その一報が入ったのはある意味当然の事だった。霊使達が撤退してからおよそ数時間後、端河原松市内で一斉に爆発が起きた。
『緊急:暴徒と化した集団が複数で自爆。狙いは警察署などを襲い始める。』
スマートフォンのニュースアプリでによる通知でとうとう四遊が動き出したことを察知した霊使。相手はどうやら警察機構や市役所などといった公な組織を狙ってこの行動を起こしたようだ。
「やりやがった…!」
そしてそれは最も恐れていた出来事でもある。警察や政府の目が無いことをいいことに四遊はこの地を乗っ取るつもりだ。そうなった後はこの地を弱肉強食のみを法とした地獄に作り替えて、かつての霊使のような存在をたくさん作るつもりだ。
もしかしたら創星神の力を使って全てをデュエルだけで決める世界にするつもりなのかもしれない。
「あの糞爺…!」
とにかく、あの四道安雁の野望が叶ったところで良い世界になるはずもない。そんな事は既に承知している。だからこそ、たとえどんな傷を負ったとしてもここで立ち止まるわけにはいかなかった。
「…皆、行こう!」
「ああ。」
「そうだね。」
「もちろん。」
霊使は周りを見渡して全員の目を見た。その視線に対して、「覚悟はできている」というふうに頷き、少年たちは立ち上がる。
「…たった7人の最終決戦か…。」
「一人よりはましだと思うけどな。」
軽口をたたき合いながらも少年たちは戦場へと足を向ける。もしその背中を見送る誰かが居たらきっとこう思っていただろう。
「どうして自ら死地に足を突っ込めるのか」と―――。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「これは酷いな…。」
「日本はいつから無法国家になったのかねぇ…。」
霊使がそこにたどり着いたとき、目に飛び込んできたのは暴徒と化した集団が、街を壊し、人を殺し、盗みを働いて、気紛れに略奪する地獄絵図であった。
最早法治国家とは思えない光景に思わず目を逸らしそうになってしまう。大方今まで決闘の結果だけで他者を蔑んできた者たちなのだろう。どんな相手でも構わず決闘を無理矢理仕掛け、理不尽にすべてを―――命でさえ奪っていく。
「獣畜生にも劣るね…。」
「同じく。結、あんなケダモノども相手している暇は無いよ?」
「ニンゲンってあんなのも居るの?」
「結みたいな人がこういう邪悪のせいで霞んでいくんですね…。」
それはどんな精霊であっても、どんなまっとうな人間であっても許す事の出来ない蛮行だった。だからこそ、この暴力に抗わなければならない。
「おい、こっちにもいたぞ!?」
「女は殺すな!男だけ殺せ!」
「あ、ちょっと。あそこの黒髪の男は殺さないでよ!?私の奴隷にするんだから!」
どう突破したものかと考えていると暴徒たちがこちらに一斉に駆け寄ってくる。その数ざっと4人。本来なら無視して本陣へと突っ切るべき人数だ。だが、その相手が叫んだ言葉に反応して全員に臨戦態勢を取らせる。
「獣畜生にも劣るとか言ってはみたけど…こいつらどうやら下半身と脳味噌が直結しているらしいよ?どうやら狙いは僕ららしいけど。」
「…ぶちのめすか。」
「それいいね。いっちょ"私達が居る"っていう所見せてあげようか。」
パンという小気味良い音に振り返れば、獰猛な笑みを浮かべた咲姫が拳を掌に打ち付けていた。
「さあ、教育の時間…ってやつよ!」
咲姫も素を露わにしているところから相対する集団の外道っぷりが良く分かる。だが、そんな外道だからこそ思いっきり戦えるというものだ。
「おいてめーら!金と女を置いていけ!」
「あ、ついでにそこのいかにも頭の切れそうな黒髪の坊やもねぇ?」
さて、人間は自分より知能が低く、尚且つ危険性の少ない相手にどんな感情を抱くか知っているだろうか。自分より下という慢心、こいつが居るから自分は最底辺じゃないという安堵、こいつは自分よりも弱いから何をしてもいいという優越感―――。きっと、良い感情も悪い感情も人に相対するときは、何かしらの感情を持つだろう。
だが、今の霊使達は目の前にいる人間に一種の感情を除いてその一切を示さなかった。
「てめー、無視すん―――」
「黙ってろ、下種が。」
霊使の、霊使達の心に残った感情はただ一つ、怒りだ。街をめちゃくちゃにされ、理不尽に人の尊厳を弄び、自らが積み上げた骸のうえで下品に笑っている。そんな光景を見せられて、怒りを覚えないわけが無かった。
「なんだと、このクソガキャァッ!」
霊使の顔面を狙って放たれた渾身のストレート―――霊使をそれを視認することなく、差も当然であるかのようにそれを受け止めた。
「お前は…お前たちは…こんな事をして心が痛まないのか?」
聞いたところで無駄であろうが、一応良心に訴えかけることにする。こんな行為をする人間の答えなど決まり切っているから、効く意味もないが、それでも一応確認はする。
「は?なんで?ここらへんで死んでいるのは全員雑魚―――いわば害獣だぁ。お前は人里に侵入してきた熊が撃ち殺されたっつ―ニュースを見て安堵するだろう?それと同じさぁ。人が害獣に同情なんてするかぁ?しねぇ~よなぁ?」
「ああ。…そうだな。…じゃあ、」
「あん?」
「害獣駆除と行こうじゃないの?」
「あ?」
もうここは無法地帯。だが、外道のやり方に合わせていては世話が無い。しかし、それでも霊使はこの男をぶん殴りたくてしょうがなかった。そこに丁度良くナイフを持った男が襲い掛かって来たので拳を突き出した。
「誰に向かって口きいて――――」
「うるせぇ!」
その結果、襲い掛かって来た男の顎に霊使の拳がクリーンヒット。脳を激しく揺さぶられた結果、男は悲鳴一つ上げずに気絶してしまった。
「…どうする?俺はリアルファイトでもデュエルでも構わないけど?」
霊使は挑発するように手首を動かす。それに乗った暴徒たちが一斉に霊使へと襲い掛かった。
「野郎ォッ!ぶっ殺してやる!」
「やってみろ!このクサレ脳味噌どもがぁーッ!」
多勢に無勢とはいかなかった。結論から言うと霊使は大の大人数十人に対して自身に一回も触れさせない大立ち回りを敢行。
「アイツ人間じゃないだろ…。」
克喜の漏らした言葉は何とも正鵠を得ていたが―――その言葉を額面通りの意味で受け取ったのはウィン達霊使いだけであった。
(俺も限界が近い、か…。)
口の中にせりあがって来た鉄臭い何かを霊使は飲み込んで限界を悟らせないように、急いで駆け出した。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
数十人いた暴徒は既に十数人にまで減らした。肉弾戦では勝ち目がないと悟ったのか、霊使をデュエルで倒す方向にシフトした暴徒だが―――きっと彼らはその判断の過ちを悟ったことだろう。
「俺の先攻…!俺は手札から魔法カード"テラ・フォーミング"を発動!デッキから"大霊術―「一輪」"を手札に加えてそのまま"大霊術―「一輪」"を発動!さらに手札一枚をコストに速攻魔法"精霊術の使い手"発動!デッキから"憑依覚醒"と"憑依装着―アウス"を選択し、その内の一枚―――"憑依覚醒"を伏せて"憑依装着―アウス"を手札に。…セットカードの"憑依覚醒"を発動。更に手札から"憑依装着―ウィン"を召喚。"覚醒"の効果で一枚ドロー。更に"大霊術―「一輪」"の効果発動。手札の"憑依装着―アウス"を公開して同じ属性で攻撃力1500、守備力200の"デーモン・イーター"を手札に。自分フィールド上に魔法使い族モンスターが存在するため"デーモン・イーター"を特殊召喚!」
「…はぁ!?」
「さらに魔法使い族である"憑依装着―ウィン"とレベル4以下の地属性モンスターである"デーモン・イーター"リリースして"憑依覚醒―デーモン・リーパー"をデッキから特殊召喚。"憑依覚醒―デーモン・リーパー"の効果!このカードは自身の効果で特殊召喚に成功したとき、墓地のレベル4以下のモンスター一体を効果を無効にして蘇生できる…!甦れ"デーモン・イーター"!そして"デーモン・イーター"と"デーモン・リーパーの二体でリンク召喚"I:Pマスカレーナ"!"デーモン・リーパー"がフィールド上から墓地に送られたときデッキから"憑依"魔法・罠カード一枚を手札に加えることができる。俺は"憑依連携"を手札に加えてそのままセット。」
普段ならばここで展開は止まっていただろう。だが、今の霊使のデッキはこの程度では止まらない。―――まさかと思ってこのデッキを引っ張り出したらもう一つのカード群の効果を使わないことになろうとは思いもしなかったが。
「俺は魔法カード"天底の使徒"発動!EXデッキから"灰燼竜バスタード"を墓地に送りその攻撃力以下のモンスター―――"
霊使 LP8000 手札二枚
EXモンスターゾーン(右) I:Pマスカレーナ
モンスターゾーン 教導の聖女エクレシア
教導の鉄槌テオ
魔法・罠ゾーン 憑依覚醒
伏せ×1
フィールド魔法 大霊術―「一輪」
今の霊使のデッキは以前の物を改造して一部の"ドラグマ"と呼ばれるカードを混ぜている。五銭の創るとのデュエルの際はドラグマのカードが一枚たりとも来なかった。
ちなみにだが、"教導の聖女エクレシア"の守備力は1500。それにレベルも4なので実質霊使いだと霊使は勝手に思い込んでいる。
「お…俺のターン、ドロー…。」
ちなみにこの後に控えているものを理解しているせいか相手の動きは何処かやるせない感じがする。だが、一切の温情も手加減も加える気は無い。それを乞うのは自分じゃなくて相手が傷つけた人に行うべきものだからだ・
「俺は、手札から"ガガガマジシャン"を召喚…。効果発動…。」
「守備力1500の魔法使い族である"教導の聖女エクレシア"が存在するためその効果を無効!」
「なら、"ガガガキッド"を特殊召喚して"ガガガマジシャン"とレベルを同じに!"オノマト
「特殊召喚成功時"I:Pマスカレーナ"の効果発動!」
どうやら相手のデッキは【ガガガ】であるようだ。どこぞのカードゲームでは違った意味で【ガガガ】は恐ろしいらしい。デュエルモンスターズにおいても連続エクシーズだったりで強力なデッキである。そしてエースは"No.39 希望皇ホープ"とその進化系。つまり、"No.39 希望皇ホープ"を特殊召喚したという事はつまりはこの後に控えているカードを自分から宣言したことでもある。
「"マスカレーナ"は相手メインフェイズ中にこのカードを素材としてリンク召喚を行う事が出来る!さらに、このカードは相手フィールド上のモンスター一体までリンク素材にすることができる!俺は"俺のフィールドから"I:Pマスカレーナ"、"教導の聖女エクレシア"、"教導の鉄槌テオ"をリンク素材として"
「そんな"ホープ・ザ・ライトニング"が出せない!?」
大正義もとい"SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング"を出されたら負けが確定するので召喚だけは絶対に許さない。それに相手の切り札を用いてリンク召喚できる"クルヌギアス"はあいてのこころをへしおるにはちょうどよかったのだ。
「た…ターンエンド」
暴徒 LP8000 手札二枚
結局暴徒は何もせずにターンエンド。暴徒は次のターン、フルルドリスとクルヌギアス、そしてウィンから総攻撃を喰らい無様に敗北したのは言うまでもない。
「害獣はお前だったな。…さて、と弱者はなんだったっけか?」
「ひ、ひぃぃぃ!」
暴徒は心がへし折れたのか、霊使の恐れをなしたのかは分からないが尻尾を巻いて逃げ去っていく。その方向には偶々警察官が居て現行犯。
だが、犯人たちが裁かれてもその者らに傷つけられ、壊されたものはもう戻ってはこない。そんなものを守ろうと、犠牲になる人を少なくしようと決意することが今の霊使達にとって唯一できる事だった。
登場人物紹介
・四遊霊使
限界が近い
・暴徒
さながらチェインアタックのオーバーキルされた感じ。
・克喜
限界には気づいていない
・・・本編が書きあがったのでこっち投稿します。何かテスト勉強の息抜きに書いたら書きあがった…どういうことだ…?
水樹君のデッキ強化
-
ネクロス
-
リチュア