ちなみにいつもの如くネタバレ注意です。じつはこれ終章の最初の話のつもりだったんですがそのまま流れるように最終決戦に入った方が明らかに良さそうなので没になりました。丁度テーマも夏休みっぽい幽霊なので。
ちょっと古めの木造の一軒家の前に一組の男女が立っていた。一人は濡れるような黒髪を短く切りそろえていて、その眼元は少し吊り上がっていて強気な印象を与える少年であった。もう一人は緑色の髪を後頭部でひとまとめにして、白いシャツにミニスカート、その上から上着を羽織っている、顔にまだあどけなさを残した少女だった。少年の名は四遊霊使、少女の名はウィン。今二人が居る町で最も熱いカップルとして有名な二人である。
「…ほーん、ここが…。」
「…うん、うわさの屋敷…。」
そんなウィンと霊使は今、「幽霊が出る」と巷で噂の幽霊屋敷にやってきていた。何でもここには少女の霊が居てその姿を見ると呪われるだとかなんとか。とにかく精霊といういかにもオカルトチックな存在が居る以上、霊使はその存在をどうしても観たくなったのだった。
「…さて、とじゃあ踏み込んでみますか!」
「ほ…ほんとに大丈夫?」
幽霊はぶん殴っても倒せないが、逆に言えばこちらからも物理的な危害を加えられる心配は少ない。―――ポルターガイストとかであれば話は別だが。少なくともこの屋敷でけがをしたという報告はないため、そんな事は起こりえないだろうが。
「ねえ、霊使…。手を、離さないでね?」
「…ああ。」
そんな風に怖がるウィンをなだめながら、霊使はウィンの右手を握る。ウィンの心地よい体温を感じながら、霊使は幽霊屋敷へと足を踏み入れるのだった。
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「…幽霊なんているわけないよ?」
「精霊は居るのに?」
事の始まりはこんな会話だったように思う。とにかく、ウィンが幽霊はいないと言い張り、それでいかにもオカルトチックな自分達の存在を指摘されて、じゃあ確認してみようという話になったのだ。
ちなみにそういう情報は大方ダルクが集めて来る。闇霊というイメージが強いせいか頻繁にそう言った負うのがダルクの耳に入ってくるのだと本人はぼやいていた
その中には精霊がらみの内容もあるので、そういったものは霊使が対処することになっている。
この世界は創星神復活の影響か、精霊が多く迷い込むようになった。それに最近ではこちらの世界で生まれた精霊というのも存在しているらしい。
「…とにかく、だ。もしそれが幽霊にしろ、精霊にしろ、ダルクの話を聞く限りは俺達がいったほうが良さそうだな。」
「そうしてくれると助かる。」
ダルクは何かを紙に書き留めると二つ折りにして霊使に投げ渡した。霊使はその紙を二本の指で器用に受け取る。
「ここに行けってことか?」
「ああ。所有者さんから許可は貰っている。取り敢えず幽霊騒ぎが落ち着かないと土地を売りに出せないらしい。」
「ああ…そういう。」
「ああ、勘違いしてそうだから言っておくけれどもうその土地は誰も居ないから管理する必要もなくなったらしい。」
「だから売りに出すと?」
「そういうことらしい、な。」
ダルクは小さくため息を吐いて肩をすくめた。
「…俺達は何でも屋じゃないんだけどなぁ。」
幽霊なんて門外漢なのにそんな依頼をするという事はもしかしたらもしかするのかもしれないが―――
「なんもかんもわっかんないや」
「思考を放り投げるな。」
とりあえずは状況を見て臨機応変に対応するということで落ち着いた。
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ぎぃ、と。屋敷の中に足を踏み入れた途端に、そんな音がした。
「…まさか。」
そう思いつつ背後を振り返るとそこには入った時と何ら変わらない扉の姿があった。大方床が軋んだ音だったのだろう。
「ほら、ウィン。行かなきゃ終わらないぞ?」
「もう、ホントに強引な人。」
「そいつはどうも。」
ウィンのボヤキに軽い言葉で返す霊使。お互いの性格は今までの人生でよく理解しているのでこういった軽口はもはや日常の物になっていた。
「さて、と。こういう屋敷にはだいたい外宇宙から来た何かが潜んでるっての言うのがお決まりではあるんだが…。」
「それはクトゥルー的な奴でしょ?」
こういったやり取りをしていれば自然と恐怖は減るものだ。家に入る前は震えていたウィンの脚はしっかりと力が入っているように見える。
「さて、と。行くか!」
「うん。」
そうして二人は片手にで互いの手を握り、もう片方の手で懐中電灯を持って屋敷の探索を開始した。
「ここが玄関ホールで、…えーと、この家は二階建てだな。」
「そうだね。家としては一般的な広さだからすぐに探索は終わると思うけど―――これは無いって…。」
「だよなぁ…。」
ウィンは自分が外で見た家の大きさと内面の廊下の長さが釣り合っていないことに頭を抱えそうになった。。どうやらここに何かオカルトチックな存在が居ることには間違いないようだ。もしこれで本当に悪霊の類でいたのならば始まるのは
「…いや、流石に今回はガチの戦闘はないだろー……ないよな?今クルヌギアスいないから俺精々憑依装着してないウィン並みの戦力しかないぞ?」
「いや、普通人間が精霊とリアルファイトできるわけないからね!?」
霊使の言葉にウィンは思わずツッコミを入れる。だが、心のどこかで霊使の言う通りにリアルファイトが起こらないかどうか不安を覚えるウィンなのであった。
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案の定というべきか、やっぱりというべきか。この幽霊屋敷には何かが居た。その何かは良く分からなかったが、人型でそれでいて頭に角の生えた少女のような姿をしていた。
「…あれは幽霊じゃなくて精霊だよね?」
「せやな。」
幽霊の正体見たり枯れ尾花という言葉があるがこれは正にそれだ。今回は枯れ尾花では無くて精霊が幽霊であるだけだ。
「誰?」
ウィンは思わずあたりを警戒する。霊使もそれに倣ってウィンと背中を合わせて臨戦態勢を取った。
「誰でもいい…ここから、立ち去って。」
先の見えない通路から鈴のようなきれいな声が聞こえてくる。だが、その声には歓迎の気など微塵も含まれておらずあるのは鋭い敵愾心だけであった。
「立ち去らないのならば―――ここで、殺す。」
「とんだ悪霊じゃないか!?」
「死にたくないのならここから立ち去ればいい…。警告はしたから。」
霊使もウィンも姿が見えなければ対抗することはできない。故に姿を見せたところを全力でカウンターするしかなかった。そもそもデュエルモンスターズの精霊ならばデュエルしろよとは思うが、以前戦闘したクルヌギアス曰く―――
「いや、
というわけらしい。どうやら目の前の精霊にとっては自分達はデュエルするに値しない存在らしい。言われてみれば勝手に土足で住居に踏み込んでいるわけであるし当たり前と言えば当たり前ではあるが。
「…立ち去らないのなら、私が本気であるという事を、教えてあげる―――!」
何もない空間から急に目の前に現れる大きな鎌を携え、改造された白い巫女服―――あるいは白い死装束をまとい、白銀の髪を後ろで一つに束ねている少女が現れる。
その鎌はよりにもよってウィンの方に向けられていた。恐らく反転するよりも先にウィンが攻撃されてしまう。
「しまっ…ウィン!」
「遅い。」
霊使が警告をウィンに発するよりも早く、その鎌はウィンの体を捉えて―――そして、鎌が砕け散った。
「…え?」
「あれ?」
「あ、これシリアスの皮被ったギャグイベだ。」
砕け散った鎌が金属音を立てて床に散らばる。鎌を振った少女は少しずつ涙をこぼしてそしてとうとう――――
「な、なんでぇぇぇぇええぇぇ!?」
ギャン泣きしながらそう叫んだ。
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「えーと、じゃあカクリヨノチザクラ―――長いからチザクラって呼ぶぞ。チザクラはこの家の元の持ち主の精霊だったと?」
「はい…私にとてもよくしてくれたおばあちゃんでした…。」
目の前の少女―――チザクラはこの家の主の精霊であったらしい。だがその家の主が亡くなった事で自分はこの家に縛り付けられてしまったのだそうだ。
別にそれは彼女自身も悪い事だとは思っていないらしい。だが、それでも、自らのマスターとの思い出がたくさん残ったこの家を取り壊されるのは嫌だったから脅しをかけていたという。
「そういえばこの幽霊屋敷の騒ぎの原因って―――」
「所有者さんが売りに出せないからじゃ――――。」
「現所有者さんから連絡があってですね。『地上げ屋』というものに狙われているんです。」
「あっ…。」
どうやらこの家は地上げ屋に狙われているらしい。逆に言えばその地上げ屋さえなんとかできればいいわけなのだ。そうすればチザクラは幽霊じゃないし、この土地も狙われることもないし、思い出も奪われない。
「よし、じゃあその地上げ屋をぶっ潰そうか。」
「いいんですか?」
「いいとも!」
そうしてカクリヨノチザクラと霊使達の奇妙な共闘が幕を開ける。その土地を狙う地上げ屋の運命はどうなってしまうのか、それはチザクラと霊使、そしてその協力者たちのみぞ知る。
登場人物紹介
・四遊霊使
チザクラには割と同情した。だから協力を申し出る。
・ウィン
攻撃力が足りないことが分かったため避ける必要なし
・カクリヨノチザクラ
クールビューティーに見えたか?残念ポンコツ枠だよぉ!
ゼノブレイド3が面白すぎて止められないので没ネタ供養も兼ねて投稿します。そして自動的に次回はこの続きになります。
ギャグがおいしい…
次回更新もお楽しみに
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