「相棒」   作:ダンちゃん1号

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終章:これが俺達の
失意の底で


友人を、颯人を、ウィンダを助ける事が出来なかった。撤退している霊使達の間にはそんな無念のせいか、会話らしい会話は一つもなかった。

 

「…すまない。」

「霊使が謝る事じゃないよ…。」

 

たった一言。二人を残しての撤退を決断した霊使の謝罪の声以外は、誰も言葉を発しなかった。それだけ、目の前で死に行く大切な人を止められず、守れなかった自分達が不甲斐ないのだ。もうどうしようもない、というのは撤退を決めた時点で分かっていて、ただそれを認めたくない―――認めることができないだけ。

認めたくないのは自分達の不甲斐なさを認めたくないだけで。結局、認めたくない現実を見ない様にして心を守る―――自分達はまだ子供だ。力もなくて、権力もなくて、たった二人の友人も救う事が出来ない力のないクソガキだ。

何処まで行っても自分達は「守られる側」でしかなかったのだ。

 

(本当に、颯人はすごい。俺達にできなかった選択を颯人はやってのけた。)

 

だが、霊使達はいつまでもただ「守られる側」に甘んじるつもりはない。何故なら、それは自分達を守ってくれた颯人の事を忘れるという事に等しいのだ。きっと彼は後の事を自分達に託したからこそあそこに―――死地に残った。ならその託された物を持って「次」へと向かうのが託された自分達の役目だ。

 

「…ここまでくれば大丈夫か…?」

「そう、みたいだね…。」

 

取り敢えずは安全地帯まで走り切れたようだ。相も変わらず霊使の家が一番近いため、とりあえずは一旦そこに身を隠すことになった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

『悪い、失敗した。―――俺の家で全部話す。』

 

深夜にスマホがメッセージの受信を告げた。

受信画面に映し出された文字にそのスマホの持ち主―――九条克喜は目を見開く。

克喜は自身の目の前にある機械の映し出すメッセージが本当だとは認めたくなかった。だがいくら目をこすってみても目の前にある文字の羅列は一文字たりとも変わらない。

 

『どういうことだよ!?』

『話せば長くなるが…俺達の油断が招いた事だ。』

 

その二言だけで克喜は飛び起きる。眠気なんて吹っ飛んでしまった。どうやらその行動によって大きな音が立ってしまったらしく、ハイネが慌てて階段を駆け上がってくる足音が聞こえてくる。

 

「何があったんですか、克喜!?」

「なんか良く分からないが…失敗したらしい。」

「…何でですか!?」

「それを今から聞きに行くんだ…。本当に何があった?」

 

部屋に飛び込んできたハイネに克喜は今の状況を簡潔に伝えすぐさま霊使宅へと向かう事にした。

それ位しかできることは無かったし、それ以外の事をしようとは思わなかった。

それだけ霊使達の失敗が信じられなかったし、信じる事が出来なかった。

 

(克喜…。)

 

焦ったかのように、弾かれたかのように動き始める克喜に、ハイネも触発されてすぐに動き始める。願わくば悪い夢であってほしいと願いながらもそれがかなわないことも知っているから。

今生きているのは目の逸らしようのない現実。

どうしようもなく、それが事実であることを認めざるを得なかった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

そして今、霊使の家に当事者である水樹、奈楽をはじめ、いつもの面々が揃った。―――颯人とウィンダを除いて、だが。今この場にその二人が居ないという意味をここに居る全員は理解している。

 

『考えうる最悪の展開になってしまった』

 

ということを。経緯はどうあれ、世界を丸々作ったとされる神様が復活してしまった。しかもそれを従えているのは邪悪な事で有名な四道一味である。あんな悪意のある相手が創星神の力を望むがままに振るったらまず間違いなく出来上がるのはディストピアだ。

それも今以上の、弱肉強食のみを是としたとんでもないディストピアだ。

そして、そんな世界の礎にあの二人はなってしまったという事になる。

 

「…それで、…風見颯人は…俺達を逃すための犠牲になった。…助けられなかった。」

 

霊使もそのことは分かっているため、ただ謝罪の言葉しか口に出さなかった。―――出せなかった。そして、霊使は続けて語る。あの地下はどういう訳か別世界―――精霊界の秘境の地であるミストバレーと繋がっていた事。その事を分かっていたかのように四道が奇襲をかけ、一瞬のうちに復活の儀式を行ってしまった事があげられた。本来ならミストバレーに吹く神の風が必要だったのに、この世界と繋がったせいか、それが無くても復活したこと―――これはこっちの世界とつなげたために起きた「バグ」みたいなものだという事も。その上で恐らくは完全に彼の存在が復活したという事も。

途中からはエリアルの推測も混じりながらも話が進む。それでも前向きな言葉は一言も出てこない。それもそうだろう。特に救出に動いた三人はその死に様を目の前で見ているのと同義なのだから。

霊使達が話を終えたことで再び気まずい沈黙が周囲を満たす。

 

「…なぁ、一つ聞いていいか?」

「…何だ?」

 

思わずといった感じで克喜が霊使に質問する。

 

「まさかとは思うが…『自分の所為で救えなかった』なんて思ってるんじゃないよな?」

「…いや、実質的に俺のせいだ。あそこでさっさと撤退してればこんな事にはならなかったんだ。四道の奇襲に気づかず、二人をみすみす死なせることもなかった…。」

 

霊使の懺悔のような言葉を聞き、思わず克喜は頭を抱えそうになってしまう。今は動かなければならないのに、どうしてうじうじと頭を抱えているんだ。思わずそう叫びたくなる。確かに目の前で友人が実質的な死を迎えたせいでそこまで気持ちの整理がついていないのだろう。話を聞く限りではそうだとしか思えなかった。

何故なら、彼らの歓談中―――最も気が緩んだ一瞬を狙って今回の事に及んだのだから。つまり、四道という外道共は少年を―――霊使を傷つけるだけの目的で今回、二人を狙った可能性だってある。

ただ、四道はウィンダの代用品としてウィンを狙っていた節があり、今回偶々霊使達が隙を見せてしまったという事も考えられるが。

とにもかくにも九条克喜にとっての悪は一番気が緩むタイミングを狙った四道としか言いようがない。いくら手練れの決闘者とはいえ心はまだ子供だ。

安心できるタイミングでどこか警戒心が薄れてしまったとしてもそれは誰にも攻めることはできない。

だから、何一つ、というわけでは無いが今回の件でおおよそ悪いのは四道の方だ。故に、霊使達がそこまで思いつめる必要もない。

 

「…たらればを言っててもしょうがないだろ。…今はこれから先を考えねぇと…。」

「…そう、だな…。」

 

だがそれでも霊使は背負ってしまう。二人の―――否、三人の死を目の前で見たからこそ今、彼は無力感に苛まれている。

 

「なあ、霊使…。お前はどうしたい?」

「どうしたい、って…そりゃ、創星神を止めるに決まってるだろ。出来れば四道を斃すのが手っ取り早いがそれ以上にあいつらを星の神様が守ってるんだ。だったら先にそっちを叩くしかない。」

「…そうだな。―――戦術的な面じゃなくて、この戦いが終わったら、どうしたいだ。」

「早くないか?…やっぱ、あの二人に一生償い続けるんだろうな。」

 

その言葉に克喜は首を振るう。未だに周りの仲間は口を開こうともしない。友人が死んだといわれればその反応も致し方なしであるが。出来れば克喜だって大声上げて泣き叫びたいし、喚き散らしたい。何も思わないわけじゃないし、そんな薄情な人間になったつもりもない。

だからこそ、克喜はそれの思いを全て無視した。

こんな状態ではきっとまともに戦う選択肢なんて取れないし、よしんば戦って勝ったとしてもその償いが逝った二人にどう捉えられるのかさえ理解していない。

 

「償いってのは、死ぬって意味じゃないよな?」

「…そうだ。俺の命一つ分で良いかどうかは分からないけど。」

「…そうか。それがお前の答えなら―――!」

 

それでも霊使は償うといったのだ。霊使達は少なくとも三人の犠牲の上に生きていて、でもその「償い」は霊使達を逃した二人の意志や、斃れてしまったウィンダの意志をも裏切る行為なのだ。

 

「俺はこうするまでだッ!」

「ぐあッ!?」

 

故によりにもよってその三人に助けられた霊使がその命で償うなんて言ったから、克喜は霊使はぶん殴った。

それはもう、物凄い勢いでぶん殴った。霊使は力を抜いていたせいかきりもみ開店をしながら吹っ飛んでいく。

克喜は勢いよく壁に叩きつけられてせき込む霊使の胸倉を掴むと霊使と目線を合わせた。

 

「お前は生きなきゃいかねーんだ。」

「…どうしてだ?俺が殺したようなものなのに…」

「いいか、()()()()()()()。お前じゃない。…それにお前はせっかく繋いでもらった命を無駄にするつもりか?」

「……。」

「いいか、殿を務めた二人はお前なら託せるって思ったんだろ?だからお前を、お前達を逃がした。だが、お前は今、その命を捨てようとしている。…それがあの二人に対する裏切り以外の何物でもないとどうしてわからない!」

 

そうだ、コレは結局霊使が託された物を、彼は償いと言い張って投げ捨てようとしているだけ。それを裏切りと言わずに何というのか。

 

「じゃあ、俺はあの三人にどうやって詫びればいい!?どうすればいいんだ!?」

「知るかよ!」

「―――私が答えるよ。」

 

生憎だが、克喜はその答えを持ち合わせていない。きっとそれを示せるのは真の意味での霊使の相棒であるウィンだけだ。だから後はウィンにすべてを任せることにした。




登場人物紹介

・四遊霊使
ナーバス霊使くん。自分の判断ミスで三人死なせてしまったのでそれはもうとんでもないことになっている。背負いすぎるなと言ったが、コレは一人分でも過積載れべるではなかろうか。
「答えてみろルドガー!」

・九条克喜
今作の友情コンビ。彼ではナーバス霊使をもとに戻せないが―――


というわけで鬱展開且つ急展開が続きます。…どうしてこうなった?
というわけで気分を変えて間章(1.5部)新キャラアンケートを取ります。どんな人かはざっくり活動報告にまとめるので、読んで決めてくれてもいいし、即決でも構いません。

次回もお楽しみに

水樹君のデッキ強化

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