「両方」やらなくっちゃあならないってのが「天久佐金出」の辛いところだな。
覚悟はいいか?オレはできてるというお話。
「なぁショコラ、なんかリクエストとかあるか?」
「そうですね……ピッツァがたべたいです!」
「ピッツァか…悪いが石窯は今倉庫の中でな、週末でいいか?」
「えっ!?いしがまあるんですか!?」
「おう。母さんが結構道具にこだわる性質でな…他にも石臼とか燻製器とか、色々物置に眠ってるんだよ」
「くんせい!スモークチーズもたべたいです!!」
「燻製か…それなら明日にでも出来るし、後で用意しとくか。――サーモンとか好きか?」
帰宅後、食事の話をしつつしっかりと手を動かす。
両親が家に居る時はそんな事しなかったのだが、こうして家事をするのが俺一人(居候は生憎役に立たない)だと、休む暇すら惜しいのだ。
明日用意する食材やらなにやらをピックアップしつつ、今日は俺の中で決めていた野菜炒めで済ませる事に決定。
フライパン等を用意し、早速調理を……
【選べ ①今日くらい豪華にしよう。具体的には一言さんお断りの店のふぐ刺し ②たまには質素で良いだろう。もやしを指先程度の味噌で味付けすれば立派なおかずだ】
両極端だなお前!!
つーかそもそも一言さんお断りの店なんて行ける訳……あ、行けるわ。父さんに一回連れてってもらった場所が、ちょうど一言さんお断りかつ商品の値段が高めかつふぐ刺しがある店だった。
「…な、なぁショコラ。ほんのり味噌風味のもやしとかは…」
「あはははっ!金出さんはじょうだんがじょうずですね!!」
「デスヨネー……はぁ、ショコラ。ふぐ刺し食いに行くぞ」
俺の貯金は、これで恐らく半分無くなるだろう。
トホホ、俺が必死こいて貯めてた金が…いつか投資に使おうと思っていた金が…
―――ん?電話?
相手は…チャラ神、か。
「もしもし?」
『ヘロヘロ~、
「ははは、元気だと思います?」
『え~?でもでも、今日はとっても刺激的な事、あったんじゃなーい?』
通話を切り、ついでに電源を切っておく。
そうだった。このチャラ神のせいでショコラが俺の学業補助ペットとして学校に通うことになったんだった。
「ふぅ……さて、財布は何処に―――」
『ちょっと~?いきなり切っちゃうのは酷くなぁ~い?』
「いや何でもありか!!?」
『だぁって神だもーん☆』
うわうぜぇ。
けどどちらかと言えば『電源を切っていたはずのスマホを起動した挙句、スピーカーモードで通話を再開した』という訳の分からん事への戦慄の方が上回ってるんだよな…
神だからって、なんでもやり過ぎだろコイツ…でも俺の呪いは解除できないんだよな。
確か、その世界の神が無理矢理ねじ込んだ不自然な法則云々で、他の神からは手出しができないとか。
だから、このチャラ神にだって俺の選択肢は視認できないばかりか声も聞こえないらしい。
「…それで、なんの用ですか?」
『いやぁ、暇つぶし半分、近況報告半分?って感じ?』
「近況報告?」
『そそ。ほら、特殊ミッションの話さ』
「あ―――そうだよ!!それ、結局なんだったんですか!?」
『へいへい、落ち着いて落ち着いて。―――はっきりと言おうか。情報は
「…無かった、ですか?でもあり得ない事では無いんじゃ…」
確か前任の昼メロの神の引継ぎの書類のまとめ方が物凄く雑だったって話だし……部屋から変な匂いするらしいし(多分、その部屋で不倫していたのだろう)書類が無くてもおかしくはないと思う。
杜撰な整理をしてたらいつの間にか書類なんて無くなってるもんだし、仕事部屋であんなことやそんなことをするような奴だ、どうでも良いとか言って記録すらしてないんじゃないか?
『そう思っちゃう?ざんねーん!そうじゃないんだなぁ』
「…じゃ、じゃあ何だって言うんですか」
『神にだってね、義務はあるんだよ。その義務の一つがどんな些細な事でも
「…記録だけして、そのままどこかに行ったとか?」
『それは無いよー!だって、態々もっと偉い神の配下まで借りて部屋中捜索したし!』
「えっ…そ、そんな事までしてくれたんですか!?」
ちょっと俺の中でのチャラ神のイメージがアップ。
普段はチャラチャラしてるが、結構知らない場所では良い事してくれてるんだな…その優しさ、まさしく神だ。
『いや、部屋中捜索したのはその前任の神と浮気した神の嫁さんの命令なんだけどね?』
「俺の感動と感謝を返せッ!!」
なるほど、現場捜索って事か。
なんか神という存在が非常に近くに感じる。
――でもまぁ、神話の内容なんて殆ど人間と同レベルの事だったりするし(スケール以外)そんなもんなのかもな。
【選べ ①旧約聖書を全文朗読しながら三点倒立する ②新約聖書を全文朗読しながら三点倒立する】
三点倒立を止めてくれよ。疲れるからさぁ。
『いっやー!凄かったね、聖書朗読』
「ど、どうも…」
素で暗唱できたのは、一重に俺が俺だったからだろう(説明不足)
…ほら、聖書の一節って、漆黒のー、とか言ってる時期にどうしても触れちゃうじゃん?
俺は人一倍物覚えが良かったせいで未だに全文暗唱出来たってだけで。
『さて、ちょっと急な要件も入ってきたから手短に済ますけど……つまりね、君のその選択肢、まだ別の神が新しく送ってきてるって事なんだよ』
「…はい?それって…その、昼メロの神が送ってるわけじゃないんですか?」
『違うらしいよ。前任のさらに前の神の時…もしかしたらもっと前?からあるみたい』
「じゃ、じゃあその話を伝っていけばもしかしたら…」
『って、思うじゃん?…なんかね、途中から行方不明の神が出てきちゃって、正確な情報が得られて無いんだよ』
「ゆ、行方不明って…」
『ま、神も人も同じって事。―――じゃ、そろそろ『宇宙破壊爆弾』の完成を阻止しに行ってくるからー!バイビー』
「えっ、ちょっと!?―――ウソン」
電話はもう反応しない。
なんだか胡乱な兵器の名前を言っていた気がするが……果たして本当なんだかどうだか。
「あっ、ふぐ刺し食いに行かなきゃだな。―――ショコラ、もう準備は……おい」
「もぐもぐ……んむ?あ、たべます?」
「俺のなんだけど!?ねぇ俺のじゃがりこなんだけど!?」
「まぁまぁ、そうおこらず」
「何度目だよその宥め方!!」
【選べ ①ここは大人しく矛を収めよう ②許せん、俺のイライラしている矛で貫いてくれよう】
②は自重してくれ。マジで。
「……はぁ、さっさと行くぞ」
「あ、はーい!」
いつものように、嬉しそうに俺の隣に来たショコラに、ふと疑問を覚える。
…何でコイツ、俺と居るだけでこんなに嬉しそうにできるんだ?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
時は流れて翌日。
ロングホームルームにて、新入生歓迎会での催し物についての話し合いをしている。
え?奇行?
はははっ、選択肢が大人しい時なんて滅多にないぞ!
既にニ、三回話し合いの妨害になるような事をさせられた後だ。後は察してくれ。
「えっと…ほかに何か、意見がある人は…」
【選べ ①逆バニーガール喫茶 ②おっパブ】
もうやめて!?
なんでこの雰囲気の中で一番ドギツイのを持ってきたの!?
「…は、はーい…」
「……他にいませんかー?」
ついに無視されるようになったぞ俺。
でも委員長、ファインプレーだ。おかげで俺がより一層冷たい目で見られる事も無くな―――
【選べ ①宴先生の逆バニーについて熱く語る ②ショコラのおっぱいについて熱く語る】
あ”あ”あ”あ”あ”あ”ッ”!!
「…えっ?て、天久佐君…?」
「なんだよ、今度は何すんだ…?」
「さっきUFOとか言ってたし、ベントラーとかじゃね?」
「あんなにスベってもまだやるんだ…」
力強く立ち上がり、大きく数度深呼吸。
そんな俺を、教室内の全員からの心無い陰口が苛む。
だが、今はそれどころではない。
賢い選択肢は②の方だと思われるが、流石におっぱいについて話すのは不味い。
ただでさえショコラ関係で俺が疑われている(実際は何もない)のに、ここで自らおっぱいの話なんかしたらもう言い逃れはできなくなってしまう。
となると、①を選ばざるを得なくなるのだが……そう、しっかり宴先生が教卓付近に居るのである。
つまり、死。
覚悟は良いか?俺は出来てない。
「――――俺はッ!!宴先生による逆バニー喫茶を熱く要望するッ!!」
「…は?」
ざわついていた教室内が、一気に静まり返った。
ただ一人、先生だけが許容しがたいという風に結構素で聞き返しているが、それに対して反応することはできない。
まだ熱弁しきれていない判定なのだ。
「皆の言いたい事はよく理解できる―――だが考えてみて欲しい特に男子諸君ッ!!この合法ロリが、明らかにアウトな服を着て恥じらう姿をッ!!」
「宴先生が…?」
「顔真っ赤にして…?」
「逆、バニー?」
「でもどうせなら天久佐に着て欲しいよな…」
さ、最後が不穏だ……が、殆どの男子生徒は鼻の下を伸ばし始めている。
やっぱり日本人は皆ロリコンなんだ!!俺がそうであるように!!
よし、このままゴリ押せば行ける(そもそもの目的がない)ぞ…!
「バニーとロリ、それは古来より禁忌とされていた組み合わせの一つだ。大人びた、ムチムチボインな女性がするはずのバニーと、その対極と言っていいロリ…本来出会うはずの無い二つの属性が組み合わさった際の爆発力は、最悪死人が出る程だろう。その上逆バニーの方になんてしたら、少なくとも俺は死ぬ。―――だが、男なら死んでも一度は見たい景色が!ものが!きっとあるはずだ!!」
「そう、だよな…」
「天久佐ー!俺はお前に賛成だぜーッ!」
「お、俺もだ!!」
「ぼ、僕も!!」
「お前と宴先生でダブル逆バニーに一票!!」
だから最後ォ!!なんで俺に着させたがるんだよぉ!
「彼方にこそ栄えあり!宴にこそバニー!!今こそ叫べ野郎ども!逆バニーコールだァああああああッ!!」
「「「「「「逆バニー!逆バニー!宴先生の逆バニー!!」」」」」
「天久佐の逆バニィイイイイ!!」
だから最後…って阿邉かよぉ!お前だったのかよぉ!
ま、まぁそれはどうでも良い。
今は俺の作戦(特に何も考えてなかった)の大成功を祝おうじゃないか。
見ろ、先程まで俺を冷え切った目で見ていた連中が、こうして俺の考え(選択肢の考え)に賛同し、熱く盛り上がっている。
これだよ、この熱狂だよ。これこそ青春なんだよ。
女子たちはもう視線だけで殺してきそうだけど、それはもう気にしない方向で行くとし―――ぐぇっ!?
「て…天久佐テメェ!!調子乗ってんじゃねぇぞコラァ!!」
「ぎゃー!?絞まってる絞まってる!」
「そうだそうだー。宴先生に失礼だろー」
「お前一人で盛り上がりやがってー。許せんぞこらー」
「一回掘らせろコラ!」
こ、こいつ等!同志たちと呼ぼうと思ってたのに、俺が縊り殺されそうになった途端に手のひら回転させやがって!!
でも最後のやつだけブレねぇなオイ!もう俺をロックオンすんのやめろよ!
「ぎ、ギブギブ…マジでやべーですって…」
「……チッ、今回はこれくらいで許してやるが……次はねぇぞ」
「はぁっ、はぁっ……げほっ…あ、あい…」
【選べ ①ブルマ宴先生について熱弁 ②スク水宴先生について熱弁】
……あのさ、話聞いてた?
「じゃ、じゃあ…天久佐君以外で、誰か何かありますか?」
結局スク水と宴先生について熱く語る事にした俺は、物の見事に首を絞められ、気絶させられてしまった。
今はなんとか復活しているが、意識がトんでる間は三途の川が見えた。
……俺、死にかけてんじゃん。
てか黒板に明かに異常なタイトルが二つあんだけど。
なにこの『ノリスケを探せ』と『臓物博覧会~雅~』の異物感。
俺が気絶してる間に何提案してんの?
「はいっ!」
「ショコラさん、どうぞ」
「だんしのみなさんが、水着でレスリングをすると面白いとおもいます!」
…いやいや何を言ってるんだコイツは。
確かに阿邉みたいな男好きは喜ぶだろうが、それ以外にノリ気になるやつが居る訳…
「しょ、ショコラちゃんが言うなら…」
「やってみてもいい、か…」
「喜んでくれるなら、やるか…」
「俺元々そういうの好きだし…」
「天久佐とやりてぇなぁ…」
いやなんでそこノッちゃうの!?てか阿邉枠まだ他にいたのかよ!?
「ショコラちゃん、良いアイディアありがと~」
「いや委員長も書かなくていいから……って『本格的♂ガチムチ水着レスリング』ってなに独自のタイトルつけちゃってんの!?」
なんかちょっと目が輝いているようにも見える。
まさか委員長も…?
【選べ】
えっ、またぁ!?
【①実に興味深い。実際に阿邊とやってみる ②宴先生の男水着チャレンジについて妄想。鼻血が溢れて何かを勘違いされる】
純粋にどっちも嫌なんだけど!?
だって①はもうアウトだし、②はなんか男同士のレスリングを想像して鼻血出したみたいじゃん!
「…お、おいアレ…」
「天久佐のやつ、鼻血出してるぞ…」
「やっぱ好きなんすねぇ、そういうの」
違うわ!と声に出して否定したいが、それだとまた先生に縊り殺しにされる…
引き気味の男子たちと、目を輝かせる女子たちに、半ば泣き出しそうになりつつため息。
すると突然、教室のドアが開けられ、誰かが教室内に入ってきた。
「きゃーっ!獅子守先輩よ!」
「歩く姿もカッコいいー!」
「あっ!今、目があった!」
「抱いてー!」
「抱かせろぉおお!」
いや最後誰だ!?阿邊じゃなかったぞ今の男!
…まぁそれはさておき。
黄色い声援と共にこの2年1組の教室に入ってきたのは、男の表ランキング第一位のイケメン、獅子守想牙だ。
かつてスポーツ大会で熱く戦って以来、俺の事をライバルとして見ているようだが…まぁ、好敵手の方のライバルだろうし、悪く思われてるわけではないか。
「悪ぃな姉御。ちょっと時間借りるぜ」
「姉御じゃなくて先生って呼べっつったろ」
「お、おぉう。すまねぇ」
すげぇなあの人。宴先生のこと姉御って呼んじゃったよ。
縊り殺しなんていう二つ名前の持ち主だってのに…すげぇや。
【選べ ①「そうだそうだ!宴姉は俺だけの姉ちゃんなんだ!」と怒る ②「そうだそうだ!宴ママは俺だけの母ちゃんなんだ!」と怒る】
俺にはそんなすげぇことできねぇなぁ…って思ってたんだけど?
なんでもっとやべーの持ってきてんの?なに?対抗心?
「……そ、そうだそうだ!宴姉は俺だけの姉ちゃんなんだ!」
「て ん きゅ う さ…?」
「ヒィッ!?ち、違うんです先生!これは罠です!」
【選べ ①「粉バナナ!」 ②「これは青酸カリ!」】
キラじゃねぇよ!
でも②だとマジで青酸カリ舐めさせられるんだろうなぁ…選択肢が提示してきてるやつだから、死ぬことはないだろうし…こっちは選べねぇな。
「粉バナナ!」
「は?」
【選べ ①「これはニアが僕に仕込んだ巧妙なバナナ…!」 ②自分のバナナをしゃぶらせる】
いや宴先生が殺意の波動に目覚めてんのにまだふざけさせんの!?
でもそれ以上に②がアウトなんだよなぁ…
「これはニアが僕に仕込んだ巧妙なバナナ…!」
「天久佐」
「アッ、ハイ」
「―――後で指導室、な?」
「アイアイマム」
それは紛れもなく死刑宣告だった。
少なくとも、このロングホームルームの後は俺の死が待っている。
――あれっ?どうせ長生きしてもいい事無いし、良い事なのでは?
呪い解除とか、なんかもう無理ポだし。
そう考えると楽しみになってきたぞ、ひゃっほぅ!
…とはならないんだよなぁ…どうせまた【①死なない ②死ねない】みたいな選択肢が出て来るんだろうなぁ……気が重い。
「…なんつーか、相変わらずだな天久佐」
「ははは、否定できないのが何よりも悲しい」
【選べ ①「私は悲しい」と言ってハープを鳴らす ②「私は悲しい」と言ってボロンする】
お前も相変わらずの品の無さだなぁ!
「私は悲しい…」
「…そのハープどこから出したんだ…?」
「あ、それはお気になさらず」
そりゃ気になりますよね。いきなりハープなんて持ちだしたら。
でも選択肢による事象ですし、何とも言えないんですよね。
「あっ、イケメンのライオン先輩だ!」
「ら、ライオン…?」
「獅子守、だからじゃないっすかね」
「そ、そうか…?」
先輩(尚且つ表ランキングの王者)相手にフリーダムな遊王子に、一周回って…いや、いっそ三周回って尊敬の念すら覚える。
もうお前すげぇよ。国宝級だよ。
「一度でいいから見てみたい、女房がライオン隠すとこ。ふらのです」
「何故歌丸さんテイスト」
お前も国宝級じゃねぇか。
二人でお笑い芸人やったらウケるんじゃねぇの?
「あれー?ライオン先輩はあんまり?」
「いや当たり前だろ。何先輩の事動物に例えちゃってんの?」
「じゃあトラ?」
「ネコ科ってとこしか一致してねぇよ」
「ならチーター!」
「ラトラーターじゃねぇんだよ」
【選べ ①「ハッピーバースディ!!」 ②「プテラ!トリケラ!ティラノ!」】
何故プトティラをピックアップしたんだお前。
もっとあったろ、ガタキリバとか。
「プテラ!トリケラ!ティラノ!」
「およ?もしかして天っちも特撮好き?」
まぁ好きだな。少なくとも毎週日曜日は必ず見てるし。
…あっ、ウルトラの方最近見れてねぇな。今度見るか。
【選べ ①「通りすがりの仮面ライダーだ」 ②「ゴーカイチェンジ!」】
普通に『特撮好きだぞ』って返事でよかったと思うんですけど。
なんで態々破壊者か海賊をやらなきゃなの?
「通りすがりの仮面ライダーだ」
「やっぱり!いやぁ、あたしも好きでねー?」
「あ、あー…盛り上がってるとこ悪いが…」
「あっ、そうだった!ラトラーター先輩でいい?」
「ら、ラトラーター?」
「駄目そうね遊王子さん。ならここはひらがなにして省略して、『いけおん』なんてどうかしら」
いやアウトだろ。
『いけめんならいおんせんぱい』を略するのはまぁ悪くないだろうけど、それじゃ明らかに……
【選べ ①カスタネットを持って「うん たん♪」と言う ②必殺技の練習をする】
『けい●ん!』じゃねぇか!
「うん たん♪うん たん♪」
「流石ね天久佐君。見事な『けい●ん!』じゃない」
「なんだその見事な『けい●ん!』って」
「―――なぁ、天久佐。そろそろ…」
「あ、はい。ごめんなさいね待たせて」
【選べ】
まーだ伸ばすんですかそーですか。
で、今度は何?
【①「そんなくだらない話より、おっぱいの話をしましょう」 ②「そんなどうでもいい話より、ちっぱいの話をしましょう」】
まだなにも話していないだろ!
え、えぇ…くだらないっていうよりもどうでもいいって言ったほうがまだマシかな…ちっぱいの話になっちゃうけど。
「…で、だな」
「そ、そんなどうでもいい話より、ちっぱいの話をしましょう」
「は、はぁ?」
うわ、露骨に距離をおかれちゃったぞ…まぁこれで普通に話に乗ってこられても困るけどさぁ。
言わなくてもわかるだろうが、他の生徒たちもしっかり俺から距離を離している。
もう気にしないけど気にするんだよね、これ。
「はい、失礼しまーす」
「あ、あの人って…」
「表ランキング一位の、黒白院先輩…!?」
「す、すっげぇ綺麗だなぁ…」
「生の生徒会長初めて見たわ…!」
どう言い訳しようかと考えていたその時、教室内に落ち着いた声が響いた。
クラスメイトの言葉の中にあった通り、表ランキングの一位にして生徒会長、黒白院清羅の声だ。
ゆっくりとこちらに近づき、何を考えているのかよくわからない微笑(皆はその微笑にときめくらしいが、俺にはよくわからない)と共に口を開いた。
「遊王子謳歌さん、雪平ふらのさん…そして、天久佐金出さんですね?」
「そういう貴方は」
「ジョナ●ン・ジ●ースター」
「いや何連携プレイでデ●オしてんの?」
【選べ ①「いいおっぱいしてんねぇ!この後お茶でもどう?」 ②「いいパイオツしてんねぇ!この後お茶でもどう?」】
「いや選べるかッ!」
「何をいきなり叫んでるんだお前…」
「あ、いえなんでも…痛てて、わかったから…」
全員が訝しむように…いや、宴先生だけは可哀そうなものを見る目で見てきてるな。
後は…なんでかよくわからんが、黒白院先輩はあまり訝しむような目をしてなかった。
なんでだ?
「い、い……いいパイオツしてんねぇ!この後お茶でもどう?」
「ふふふっ、ごめんなさい?」
「予想外の反応!?」
はっきりと拒否せずに、わざわざ質問するかのような言い方をしているところがなんというかあざとい。
まだ可能性はありますよ~と言っているように感じさせる口ぶりと態度だ。
まぁ別に黒白院先輩にそう言った感情があるわけでもないし、どうでもいいんだけどね。
「あ、あいつ…」
「あの黒白院会長にパイオツって言ったぞ…」
「最近聞いたんだけど、あの柔風に「パンツ見せろ」って言ったらしいぜ」
「まじかよ。表ランキングでも関係無しか…」
「あ、それ知ってる。確かM字に開脚しろって命令したんだっけ?」
「変態…」
そしてクラスメイト達はいつも通りだった。
違うんだって。俺の意思じゃ無いんだって。
「痛っ!?ちょ、なんで蹴ったんだよお前!?」
「……偶々足が当たっただけよ。自意識過剰ね」
「偶々で済ませて良い距離じゃないと思うんだけど!?」
「タマタマなんて……とても乙女に、それも昼間から言う言葉じゃないわよ」
「そういう意味じゃねぇから!ていうか先に偶々って言ったのお前だろ!?」
何故コイツは若干不機嫌そうなんだ?
別に俺がパイオツと言おうが、自分に言われたわけでもないんだから気にしなくていいと思うんだが…
「…話を戻してもいいですか~?」
「あ、はい…それで、何でしょう?」
「あぁ、俺達は…」
「新入生歓迎会の最後に行われる、『対抗戦』の参加についてお話しに来ました~」
「…対抗戦?」
「覚えてるだろ?去年もやってたからな。―――お断り5と表ランキングから各五名ずつ選抜し、
「あ、あー…」
あれは今でも覚えている。
数年前のバラエティでやっていたような対決をやっていたなぁという事と、お断り5と呼ばれている人たちが奇行に走り、やりたい放題していたという事は忘れられそうにない。
――昔は、見てる側だったんだけどなぁ…
というかそうか。対抗戦ってコレの事か。
なるほどなるほど。参加者…つまり、お断り5の女子か、表ランキングの女子のおっぱいを両手で揉めばいいのか。
「いや出来るかッ!」
「な、なんだよいきなり…」
「あ、いえこっちの話です。―――それで、誰が参加するんです?どっちも十人ずついるハズですけど」
「あぁ。こっちはもうくじ引きで決まってる。俺もコイツも参加することになってな……後はそっちのくじ引きが終われば、だ」
「なるほど……因みに、俺達の前に『あたり』を引いた人って誰がいるんです?」
「三年の夢島カラスさんだけですよ~」
…夢島カラス先輩は、お断り5の中でも屈指の変人として有名な男だ。
俺に劣るとも勝らないと言われているらしいし、相当なのだろう。
―――いや、俺が最強と言うのが何よりも屈辱なんだが。
【選べ】
そういえばさっき獅子守先輩に『どちらも十人』と言ってしまったが、お断り5の方は一人卒業したせいで九人だった。
だからなんだって話なんだけどさ。
―――で、なんだよ今度は。
【①天久佐金出こそが最強。ブリッジで天井に張り付き、首を振りながら奇声を発する ②天久佐金出こそが最強。道楽宴に本気の戦闘を挑む】
いや重力に抗うなよマジの【変態】じゃねぇか!!
――でも宴先生に挑んでもなぁって感じなんで、普通に①にします。
「ぎびげびぇびぇびゃあ!!」
「きゃあああ!?」
「じゅ、重力に逆らってやがる!!」
「気持ち悪っ!?」
「もうお前が最強でいいから!」
「誰もお前には敵わねぇって!夢島先輩に対抗心燃やさなくていいから!」
なんで選択肢の意図を汲んでんだよお前ら!
この奇行から『自分が最強であることを示したがっている』ってよく気づけたな!
「―――そういえば」
「いきなり冷静になるのか…」
「先輩。もう気にしないようにしないでください。―――で、夢島先輩だけって話をしてましたけど、もう他の人達は引いたって事なんですか?」
「あ、あぁ…まぁ、そう」
「さぁ~?どうでしょうね~?」
獅子守先輩の言葉を遮るようにして、黒白院先輩が俺の方へ一歩近づいてきた。
…いや別にそこまでして遮る程の内容じゃないと思うんですけど。ただの返事だったと思うんですけど。
――どーせ全員引いてて、全部『
「…もういいです。さっさと引かせてください」
「あら~、随分とやる気なんですね~」
「あはは……まぁ、色々とあるんですよ。色々」
「ふーん……では、はい。引いてください~」
そう言って、ポケットの中から三つのくじを差し出してくる会長。
オチを察している俺は勿論、雪平も遊王子もあまり逡巡する事無くくじを引いた。
―――言わなくてもわかるだろうが、そのくじの先端にはしっかり赤色が付いていた。それも全員。
【選べ ①これで遊王子や雪平のおっぱいを揉む理由が出来た。後先考えずに鷲掴みしよう ②そんな酷い真似はできない。取り敢えずパンツの色を聞こう】
馬鹿なのか!?
①はまぁ、特殊ミッション云々があるからまぁわからなくもない。選ばないけどな?
だが②、お前は何を言ってるんだ。
そんな酷い真似はできない、と言うのは全面的に同意するが、その取り敢えずパンツの色を聞こうというのはなんなんだ。
おっぱいは駄目でパンツはありなのか。
―――まぁ、直接行動しない分まだマシだし、②にするけどさ。
「なぁ、遊王子、雪平」
「ん?なぁに?」
「なにかしら」
「―――今穿いてるパンツ、何色?」
「……答えると思っているのかしら?私はあくまでパイオツの伝道師。所謂電動マッサージ機よ?そんな卑猥な話をするわけないじゃない」
「黒だよー?」
訳の分からんことを言う雪平と、何も気にすることなく色を言ってのける遊王子……そしてドン引きするクラスメイト達。
うん、いつも通り―――って、ちょっと待て。
「なぁ遊王子」
「んー?」
「お前、パンツ見られるの恥ずかしがってただろ?なのに色を教えるって…」
「あ、それ?―――ふふーんっ。なんと、あの日からスパッツを穿くようにしているんだよっ!」
「だから見られる心配は無いし、色くらいは言っても見られたことにならないってか?」
「うん!あ、スパッツ見る?」
「見ねぇよ!!」
【選べ ①「パンストなら見る」といって、パンストの着用を促す。鼻の下も伸ばす ②「遊王子のよりも、こっちの方が気になるな」と言って雪平かショコラのスカートを捲る。好感度がこれ以上ないってくらい下落する代わり、かなり上昇する】
ゆんやああああ!
どぼじでごんなごどずるのぉぉぉぉ!!
…いや、②のこの『下落する代わり上昇』ってなんだよ。下がって上がるのかよ。
選ばないけどね?
「…パンストなら見る」
「おー。欲望に正直ですなぁ…あれ?ガーターベルトが好きって言ってなかったっけ?」
「どちらかと言えばパンストの方が好きだ」
あ、それはマジです。
ガーターベルトも良いけど、やっぱりパンストだよね。
…おっと女子生徒諸君、そんな露骨に距離を取らないでくれたまえ。
別にパンスト女子に興奮すると言っているわけでは無く、ただただそういう性的嗜好があるというだけの話だからね。
見るたびにギンギンな訳ないじゃないですかやだー。
「…なるほど、パンストね…」
「何がなるほどなんだよ…」
「ウェイッ!?なんでもないよっ!?」
「…まぁ言いたくねぇならいいけど」
なんかの統計でも取ってんのか?いずれにせよ俺には関係ねぇだろうけど。
「―――さて。これで両チームとも出場者が決まりましたね~」
「…いや、こっち一人足りなくないですか?」
「それは一年から助っ人を呼ぶ枠だ。お断り5の枠は全部埋まってんだよ」
「あ、なるほど……っていやいや!お断り5なんて不名誉な称号の持主の助っ人やりたがるヤツなんていませんでしょうよ!」
「まぁまぁ、最悪見つからなかったらこっちの助っ人枠も無しにして、四対四でやるからよ」
「ですが、ちゃんと探しておいてくださいね~?」
一応助っ人が見つからなくても大丈夫…らしいが、どうも黒白院先輩を見ていると不安になる。
この人、本当に何も読めないんだよな……時々猛禽類みたいな目で見て来るし。
「金出さん!なんだかおもしろそうですねっ!」
「ははは~!これが面白いと思うのかコイツめ~!」
他人事だと思ってからに……いや実際他人事なんだろうけどさ。
菓子を貪りながらこちらに来たショコラに、目の笑っていない笑顔を向けるが、全く気にする様子はない。
…くっ、学業補助ペットだからってお前…
「っておい、ショコラ。口元汚れてんぞ」
「え?」
「はぁ……ちょっと待ってろ」
ハンカチを取り出し、口元を拭いてやる。
――チョコレートが付いてたのか。まぁ拭き取ったしこれでいいが。
拭き取って視線をショコラから離すと、何故か教室内が静まり返っていた。
全員の視線がこちらに向けられているし、また何かやらかしたことになってるんだろうが……
「あの、待ってください。誤解です。ただショコラの口元にチョコレートが付いてたから拭き取ってやっただけなんです」
「……いや、天久佐」
「だから違うんですって!!そりゃさっきまで奇行に走ってたのはそうですしパンツだのパンストだの言ってたのも事実ですけど、マジでそういうのじゃなくってですねぇ!!」
「落ち着けって……別に、そういう意味で黙ってたわけじゃねぇだろうしよ」
じゃあ一体どういう意味なんだ…
あーでもやっぱり聞きたくねぇ。予想よりも悪い結果を出されたらマジで困る。
―――はぁ。お断り5だなんてレッテルが無ければ、口元拭いてやるだけで皆が黙るような事も無くなるんだろうか。
そのためにはまずこの奇行の発生源を何とかしなければなんだが。
「ねぇ天久佐君」
「なんだよ雪平」
「口に性的興奮を覚えるのは別に悪い事とは言わないけれど、流石に白昼堂々発情するのはどうかと思うわ」
「いやだから違うって言ってるだろ!?」
「ならなんでいきなりショコラさんの上の口を責めたりなんてしたのかしら」
「言い方ァ!!―――だから、口元にチョコレートが付いてて」
「ス●トロをチョコレートと言って誤魔化すなんて、中々策士ね」
「だから違うって!!そんなマニアックな事しねぇから!!」
「ならノーマルなら」
「するような相手が居ねぇんだよ!!……って何言ってんだ俺!?」
くっ、全て雪平の掌の上という事か。
これ以上は墓穴を掘るだけだろうし、何も言わないようにしよう。
【選べ ①「だから雪平、一晩でいいから抱かせてくれ」 ②「だから獅子守先輩、一晩でいいから抱かせてください」】
何も言わないようにしようって言いましたよねぇ!?
え、えぇ…どっちもアウトだけど、さすがにホモ扱いまでされるようになったら完全にアウトだからなぁ…雪平には申し訳ないが、ここは軽い冗談とでも受け取ってもらおう。
「だから雪平、一晩でいいから抱かせてくれ」
「……ごめんなさい。EDとスるつもりは無いの」
「勃起不全じゃねぇし!」
「何を言っているのかしら。私はただエンディングテーマという意味で言っただけよ」
「いやそれにしたっておかしいだろ!?なんだよエンディングテーマな人って!」
「あなた、人だったの?」
「純然たるホモ・サピエンスだわ!」
「ほもですかっ!?」
「そのホモじゃねぇ!」
「ホモなのっ!?」
「違う…って委員長も腐ってるのかよ!?」
「て、天久佐!!」
「お前は俺のそばに近寄るなぁ!」
今のは俺の言葉選びも悪かったな。
普通に人間って言えばよかったのに、何故ホモ・サピエンスと言ってしまったんだ…
目を輝かせながら近づいてくる腐女子2名と阿邊に、言いようのない危機感を感じる。
主に下半身の。
「…ったく、なんでショコラの口元拭いてやっただけでこんな事になんだよ…」
「あぁ、その子がショコラさんなんですね〜?」
「?はい!ショコラです!」
「あらあら〜、とっても可愛らしいですね〜。まるで…」
一度言葉を切り、黒白院先輩は俺の方へ視線を向けた。
…俺がこの人を胡乱に思っている原因である、あの猛禽類のような眼で。
「…まるで、人間じゃ無いみたい」
心臓が止まったかのように感覚。
背骨が大きな氷柱に差し替えられたかのような寒気と、普段から軽々しく口にしている物とは段違いの『死』の予感。
緊張したり恐怖したりすると、人は汗を流すというが、あれは嘘だと思う。
だって、今までにないくらいに恐怖と緊張を感じている俺は、今全然汗が出てきていないんだから。
…汗が出てこない程に強張っている、という事だろうか?
「―――な~んて、冗談です~」
…冗談、ね。
果たして本当にそうなんだか…
【選べ ①「ほんとぉ?」 ②「これマジ?」】
聞かなくていいから!それに何でソレで聞かなきゃなんだよ!
「ほんとぉ?」
「本当です~」
…良かった。さっき感じた命の危機は感じなかった。
いやぁ、流石に死んだと思ったぜ。まぁこれから
HAHAHA!―――って、あ?メール?
《呪い解除ミッション 対抗戦終了までに、参加者女子全員から好きと言われる》
「くぁwせdrftgyふじこlp」
本来人間が出してはいけない声を出しながら、俺は厳しすぎる現実からそっと離れるのだった。
IFルート【②許せん、俺のイライラしている矛で貫いてくれよう】
「……まじ、か」
「はいっ!」
思考がまとまらない。
視界が若干眩んでいるように感じる。
だって、その重みはとても一介の男子高校生には重すぎるのだから。
―――あの時選んだあの選択肢のせいで、俺はある危機に瀕していた。
「……えっ、本当なの?」
「そうです!しっかり『居ます』よ!」
この際だから遠回しな言い方とかは全くせずに、事実だけを伝えよう。
―――ショコラに、俺との子供ができた。
「ま、マジか……おいおいおい、マジなのか…」
眩暈がする。
だって、子供?こちとら自分で金を稼いだことすらない男子高校生だぞ?
それだというのに、両親不在の時に連れ込んだ身元不明の金髪美少女を、孕ませた?
…乾いた笑いしか出てこない。
「……だいじょーぶですか?金出さん」
「……あぁ、大丈夫じゃない…けど」
一度言葉を切り、覚悟を決める。
まさかあの時の一回がクリティカルになるとは思わなかったが、そうする選択をしたのは元々俺だ。
―――なら、俺のすべきことは一つだろう。
「――責任はとる。俺なんかで良かったら、その子と一緒に家族になって欲しい」
「―――はいっ!」
平素と変わらぬ笑顔を見せたショコラを見て、俺はどう親を説得しようかと頭を働かせるのだった。