「相棒」   作:ダンちゃん1号

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偉大なる高橋和希先生のご冥福をお祈りいたします


「前へ進め!」

デュエルで全てを失ってその心を憎悪に染めた星神創と、デュエルで全てを失ってなお、デュエルに希望を持ち続けた四遊霊使が今、向かい合った。

 

「俺のターン…、手札からフィールド魔法"大霊術―「一輪」"発動!」

 

先攻は霊使だ。霊使のデッキはいつもの如く【リンク霊使い】。霊使い達やその使い魔たちをフィールド上に並べ、強力な切り札である"閉ザサレシ世界ノ冥神(サロス=エレス・クルヌギアス)"の召喚を狙うデッキだ。もちろんそこに至るまでの―――所謂展開途中で敵が逝ってしまう事もあるが、それはご愛嬌というやつである。

 

「一ターンに一度、強制的にモンスター効果を無効にするカード…!」

「割と便利なんだ、コレ。」

 

これで手札誘発という後顧の憂いは断った。後は思う存分デッキをぶん回すだけだ。そう願えばウィン達が、デッキが答えてくれると霊使は知っているから。

 

「取り敢えず永続魔法"憑依覚醒"を発動!そして俺は"憑依装着―ウィン"を召喚。…"憑依覚醒"の効果でデッキから一枚ドロー。」

 

今引いたカードを確認する霊使。引いたカードは今まで出番があまりなかったカードだ。それでも強力なカードであることには変わりはない。

 

「自分フィールド上に魔法使い族モンスターが居る時、このカードは手札から特殊召喚できる!というわけで俺は"デーモン・ビーバー"を特殊召喚!」

 

霊使のフィールドに現れたのはなんかいかにも悪魔っぽい生物の頭蓋骨を持ったムササビのような生物―――"デーモン・イーター"。これでもアウスにドングリを与えられて喜んでいるデーモン・ビーバー。これでも昔はドングリを投げつけて攻撃するという割とかわいらしい生態を持っていたらしい。―――今では見る影もないくらいに禍禍しくなってしまっているが。

それでも彼―――デーモン・イーターの持つアウスへの忠誠心は本物だ。それこそ、主を呼ぶために自身を犠牲にしてもいいと思うくらいには。

 

「よし…現れろ!地霊導くサーキット!」

 

ならば、デーモン・イーターの意地に応えるのが霊使が為すべきことだ。

だから、霊使はウィンと示し合わせたようにその言葉を叫んだのだ。

 

「リンクモンスター…!?バカな、霊使いにリンクモンスターは存在しないはずじゃ…!?」

「残念だけど、居るんだなぁ、これが!―――召喚条件は地属性を含むモンスター二体!俺は"憑依装着―ウィン"と"デーモン・イーター"の二体をリンクマーカーにセット!」

 

別にリンクモンスターと化したのはウィンだけじゃない。かつてダルクを使ったように、霊使と共にあることを決めた霊使い達は全員リンクモンスターとしての新たな力に目覚めている。

それを"選ばれた"ととるか、命を懸けて"つかみ取った"とするかは本人たちが決める事だが。

 

「サーキットコンバイン!現れろ!LINK-2"崔嵬の地霊使いアウス"!」

 

そうしてフィールド上に現れたのは新たな―――人形っぽい四足歩行の使い魔を連れたアウス。"崔嵬"とは山において岩や石がゴロゴロしていて険しいという意味である。現に彼女は今までの物とは明らかに雰囲気が違っていた。

 

「後は手札からカードを二枚伏せてターンエンド…。」

 

霊使 LP8000 手札0枚

EXモンスターゾーン   崔嵬の地霊使いアウス (リンクマーカー 右下、左下)

メインモンスターゾーン 無し   

フィールド魔法     大霊術―「一輪」

魔法・罠ゾーン     伏せ×2

 

手札は全て使い切ったがそれでも次のターンのための妨害札を何枚か立てることができた。更にアウスのリンク素材にしたウィンが墓地に眠っていることで必然的に"憑依連携"の効果の発動条件を満たしている。従って最低でも"大霊術―「一輪」"による妨害と"憑依連携"による妨害の―――最低二妨害は行えるのだ。

流石に二回も妨害を備えておけば悲惨な目には合うまい、と考えて。霊使は創のデッキを見守る。

 

「私のターンだ…。ドロー…。私は"ふわんだりぃずと謎の地図"を発動させてもらうよ。そしてそのまま"ふわんだりぃずと謎の地図"の効果発動。」

「その効果発動に対して"憑依連携"を発動。墓地の"憑依装着―ウィン"を蘇生して"ふわんだりぃずと謎の地図"を破壊。これで"ふわんだりぃずと謎の地図"の効果は不発。その後"憑依覚醒"の効果でデッキから一枚ドロー。」

 

霊使 手札0枚→1枚

 

どうやら相手のデッキは"ふわんだりぃず"。通常召喚を連鎖させ続け最終的に強力な最上級モンスターを横に並べるデッキだったはずだ。だが、こう言うデッキタイプの弱点として、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というものが挙げられる。大体は発動する効果であり、それはつまり"大霊術―「一輪」"がぶっ刺さるという事でもある。

特に初動のモンスター効果で連鎖的に増やしていくようなデッキに対して"大霊術―「一輪」"は特効がある。

従って―――

 

「私は"ふわんだりぃず×ろびーな"を召喚…。効果発動。」

「自分フィールド上に守備力1500の魔法使い族モンスター…"憑依装着―ウィン"が存在するためその効果は無効に。」

「…カードをニ枚伏せてターンエンド。」

 

星神創 LP8000 手札2枚

 

フィールド   ふわんだりぃず×ろびーな

魔法・罠ゾーン 伏せ×2

 

このように初動を無効にしてしまえばいとも容易く相手のデッキは機能不全に陥るのだ。

これで霊使の勝利はほぼ確定的になった。あの伏せがよっぽど厄介なカードでもない限りは、だが。

確か【ふわんだりぃず】には特殊召喚を封じる罠カードもあったはずだが、そのカードの出番は永遠に来ることはなさそうだ。

何故なら、霊使のデッキは特殊召喚は初動を無理矢理こじ開けるために使うか、それか最後の詰めで使うかの二択だから。初動としての特殊召喚は最初の"崔嵬の地霊使いアウス"がそれにあたる。目的としては"憑依連携"の特殊召喚先を作るためだ。

そして詰めの特殊召喚が"閉サレシ世界ノ冥神(サロス=エレス・クルヌギアス)"のような強力なカードである。

しかしながら既に星神創は()()()()()。―――こう言っては悪いがこの【ふわんだりぃず】は元々が()()()()()()()。そんな妙な確信が霊使にはあった。だから彼自身の意志が無いデッキに負けるつもりは無いし、そもそも既に負ける要素もない。

 

「俺のターン…ドロー。俺は手札から魔法カード"妖精の伝姫(フェアリーテイル)"発動。…さらに手札から"憑依装着―ヒータ"を召喚。"憑依覚醒"の効果でデッキから一枚ドロー…。さらに"妖精の伝姫"の効果で手札の"憑依装着―エリア"を召喚。」

 

霊使のフィールドに一体ずつ現れる霊使い達。しかし彼女たちは全員が何とも言えない顔をしていた。そのデッキが星神創の物ではないと分かってしまったから。

これから自分達がするべきことも、しなきゃいけないことも全部分かっているから。

目の前の相手を救いたいと思うのに、相容れないと知っているから。

 

「バトル。―――俺は"憑依装着―エリア"で"ふわんだりぃず×ろびーな"を攻撃。」

「…罠発動。"聖なるバリア ミラーフォース"…ッ!」

「"憑依覚醒"の効果によって自分フィールド上の【霊使い】及び【憑依装着】モンスターは相手の効果では破壊されない。」

「…無茶苦茶すぎる…。」

 

"ふわんだりぃず×ろびーな"の攻撃力はわずか600―――それに対して、今の"憑依装着―エリア"の攻撃力は3050。ろびーなが逆立ちしたところで届く数値ではない。

エリアが少し勢いをつけた水球をろびーな達の近くに発射してやればそれに驚いて鳥たちは飛び去って行く。

勢いが付いた水しぶきが星神創の体を濡らした。

 

星神創 LP8000→5550

 

「終わりだ。―――"崔嵬の地霊使いアウス"と"憑依装着―ヒータ"でプレイヤーにダイレクトアタック。」

 

抵抗する方法の無い創は渾身の一撃を二回、その身に受けた。デュエルディスクから伝わる衝撃が創に"負けた"という事実だけを伝えていた。

 

「俺の、勝ちだ。」

 

星神創 LP5550→2500→0

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

一方、霊使に創を任せ颯人とウィンダの捜索に当たっていた奈楽と水樹。

 

「ここにも居ない…か。」

「二人は何処に居るんだろうね…。」

 

二人は未だに颯人とウィンダを見つけ出せずにいた。一本道ではあるのだが、如何せん扉が多い。

その一つ一つを確認しながら進んでいるせいで中々二人を見つけられないのだ。

 

「ねぇ、エリアル…今、何個の扉開けた?」

「13から先は数えていないよ。」

「なんでそんな半端な数で数えるのをやめたんですか…。」

 

13から先を数えていないというエリアルに容赦なくフレシアのツッコミが刺さる。

 

「…でも、ほら、もうすぐ終わりそうだよ。」

「…そうみたい、だね。」

 

それでもすでに終わりは見えていた。

少し行った先にある壁にひときわ大きな扉が設置されていたからだ。今いる位置からそこまでに何か偶然偶々扉は存在しない。

 

(ようやく助けられる…!)

 

それだけを胸にエリアルは駆け出す。そこに友が居るという奇妙な確信がエリアルにはあったから。

エリアルは鍵がそこにかかっていると仮定して自身の呪術で扉を破壊する。

 

「ウィンダ!」

「…エリアルゥ!?」

 

そしてその重厚そうな扉をあけ放った先には―――至って健康体そのものな二人がそこに居たのだった。

 

「わ…」

 

その姿を見て、エリアルは気が抜けたというかなんというか。自分が心配している中、呑気そうにしていたであろうウィンダを見て、大声で叫んだ。―――叫んでしまった。

 

「ウィンダのバッカヤロォーゥ!」

「理不尽!?」

 

とにもかくにもそんな緩い雰囲気で二人は再会することが出来たのである。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「…アンタは過去に囚われ過ぎだ、と俺は思う。」

 

下を向いたまま、動きを起こさない星神創に対して、霊使はそう言い放った。

 

「確かにデュエルモンスターズでアンタは多くを失ったんだろう。俺だってそうだったから、凄い分かる。」

「…君は、なぜそこまで強い…?」

 

星神創は四遊霊使と自分がどこか同じ―――デュエルモンスターズに多くを奪われた人間だと思っていた。だから分かり合えると思ったのだ。結果はこの様だったが。だが、だからこそ解せないのは何故四遊霊使が「デュエルモンスターズを嫌いにならなかったのか」だ。

 

「君は何故全てを失ってなお、決闘を愛せる…?」

「前を向いているから、じゃないか?」

「…は?」

「俺は過ぎた事はあまり気にしない主義なんだ。」

 

それだけ言うと霊使はその口を閉じてしまう。その言葉を聞いて星神創は余計に意味が分からなくなった。彼は自分の過去全てを気にしない、とでも言うのだろうか。それこそ、自分が犯した罪からだって目を背けると言っているようなものではないか。だからこそ、創は霊使に疑問をぶつけ続ける。

 

「…過ぎたことは、気にしない、というのは過ちもそうなのか。」

「まさか。間違いや過ちに巻き込んでしまった人は忘れることはしない。そこで、得たものも。それは憎しみや怒りといった別の感情でもそうだ。得るものはあるわけだからな」

 

だが、彼はそんな事をあっけらかんとした感じで答えて見せた。彼は決して過ちから目を逸らさないのではなく、見つめたうえでそこから学んだものを次へと持っていく。

だからこそ、彼は憎しみを乗り越えることができた。彼の中で蟠りはあるもののそれでもデュエルモンスターズに憎しみを抱いたりはしなかった。

 

だから、彼は強かったのだろう。彼はデュエルモンスターズを愛したからこそ、デュエルモンスターズに愛されたのだろう。

 

「どんなものを抱えていても前へ進むしかない。前へ進め!星神創!アンタはそれができる人だ!」

「言ってくれる…。」

 

負けたはずなのに、自分の思いを真正面から否定されたのにどうしてこんなに胸がすく思いなのだろうか。―――もしかしたら、自分はこの計画を誰かに否定してほしかったのかもしれない。

そうやって、誰かの手を借りてほんの少しでも憎しみから解放されたかったのかもしれない。

 

「君は強いな、本当に…。私の負けだよ。」

 

それだけ言うと創は地面に倒れこんでしまった。そのまま首で霊使にこの先に行くように促す。

 

「奈楽には迷惑かけたとでも伝えておいてくれ。」

「それはアンタが伝えるべきことだと思うけど?」

「それもそうだね。―――なら一緒に行こうか、英雄君。」

 

自身の計画を打ち砕いた人物を英雄と呼ぶのは何というかこそばゆかったけれど、これで全てから解放される。

ようやく何かを憎み続ける日々から解放される。

星神創は初めてあの日から一歩前進できた、そんな気がした。




登場人物紹介

・四遊霊使
いろんなものを背負ってるけどその重荷に負けない人

・星神創
一度は重荷に押しつぶされたけれどもう一度立ち上がった人。彼は多分そう簡単には折れないだろう。

さてさてこの作品も次章で一部最終章となります。長かった…。
というわけで、今章もあとわずかですがモンハンライズサンブレイクが楽しすぎるので次回投降がちょっと遅れるかもしれません。

水樹君のデッキ強化

  • ネクロス
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