アルビノの少年と
「…俺が勝ったらきちっとこの国の法律で裁かれてもらうぞ。――俺の先攻。」
だから霊使は目の前のアルビノの少年の沙汰は全てこの国の法律に則って出してもらう事にした。霊使はあくまで止めるだけ、後はこの国のお偉いさんたちの話だ。
「俺はフィールド魔法"大霊術ー「一輪」"を発動。その後、手札から"憑依覚醒"を発動して"憑依装着-ヒータ"を召喚。元々の攻撃力が1850のモンスターを召喚したため"憑依覚醒"の効果発動。一枚ドロー…。そしてそのまま"大霊術ー「一輪」"の効果。手札の魔法使い族―――"憑依装着ーアウス"をお前に見せる。その後デッキから公開したモンスターと属性が同じで攻撃力1500、守備力200のモンスター一体を手札に加える。"デーモン・イーター"を手札に加えて"アウス"をデッキに。そして、自分フィールド上に魔法使い族モンスターがる場合"デーモン・イーター"は手札から特殊召喚できる。」
きわめて冷静に、いつも通りにデッキを回していく。手札事故やらなんやらは今回は起きていないので安心してデッキを扱う事が出来た。一番最悪なパターンは初動札を一枚も抱える事無く何もできずにターンを終わらせることだ。
きっちりと調整した霊使のデッキであるならばそういう事は起こりにくいが、それでも起こる時は起こってしまう。
「おお、回る回る。」
「今までならここら辺で展開が終わってただろうな。自分フィールド上の魔法使い族モンスター…"憑依装着-ヒータ"と"デーモン・イーター"をリリースしてデッキから"憑依覚醒-デーモン・リーパー"を特殊召喚。"デーモン・リーパー"の効果で墓地からレベル4以下のモンスターである"憑依装着-ヒータ"を特殊召喚。さらに"憑依覚醒-デーモン・リーパー"と"憑依装着-ヒータ"で"I:Pマスカレーナ"をリンク召喚。"デーモン・リーパー"がフィールドから離れたことによりデッキから"憑依連携"を手札に。」
少年はいつものことであるかのように回る霊使のデッキを見て思わず笑ってしまいそうになった。そして、何故、これだけの力を持ちながら
「さらに魔法カード"天底の使徒"発動。」
「それはまずいね…。"灰流うらら"を手札から捨てて効果発動。」
「…逆順処理だ。…ますは"灰流うらら"の効果からだな。"うらら"の効果で"天底の使徒"の効果は無効になる…。」
一方の霊使は唐突に飛んできた"うらら"に少しばかり頭を抱えそうになった。"灰流うらら"は手札誘発でも代表的なカードで手札から捨てることでドローやサーチ、後はデッキからの墓地肥やしを含む効果を無効にするというとんでもないパワーカードだ。もちろん霊使もデッキに一枚ほど突っ込んでいる。カード枠がカツカツの霊使でさえ空いた枠に優先的に採用しているのだからその強さは計り知れないだろう。
「割と理論的なんだな?」
「まぁね。君のデッキはサーチや魔法使い族のシナジーを大切にするデッキだ。最初に"精霊術の使い手"を使用しなかった時点でそれが手札にあることは読めてたからね。」
「…ま、手札には"
「
だがそんな強力な"灰流うらら"にももちろん制約は存在している。それは"名称指定でターンに一回しか使えない"ということだ。今回の霊使のようにブラフのサーチカードを用い、本命を通すという考えは"うらら"対策としては理に適っている。
「…そういうことだ。EXデッキから特殊召喚されたモンスターがフィールド上に存在するため"
霊使 LP8000 手札0枚
EXモンスターゾーン(右) I:Pマスカレーナ
モンスターゾーン 教導の聖女エクレシア
教導の天啓アディン
魔法・罠ゾーン 憑依覚醒
伏せ×1
フィールド魔法ゾーン 大霊術―「一輪」
手札は焼け野原になっているが霊使は一応最低限のフィールドを整えることができた。どのみち、伏せカードは"憑依連携"のため確実に一ドローはできるのだが。それでも手札はたったの一枚。素寒貧という言葉ですら足りないほどに心細い。アルビノの少年は対抗策が一枚もないと知るや否や笑みを浮かべる。それはまるで新しいおもちゃを買ってもらった子供のような、そんな「新しい楽しみ」を見つけた顔だ。
「僕のターンだ。ドロー…僕はフィールド魔法"炎王の孤島"発動。さらに"炎王の孤島"の効果発動!"炎王獣ガネーシャ"を特殊召喚!その後"炎王獣バロン"を召喚!」
「"炎王"…!?」
アルビノの少年が用いるデッキは"炎王"。カード効果で破壊されることによって起動する能力がある非常に厄介なデッキだ。一回は"大霊術―「一輪」"で無効にできるとはいえ、それを二枚も三枚も並べられるのは非常にキツイ。しかも霊使のデッキの基本戦術は「メタビート」。相手の行動をカード効果で阻害しながら自分が有利になるように展開していく戦術なのだ。もちろんその「阻害」に「カード効果による相手モンスターの破壊」も存在している。相性的にはいうまでもなく霊使の方が不利だ。
「罠発動。"憑依連携"。墓地の"憑依装着-ヒータ"を特殊召喚して、お前のフィールド上の"炎王獣ガネーシャ"を効果で破壊する。」
「…"炎王"と名のついたモンスターが効果で破壊されたため手札の"炎王獣キリン"を特殊召喚。…これは、"発動"する効果じゃないから"大霊術―「一輪」"の効果対象外、だよ?」
だがそんなこと知ったことかと霊使は突っ込む。確かに発動しない効果ならば"大霊術―「一輪」"の効果は受けないだろう。だからと言って、それだけが霊使の全てではないし、それはアルビノの少年も良く分かっているはずだ。
「…うーん…。"炎王の孤島"の効果発動。」
「その効果にチェーンして"I:Pマスカレーナ"の効果を発動させてもらう。…僕は"エクレシア"、"アディン"、"マスカレーナ"…そして"炎王獣バロン"をリンク素材としてリンク召喚を行う。…現れろ、冥神導くサーキット!」
だから、霊使は勝負を決めにかかる。
全てを見せたところでこのカードの対策はほぼ不可能だ。霊使のデッキの真の切り札にして、最高の攻撃力を持ち、相手の世界を閉じる女神。
「アローヘッド確認!召喚条件は効果モンスター四体以上…"マスカレーナ"、"アディン"、"エクレシア"…"炎王獣バロン"の四体をリンクマーカーにセット…。サーキットコンバイン!
その名は"閉ザサレシ世界ノ冥神"。霊使の真の切り札であり、強力なフィニッシャーである。
「なんだよそいつは…!?…逆順処理で"炎王の孤島"の効果。"炎王獣キリン"を破壊してデッキから"炎王獣ガルドニクス"を手札に。…その後"炎王獣キリン"の効果で"炎王神獣ガルドニクス"をデッキから墓地に。カードを一枚ふせて…ターンエンド。効果で破壊されたわけじゃないから"炎王獣バロン"の効果はつかえない…、か。」
特にこういう"破壊時効果"を持つモンスターがいると迂闊に攻め込めないが、そういうモンスターは素材にしてしまえばいいのだ。それこそ"閉ザサレシ世界ノ冥神"や"壊獣"やらで。
アルビノの少年 LP8000 手札2枚
モンスターゾーン なし
魔法・罠ゾーン 伏せ×1
フィールド魔法 炎王の孤島
アルビノの少年は切り札を読み間違えていた。"エクレシア"でサーチするのであれば大方"フルルドリス"だろうと思ったからだ。実際には相手ターン中に相手モンスターを利用してリンク召喚するというやられたら発狂では済まないレベルの物であるが。
「俺のターン…ドロー!俺は"憑依装着-ウィン"を召喚。…元々の攻撃力が1850のモンスターの召喚に成功したため"憑依覚醒"の効果発動。デッキから一枚ドロー。バトルだ。」
霊使のフィールドには既に憑依覚醒の効果で攻撃力が2750となった"憑依装着"モンスターが二体存在し、攻撃力3900となった"閉ザサレシ世界ノ冥神"までいる。もう、この決闘を終わらせるには十分なだけのモンスターを用意しているのだ。
「…へぇ?いいのかい?ここで君が攻撃宣言をすれば僕はすかさず"聖なるバリア ‐ミラーフォース‐"を発動する!そうすれば君のモンスターは全滅。…次のターンに蘇る"炎王神獣ガルドニクス"やその他もろもろで攻撃すれば勝つのは僕だ…。」
「試してみるか?」
だがアルビノの少年は敢えて自分が伏せたカードを宣言。バトルフェイズに入っているため既に魔法の使用ができない霊使の攻撃を抑制しようとした。
しかし、霊使は逆にアルビノの少年の宣言を受けて不敵な笑みを浮かべたのだ。それはまるで価値を確信したような、そんな自信に満ち溢れた顔であった。それがアルビノの少年の何かに触れる。
「バトルだ!"
「攻撃宣言時"聖なるバリア‐ミラーフォース‐"発動!消えろ!全部消えてしまえ!」
クルヌギアスの放った一撃は極光に呑まれていく。極光は留まるところを知らずただただ際限なく膨れ上がる。そして、その極光が消えた後にはフィールド上には何も残らない。―――はずだった。
「なん、だよ…それ…。」
しかし、極光が止み、そこにあったのは、無傷で佇む霊使の召喚したモンスター達。完全に打つ手を無くしたアルビノの少年は一歩後ずさった。
「"
「じゃあ、なんでその女どもは残ってるんだよ…!ただの準バニラの屑カード共はァ…ッ!」
アルビノの少年はウィンとヒータ―――霊使い達をバカにしながら、霊使い達がミラーフォースの影響を一切受けていないことを問う。
「"憑依覚醒"の効果で"霊使い"及び"憑依装着"モンスターは相手の効果によって破壊されない…。詰んでたんだよ、お前は、既に。」
「っざけんなよッ!」
「ふざけてなんかない…。これで終わりだ。バトルは続行!」
アルビノの少年 LP8000→4100
クルヌギアスは先ほどの物言いがよほど頭に来ていたのか、あんな蛮行を見せられて頭に来ていたのかは分からないが持てる力全てで少年をぶん殴った。
痛みはないがそれ相応の衝撃を受けて体勢を崩される少年。
「続いて、"憑依装着-ウィン"で攻撃!」
体勢が崩れたところにウィンが起こした暴風が直撃、少年は思いっきり後頭部を打ち付けてしまう。
アルビノの少年 LP4100→1350
「最後…"憑依装着-ヒータ"で攻撃!」
そして、ヒータの放った炎が少年に着弾。これで少年のライフはゼロとなり、霊使達の勝ちが決定する。
そしてソリッドビジョンの炎に焼かれるの右腕からブザー音が鳴った。
決闘終了の合図だ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「熱い熱い熱いよぉぉぉッ!」
霊使を
ソリッドビジョンシステムの炎が消えたにも関わらず少年を燃やす炎が消えない理由―――つまり明確な殺意を持ってアルビノの少年を殺そうとした
「…ヒータ、お前…。」
「ボクは、やっぱ許せないよ…!」
だが、霊使はそもそも炎を扱う精霊というのを多くは知らない。というか今回の条件を満たすのはヒータしかいない。肝心のヒータはその瞳に怒りを宿してただただ燃えるアルビノの少年を見ていた。
「…でも、殺してしまうのはきっと霊使が悲しむ。…それに、ボクも人を殺したくない。」
「でも、消さないのは…なんでだ?」
「人の痛みを知らないなら…教えるしかないだろ…ッ!」
絞り出すようにヒータはそう言った。許せない、というのは霊使も同じだ。だがそれで暴力に訴えてはそれこそ、相手と同じだ。
「…もう、消すよ。」
それを分かっていたヒータはある程度の所で自身の放った火を消した。
「うぅ…。」
どうやら絶妙な火加減でいたらしく、熱さはそこまでアルビノの少年にそこまでの影響を与えているようであった。ヒータは少年の元へと歩みを進める。
「ボクは誰かを傷つけるのは嫌いだからこの程度で済んだけど…。これがボクじゃなかったらオマエは死んでたよ。」
「…何、言いたい?」
「…もしこれがオマエが気紛れで傷つけた人の復讐だとしたら?…まさか自分一人だけ傷つかない…だなんて思っているわけじゃないよな?」
ヒータは一度そこで言葉を切ると、少年の頭髪を掴んで顔を自分の方へ向けさせた。ここまで暴力的な手段に出るとはヒータは相当お怒りのようだ。ブチギれているといっても過言ではないだろう。
「…ボクの炎に包まれたとき、どう感じた?熱い?痛い?苦しい?―――全部感じただろ。それがオマエの数十倍続いたんだよ、…分かってるのか?」
言葉遣いも怒気を孕んでいるせいか少々荒い。
「オマエはそれを他人やったんだ!しかも、嗤いながら!それがどれだけ残酷で、惨い事か分かっているのか?しかも、ボクの大好きな人が大切にしていた人達を!お前は傷つけたんだ!」
それだけ言って少年を解放するとヒータは霊使の方へと歩いてくる。何か思わずとんでもないことを口走った気がしたが、ヒータはそれに気づくことは無かった。
警官が倒れている少年に手錠をかけたのを見て霊使はようやく息を吐いた。
守れなかったものの大きさを思い知りながら。霊使は星空一つ見えない曇り空を見上げた。雲は炎に照らされて赤く輝いているように見えたのだった。
登場人物紹介
・霊使
まぁ普通に斃せるよねって話ですよ
・ヒータ
ガチギレとブチギレ。鬼。そもそも霊使の事が大好きなのに、大切な人の大切な場所がめちゃくちゃにされたらそりゃキレるよねって。
・アルビノの少年
警官に逮捕された。多くの人を傷つけ死に至らしめた罰はきっとその身に受けるだろう。
ヒータブチギレ&思った事が飛び出てしまったヒータ。
大切な人と名指しされた霊使はどう返すのか…!
次回もお楽しみ
水樹君のデッキ強化
-
ネクロス
-
リチュア