「相棒」   作:ダンちゃん1号

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「からっぽ」

結が戦場に舞い戻った時、そこにあったのは凄まじい光景だった。

あたり一面には決闘盤(デュエルディスク)を持った者たちが倒れており、その中心には九条克喜ともう一人が居る。

ここに出張ってくるあたり四道側の人間であろうが、それよりも、何よりも結は克喜の鬼の形相に驚いていた。

 

「でめぇは超えちゃならねぇ一線を越えた!」

「害獣駆除に当たって何が悪い…?」

 

耳に入ってくる会話からこの地獄はあの男一人によって作り上げられたのだと理解した。克喜と対峙している男は足元に倒れている人間を蹴って退かす。

その人間は抵抗もろくにせずに簡単に吹っ飛ばされた。

 

「結…これ、どういう…?」

「分からない、けど…。」

 

結は足元に倒れている男の首筋に指を添えいつか見たテレビの刑事がやっていたかのように脈を図る。

 

「そん、な…。」

 

触っただけで何となく察してしまったが既に死んでいる。これだけの人数を殺してあの男は平然と立っている。

ありえない。

底なしの悪意が自分達を狙っているようで、震えそうになってしまう。怖いし、恐ろしい。それでも前に進むと決めたから。

 

「後で埋めてあげよう…。」

 

今斃れている人間がどんな気持ちでここにに立っていたか、なんてものは分からない。それでも、何も分からずに困惑して死んでいったのだろうかと考えると、どうしてももやるせなくなる。

それはそれとして、結はそんな地獄の中心で見合っている二人に視線を戻した。

 

「…何かが、始まる。」

 

結の言葉は何処か確信があって、それゆえにキスキルもリィラも警戒を密にせざるを得なかった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

その男は「着弾」というべき速度で地上に降りて来た。

克喜をの周りを囲んでいた人間はその「着弾」直後に首がはじけ飛んでしまう。余りに凄惨な光景を見て克喜は一瞬顔を青ざめさせた。

 

「…はずれ、か。」

「何?」

 

男は残念そうに顔を歪めてから、その場を立ち去ろうとする。克喜は、その男の前に立ってその道を塞ぐ。そもそもの話、なんで男がこんな行動に出たのかが全く理解できない。

それでも克喜にはこれだけの人数と、更に巻き添えで何人かを殺したこの男がどうしても悪であるとしか思えなかった。それこそ、今回の敵、四道のような―――。

とここまで思考したところではたと気付く。

この男何処かで見たことが無かったか、と。

 

「お前、あの時の…!」

 

少しばかり髪型は変わっているが顔つきはあの時、霊使を取り返した時の戦いに遅れてきた男と同じ顔つきだ。つまりは、この男―――

 

「四道、空也…!」

 

四道の一員である。それが分かれば容赦はしないと言わんばかりに克喜はデュエルディスクを構えた。

 

「…なあ…。」

「どうした?」

 

その前に克喜は一つだけ抱いていた疑問を空也に投げかける。それはある意味で最も疑問に思っていて、それで恐らくこの相手からじゃ満足しない答えが返ってくるであろう問いだ。

 

「あいつは、霊使はもうお前らより強いだろ…。もしお前らが決闘主義ならあいつを認めてやらねぇ…?」

「…あいつは既にドロップアウトした存在だ。これから先いくら強くなろうとそれはもう変わらない。」

「…何?」

「アイツは既に一度死んだんだ。死人に人権があるのか?」

「…とんでもねぇクズ共の集まりだったか…!」

 

つまりはこういう事だ。いくら強くなったとてその強さをいつでも発揮できないなら死んだも同然。ならそんな奴はいつ死ぬか分からない、と。

 

「それに攻撃力1850の準バニラの雑魚がエースじゃどのみち厳しいだろうよ。どうせ勝てるといっても一過性のものだ。」

「本気で言ってんのか、それ…?」

 

そして何よりもエースカードが気に入らないという。確かにエースカードというのは強力なカードとしての意味合いが強い。

だが、克喜はエースカードとはただただ強いものではなく、そのデッキの中心に据えられているカードだと考える。デッキのコンセプトと合致したカードが本当の意味での「エースカード」なのだ。

 

「…馬鹿だな。使いたいカードを使って勝つっていうのがどれだけ大変かお前らは知らねぇんだ。」

「勝ちたければ強いカードを使えばいいだろう。そもそもあんなガキ、創星神様の生贄以外に使い道があるのか?」

「てめぇ…!」

 

四道空也はただひたすらに霊使のエースカードへ文句を垂れ流す。やれ、あんな雑魚だの、やれ、ガキだのと。それは親友をバカにされているのと同じで。

克喜の怒りは既に限界以上に膨らんでいる。

 

「あと一つ教えておいてやる。努力というのは、選ばれなかった凡才共が自分を立たせるために行う愚かな行為だ。真に実力がある奴は慢心していたとしても努力している凡骨程度なら御せるんだよ。」

「つまり、努力は無意味と言いたいのか?」

「その足りない頭でよく理解したな。」

 

それは喧嘩を売っているのと同義だな―――そう呟いた克喜は思わず空也の顔をぶん殴っていた。まるで意図していない一撃に空也も、克喜でさえも一瞬動きが止まる。

空也は口の端から血を流して、それでも不気味な目線を克喜に向けていた。

それでも、克喜が空也の目を見たとき抱いたのは恐怖ではなく、怒りでもなく―――

 

「なんて、空虚な目なんだ…。」

 

哀れみであった。

まるで自分の意志を持たない空虚な目。かつての四道霊使でさえもう少し自分の意志はあっただろう。その目の中には目的達成の障害を排除するというどす黒い殺意も目の前に立つ克喜自身への敵意も「何もなかった」。

本当の意味で「からっぽ」だったのだ。人として宿すべき「光」が何一つ見えない、妙に生物感のある人形の目―――そんな風にしか空也を見ることが出来なかった。

 

「…俺は道具だ。道具はただただ道具であればいいんだよ。意思なんていらねぇ。霊使や咲姫は意思を持った…道具としての自覚が足りねぇんだ、あいつらは。」

「やれやれだ。こんなターミネーターみたいな奴らに未来を奪われた霊使が不憫でならねぇよ。」

 

それにな、と克喜は一つ息を吐いた。これからの行為は目の前の相手が気に入らないからぶん殴る。ただそれだけだ。決闘(デュエル)だとか関係なしに、こいつの存在やそう言うふうに教育した存在が許せない。なによりも―――

 

「てめぇ…聞いてりゃ俺の仲間や親友をバカにしやがって…!人の事を言うに道具だァ?ふざけんなよ…?」

「…道具は道具だ。俺達はそういうふうに教えられたんでな。その勤めも果たせないんじゃ処分するしかないだろ。不良品にコストをかけられるほどこっちもリソースがあるわけじゃないんでな!」

 

それだけ言うとそれ以上は言うことが無いと言わんばかりに背中を向ける。ただ、その背中に予想外の人物からの一撃は突き刺さった。その声は凛と澄んでいて、克喜は実に危機馴染んだ声が、空也に投げかけられる。

 

「逃げるんだ?」

「何?」

 

四道空也は初めてその動きを止めて振り返った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

結はその場を去ろうとする男の背中に一言投げかけた。「逃げるんだ?」と。自分も逃げに走りそうになったから自分が言えた事ではないのかもしれない。

それでもここであの男を逃がしてしまえば少なくとも霊使の邪魔になるから。

 

(…ブーメラン。)

(リィラ、シャラップ。)

 

投げかけた、というよりも投げつけた言葉に対してリィラが弄り倒そうとしてくる。だがそれはもう終わったことなのでブーメランが飛んでいくのは過去の自分だ。それよりも、と結は克喜と目線を合わせる。克喜は結の目を見た瞬間結の狙いが何なのか分かってしまった。

 

(…もし考えていることがあってるなら相当えげつないですよ、これ…。)

(いやー、こういうの考えるのって「悪魔」っぽいよなー。)

(普段の善人っぷりが良く分かりますね。)

 

克喜も結の作戦に乗るために怒りの感情をある行為に乗せてぶちまけることにした。それは―――

 

「おやおやぁ?まさか行動が当てられたからって逃げるんですかぁ~?」

「いやー殺人犯だし、実は決闘の腕も大したことは無いんでしょう。」

「あー…なるほど。だから殺人なんて非道な手段しか取れないのかぁ。」

「いやー決闘至上主義がきいてあきれますなー。」

 

煽り、である。本来ならばマナー違反であるこの行為も足止めのための活用なら、と克喜は渋々ながら了承した。いつの間にか実体化していたハイネとヴェールもあ折に参加している。こころなしかヴェールの顔が少し輝いているように見えた。

それを見たうえで結とキスキルは空也の事を煽り倒す。

 

「はいはいはいはい四道君のもっといいとこ見てみたーい!」

「え?何?もしかしてビビってる?三下って見下していた奴に負けるってびびってんすかぁ?」

「言わしておけば…!」

 

怒りで肩がプルプルと震える空也の姿を見て、四道の煽り耐性の低さを実感する結たち。とどめの一撃として、克喜は―――

 

「え?感情が無いんじゃないんすか?怒ってるんですかぁ?―――道具失格っすねぇ!」

 

全力で地雷を踏み抜いた。

プチン、と何かが切れる音がして、周囲の空気が張り詰める。

 

「貴様ら全員、ここでスクラップにしてやる…ッ!まずは九条克喜、貴様からだ…!」

 

若干涙目になった空也が忌々し気に克喜を、そして結を睨む。結は頭を抱えたが克喜は逆に睨み返して、空也に向かって中指を立てた。空也がそうであるように、克喜も額に青筋を浮かべている。克喜は大きく息を吸うと思いっきり叫んだ。

 

「いいぜ、もっと怒れよ…。俺はその数十億倍キレてンだからなぁ!」

「貴様の体を膾切りにして犬の餌にしてやるよッ!」

 

こうして、煽った側としても絶対に負けられない決闘(デュエル)が幕を開けた。

 

 

 

 

(人間ってえげつないわね、ルーナ。)

(サニー、それは言わないお約束ですよ。)

 

嬉々としてこの作戦を立案、実行に移した二人を見て何か恐ろしいものを感じたのは二人だけの秘密だ。




登場人物紹介

・九条克喜
マナー違反だが足止めにはなるのでヨシ!
まぁ親友をバカにされたんだからそりゃブ千切れるしマナーも悪くなるわ。

・白百合結
自分の事を棚に上げて煽るいい性格の人。といっても逃げたのは過去の自分なので今の自分にはブーメランが帰ってこないと思ってる。

・四道空也
煽られた、煽り耐性0だが、そもそもこいつが霊使をばかにしなければ普通に引き留められていた。

マナーとルールを守って楽しくデュエル!

次回もお楽しみに

水樹君のデッキ強化

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