明する。運が良ければ掘られる。】
運が良ければの使い方間違ってんだろお前!
…でも、女子か…この状況でそっちに行っても大丈夫…なのだろう、か?
「いや、男子たちはあんな事言ってますけど俺は別に…」
「ひっ、揉まれる!」
「揉まねぇよ!?」
「絡みつかれるぅ!?」
「絡みつかねぇよ!?」
「て、天久佐君のバナナ……」
「なんで今生唾呑み込んだ!?なんで俺と阿邉を交互に見た!?」
「ぬちょぬちょのギリョルンギリョルンなメチョンメチョンにされちゃう…!?」
「日本語を喋れよ!」
駄目だった。
やっぱり女子の方も駄目だった。
というか、俺が口を開く度に胸元を隠して距離を取っていくのをやめてもらいたいんですけど。
その性犯罪者を見るような目を是非やめてほしいんですけど。
【選べ ①「やっぱりバナナには勝てなかったよ…」と言ってアへ顔ダブルピースを晒す。 ②ぬちょぬちょのギリョルンギリョルンなメチョンメチョンになる。】
普通に嫌なんだけど!?
男のアへ顔になんの需要があるんだよ!?
そして②のやつはもっと恐ろしいなオイ!!
「やっぱりバナナには勝てなかったよ…」
「ひぃ…!」
「あ、アへ顔だ……男のだけど」
「しかもイケメン(笑)のだぞ…」
「結構様になってんなぁ…」
おい最後ォ!!不穏過ぎるぞ最後ォ!!
「……はぁ、もういいや。奇行種でも変態でもなんとでも呼べばいいだろ…」
諦めも大事だ。
溜息と同時に席に着き、このまま現実逃避と洒落込もう…そう思っていたのだが。
【選べよ、残念イケメン】
「ついにとうとう普通に喋ったなお前!!」
「天久佐のやつ、何叫んでんだ?」
「さぁ…?きっと人には理解できないのよ…」
「まぁ、お断り5の中でも最強と噂されるくらいだしな…」
「奇行さえなければマジで完璧超人なのにね…」
つい声に出てしまったが、今はそれについて気にする余裕がない。
確かにコイツは何度か(笑)とつけたり草を生やしたりしていたが、こうして文章になっている事はなかった。
それが急に、なぁ…?しかもなんか馬鹿にされてるし。
で?肝心の選択肢は何だよ。
【①自分が嫌われているかどうかを全員に問う。 ②自分の事を好きかと一人一人に聞く。】
諦めた後でコレかよ!
もう良いって、嫌われ者なのは確定なんだからさぁ!!
―――まぁ、消去法で①聞くけど…
「あの、皆さん…そんなに俺の事嫌いですか」
「いやぁ?好きか嫌いかで言えばなんだかんだ好き寄りだし…」
「実の所私は結構好きだったりそうじゃ無かったり…?」
「普段は優しいし話してて面白いし…」
「去年のスポーツ大会だって、獅子守先輩と一騎打ちになった時すっごいかっこよかったし…」
「毎回テストで学年一位とってるし、教え方も上手だし…」
「でも…」
「「「「「「普段の奇行が、ねぇ……」」」」」」
「思ったより高評価だったぞ俺!?」
因みに獅子守先輩は、表ランキング(男子部門)の一位に君臨するイケメン中のイケメンであり、俺では微塵も及ばないような男だ。
まぁ去年助っ人としてスポーツ大会に出た時、同じく助っ人として出場していた獅子守先輩と色々あって一騎打ち(団体種目)になり、それはもう激しい戦いを繰り広げた結果、僅差で勝ったんだけどさ。
お断りに表が敗北した瞬間だった。ざまあみろ。
……言ってて悲しくなるな。
―――それと今更ながら言っておくが、俺は案外女子や男子とも話している。
確かに基本的には雪平とか遊王子とかと話しているが、普通に男女隔てなく話すし、勉強だって教える。
だからこうして蔑んだ目で見られつつも、なんだかんだ完全に嫌われているわけではないのだ。
…それでも充分距離があると思うんですがそれは。
「あっ、私は好きですよ!」
「ショコラ、お前はもう何も言わなくていいから」
「ええそうよ。私が来たからにはもう安心していいわ」
「出来るかッ!元はお前が元凶だろうが!!」
「…あら、あくまで自分は何もショコラさんにいかがわしい事はしていないというのね」
「当たり前だろうが!…ほら、そういうのはやっぱり双方の合意とかがだなぁ…」
「でもイカ臭い事はしたのよね」
「してねぇよ!発想おっさんかお前!」
「確かにオッサンはイカ臭いわね。私も洗濯物は分けてもらってるわ」
「オッサンに謝れよ!それと…親父さん、強く生きてくれよ」
「冗談よ。洗濯物程度で文句を言うほど小さい器じゃないもの」
「どの口が言うんだよ!?」
「口は上にしかないわよ?」
「下の話はしてねぇよ!?」
「天久佐君…、こんな時間から下の口だなんて…」
「言ってねぇよ!!」
駄目だ、雪平と会話してると時間だけが過ぎていく気がする。
今度こそ机に突っ伏して現実逃避をしよう…そう思った矢先。
俺の肩を何者かがタップした。
俺の背後は、窓しかないというのに、だ。
「…あぁ、遊王子か……ん?」
【選べ ①振り向く ②振り向かない】
えっ?そんな選択肢にするほどの事か?
どうせ窓から入ってくるのは遊王子くらいだろうし…いや遊王子以外に居ないし、誰が来るかなんてもうわかってるんだから、そんな勿体ぶらなくても……
―――いや、待て。選択肢がこう言ってくるって事は何かがあるに違いない。
かといって振り向かないという訳にもいかないし……仕方ない。
「ったく、どうせ遊王子―――ってなんだ、
やれやれ。遊王子では無かったが
全く人騒がせなヤツだ、俺も選択肢も……うん?
「ぎゃああああああああッ!!!女子の制服を着たドッペルゲンガーとか、初耳なんですけど!?」
「あっはははっ!大成功!」
マジで窓から女子の制服を着た俺とうり二つの何者かが入ってきたせいで腰を抜かすが、もう一人の俺は俺を笑いながら大成功と……ん?この声…
「いやーっ、天っちナイスリアクション!芸人なれるよ!」
「…やっぱりお前か遊王子…」
顔の皮…いや、覆面をはがし、遊王子が素顔を晒す。
なるほど、またUOGの摩訶不思議な商品…いや、試作品か。
偽札に続いて今度は超ハイクオリティな変装グッズ……従業員は犯罪者予備軍で出来ているのだろうか?
「す、すごいです…!金×金の可能性がここに…ッ!」
「ねぇよ!!相変わらず腐ってんなお前!」
「おっ、ショコラっちコレ欲しい?試作品だしいいよー?」
「そしてそんな犯罪を助長させるようなアイテムを軽いノリで無償で渡すな!」
「因みに中に小型のスピーカーが入っていてね?録音さえすれば天っちの声だって―――」
「なんとっ!?あ、あの金出さん!ちょっと『夏彦っ、夏彦!!』って」
「言うかッ!!」
【選べ ①「遊王子っ、遊王子!!」と叫ぶ。何故か例のBGMが流れる。 ②「夏彦っ、夏彦!!」と叫ぶ。しかし何も起こらない。】
なんのBGMだよ例のって!!
そしてなんで遊王子って叫ぶんだよ理由がないだろ!?
「くっ……な、夏彦っ、夏彦!!」
「そうっ、それです!それを録音している時にもう一度…」
「だから言うかッ!!」
【選べ ①「夏彦っ、夏彦!!」と叫ぶ。もしかしたら半裸の状態で現れるかもしれない。 ②「ショコラっ、ショコラ!!」と叫ぶ。もしかしたら半裸になるかもしれない。】
どっちも嫌なんだけど!?
まず半裸になるのはショコラなのか俺なのかはっきりさせておいてくれよ!!
……でも夏彦って叫ぶのはもっと嫌だし出現されたらマジで困るから②で。
「―――ショコラっ、ショコラ!!」
「いえ私ではなく」
「冷めた反応だなぁオイ!―――あっ」
一瞬で上着が全て消失し、俺は半裸になった。
―――まぁ、ショコラが脱ぐよりはマシか。
と思いつつ、クラスメイト達から向けられる『変態を見る目』に、無言で涙を流すのだった。
IFルート 【もし雪平に告白していたら(パラレル天久佐)】
「……お、居た居た。おーい!ふらのー!」
「!金出君!」
放課後、サッカー部の助っ人(一人欠席で人数不足だった)を終えた俺は、俺を待っていてくれている彼女―――雪平ふらのを見つけた。
付き合うようになったのは高校二年の春、俺がダメ元で告白した時だ。
それからは驚きの連続だった。
実は大分前から俺に好意を持っていてくれていた、という事や、普段のあのキャラ(毒舌と下ネタ)は実は友達を作るために社交的になろうとして失敗した結果だったという事等々、俺はこんなにコイツの事を知らなかったのか、と呆気に取られてしまった。
最近は人前でも素で喋るようになり、選択肢がめっきり姿を現さなくなった俺共々お断り5を脱すると言われるようになってきた。
でも、今となってはお断り5という称号もどうでもよくなってきた。
だって…
「…え、えっと…どうか、した?」
「いや?―――本当、最高の彼女を持ったなぁーと」
「ふぇっ!?そ、そんな…わ、私の方こそ…」
夕日のせいで元々紅くなっていた顔が、より一層赤くなる。
縮こまってボソボソと何かを呟く(しっかり聞こえている。鈍感系じゃないからな俺は)ふらのが可愛らしくて、つい頭を撫でてしまう。
なんだろう、小動物のような可愛らしさを感じる。
「そうだ、日曜日にでも一緒に出かけないか?」
「う、うん!――でも、何処に行くの?」
「そうだな……あ、そう言えばお前、『しろぶた君』が好きだったよな」
「そう、だけど…」
「ちょうど日曜日にしろぶた君が来るらしいし―――見に行くか?」
「い、いいの!?」
「おう。俺もしろぶた君は好きだしな。―――それに、ふらのが楽しんでくれるなら、それだけで行く価値がある」
嘘じゃない。
ふらのが笑ってくれるだけで、俺は充分満たされるからな。
…なんかちょっとアレな発言だが、実際そうだからな…他に何と言えばいいか。
これまた顔を赤くしてワタワタするふらのを見つつ、いつもよりもゆっくりと家に向かうのだった。
勿論、手を繋ぎながら。