「相棒」   作:ダンちゃん1号

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白状の時間、決意の時間

 

(まずいな…。)

 

アルビノの少年との決闘(デュエル)を終えてからどうにも視界が悪い。世界から少しずつ色が消えて行ってしまったかのような感じが霊使を襲う。

それにまた、鉄臭い何かが霊使の口へとせりあがってくる。

次は飲み込むことは無理だと判断して、こっそりそれを吐き出そうとする。

だが、悪い事というのはよく重なるものだ。例えば―――

 

「お前、なんだよ、それ…。」

「やっべ。」

 

血を吐き捨てる姿を、仲間であり親友でもある九条克喜に見られるとか、である。

おもわず「やっべ」と言ってしまった事で、その症状が今まで隠してたものだと克喜に知られてしまう。

その結果、霊使は血を吐いた瞬間を克喜に見られたと悟った瞬間に逃走を図った。

 

「あっ、おい…おまっ…まてぇ!」

 

背後から克喜の制止の声が聞こえたが、霊使はそれを無視して走る。三歩で最高速に到達した霊使は後ろを振り返りながら大声で叫んだ。

 

「待てと言われて待つ奴が何処にいる!」

「…ああくそ!コイツ身体能力に関しててみれば化物だった!追いつけねぇ!」

 

といっても、今の霊使の体では最高速など維持できるはずもなく。すぐに速度が落ちていく。そのまま霊使は克喜に肩を掴まれ―――

 

「確保ー!ハイネ、とりあえず布持ってこい!」

「え、あ、はい!」

 

その後はハイネによって伸縮性の高い布でぐるぐる巻きにされたのであった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

取り敢えず、逆凪を呼んで、霊使を全員で囲った後、克喜は低い声を出した。

 

「…どうして黙ってた?」

「…黙ってたも何も…元からこうなることは決まってたんだよ。」

「それは、どういうことだ…。」

 

霊使は観念して今までの全てを正直に白状することにした。かつてのキスキル達との戦いの後に既に「死んでいた」こと。

それを隠しながらウィン達に生かしてもらっていたという事。

それでもすでに「(からだ)」の方が限界を迎えている事。

そして、残された時間はそこまで長くはない事。

全てを正直に打ち明け、そして力なく項垂れる。こんな形でバレるとは思ってもいなかったし、実のところもう少し()()のではと考えていた。結果はこの様だが。

 

「じゃあ、霊使はずっと無茶してたって事か…?」

「無茶はしてない…死ぬほど寿命が短くなっただけだ。」

「…人はそれを無茶というんだ。で、治す方法は?」

「そんなものはない。…あるっちゃあるけど間に合わない。」

 

治す方法はもうない事は霊使が一番分かっている。自分の体の事なのだから理解していない方がおかしいというべきなのだが。とにもかくにも今からでは治すための条件を達成するのが難しい―――を通り越して不可能であるという事だけは伝えた。

 

「…悪かったよ、黙ってて。」

「お前の話を聞くに、コレは初めての事例だったからな。誰に相談しても結果は変わらなかったと思うけどな。だが、それと感情の話は別だ。というわけで言って来い、咲姫。」

 

克喜はそこで引っ込んだが、今度は明らかに尋常じゃない負のオーラを纏った咲姫が霊使の前に顔を寄せる。咲姫は表面上こそ笑顔だったが、その笑顔の中で目だけは一切笑っていなかった。

 

「兄さん。黙ってたのは私達を案じての事なんでしょうけど…黙ってたら何も分からないじゃないですか?」

「咲姫…イヤ、ホンとにごめん。」

「ごめんで済んだら警察はいらないんですよ?それともそんなに私達に心配されるのが嫌だったんですか?」

 

それを言われると、と霊使は言葉を濁す。別にこの事を隠すつもりはなかったし、全てが終わったら話すつもりだった。ただタイムリミットはもっと早かった。これは言ってしまえばそれだけの話なのだ。

 

「…終わった後には話すつもりだったさ。俺は。」

「それで今死にかけたら意味ないじゃないですか!?」

「何も言えねぇ。」

 

咲姫に説教されながらも、霊使はこの拘束からどう抜け出すか考えていた。正直ここで最期を迎えるというのは何とも言えない悔しさがある。せめて安雁の顔を一発ぶん殴ってから逝きたい。そんな思いが霊使にはあった。

 

「…兄さんにはまだやるべきことがありますか?」

「ああ、ある。」

「…それはどうしても自分がやらなくちゃいけない事なんですね?」

「ああ。奴にきっちりと落とし前を付けてもらわなきゃ満足して逝けない。」

 

だからその思いを正直に伝える。それ位しか今の霊使にできることは無いのだ。既に生き残るという事が土台無理なせいである程度の諦めもついては居るが、それでも真っ先にやりたいといえることはそれだった。

むしろ、今の霊使がギリギリで生きていられるのは絶対にぶっ飛ばすという執念が自分にまだ残っているからだろう、と霊使は考えている。

もし、ここで咲姫がそれを拒否してしまえば、多分このまま死んで行ってしまう。それではこの世に縋り付く怨霊か何かになってしまう可能性もある。

 

「…兄さんは止めても無駄ですもんね。」

「良く分かってるじゃないか。」

「ええ。もちろん知ってます。…いいんですね?」

「…ああ。」

 

それだけ確認すると咲姫は霊使の元を離れて克喜の所へ向かう。克喜は何となく分かっていたような顔をして」「やっぱ戦うか…」と苦笑した。

 

霊使本人がそう決めたのならば仕方が無い事だが。

それ以上は口に出す方が野暮というものなのだろう。

 

「霊使…一つだけ約束だ。…勝つぞ。皆で!」

「端からそのつもりだ。」

 

その答えを聞いて満足そうに頷く克喜。どうやら彼はもとよりこの拘束を解くつもりだったみたいだ。

 

「負けたら地獄の果てまででも追って引き摺ってでも生き返ってもらうからな!」

「おいおい、そうなったらこの世界は消えてるぞ?」

「違いない。…互いに生きて帰ろう、霊使。」

 

霊使は克喜の言葉に頷くしかない。ところで、と一つ見逃せない点があるのに気が付いた。

 

「…互いに生きて帰る?…まるでここから別行動するような…。」

「その通りだ。ここからは個別に暴徒の鎮圧を行うしかない。」

 

克喜は遠いところに目を向けながら呟いた。それから改めて逆凪から現在の状況を聞く。そこで暴徒が複数箇所で暴れだしたという報告がありそれに向けての対策を練っていたようだ。

どうやら聴力もかなり低下しているらしい。こんな近くで行われていた会話も聞き取れないとなると聴力に関しては相当まずい状態だろうと考えるほかない。

 

「霊使、お前は咲姫と水樹と一緒に安雁を探してぶちのめせ。創星神が見えないってことはまだあそこにいるだろ。」

「…だな。」

 

少なくともあのまま地下に居るのならば、あそこから動くことはしないだろう。なるほど、卑怯者の安雁らしい作戦だ。何故ならあそこは警戒箇所もはっきりしているし、防衛もしやすい。こっちを迎え撃つのにも最高の場ともいえる。

逆に言えば霊使達は最高の迎撃状態を保たれた地下空間を進まなければならないというわけだ。

 

「…とんでもねぇな。」

「そうだな。」

 

だが、霊使が満足して逝くにはやるしかないのだ。克喜達は霊使の人生に悔いを残さない様にに配慮してくれている。そして霊使ならきっとやれるという確信さえ抱いている。ならばやるしかない。

もとよりこれしか道は無いのだ。

 

「…じゃあな、皆。また。」

「ああ…。また後で。」

 

それぞれが自身のやるべきことを見据えて歩みを進める。これから始まるのは世界の在り方を掛けた一世一代の大勝負だ。負ければ世界が崩壊し、勝てば世界を守れる。この勝負に世界の全てがかかっているといっても過言ではないだろう。

 

「…俺達は暴徒を鎮圧し次第すぐに霊使の援護に向かう。」

「俺は、俺達はまっすぐ前を見ればいいんだな?」

「そういうことだよ、霊使君。」

「はい、では、せーので行きましょう。私達の未来を掴みに。」

 

霊使達はもう顔を合わせることはしなかった。そうしてしまえばこの決意が揺らぎそうだったから。全員が不退転の覚悟を決めたのだ。哀れみも、悲しみも今は不要。

 

「…ああ。行こう、皆!」

 

「せーのっ!」

 

少年たちは互いに互いを信じて、自らが向かうべき場所へと走り出した。




登場人物紹介

・霊使
死にかけ。分かりやすく言うなら5部終盤のブチャラティ状態。

・ウィン
今回は出番なし。実体化を解いて引っ込んでた

・咲姫
覚悟は良いか、私は出来てる

・克喜
内心穏やかじゃないが、親友の最期くらい、自由にさせてやりたいと思ったら敵のボスぶん殴る宣言で開いた口が塞がらない。

今週中にもう一本投稿したい…!
でも、クオリティが…下がるッ!
次回もお楽しみに

水樹君のデッキ強化

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