結は正直に言って今回の騒動で暴徒となった全員に少なくない侮蔑を抱いていた。どれだけ口で言い訳したって結局自ら望んで他人を傷つけようとしたのだから。
それに、だ。
自分を地獄へと追い込んだ人間が目の前に居て、暴徒がその仲間だというならば結からの評価が駄々下がりになるのも仕方が無い事だろう。
「さーて、と…
「はん…。じゃあここでテメェを負かして今度は絶対に俺の奴隷にしてやる…!」
やはりというか案の定というか。結の父親はおおよそ子供に向ける類のものではない感情を結に向けている。それを向ける理由は誰かの面影があるからか、それとも単に父親の趣味か。だが少なくとも、先ほどとは違い思考も落ち着いたおかげか結ははっきりと相手を見据えていた。
「容赦なくボコボコにできるってのはいいものだね。良心の呵責とかなしに全力でやれるから…!」
「あ…?何を言ってやがる?」
「…あなたの全部を打ち砕いて、私が勝つって宣言。というわけで、先攻どうぞ?」
「舐めやがって…!俺のターンだ…!俺は手札から魔法カード"手札断殺"発動!互いに手札を二枚捨てて二枚ドロー。で、魔法カード"調律"発動!デッキから"ジャンク・シンクロン"を手札に加えてシャッフル。その後デッキの上から一枚を墓地に送るぜ。」
「通すよ、その程度。」
相手のデッキはどうやら"シンクロン"を多用するデッキらしい。それが"ジャンド"だろうと"シンクロン"だろうと悲しいかな、相手の展開は初手で止まることが確定しているのだ。
蘇生カードがある場合はその限りではないが。
「"ジャンク・シンクロン"を通常召喚!そして効果発動!」
「自分フィールド上にカードが存在しないため手札から罠発動"
というのもそのカードがこの"夢限泡影"だ。このカードは自分フィールド上がすっからかんの時に限り手札から発動でて、問答無用で相手フィールド上のモンスター一体の効果を無効にできるカードだ。自分フィールド上にカードが無い、というのは非常に危機的な状況であるが、先攻一ターン目に限りその制約はあってないようなものだ。現に結の父親は"夢限泡影"で動きを完全に止めてしまっている。
「…カードを一枚伏せてターンエンド…!」
結の父親 LP8000 手札3枚
メインモンスターゾーン ジャンク・シンクロン
伏せ×1
通所召喚権を使ってしまったようで完全に動きを止める相手のデッキ。といっても怒涛の連続シンクロは避けたいところではあるのでこのターンや次のターンで完全に決着をつけるべきだ、と結は考えていた。
「私のターン…ドロー。私は永続魔法"Live☆Twin トラブルサン"を発動。効果で"Live☆Twin キスキル"をデッキから手札に。そのまま"Live☆Twin キスキル"を通常召喚。"Live☆Twin キスキル"の効果を発動!」
結のデッキは【イビルツイン】。"ライブツイン"や"キスキル"、"リィラ"といった多数のカテゴリを抱えるテーマである。【イビルツイン】の特徴は連続し特殊召喚にある。相互蘇生や相方をデッキから引っ張ってくる効果などを含めるとその特殊召喚回数は非常に多い。
だが、故にただのキスキル達では展開カード以上の打点を持たないという大きな弱点がある。だから例えば―――
「は!その程度か!?手札から"灰流うらら"を捨てて効果発動!"デッキから特殊召喚する効果"を含む効果である"Live☆Twin キスキル"の効果を無効にするぜ!」
「そ。」
こういうふうに展開を止められてしまうと返しのターンに何も出来なくなる。それがこのデッキの弱点のはずだった。だが、とうにそんな弱点は承知している結はそれを補うための新たな力を手に入れていた。
「…手札の"Live☆Twin リィラ・トリート"の効果を発動。自分フィールド上に"キスキル"モンスターが居る時このカードは特殊召喚できる…!」
ぽん、という小気味よい音と共に結のフィールド上に現れたのは「トリート」の名の通りハロウィンのコスプレをしたバーチャルな存在のほうのリィラだ。種族も仮装に合わせてアンデット族に変わっている。
「さて、とこれでいつも通りの展開ができるね?」
「…はぁ!?」
しかし、重要なのはそこではないのだ。重要なのは
「というわけで…。まずは"リィラ・トリート"と"Live☆Twin キスキル"で"Evil★Twin リィラ"をリンク召喚。続いて"Evil★Twin リィラ"の効果で"Live☆Twin キスキル"を墓地から特殊召喚。で、その二体で"Evil★Twin キスキル"をリンク召喚。"Evil★Twin キスキル"の効果で"Evil★Twin リィラ"を墓地から特殊召喚。"Evil★Twin リィラ"の効果で伏せカードを破壊するよ。」
結局ヴェーラー一枚ではイビルツインの動きを止める事は出来ずにいつも通りの展開を許してしまう。それでも結の父親は「いつも通り」そこで展開を止めると思っていた。だが、それはこれまでの結であれば、だ。
「これでお前のターンは終了だ!お前は俺のライフを削れず、それだけで終わりなんだよォ!」
確かに今の結の手札にこのデッキのメインのエースである"Evil★Twins キスキル・リィラ"は存在していない。だからと言ってそれが致命的かと言われればそれは否だといえるだろう。
「…私は"Evil★Twin キスキル"と"Evil★Twin リィラ"でリンク召喚!出番だよ!"
何故なら新しい仲間がいるから。攻撃力3300、リンク4のモンスターである"トラブル・サニー"は新たな展開の締めとして十二分の働きをする。手札に"Evil★Twins キスキル・リィラ"が居なくとも攻撃力3300という幸田店のモンスターを場に出せるし、何かしらの効果の対象になったら、相互蘇生効果を持つキスキルとリィラにその効果を押し付けて自身は退散できる優れものだ。
それに何よりも墓地のこのカードを除外すれば"キスキル・リィラ"を墓地に落としながら相手フィールドのカード一枚を墓地に送ることができる。今までの"イビルツイン"に足りなかった要素をすべて持っているのだ。
「次いで墓地の光と闇のモンスター―――"Live☆Twin キスキル"と"Live☆Twin リィラ・トリート"を除外して"カオス・ソルジャー ‐開闢の使者‐"を特殊召喚!」
ついでといわんばかりに結は墓地の光属性と闇属性のモンスターを除外して特殊召喚できるモンスターである"カオス"の内一体を特殊召喚。しかし、これでも撃てる手はすべて打ったため展開はここで終わり、バトルフェイズに進む結。
「バトルフェイズ!"カオス・ソルジャー ‐開闢の使者‐"でダイレクトアタック!」
「そうは行くか!墓地の"超電磁タートル"でこのバトルフェイズを強制終了!」
「メイン2…。カードを二枚伏せてターンエンド。」
結 LP8000 手札一枚
EXモンスターゾーン(左) Evil★Twin's トラブル・サニー
メインモンスターゾーン カオス・ソルジャー -開闢の使者‐
魔法・罠ゾーン 伏せ×2
Live☆Twin トラブルサン
結局の所結は一度も攻撃宣言をせずにこのターンを終了した。確かに相手の墓地に"調律"によって"超電磁タートル"が落ちていたのは見ていたのでこれは普通にケアできなかった自分の実力不足だろう。それにケアできなかった分「流れ」が相手に傾いているかもしれない事を考えると、ここはどうしても一太刀入れたかったというのが結の本音だ。
「俺のターン…ドロー!俺は手札から"幻獣機オライオン"を墓地に送り"ツインツイスター"を発動!伏せカードを一枚破壊と"Live☆Twin トラブルサン"を破壊!」
「やっぱそう来るよね…!」
"トラブルサン"は"イビルツイン"モンスターが存在する限り、相手はモンスターの召喚、特殊召喚時に200のライフポイントをし笑わなければならず、逆に自分は200のライフポイントを回復することができるカードだ。これは特殊召喚を連続して行いモンスターによる制圧を防ぐためのカードだ。相手がそれを破壊したというのはこれから先相手がそれだけ展開を行うということを暗に言っているようなものだ。結は"トラブルサン"を早々に失った事に小さく舌打ちをした。
さらに、伏せ除去は安定して行える妨害行為の一つだ。伏せを除去すれば相手からすれば安心して攻めることができ、その分勝利に直結しやすくなる。だが、逆に。
もしその伏せ除去に対するメタがあったら、相手はどうするだろうか。
結は自分だったらあまり使われたくないなと思うだろう。それは裏を返せば相手も同じことを思っているという事だ。
「今、貴方が破壊した伏せカードは"ブービーゲーム"!」
「何?」
「このカードは相手の効果で破壊され墓地に送られたとき自分の墓地から"ブービーゲーム"以外の通常
「厄介なカードばかりを…!」
結の父親は自身の娘がとる遅延とも取れる行動に若干苛立ちを感じていた。どうして逆らうのだろうか、自分が居なければ生まれてこなかったものなのに。そんな考えが彼の怒りを、彼のいら立ちを加速させる。
「さらに"幻獣機オライオン"は墓地に送られた場合レベル3の"幻獣機トークン"一体を生成できる!さらに俺は二枚目の"ジャンク・シンクロン"を召喚!効果で墓地から"幻獣機オライオン"を特殊召喚!さらにさらにぃ…!墓地からモンスターが特殊召喚されたことで手札から"ドッペル・ウォリアー"を特殊召喚!"ドッペル・ウォリアー"と"ジャンク・シンクロン"で"
「…げっ。」
今相手の出したカード―――"TG ハイパー・ライブラリアン"は自分がシンクロ召喚を行うたびにワンドローする効果を持つ最凶クラスのカードだ。手札一枚の結にとってハンドアドバンテージを稼がれると逆転がしにくくなってしまう。
「更に、”幻獣機オライオン"と"幻獣機トークン"でシンクロ召喚!レベル5、"アクセル・シンクロン"!"ハイパー・ライブラリアン"の効果で一枚ドロー!更にデッキからレベル1の"ジェット・シンクロン"を墓地に送り"アクセル・シンクロン"のレベルを4に!更に二体目の"ジャンク・シンクロン"と"ドッペル・トークン"一体で"
「…!その効果にチェーンして"Evil★Twin's トラブル・サニー"の効果発動!"Evil★Twin キスキル"と"Evil★Twin リィラ"を蘇生!」
"霞鳥クラウソラス"は相手のモンスター一体の効果を無効にしたうえで攻撃力をゼロにする厄介な効果モンスターだ。効果を無効にされるくらいならば、と結は後をキスキル達に押し付けた。しかしこれで"クラウソラス"の効果は空うちになった訳だ。これでいくらかは相手の動きを崩せると信じたいところではあったのだが―――
「…まだだぜ?俺は、レベル5"TG ハイパー・ライブラリアン"とレベル3"霞鳥クラウソラス"にレベル4"アクセル・シンクロン"をチューニング!」
しかしながら再びのチューニング。しかもシンクロチューナーを用いたシンクロ召喚である。基本的にシンクロチューナーを用いるシンクロモンスターは召喚が難しい分、強力な効果を備えていることが多い。
「来い!"聖珖神龍 スターダスト・シフル"!」
「…これは、正直言って少し舐めていたかも…!」
結の前には強力な効果を持つシンクロモンスター―――"聖珖神龍 スターダスト・シフル"が立ち塞がる。星屑から神となった竜に対して結と悪魔の怪盗はどう立ち向かうべきか。それだけを考えていた。
登場人物紹介
・白百合結
父親の事は大っ嫌いだけど決闘の腕はそれなりにあることを知らなかった。さすがにデルタアクセルシンクロは予想外だったらしい
・結の父親
自身が最強だと増長した結果人間の屑になってしまった。それでも決闘にかける思いだけは本物。
というわけで分割です。
結の父親がとんでもねぇ凶キャラになっちまいました。どうすればいいんだこれ…。
次回もお楽しみに
水樹君のデッキ強化
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