「相棒」   作:ダンちゃん1号

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とある儀式屋の備忘録 その①

 

「そういえば水樹は昔僕の事をお姉ちゃんって呼んでたよね。」

「やめてよ。…エリアルに出会うまでは本当の意味で一人だったから、勝手にそう呼んだだけだって。」

 

警備ロボットを倒した水樹たちは何となく過去を振り返っていた。そもそもエリアルからリチュアとガスタは戦争をやっていたと聞いていたのに、どうして二人だけ仲良くなったのか興味があったからだ。しかしエリアル曰くその話をするには今までの過去を全部振り返る必要があるようで。だからなるべく足早に長い通路を駆け抜けながらエリアルは過去の話をすることになったのだった。

 

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「へぇ…。ウィンダも呼ばれたんだ」

「はい…。でも戦争をほっぽり出してもいのかなって…。」

 

ウィンダ達は精霊界に住まう精霊で、デュエルモンスターズの精霊だ。だから人に求められればその姿を現すことだってある。それがたとえ戦争中だとしても、この世界から向こうのの世界に行くという事は非常に名誉な事とされた。何故なら、それだけの思い入れが自分達のカードにあるから。それだけ使い込んでくれたら精霊冥利に尽きるというものだ。

 

「…でもここで放り投げるのもなんか違うんだよね…。」

「確かに誰の元に現れるかは私達が選んで決めれるけど…。無視し続けたら痛い目見るよ?」

「そうですよね…。」

 

だがリーズの言う通りに自分が"誰の元へ行くか"はウィンダが自由に決める事が出来る。だから無視を決め込むことだって可能だし、実際ウィンダは一回無視を決め込もうとした。

だが、ウィンダはその願いを聞いてしまった。

 

「誰でもいいから一緒に居たい」

 

という余りにも純粋で、切実で、何一つ下心の無い願いを。そんな願いを自分に向けるなんて、相当に切羽詰まっているのか。だったらこの人の願いに導かれて別の世界へ行くのも悪くないだろうと思えた。

だが、この世界にもいろいろと心残りはある。

まずはリチュアとの戦争が始まる前にガスタの里を出ていった妹の安否についてだ。彼女はそれなりに実力も高いしなんなら、次の族長候補でもあったため流石にその辺で野たれ死んでいるなんてことはないだろうとウィンダは考えていた。便りが無いのは元気な証とも言うし、あっちの世界に行っている可能性だってある。だから、妹に関しては再会した時にきっちりと文句を言うと決めて。それでももう一つの心残りがウィンダが別の世界へ行く決心を中々につけさせなかった。

 

「エリアル…どこに行ったんだろう…。」

 

あれから一度も見ていない少女の名を呟くウィンダ。彼女の安否がどうしても気になってしまって中々世界を渡る決心が出来なかった。あれから一度も見ないのはおかしいとウィンダ自身が感じている。もしや自分を殺し損ねたことで何か罰でも受けてしまったのだろうか。

 

「戦場でも見て無いね。…流石にちょっと不安になって来た。」

 

流石のリーズも部族間で殺し合いはしないだろうと考えて、―――それでも部族間で殺し合ったのでは、という疑問は尽きないでいた。

身内間で殺し合ってくれたらくれたでこれから先が少し楽になる。

そうであればいいのに。そうであればよかったのに。リーズの心の中にはいつの間にか「涙を流すエリアル」の姿が見てもいないのにべったりと張り付いている。

 

「…泣いているエリアル…ねぇ。」

 

悩むウィンダを余所に、リーズもまた別の悩みを抱えてしまったのであった。

 

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「ここは…?」

「君が…だれ…?」

 

エリアルはあの後散々に罰せられたが命が奪われることは無かった。流石に命まで奪われそうであれば全力で抵抗したが流石にそんなことは無かったようだ。それでその後は集落に割り当てられた自分の部屋に帰ったところまでは覚えている。が、その後の記憶が一切ない。

目を開いたらここに居た。本当にここは何処なのだろうか。

エリアルはあたりを見回して観察する。目の前にはちょこんと座る少年が一人。周囲を見渡してもそこが植物質の素材でできた床―――確か畳という名前だったか。それと木の枠に紙が貼りつけられた扉があった。その奥からは何一つ視線を感じない。そもそも目の前の少年以外の気配を周囲から感じない。

 

「…君が僕を呼んだってことで良いのかな?」

「うん…、そうなるの、かな?」

「なんで疑問形なのさ…。」

 

目の前の少年は自身の眼前にいる自分の存在が余り信じられていないようだ。確かにカードに書いてあるイラストと同じ容姿の存在が急に現れたらびっくりするだろう。

それによく見れば少年の足元には少し汚れたカードがたくさん散らばっている。その名kには何枚かのリチュアの同胞たちや、自分カードの姿もあった。どうやら、彼は本当に自分のマスターになったらしい。どうやらそれを認めなければならないらしい。

 

「あー…、うん。君が僕を呼んだってことは間違いないみたいだ。」

「そうなの?僕が、お姉ちゃんを?」

 

こてんと首を傾げる自身のマスターは自分が何をしたか理解できていないようだ。単刀直入に言ってみてもそれがどれだけ重大な事か理解していないようだった。

 

「そう。僕の名前は"リチュア・エリアル"。ほら、このカードの―――精霊だよ。」

「カードの…精霊…?」

「あー…、うん。そこからかぁ…。」

 

しかも自分のカードを見せたうえで「これだよ」と言ってみても全く持って理解していないマスター。取り敢えずかみ砕いて、それこそジェル状くらいになるまでかみ砕いて説明してようやっと理解したようだ。

 

「ま、僕達"リチュア"を使ってくれれば君のお願いを叶えてあげるよ。ねぇ、君は僕に何を願ったの?」

 

だがそれでも。彼が自分を呼んだのならばそれにはそれ相応の理由があるはずだ。だって、彼は自分の事を知らないけれど、彼女はここに立っている。だから、彼の純粋であまりにも強い思いが何なのか、自分は何に魅せられて彼を選んだのか少しだけ知りたくなった。だからきいた。それだけなのに、少年の願いは余りにも切実にエリアルを打ち抜いた。

 

「お母さんやお父さんや、お兄ちゃんやお姉ちゃん―――僕は、「かぞく」がほしい。」

「かぞ、く?」

「うん。…みんな遠いところに行っちゃった。」

 

言うまでもない。目の前の少年の家族はきっと死んでしまったのだ。幼い彼をただ一人残して。

それに自分も孤児であるエリアルはその"家族が欲しい"という願いを一笑に付すことはできない。だってエリアルだってそう願った事はあるのだから。自分はノエリアに引き取られて家族を得たが、少年にはそんな存在さえいないらしい。だからこそだろうか。

 

(ああ…そっか。似てるんだ、彼と僕は。でも、きっと。)

 

自分はほんの少しだけ目の前の少年より恵まれていた。そう、感じてしまった。

でも、だからこそ。ほんの少しでも恵まれているからこそ、エリアルは少年に分け与えてあげられる。

 

「いいよ。君の願いを叶えてあげる。…君の名前は?」

「僕…?水樹っていうんだよ。」

「うん、分かった…。これから僕は君の相棒であり、君の家族だ。よろしくね、水樹。」

「ありがとう、エリアルお姉ちゃん!」

 

そう言って、彼は、水樹は微笑んだ。

 

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結局、ウィンダは願いに応える形でガスタの里を後にすることになった。

最初の純粋な願いに従って姿を現してみれば、小さい子供が大人に暴力を振るわれている真っ最中。確かにこれは誰かに一緒に居て欲しいなんて願いを持つわけだ、と感じながら二人の間に入った。

それは日常的に行われていたのか子供の方の体にはあたりかまわず青痣が出来ていた。

 

「…とんでもないタイミングで出てきちゃったみたいだね、コレ…。」

「だ…れ…?」

「君の相棒!」

 

それだけ言うとウィンダは向かってくる大人を蹴り飛ばす。鋭い蹴りはいとも容易く向かってくる人物を弾き飛ばした。

 

「いい?今、アイツは気絶…気を失ってる。その間にさっさとここから逃げちゃおうか!」

「え…?」

「立てる…?」

「う、うん…。」

 

その一撃をもって虐待を行っていた人物をのして、その間に虐待されていた少年の手を引いて家から逃げだす。とんだ出会いであったせいかすっかり自己紹介を行うのを忘れてしまっていた。

 

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「家族…家族かぁ…。」

 

エリアルはしみじみと呟く。エリアルにとっても家族とは特別な意味を持つ言葉だ。氷結界の頃、内紛に巻き込まれて家族を失って、そしてノエリアに拾われて彼女の娘になった。そして次は目の前の天涯孤独の少年の家族になった。本当に奇妙な家族関係だ、と自分で笑いそうになってしまう。

 

「どうしたの…?」

「ん?これからの生活基盤をどうしようかなって思ってさ…。」

「せーかつきばん?」

「そう…。お金だとか水だとか、食べ物だとか。生活するのに使うもの、だね。」

 

エリアルはこの家の状況を良く分かっていない。それでも子供一人で送ることができる生活など知れている。彼の体は瘦せ細っていて肋骨が浮き出ていた。酷い、を通り越して言葉が出てこない。

 

「ねえ、水樹。一体何食べてた?」

「えっとね…。あれ。」

 

彼が指さす方を見ればそこにあったのは機能性栄養食品、いわゆるエナジーバーというやつだった。しかもそんなに量もない。恐らくは基本的に飢えは水で耐えてどうしようもなくなった時だけエナジーバーをかじっていたんだろう。それ以外は基本的に寝て体力の温存に努めていたようだ。それは余りにも生活感が無いこの家からも見て取れた。

 

「学校には行っていないの?」

「うん…。あまり行きたくない。みんな僕の事を汚いってバカにしてくるんだ…。」

「よし、その悪ガキどもはお姉ちゃんがシバいてあげよう。」

 

どうやら少年は学校では苛められているらしい。まぁ、確かに親居ないし、この様子ではお風呂にも入っていなさそうなので絶好の的と言ったらそうなのだが。

 

「ほら、おいで。僕が体を洗ってあげる。」

「ん。ありがとう。お姉ちゃん。」

 

そうしてエリアルと少年は奇妙で歪でそれでも確かな関係を築いていく。

だが、エリアルの頭の片隅にはウィンダの顔がいつも残っていた。

まだまだ二人は出会わない。二人のマスターが一堂に会するのはもう少し先の話。




登場人物紹介

・エリアル
寝てたらいつの間にか来ちゃった人。幼い水樹にシンパシーを感じた

・水樹
幼い。事故で両親は他界している

・ウィンダ
エリアルを探しに人間の世界に来たら目の前で虐待が行われてた

・少年
多分ここまで読んだら誰だか分かると思う。

唐 突 な 過 去 編 エ リ ア ル サ イ ド
というわけでエリアルの目線からの過去でした。
というかウィンダ目線の備忘録を入れちゃうと完全にネタバレまっしぐらになっちゃうんですよね。
次回もお楽しみに!

水樹君のデッキ強化

  • ネクロス
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