「…やあ。」
「星神…創ッ…!」
霊使達は颯人の元へと辿り着く前の最大の障害であろう、人物―――星神創とついに対峙した。
「よく来たね。ようこそ地獄の一丁目へ。―――私の計画を止められるかな?」
その言葉は嫌でも霊使の耳に残る。自分達を結び付けた
「貴方の目的は、なんだ!」
そんな声に怯まず声を上げているのはエリアルだ。彼女は憎悪の視線を向けられたり、憎悪のこもった声を掛けられるのが常だったせいか、その言葉に秘められた憎悪の深さに物怖じしなかったのだろう。だが、今このタイミングではその一言がやけに頼もしかった。
「私の目的…ねぇ。別に教えて減るものじゃないし教えてもいいよ?」
「ならさっさと話せ!」
エリアルは怒りに満ちた表情で創へと迫っていく。それでも創は一切目を逸らさずにエリアルの事を見ていた。その目に籠っているのは相も変わらず憎悪だ。むしろ、エリアルが前に出てきてからというもの、その目の中の憎悪が少しずつ増している―――霊使は創の目を見て、そんな風に感じていた。
そして、エリアルとの距離が十数センチまで迫ったところで創は自身の目的を告げる。
「…この世界の歪みを消すんだよ。」
「…は?」
「歪みを…消す?」
霊使が復唱したその目的が事実であるかのように頷く創。少なくとも本気で言っているらしい。だが、この世界における歪みとは一体何なのだろうか。―――いや、分かってはいるが、それを認めたくないだけだ。霊使やその他の面々がそれを言ってしまえばこれまで気づいてきた精霊との信頼関係にひびが入ると分かっていたから。
それでも、創がそれより先をを言わないため、彼の目的は自分で言い当てるしかない。
そして、その答えはとっくのとうに霊使の中では出ていた。
「この世界の歪み―――それは…デュエルモンスターズの事だな?」
「その通り。この世界は何でもかんでも
歪み―――それはデュエルモンスターズ。霊使が出したその答えに創は満足そうに頷いた。デュエルモンスターズが強ければなんだって手に入る。逆に
「私はそんな人たちを救いたい。身勝手な願いかもしれないが、それでも、救いたいんだ。たとえどんな犠牲を払ったとしても、私は…私
この世界の歪みを取り除きたいから、創星神の復活を望んだ創。確かにデュエルモンスターズが消えればデュエルが原因で不幸になる人はいなくなるだろう。
ならデュエルモンスターズをこの世界から消してしまえばいい―――とはならない。
「…そんな理由で消すのか。」
「十分な理由だろう。それとも何か?不幸になっている人を救う手段が他にあると?」
それを分かっているから、霊使は創の言葉を認められない。創の目的を認められない。確かに、この歪な形の社会の影で泣いている人は多い。かつて自分もそうだったからそれはよく分かる。だが、それは社会が原因であって決してデュエルモンスターズが原因ではない、と霊使は思っているからだ。
ならその社会を変えるにはどうすればいいのか。―――そんなのはこれまでの自分が証明してくれている。
「俺達で変えていくんだ…この世界を!
「綺麗事だね。」
創はその言葉を切り捨てたが、別にそんな事はどうだっていい。ただ考えが相容れなかっただけなのだ。もう、自分の考えに迷いを持たないと決めたから。だから霊使は自分の考えを創に吐き出す。
「綺麗事で上等だ!何も行動せずに迷わず間違った結論を出したあんたと違って!」
「何も行動していない…だと!?」
「そうだ!デュエルモンスターズに憎悪を抱いてばかりいて、デュエルモンスターズの悪いところばかり見て…!それで挙句の果てに消す!?ふざけてるんじゃねぇっ!」
霊使はのどが張り裂けんばかりに叫ぶ。言葉の節々が荒くなっていて霊使の激昂っぷりをまざまざと見せられているようだった。
霊使の本気の怒気に始めて触れた水樹や奈楽は思わず息をするのを忘れていた。
「それが、事実だろうが!現実だろうが!その声に一体どれだけの人が耳を貸した!?誰も聞いちゃくれない!」
「たった一回で諦めてんじゃねぇよ!」
互いの意見のぶつけ合いはとっくにクライマックスを迎えている。互いの意見の矛盾点を目掛けて言葉の弾は打ち出される。それに対抗するように新しい言葉を紡いで、それをまた相手にぶつける。それは相容れない相手だからこそ、それでもそれぞれの願いが本気だからこそ、起きている光景だった。
しかし、その言葉の応酬は霊使の言葉で終わることになる。
「じゃあアンタは!
「それ、は…!」
創はその言葉を受けて急に言葉が淀み始めた。どうやら、彼の中でのデュエルモンスターズとは憎むべき対象であった。が、それでもそれなりにいい出会いを導いてくれたらしい。
「言い淀むってことは心当たりがるんだろう!逃げてんじゃねぇ!」
「逃げてなどいない!」
それでも創も叫び続ける。出会い―――それはデュエルモンスターズに愛されたからこそ生まれた出会いだ。結局、デュエルモンスターズに愛されて無い物にはそんなまともな出会いもやってはこない。それこそ、帆夏のように。
「恵まれた君がつらつらとッ…!」
確かに創にも幸せな出会いはあったのだろう。だが、彼の心はそれ以上の憎悪に塗りつぶされている。これではまともな判断のしようがない。
「じゃあ!あんたは恵まれていなかったとでも!?」
「デュエルモンスターズに愛されている君達とは違ってね!」
とうとう、嫉妬心やそれ以上に「デュエルモンスターズ」という一つの社会に愛されている者への憎悪を露わにした。
霊使からしてみれば「愛されている」ではなくデュエルモンスターズが「応えてくれた」というのが正しいが。だからこそ、創の憎悪の対象になっていると考えると、ただただ悲しい。
「妹もそうだった!
「…だからって…!」
それでも理由のある憎悪なぶんましなところもあるのだろう。もし理由もなくただただ憎いだけならば本当に救いようがない。理由のある憎悪はその理由がはっきりしているぶん復讐なりなんなりして終わりだ。
だが、彼の場合、その憎悪の対象が広すぎる。デュエルモンスターズのせいで大切な人を失った。だからこそ、あそこまで深い憎悪を抱いている。
「デュエルモンスターズが大切な人間があんたに憎悪を向けてもいいのかよ!?」
「
もはやそれは憎悪を通り越した執念といっても過言ではないだろう。憎しみを煽られて誰かに利用されていたとしてもあそこまでの固い意思を持つことはない。だから、今の言葉は全て創自身の言葉だ。
奈楽が愛したデュエルモンスターズを創は憎んだ。
だから、もう、なにかを言うことはなかった。
何かを語る必要もなかった。
これから行われるのは彼が最も憎んだ行為そのものだ。それでも、先に進むにはそれしかない。
「互いの意見を通すなら分かっているよね…父さん。」
「分かっているとも。私が最も憎む行為を行えばいいのだろう?」
そう言うと創はデュエルディスクを構えた。自分の意地を通すには自分の憎む行為をしなくてはならないとはなんという皮肉だろうか。
「俺が、やるよ。二人は先に。」
二人は霊使の言葉に頷くと前へと走り出す。
言葉にしない奈楽を見て、創は少しだけ悲しげに微笑んだ。
それを正面から見た霊使は彼が何を考えているか―――それを考えることをやめた。
「さあ、始めようか。」
「……ああ。」
デュエルモンスターズで多くを失ったもの同士が向かい合う。それでも、二人の中に渦巻く思いは全くの逆だった。
同じもので多くを失い、その心を憎悪に染めた者と、多くを失いながら、その心に希望をともし続けた者。二人の心は今、ぶつかる。
今回の登場人物紹介は省略です。
次回もお楽しみに!
水樹君のデッキ強化
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