まあどっかで見たことあるような設定だけどw
※本作はオリジナルSFを主軸とし、
一部に既存作品の世界観・キャラクターが
登場します。権利は各原作者に帰属します。
EP01革命の門出
白い天井が、ぼやけた視界の奥で揺れていた。
綾音「うぅん……ここは、どこ……?」
硬いベッド。
消毒薬と金属の匂い。
体を起こそうとした瞬間、手首に伝わる微かな拘束感に眉をひそめる。
隣のベッドから、落ち着いた声が聞こえた。
カエデ「外部環境を確認。
ここは収容施設の可能性が高いです」
視線を向けると、青髪のアンドロイドが上体を起こしていた。
目は冷静だが、その視線は常に周囲を警戒している。
そこへ、鉄扉が開く音。
???「おい、そこの新入り」
低く、荒れた声。
綾音とカエデは同時に振り向いた。
綾音 カエデ「?」
???「あんただよ。
青髪のピースギア製アンドロイドと、黒髪のそっち」
数人の男女が柵越しに立っていた。
先頭の男は、傷だらけの腕を組み、にやりと笑う。
ミハエル「俺はミハエル=メンショブ。
これからよろしくな」
ミハエル「で、こいつらが仲間だ。
モーリス・L・キャリック、エミリ・イラストリアス、ベラ・エクストル」
モーリス、エミリ、ベラ「よろしくな」
軽い挨拶。
だが、視線は鋭い。
生き残るための計算が、常に目の奥で動いている。
綾音「こちらこそ、よろしくお願いします。
私の名前は茨波綾音です」
綾音「それで、こちらが最上カエデ」
カエデ「最上カエデ。
補助型アンドロイドです」
ミハエルは顎に手を当て、二人を値踏みするように眺めた。
ミハエル「あんたら、シュツェの人間だろ。
名前も雰囲気も、いかにもだ」
一瞬、綾音の胸が跳ねる。
その直後、耳元で微かなノイズ。
カエデの体内通信だ。
カエデ「否定せず、話を合わせてください」
綾音は小さく息を整えた。
綾音「ええ。
それより、どうして私たちは捕まっているんですか?」
ミハエルは肩をすくめる。
ミハエル「覚えてねえのか。
たまにあるんだよ。
無力化するとき、相手がAIだと加減ミスって記憶飛ばすこと」
ミハエル「そっちのアンドロイドも、消されたか?」
カエデ「該当する記憶データは存在しません」
ミハエル「へえ……。
見かけによらず、相当でかい事件の容疑者だったみたいだな」
その言葉に、綾音の背筋が冷える。
何をしたのか。
いや、何をしたことにされているのか。
ミハエル「次の運動時間だ。
用がある。
総合グラウンドに来い」
綾音「……わかりました」
視線を巡らせると、天井付近を不規則に動く球体が目に入った。
綾音「さっきから、あのロボットは?」
ミハエル「ああ。
監視ロボットだ。
ついでにギルティ値も測ってる」
綾音「ギルティ……」
ミハエル「罪悪感、攻撃衝動、反抗心。
数値化して、危険度を管理する仕組みだ」
綾音「なるほど」
納得したふりをしながら、綾音は胸の奥で不安を膨らませた。
翌日。
運動時間。
広い総合グラウンドに、収容者たちが散らばる。
ミハエルは自然な動きで近づいてきた。
ミハエル「なあ。
このあと脱獄するんだが、一緒に来るか?」
一瞬、時間が止まったように感じた。
綾音「……ええ。
カエデも一緒なら」
ミハエル「もちろんだ」
その直後。
爆音。
壁が内側から吹き飛び、粉塵が舞う。
黒いバンが突っ込み、次々と人影が乗り込んでいく。
ミハエル「さあ、無法地帯の始まりだ」
綾音「……ええ」
バンの中。
ミハエルが後部座席を指さす。
ミハエル「彼女たちはシュツェのギルティ支援特化特殊部隊。
渚マリエ、早川アリサ、森イズモだ」
アリサ、マリエ、イズモ「よろしく」
イズモ「あと数キロで、あなたたちの隠れ家よ」
マリエ「武器も弾も、山ほど用意してある」
その瞬間、急ブレーキ。
全員が前に投げ出される。
ミハエル「くそっ。
リブラのやつ、もうタウロス特殊部隊に支援要請してやがる」
前方には、道を塞ぐ巨大なトレーラー。
サイドに五門、フロントに三門のガトリング砲。
直後、銃撃。
弾幕がバンを引き裂く。
全員が飛び出し、地面に転がる。
綾音「みんな、大丈夫?」
ミハエル「君こそだ」
綾音「私は平気です」
アリサ「あー、来た来た。
私の愛機」
彼女の背後から現れたのは、一人乗りの近未来的装甲車だった。
マリエ「私たちが食い止める。
地図はカエデちゃんに送った。
案内は任せたわ」
カエデ「了解しました。
お気をつけて」
走り出した瞬間、警告音。
カエデ「伏せて」
次の瞬間、中型の二足歩行無人機が爆散する。
綾音「無人機、多いね」
ミハエル「ああ。
この国の保安の九割はAI兵器だからな」
銃声と爆音の中、彼らは闇へと走り出した。
白色光が均一に照らす管制室で、リブラはホログラム越しに収容区画を見下ろしていた。
収容施設第七ブロック。
政治犯、思想犯、危険度中以上の対象を隔離するために設計された区画だ。
天井カメラに映る黒髪の少女が、ゆっくりと目を覚ます。
リブラ「対象A、覚醒を確認」
隣のベッドでは、青髪のアンドロイドが同時に起き上がる。
挙動が早すぎる。
やはりピースギア製だ。
オペレーター「記憶遮断は完全なはずです」
リブラ「完全という言葉は信用していない」
少女が手首を見下ろし、拘束具に気づいた瞬間、心拍がわずかに上昇する。
恐怖。
混乱。
正常な反応だ。
だが問題は、アンドロイドのほうだった。
視線が一瞬で室内を走査し、監視カメラの死角を把握している。
リブラ「ギルティ値を注視しろ。
数値が跳ねたら即時鎮静」
オペレーター「了解」
そのとき、別画面に囚人グループが映る。
ミハエル=メンショブ。
脱獄常習者。
扇動能力が高く、他者を巻き込むタイプ。
リブラ「……またあいつか」
ミハエルが柵越しに声をかける。
対象AとB。
接触を許可した覚えはない。
オペレーター「遮断しますか?」
リブラ「いい。
観察を優先する」
ミハエルが名前を名乗り、仲間を紹介する。
無駄話に見えるが、情報の取捨選択が巧妙だ。
対象Aの反応。
一瞬の動揺。
そして、アンドロイドとの無言の同期。
リブラ「体内通信を使っているな」
オペレーター「検知できませんでした」
リブラ「それが問題だ」
翌日。
総合グラウンド。
リブラは高所の観測デッキから全体を見渡していた。
監視ロボットが上空を巡回し、ギルティ値をリアルタイムで取得する。
リブラ「対象A、B、ミハエル。
全員ギルティ値は基準内。
だが信用はするな」
ミハエルが距離を詰め、囁く。
脱獄の誘い。
リブラ「……来るぞ」
爆音。
壁面が内側から破壊される。
想定より早い。
オペレーター「外部支援車両を確認。
シュツェ系特殊部隊です」
リブラ「やはりか」
黒いバンが突入し、囚人を回収していく。
混乱。
だがリブラの思考は冷静だった。
リブラ「タウロス特殊部隊に支援要請。
迎撃ポイントを設定しろ」
数分後。
街道。
巨大トレーラーが進路を塞ぐ。
ガトリング砲が回転を始める。
リブラ「包囲完了。
逃走経路を遮断する」
次の瞬間、銃撃。
だが、対象は即座に車両を放棄した。
判断が早すʂい。
リブラ「……想定以上だ」
画面に映る少女が、仲間の無事を確認する。
恐怖の中でも、他者を気遣う余裕。
危険だ。
オペレーター「新型装甲車を確認。
アリサ=早川が搭乗しています」
リブラ「迎撃ドローン、投入」
中型二足歩行無人機が展開する。
だが次の瞬間、爆散。
アンドロイドの指示が正確すぎる。
リブラ「……最上カエデ」
その名を口にしたとき、リブラの背筋に微かな冷えが走った。
これは単なる脱獄ではない。
思想と技術を持ち込んだ侵入だ。
リブラ「追撃は継続する。
だが覚えておけ」
リブラ「彼らは、ただの囚人ではない」
銃声と爆音が遠ざかる。
闇の中へ消えていく影を、リブラは無言で見送った。